発泡剤の種類と用途|断熱材や建築に最適な選び方

発泡剤の種類と用途|断熱材や建築に最適な選び方

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発泡剤の種類と特徴

この記事で分かること
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化学発泡剤の分類

有機系と無機系に分かれ、それぞれ熱分解型と反応型に細分化される特性

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物理発泡剤の用途

窒素ガスや炭酸ガスを利用した高倍率発泡の実現方法

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建築現場での使い分け

断熱材、コンクリート軽量化など目的別の発泡剤選定基準

発泡剤の基本的な分類と役割

 

発泡剤は気泡を形成するガスを供給する物質で、建築現場では断熱材やコンクリートの軽量化に欠かせない材料です。大きく分けて化学発泡剤と物理発泡剤の2種類があり、それぞれ異なる発泡メカニズムと用途を持っています。化学発泡剤は熱分解や化学反応によってガスを発生させる一方、物理発泡剤は高圧下で溶解させたガスを減圧することで気泡を生成します。
参考)https://www.jmsltd.co.jp/media/airticle/a32

発泡成形技術は「融かす」「流す」「固める」という基本工程に加え、「発泡性を持たせる」「気泡を成長させる」「気泡の成長を停止する」工程が追加された特殊な成形法です。食品トレーに使用される発泡ポリスチレンや、自動車部品に使われる発泡ポリプロピレンなど、多くの製品に応用されています。​

発泡剤の化学発泡剤|有機系と無機系の違い

化学発泡剤は有機系と無機系の2種類に分類され、それぞれがさらに熱分解型と反応型に細分化されます。有機系の熱分解型発泡剤では、ADCA(アゾジカーボンアミド)、DPT(N,N'-ジニトロペンタメチレンテトラミン)、OBSH(4,4'-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド)などが主に用いられています。これらは分解温度や発生ガス量が異なり、成形品の用途に応じて使い分けられます。
参考)https://plastics-japan.com/archives/2932

無機系の熱分解型発泡剤には、炭酸水素塩(重曹)や炭酸塩、炭酸水素塩と有機酸塩の組み合わせなどがあります。特に重曹系発泡剤は無味無臭で分解残渣が無毒なため、食品包装用途の押出発泡製品や自動車内装材の射出発泡製品に多く使用されています。分解温度が140~160℃付近で、ポリプロピレンの成形温度より50~70℃低く、使いやすい特性を持っています。
参考)https://www.kgk-tape.co.jp/page/index10.html

化学発泡剤は発泡が良好で初期設備投資が小さいメリットがある一方、発泡倍率が小さく発泡の制御が困難なデメリットもあります。成形温度と発泡剤の分解温度のマッチングが重要で、樹脂粘度が最適な範囲にあるときに発泡剤が分解するように選択する必要があります。​

発泡剤の物理発泡剤|窒素と炭酸ガスの特性

物理発泡剤には主に窒素ガス炭酸ガスが使用され、高圧下でプラスチックに溶解させてから圧力低下または加熱により気泡を生成させます。フロンや炭化水素も使われることがありますが、オゾン層破壊や地球温暖化などの環境問題、可燃性や毒性の問題があるため、無害な窒素や二酸化炭素への代替が進められています。​
物理発泡剤は発泡が良好で発泡倍率が大きいというメリットがありますが、化学発泡剤と比較して初期設備投資が大きく、成形条件幅が狭いというデメリットがあります。供給圧力が高い方が溶解量が多くなり、ヘンリーの法則に従って圧力と溶解量がほぼ比例します。​
超臨界流体を発泡剤として用いる場合、注入量を正確に制御できる利点があり、高圧下で大量の発泡剤を溶融樹脂に溶解させることができます。超臨界二酸化炭素を高圧下でプラスチック相に導入・飽和溶解し、常圧に減圧することで、気泡径約2μm以下の無数の微細気泡を材料全体に発生させることが可能です。​

発泡剤の断熱材への応用|ウレタンフォームの種類

建築用断熱材として広く使用される発泡ウレタンには、現場吹き付けタイプと工場生産のボードタイプの2種類があります。現場吹き付けタイプは施工現場で直接発泡して使用し、複雑な形状や狭い場所にも容易に適用できるため、気密性や断熱性を高めるのに適しています。一方、ボードタイプは基礎部分や床、屋根などに使用されることが多く、ボードの厚みもいくつか種類があり施工現場でカットして使用します。
参考)https://www.foamlite.jp/plaza/93/

硬質ウレタンフォームは微細な気泡の集合体で、一つ一つの独立した気泡には熱を伝えにくいガスが封じ込められており、グラスウールなどよりも優れた断熱性能を維持します。発泡ウレタンの断熱性能はグラスウールと比較すると約1.5倍から2倍高いとされ、防音効果などにも優れています。
参考)https://diyclip.roymall.jp/tool/1130918

発泡ウレタンには硬質、半硬質、軟質の3種類があり、硬質は断熱材として住宅や冷凍倉庫に使用され、半硬質は自動車部品に、軟質はスポンジやクッション材として利用されます。硬質ウレタンは独立気泡で強度が強く水を吸収しない特性があり、溶剤やガソリンに溶けない耐久性を持っています。
参考)https://www.r-pur.jp/r_pur/

発泡剤のコンクリート用途|AE剤と起泡剤の働き

コンクリート用の発泡剤にはAE剤(空気連行剤)と発泡剤・起泡剤があり、それぞれ異なる目的で使用されます。AE剤はコンクリート中に多くの独立した微細な空気泡(エントレインドエア)を一様に連行し、ワーカビリティーおよび耐凍害性を向上させるために用いる界面活性剤の一種です。市販されているAE剤は樹脂系、アルキルベンゼンスルホン酸系、高級アルコールエステル系などの陰イオン系のものと、非イオン系のものがあります。
参考)https://www.jci-net.or.jp/j/concrete/kiso/Admixure-a.html

連行空気泡はコンクリート中であたかもボールベアリングのような作用をするため、ワーカビリティーが改善され、所要のコンシステンシーを得るための単位水量を減少させることができます。この結果、同じスランプのコンクリートに比較して、ブリーディングなどの材料分離が少なくなります。​
発泡剤・起泡剤はモルタル及びコンクリートに多量の気泡を入れるための混和剤で、断熱性や防音性の向上、軽量化、注入用として使われます。気泡を多量に入れることで、建築物の省エネルギー性能を高めることができ、特に寒冷地における防寒・防露など居住環境の快適性向上に貢献します。
参考)https://practical-concrete.com/zairyou/konwazai/

発泡剤の選定基準|不動産従事者が知るべき実務ポイント

発泡剤を選定する際は、目的となる製品の用途、要求される性能、コスト、環境への影響を総合的に考慮する必要があります。化学発泡剤は初期設備投資が小さく扱いやすいため、小規模な現場や食品包装用途に適していますが、発泡倍率の制御が難しい点に注意が必要です。一方、物理発泡剤は高倍率の発泡が可能で、微細な気泡構造を作り出せるため、高性能な断熱材の製造に適しています。​
不動産業界では、建物の省エネルギー性能が重視される中、断熱材の選定が重要な課題となっています。発泡ウレタン断熱材は高い断熱性能を持ち、現場での施工性にも優れているため、新築住宅やリフォーム工事で広く採用されています。ただし、現場吹き付けタイプの場合は技術を持ったプロによる施工が必要で、施工品質が最終的な性能に大きく影響します。
参考)https://www.env.go.jp/earth/ozone/tt-bi/chpt2.pdf

コンクリート工事においては、AE剤の適切な使用がワーカビリティーと耐久性の両立に不可欠です。特に寒冷地での施工では、耐凍害性を向上させるAE剤の選定が重要で、気泡の分散状態や空気量を適切に管理することで、長期的な建物の耐久性を確保できます。発泡剤の種類と使用方法を正しく理解することで、建築物の品質向上とコスト削減を同時に実現することが可能です。​
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