避難階段設置基準と構造要件の全解説

避難階段設置基準と構造要件の全解説

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避難階段の設置基準と構造要件

避難階段の基本情報と設置基準
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設置が必要な階数

5階以上または地下2階以下の建築物に避難階段の設置が義務付けられています

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耐火構造の要求

階段室は耐火構造の壁で囲み、天井・壁は不燃材料で仕上げる必要があります

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特別避難階段

15階以上または地下3階以下の建築物には付室を設けた特別避難階段が必要です

避難階段の設置が必要な建築物の条件

建築基準法施行令第122条に基づき、避難階段の設置が必要な建築物は明確に規定されています。5階以上の階または地下2階以下の階に通ずる直通階段は、避難階段としなければなりません。
参考)避難階段とは?|緩和は、建築基準法を根拠に解説

 

ただし、以下の条件を満たす場合は設置義務が緩和されます。

  • 主要構造部が準耐火構造または不燃材料で造られた建築物で、5階以上または地下2階以下の階の床面積の合計が100㎡以下の場合
  • 主要構造部が耐火構造である建築物で、床面積100㎡以内ごとに耐火構造の床・壁・特定防火設備で区画されている場合

特に物品販売店舗においては、床面積1500㎡を超える建築物には2以上の直通階段の設置が必要となり、このうち1つは避難階段でなければなりません。
参考)https://digioka.libnet.pref.okayama.jp/detail-jp/id/ref/M2008030721313466145

 

屋内避難階段の構造基準と技術的要件

屋内避難階段は建築基準法施行令第123条第1項に定められた7つの条件をすべて満たす必要があります。最も重要な構造要件として、階段室は耐火構造の壁で囲み、開口部・窓・出入口部分を除いて完全に防火区画することが求められます。
参考)避難階段とは|建築基準法における構造と設置基準を解説【図解付…

 

内装制限に関する詳細規定

開口部の離隔距離要件
階段室の屋外に面する開口部は、階段室以外の開口部から90cm以上の距離を確保する必要があります。この規定により、火災時の延焼防止と安全な避難経路の確保が図られています。

特別避難階段の付室要件と面積基準

特別避難階段は15階以上または地下3階以下の建築物に設置が義務付けられ、屋内と階段室の間にバルコニーまたは付室を設ける必要があります。付室の構造は国土交通省告示第696号で詳細に規定されており、通常の火災時に生ずる煙を有効に排出できる構造が求められます。
参考)『特別避難階段』の構造とは|附室の基準もわかりやすく解説【図…

 

付室の面積基準
建築物の15階以上の階または地下3階以下の階における階段室およびバルコニー・付室の床面積の合計は、以下の基準を満たす必要があります:

  • 物品販売店舗用途:各居室の床面積×8%
  • その他の用途:各居室の床面積×3%

付室には外気に向かって開くことのできる窓または排煙設備を設置し、火災時の煙排出機能を確保することが義務付けられています。
参考)http://www.fire-city.kurume.fukuoka.jp/media/001/202003/%E7%AC%AC2%E7%AB%A0%20%E7%AC%AC2%E7%AF%80%20%E7%AC%AC4%20%E9%81%BF%E9%9B%A3%E6%96%BD%E8%A8%AD.pdf

 

屋外避難階段の開放性基準と離隔距離

屋外避難階段は建築基準法施行令第123条第2項の規定により、特殊な構造基準を満たす必要があります。最も重要な要件は開放性の確保で、階段の2面以上かつ周長の概ね2分の1以上が有効に外気に開放されていることが求められます。
参考)避難階・階段とは|建築基準法を元に設置条件・構造を徹底解説

 

離隔距離の詳細規定

屋外避難階段に通ずる出入口には、屋内避難階段と同様の防火設備を設置する必要があり、階段は耐火構造として地上まで直通することが義務付けられています。開放性の判断については申請先との協議が重要で、特に「概ね2分の1以上」の解釈は行政機関によって異なる場合があります。

避難階段設置における設計上の注意点と実務対応

避難階段の設置計画では、建築基準法の技術的基準に加えて実務的な配慮が必要です。特に階段室の防火区画については、開口部の位置や防火設備の選定が複雑になるケースが多く、設計段階での十分な検討が求められます。
設計実務での重要ポイント

  • 避難階段では2以上の直通階段の緩和規定が適用されない点
  • 階段の踊り場幅や手すりの設置基準の遵守
  • 非常用照明設備との連携計画

興味深い事実として、病院建築においては避難階段の配置が患者の避難特性に大きく影響することが研究で明らかになっています。病棟部基準階平面における屋内避難階段の分析では、階段の配置により避難時間に大幅な差が生じることが確認されており、単に法的基準を満たすだけでなく、利用者特性を考慮した配置計画の重要性が指摘されています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/6220662a54c22100beee7b7739a1555dac2e4e1b

 

また、近年の技術革新により、加圧防煙システムを導入した特別避難階段の付室設計が注目されています。従来の機械排煙設備を有効活用することで、より効率的な煙制御が可能となり、避難安全性の向上が期待されています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/ce8af9795c0d91287d8bb8a56c1ae92167053f21