不燃材料の種類と建築基準法における定義

不燃材料の種類と建築基準法における定義

記事内に広告を含む場合があります。

不燃材料の種類と建築基準法における定義

防火材料の基本情報
🔥
防火性能による分類

不燃材料(20分)、準不燃材料(10分)、難燃材料(5分)の3種類に分類されます

📋
法的根拠

建築基準法施行令第108条の2に基づき、告示で具体的な材料が指定されています

🏢
使用義務

建物の用途・規模・場所によって使用が義務付けられる防火材料が異なります

不燃材料の定義と建築基準法における位置づけ

不燃材料とは、建築基準法において「防火材料」に分類される建築材料の一種です。通常の火災によって火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間以上、建築基準法施行令第108条の2で定められた要件を満たす材料を指します。この要件には、①燃焼しないこと、②防火上有害な変型、溶融、き裂などの損傷を生じないこと、③避難上有害な煙やガスを発生しないことの3点が含まれています。

 

防火材料は、その性能によって「不燃材料」「準不燃材料」「難燃材料」の3つに分類されます。この中で最も高い防火性能を持つのが不燃材料であり、準不燃材料は10分間、難燃材料は5分間の要件充足が求められます。

 

不燃材料は、建設省告示第1400号(国土交通省告示第1178号により改正)によって定められており、法定不燃材料と認定不燃材料に分けられます。法定不燃材料は告示で明示されているもの、認定不燃材料は国土交通大臣の認定を受けたものを指します。

 

不燃材料の種類と具体的な例

建築基準法で定められている不燃材料には、以下のような種類があります。

  1. コンクリート
  2. れんが
  3. 陶磁器質タイル
  4. 繊維強化セメント板
  5. ガラス繊維混入セメント板(厚さ3mm以上)
  6. 繊維混入ケイ酸カルシウム板(厚さ5mm以上)
  7. 鉄鋼
  8. アルミニウム
  9. 金属板
  10. ガラス
  11. モルタル
  12. しっくい
  13. せっこうボード(厚さ12mm以上、ボード用原紙の厚さが0.6mm以下)
  14. ロックウール
  15. グラスウール

これらの材料は自然に存在するものや、人工的に製造されたものが含まれています。例えば、コンクリートや石などは自然素材を加工したもの、せっこうボードやガラス繊維混入セメント板などは工業的に製造された材料です。

 

不燃材料は、その耐火性の高さから、特に火災リスクの高い場所や避難経路の確保が重要な場所に使用されます。例えば、高層ビルの階段室や防火区画の壁、天井などに用いられることが多いです。

 

準不燃材料と難燃材料の種類と不燃材料との違い

準不燃材料難燃材料も、不燃材料と同様に建築基準法で定められた防火材料ですが、その性能と種類には違いがあります。

 

【準不燃材料】
準不燃材料は、加熱開始後10分間、建築基準法施行令第108条の2の要件を満たす材料です。建設省告示第1401号によって以下のように定められています。

  • せっこうボード(厚さ9mm以上、ボード用原紙の厚さ0.6mm以下)
  • 木毛セメント板(厚さ15mm以上)
  • 硬質木片セメント板(厚さ9mm以上、かさ比重0.9以上)
  • 木片セメント板(厚さ30mm以上、かさ比重0.5以上)
  • パルプセメント板れんが(厚さ6mm以上)

【難燃材料】
難燃材料は、加熱開始後5分間、建築基準法施行令第108条の2の要件を満たす材料です。建設省告示第1402号によって以下のように定められています。

  • 難燃合板(厚さ5.5mm以上)
  • せっこうボード(厚さ7mm以上、ボード用原紙の厚さが0.5mm以下)

これら3種類の防火材料の主な違いは、火災時に要件を満たす時間の長さです。不燃材料が最も長い20分間、準不燃材料が10分間、難燃材料が5分間となっています。この時間の差は、火災発生時に避難や消火活動に使える時間の差に直結するため、建物の用途や規模によって適切な材料を選択することが重要です。

 

また、材料の種類にも違いがあり、不燃材料には金属やコンクリートなどの完全に燃えない材料が多く含まれるのに対し、準不燃材料や難燃材料には木質系の材料も含まれています。これは、素材自体は可燃性であっても、特殊な処理を施すことで一定時間の防火性能を持たせることができるためです。

 

不燃材料の認定番号と選び方のポイント

不燃材料として国土交通大臣の認定を受けた製品には、製品ごとに認定番号が付与されます。この認定番号は製品の防火性能を証明するものであり、建築確認申請などの際に重要な情報となります。

 

【認定番号の見方】

  • 不燃材料:「NM-○○○○」または「NE-○○○○」(外部仕上げ用)
  • 準不燃材料:「QM-○○○○」または「QE-○○○○」(外部仕上げ用)
  • 難燃材料:「RM-○○○○」または「RE-○○○○」(外部仕上げ用)

○○○○の部分には4桁の数字が入ります。「NE」「QE」「RE」で始まる認定番号は、屋根の仕上げ材や外壁の仕上げ材といった外部仕上げ用の材料を指しています。

 

不燃材料を選ぶ際のポイントは以下の通りです。

  1. 用途に合った性能を持つ材料を選ぶ:建物の用途や設置場所によって求められる防火性能が異なります。法令で定められた基準を満たす材料を選びましょう。
  2. 認定の内容を確認する:個別認定を受けた材料は、寸法、形状、材料構成等が限定されています。同じ素材でも認定の範囲外になる場合があるため、詳細を確認することが重要です。
  3. デザイン性と機能性のバランス:近年は防火性能だけでなく、デザイン性や施工のしやすさなども考慮された不燃材料が多く開発されています。空間の用途や雰囲気に合った材料を選びましょう。
  4. コストパフォーマンス:不燃材料は一般的に準不燃材料や難燃材料よりも高価な傾向がありますが、長期的な安全性や耐久性を考慮すると、適切な投資と言えます。
  5. メンテナンス性:設置後のメンテナンスのしやすさも重要な選択基準です。特に水回りや汚れやすい場所では、耐水性や耐汚染性に優れた材料を選ぶことをおすすめします。

不燃材料が使用義務付けられる場所と2025年の法改正動向

建築基準法では、建物の種類や規模、地域によって防火材料の使用が義務付けられています。不燃材料の使用が義務付けられる主な場所は以下の通りです。
【屋外】
防火地域内にある屋外の看板、広告塔、装飾等には不燃材料の使用が義務付けられています(建築基準法第66条)。具体的には、屋上広告・看板や高さ3m以上の看板が該当します。

 

【屋内】
特殊建築物(不特定多数の人が利用する建物)などには、内装制限(建築基準法第35条の2など)により、防火材料の使用が義務付けられています。対象は、壁、天井、柱、扉など床以外の内装です。

 

特に以下の建物では、不燃材料や準不燃材料の使用が求められることが多いです。

  • 特殊建築物:劇場、映画館、病院、ホテル、百貨店、飲食店など
  • 一定規模以上の建物:3階建て以上で延べ面積500㎡以上、2階建てで延べ面積1000㎡以上など
  • 無窓居室:排煙上あるいは採光上の基準を満たす窓がない天井高6m以下の居室
  • 調理室等の火気使用室:住宅以外の建築物で火を使う設備を設けたものなど

2025年に予定されている建築基準法の改正では、防火・耐火関連の規定にも変更が検討されています。特に木材の利用促進の観点から、一定の条件下で木質系材料を防火材料として使用できる範囲が拡大される可能性があります。これは、環境負荷の低減や地域資源の活用といった観点から注目されている動きです。

 

また、防火材料の性能評価方法についても、より実態に即した試験方法への見直しが検討されています。これにより、より多様な材料が防火材料として認定される可能性があります。

 

建築施工に携わる方々は、こうした法改正の動向にも注意を払い、最新の基準に沿った材料選定を行うことが重要です。

 

不燃材料を活用した施工事例と技術的なポイント

不燃材料を効果的に活用した施工事例と、施工時の技術的なポイントについて紹介します。

 

【商業施設での活用事例】
大型商業施設では、多くの人が集まる空間であるため、高い防火性能が求められます。特に、吹き抜け部分や避難経路となる通路、エスカレーター周りなどには不燃材料が多用されています。

 

例えば、あるショッピングモールでは、天井に繊維混入ケイ酸カルシウム板を使用し、その上から木目調の不燃化粧板を貼ることで、温かみのある空間を実現しながらも高い防火性能を確保しています。また、柱や壁には金属パネルやガラスを使用することで、開放感のある空間を作りつつ防火性能も確保しています。

 

【オフィスビルでの活用事例】
オフィスビルでは、特に避難経路となる階段室や防火区画の壁に不燃材料が使用されています。最近のオフィスビルでは、デザイン性と防火性能を両立させるため、金属パネルやガラスなどの不燃材料を活用したデザイン性の高い空間づくりが増えています。

 

例えば、あるオフィスビルでは、エントランスホールの壁面にアルミニウム複合板を使用し、その表面に特殊な加工を施すことで、高級感のある空間を実現しています。また、オフィスフロアの間仕切り壁には、透明感のあるガラスパネルを使用することで、開放感を確保しながらも防火区画としての性能を持たせています。

 

【施工時の技術的ポイント】

  1. 正確な施工計画の立案

    不燃材料の施工には、材料の特性を理解した上での正確な施工計画が重要です。特に、異なる材料の接合部や開口部周りなどは、防火性能が低下しやすい箇所となるため、詳細な施工図を作成し、施工方法を明確にしておくことが必要です。

     

  2. 適切な下地処理

    不燃材料の性能を十分に発揮させるためには、適切な下地処理が欠かせません。例えば、せっこうボードを壁に施工する場合、下地の木材や鉄骨との接合部が弱点となりやすいため、専用の接合金物や防火処理された下地材を使用するなどの配慮が必要です。

     

  3. 継ぎ目処理の徹底

    不燃材料同士の継ぎ目は、火災時に弱点となる可能性があります。そのため、継ぎ目処理には特に注意が必要です。例えば、せっこうボードの継ぎ目には専用のジョイント材を使用し、隙間から火が回り込まないようにすることが重要です。

     

  4. 施工後の検査と記録

    不燃材料の施工後は、設計図通りに施工されているかを確認する検査が重要です。特に、防火区画の貫通部や異種材料との取り合い部などは重点的にチェックし、問題がある場合は速やかに修正することが必要です。また、使用した材料の認定番号や施工方法などを記録しておくことで、将来のメンテナンスや改修時に役立ちます。

     

  5. 最新の技術情報の収集

    不燃材料の技術は日々進化しており、新しい材料や施工方法が開発されています。定期的に最新の技術情報を収集し、より効率的で高性能な施工方法を取り入れることが重要です。

     

これらのポイントを押さえることで、不燃材料の性能を最大限に活かした安全で美しい空間を実現することができます。

 

国土交通省の防火材料関連の最新情報はこちらで確認できます
以上、不燃材料の種類と建築基準法における定義について詳しく解説しました。建築施工に携わる方々にとって、防火材料の正しい理解と適切な選択は、安全な建築物を実現するための基本です。法令の要件を満たしつつ、デザイン性や施工性も考慮した材料選定を行うことで、より質の高い建築空間を創造することができるでしょう。