耐火構造 告示で定められた構造方法と基準

耐火構造 告示で定められた構造方法と基準

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耐火構造と告示の基本知識と適用方法

耐火構造の基本
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定義

通常の火災が終了するまでの間、建築物の倒壊および延焼を防止するために必要な性能を持つ構造

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根拠法令

建築基準法第2条第7号および建築基準法施行令第107条

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構造方法

告示(建設省告示第1399号)で定められた方法または国土交通大臣の認定を受けた方法

耐火構造の定義と耐火性能の技術的基準

耐火構造とは、建築基準法第2条第7号に定められている構造で、通常の火災が終了するまでの間、建築物の倒壊および延焼を防止するために必要な性能(耐火性能)を持つものを指します。この耐火性能に関する技術的基準は、建築基準法施行令第107条に詳細に規定されています。

 

耐火性能の技術的基準は主に3つの観点から定められています。

  1. 非損傷性:通常の火災による加熱が一定時間加えられた場合に、構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないこと
  2. 遮熱性:通常の火災による火熱が一定時間加えられた場合に、加熱面以外の面(屋内側)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないこと
  3. 遮炎性:通常の火災による火熱が加えられた場合に、屋内に火災を出す原因となるき裂その他の損傷を生じないこと

これらの性能は、建築物の主要構造部(柱、梁、床、屋根、壁、階段など)ごとに、また建築物の階数に応じて要求される耐火時間が異なります。例えば、5階から14階の建物の柱や梁には2時間の耐火性能が求められますが、最上階から4階までは1時間の耐火性能で十分とされています。

 

耐火構造 告示1399号の構造方法と仕様

耐火構造の構造方法は、平成12年建設省告示第1399号(最終改正:平成30年国土交通省告示第472号)に詳細に定められています。この告示では、主要構造部の部位ごとに具体的な構造方法が規定されています。

 

告示1399号の構成は以下のようになっています。

  • 第1:壁の構造方法
  • 第2:柱の構造方法
  • 第3:床の構造方法
  • 第4:はりの構造方法
  • 第5:屋根の構造方法
  • 第6:階段の構造方法

例えば、鉄筋コンクリート造の壁の場合、厚さや鉄筋のかぶり厚さなどの具体的な数値が定められています。壁の厚さは一般的に10cm以上必要とされ、鉄筋のかぶり厚さは2cm以上(遮熱性を要求される場合は3cm以上)とされています。

 

また、木造の耐火構造も規定されており、適切な耐火被覆を施すことで耐火構造として認められます。例えば、木造の柱や梁を石膏ボードで覆う場合、その厚さや施工方法が詳細に定められています。

 

国土交通省:耐火構造の構造方法を定める告示(第1399号)の詳細

耐火構造における主要構造部の部位ごとの耐火時間

耐火構造における主要構造部は、建築物の階数に応じて定められた耐火時間を確保する必要があります。建築基準法施行令第107条に基づく主要構造部ごとの耐火時間は以下のとおりです。
壁(間仕切壁・外壁)の耐火時間

最上階からの階数 耐力壁(非損傷性) 耐力壁(遮熱性) 非耐力壁(延焼のおそれのある部分・遮熱性) 非耐力壁(その他の部分・遮熱性) 非耐力壁(延焼のおそれのある部分・遮炎性) 非耐力壁(その他の部分・遮炎性)
1~4階 1時間 1時間 1時間 30分 1時間 30分
5~14階 2時間 1時間 1時間 30分 1時間 30分
15階以上 2時間 1時間 1時間 30分 1時間 30分

柱・はりの耐火時間

最上階からの階数 柱(非損傷性) はり(非損傷性) はり(遮熱性)
1~4階 1時間 1時間 1時間
5~14階 2時間 2時間 1時間
15階以上 3時間 3時間 1時間

床・屋根・階段の耐火時間

部位 非損傷性 遮熱性 遮炎性
階数による 1時間 なし
屋根 30分 なし 30分
階段 30分 なし なし

これらの耐火時間は、建築物の安全性を確保するために必要最低限の基準として定められています。実際の設計・施工においては、これらの基準を満たすよう適切な材料選定と施工方法を選択する必要があります。

 

耐火構造と準耐火構造の違いと選定基準

耐火構造と準耐火構造は、火災に対する性能レベルが異なります。それぞれの特徴と選定基準について理解することが、適切な建築計画を立てる上で重要です。

 

耐火構造の特徴

  • 通常の火災が終了するまでの間、建築物の倒壊および延焼を防止する性能を持つ
  • 主要構造部は、階数に応じて1時間から3時間の耐火性能が求められる
  • 一般的にRC造、鉄骨造(耐火被覆あり)、レンガ造などで構成される
  • 防火地域内の特定の建築物に要求される

準耐火構造の特徴

  • 耐火構造ほどではないが、一定時間(最大1時間)の耐火性能を持つ
  • 木造でも準耐火構造とすることが可能(燃えしろ設計など)
  • 準防火地域内の特定の建築物や、防火地域内の小規模建築物に要求される

選定基準

  1. 建築物の立地条件:防火地域・準防火地域内かどうか
  2. 建築物の規模:階数、延べ面積
  3. 建築物の用途:特殊建築物(劇場、病院、ホテルなど)かどうか
  4. 経済性:耐火構造は準耐火構造に比べてコストが1.5倍程度高くなる傾向がある
  5. デザイン性:木材などの自然素材を表しで使いたい場合は準耐火構造が有利

法令上の要求がない場合でも、建築主の要望や建物の重要度に応じて、より高い耐火性能を持つ構造を選択することもあります。特に、重要な設備や貴重な資料を保管する建物などでは、法令の最低基準を上回る耐火性能を確保することが望ましいでしょう。

 

耐火構造 告示に基づく大臣認定品の活用と施工上の注意点

耐火構造には、告示で定められた仕様に適合する方法と、国土交通大臣の認定を受けた構造方法(大臣認定品)を用いる方法があります。大臣認定品は、告示の基準に適合しない新しい材料や工法でも、耐火性能が確認されれば使用できるというメリットがあります。

 

大臣認定品の特徴

  • 認定番号が付与され、その番号から耐火時間や部位を識別できる
  • 例:FP060BE-1234(FP:耐火構造、060:60分耐火、BE:梁、1234:通し番号)
  • メーカーや製品ごとに認定条件が異なるため、認定書の内容を確認する必要がある
  • 一般的に、鉄骨造の耐火被覆材(吹付けロックウール、耐火塗料など)で多く用いられる

施工上の注意点

  1. 認定条件の確認
    • 認定書に記載された施工条件(下地処理、塗布厚さ、養生方法など)を厳守する
    • 認定範囲(適用できる部材寸法や形状)を確認する
    • 認定された組み合わせ以外の材料との併用は原則として認められない
  2. 施工管理の徹底
    • 耐火被覆材の厚さ管理(ピンゲージなどによる測定)
    • 施工環境の管理(温度、湿度など)
    • 施工記録の作成と保管
  3. 取合い部の処理
    • 耐火被覆の取合い部分や目地部分は、火災時に弱点となりやすい
    • 告示や認定書に従った適切な処理(バックアップ材の設置、シール材の充填など)が必要
    • 特に異なる部位(柱と梁の接合部など)の取合いは注意が必要
  4. 検査と確認
    • 自主検査による品質確認
    • 建築主事や指定確認検査機関による中間検査・完了検査への対応
    • 不適合箇所の是正処置

大臣認定品を使用する際は、製品メーカーの技術資料や施工マニュアルを熟読し、不明点があれば事前にメーカーに確認することが重要です。また、施工者は定期的に講習会などに参加し、最新の技術情報や施工方法を習得することが望ましいでしょう。

 

一般財団法人 日本建築センター:耐火構造等の大臣認定に関する情報

耐火構造 告示の最新改正と木造建築への適用拡大

近年、木材利用促進の観点から、耐火構造に関する告示も改正され、木造建築物への適用範囲が拡大しています。2024年4月に施行された改正建築基準法では、木材利用促進等に係る防火規制の合理化が追加されました。これにより、木造建築物でも適切な耐火被覆を施すことで、より高層の建築物を建設することが可能になっています。

 

最新の改正ポイント

  1. 木造耐火構造の仕様の多様化
    • 従来の告示では、木造の耐火構造は限られた仕様しか認められていなかったが、新たな仕様が追加された
    • 外壁の認定において、室内側の耐火被覆が告示では厚さ42mmであるところ、木住協認定では15mm+ALGC(アルミニウム箔張りガラス繊維クロス)+21mmと薄くできる仕様が認められるようになった
  2. 燃えしろ設計の適用範囲拡大
    • 準耐火建築物において、柱やはりを「燃えしろ設計」を用いて木材あらわしとすることが可能
    • 燃えしろ設計とは、木材表面の一定寸法が燃えても構造耐力上支障のないことを確認する設計法
  3. 耐火性能検証法の見直し
    • 令和7年2月28日に公布・施行された国土交通省告示第157号により、耐火性能検証法に基づく算出方法が見直された
    • 最新の技術や検証結果に基づき、より合理的な設計が可能になった
  4. 高度な準耐火構造の整備
    • 2019年6月に施行された改正建築基準法により、耐火建築物と同等の性能を持つ高度な準耐火構造が整備された
    • 2022年6月に公布の改正建築基準法でさらに防耐火規制が合理化され、防耐火性能を有する木造の計画がしやすくなった

これらの改正により、木造建築物の可能性が広がり、中高層の木造建築物も実現可能になっています。特に、CLT(直交集成板)などの新しい木質材料を活用した建築物の設計・施工が増えています。

 

施工者としては、これらの新しい規定や材料に関する知識を習得し、適切な設計・施工を行うことが求められます。また、木造耐火構造は従来のRC造や鉄骨造とは異なる施工上の注意点があるため、専門的な知識と経験が必要です。

 

日本木造住宅産業協会:耐火・準耐火構造に関する情報
耐火構造に関する規定は、建築技術の進歩や社会的ニーズの変化に応じて今後も改正される可能性があります。施工者は常に最新の情報を収集し、適切な設計・施工を行うことが重要です。

 

以上、耐火構造と告示に関する基本知識から最新の動向まで解説しました。建築物の防火・耐火性能は人命と財産を守るための重要な要素であり、適切な設計・施工が求められます。施工者は関連法令や技術基準を十分に理解し、安全で信頼性の高い建築物の実現に貢献しましょう。