
ヒューズは電子回路に過負荷電流が流れた際に、回路を切断して電子回路の破損を防ぐ保護素子です。一度回路を切断すると元に戻らないため、主に高い信頼性が求められる電源ラインで使用されます。
基本的な構造としては、どのタイプのヒューズも共通して電極間がヒューズエレメントで接続されています。このヒューズエレメントには比較的融点の低い金属を使用し、抵抗に電流が流れた際に発生するジュール熱を利用してエレメントを溶断することで回路を切断します。
主要なヒューズの種類には以下があります。
ヒューズの規格は、製品の互換性と安全性を確保するため、詳細に定められています。日本ではJIS規格、国際的にはISO規格によって寸法や性能などが規定されています。
JIS規格による溶断特性記号:
ガラス管ヒューズでは、MFヒューズやミゼット型(5.2Φ×20mm)が標準的なサイズとして規格化されており、AC125V用のMFヒューズとAC250V用の2MFヒューズが用途に応じて選択できます。
溶断時間の規格では、定格電流の110%では100時間以内で切れないこと、200%なら1.5秒以上60秒以内で溶断することが求められています。これにより、正常な回路動作時の一時的な電流増加では動作せず、異常時のみ確実に保護機能を発揮します。
ヒューズ製品には用途に応じて各種安全規格が適用されます。主要な安全規格は以下の通りです:
日本国内の規格。
国際規格。
自動車用ヒューズは特別な扱いとなり、国内ではJASO(日本自動車規格)D612-3に準拠し、国際的にはISO/DIS 8820-3で規定されています。これらの規格では、ブレード型ヒューズの寸法精度、端子の厚みや長さ、溶断時間、耐久性などが詳細に定められています。
電気用安全法の施行により、検査機関名<PSE>JET表示が義務付けられており、これにより消費者は安全性が確認された製品を識別できます。
ヒューズの定格電流は用途に応じて幅広く設定されており、特に自動車用ブレードヒューズではカラーコードによる識別システムが確立されています。
標準的な定格電流とカラーコード。
建築設備で使用される産業用ヒューズでは、より大容量の製品も用意されており、40A、50A、80Aといった高電流対応製品もあります。
ガラス管ヒューズの場合、サイズによって対応できる電流範囲が決まっており、Φ5.2×20mmのミゼット型では比較的小電流用、Φ6.4×30mmの標準型では中電流用として使い分けられます。
建築事業者がヒューズを選定する際は、単純な電流値だけでなく、設置環境や保守性も考慮する必要があります。特に建築設備では長期間の信頼性が求められるため、規格適合品の選択が重要です。
実践的な選定ステップ。
建築現場特有の考慮点として、粉塵の多い環境では密閉型のガラス管ヒューズが有利で、配電盤内のスペース制約がある場合は小型のミニヒューズや低背型ヒューズが適しています。
また、メインヒューズボックスには大電流対応のスローブローヒューズ(ヒュージブルリンク)を使用し、瞬間的な大電流には反応せず、持続的な過負荷のみに動作する特性を活用します。
最新の建築設備では、バッテリーヒューズターミナル(BFT)のような一体型製品も採用されており、複数回路を一つのプレートで保護できる効率的なソリューションが注目されています。
適切な安全規格(PSE、UL、ISO等)に準拠した製品を選択することで、建築設備の長期的な安全性と信頼性を確保できます。