安全規格一覧:建築業従事者必見の体系図

安全規格一覧:建築業従事者必見の体系図

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安全規格一覧の体系

安全規格の3階層構造
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A規格(基本安全規格)

全ての機械・設備に適用される基本概念を定める最上位規格

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B規格(グループ安全規格)

類似製品群に適用される共通の安全要求事項を規定

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C規格(製品安全規格)

特定機械・設備に対する詳細な安全要求事項を明確化

建築業界における安全規格は、ISO/IECガイド51を頂点とした3階層構造で体系化されています。この体系は全体の整合性と統一性を保ちながら、新しい機械や技術にも対応できる柔軟性を持っています。
**A規格(基本安全規格)**では、ISO12100シリーズが代表的で、機械類の安全性に関する基本概念と設計原則を定めています。建築現場で使用される全ての機械設備に適用される最も重要な規格です。
**B規格(グループ安全規格)**は、ISO13849やIEC62061など、制御システムの安全関連部分や機能安全について規定しています。建築機械の制御システム設計に直接関わる重要な規格群です。
**C規格(製品安全規格)**は、工作機械、産業用ロボット、鍛圧機械など、特定の機械類に対する詳細な安全要求事項を定めています。建築現場で使用される個別機械ごとの具体的な安全対策が明記されています。

安全規格における基本安全規格(A規格)の詳細

基本安全規格(A規格)は、建築現場の全ての機械・設備に適用される最上位の規格です。主要な規格には以下があります:
ISO12100-1:機械類の安全性—基本概念、設計のための一般原則—第1部:基本用語、方法論
この規格は機械安全の基本的な考え方を定義し、建築現場で使用される全ての機械に共通する安全原則を提供します。
ISO12100-2:第2部:技術原則
具体的な技術的要求事項を規定し、建築機械の設計段階から運用まで一貫した安全対策を可能にします。
ISO14121-1:リスクアセスメント—第1部:原則
建築現場でのリスク評価方法論を体系化し、危険源の特定から保護方策の選択まで段階的なアプローチを定めています。
これらの基本安全規格は、建築業界特有の作業環境(高所作業、重機操作、多工程同時進行など)における安全管理の基盤となる重要な指針を提供しています。

 

安全規格グループ安全規格(B規格)の構成要素

グループ安全規格(B規格)は、建築現場で使用される機械群に共通する安全技術を規定しています。主要な規格分類は以下の通りです:
制御系安全規格

  • ISO13849-1:制御システムの安全関連部—第1部:設計のための一般原則
  • IEC62061:安全関連の電気・電子・プログラマブル電子制御システムの機能安全

これらは建設機械の制御システムに関する安全要求レベル(SIL)やパフォーマンスレベル(PL)を定義しています。
保護装置関連規格

  • IEC61496シリーズ:電気的検知保護設備(安全ライトカーテンなど)
  • ISO14119:ガードと共同するインタロック装置

建築現場では、クレーンやエレベーター、コンベヤなどの保護装置設計で重要な役割を果たします。
人間工学関連規格

  • ISO13852:上肢の到達防止のための安全距離
  • ISO13853:下肢の到達防止のための安全距離
  • ISO13854:人体部位の押しつぶし防止のための最小すきま

これらの規格は、建築現場での作業員の身体的安全を確保するための具体的な寸法基準を提供しています。

安全規格製品安全規格(C規格)の建築業界適用例

製品安全規格(C規格)は、建築現場で使用される特定機械に対する詳細な安全要求事項を定めています。建築業界で特に重要な規格には以下があります:
建設機械関連規格

  • 鍛圧機械(プレス機械)の安全規格
  • 工作機械の安全規格
  • 輸送機械(コンベヤ、エレベーター)の安全規格

これらは建築現場で使用される具体的な機械の安全要求事項を詳細に規定しています。
産業用ロボット関連規格
建築業界では、溶接ロボットや搬送ロボットの導入が進んでおり、これらの安全規格が重要になっています。特に協働ロボットの安全要求事項は、作業員との共同作業環境で必須の知識です。

 

電気設備関連規格
IEC60204シリーズは機械の電気装置に関する安全規格で、建築現場の電気設備の安全性確保に直接関わっています。高電圧装置や特殊環境での電気安全要求事項が詳細に規定されています。
特殊環境対応規格
建築現場特有の粉塵環境、高温環境、振動環境などに対応した機械安全規格も含まれており、現場の作業環境に応じた適切な機械選定と安全対策の指針を提供しています。

 

安全規格と労働安全衛生法の関連性

国際安全規格と日本の労働安全衛生法には密接な関連性があり、建築業従事者は両方の要求事項を理解する必要があります。
労働安全衛生法の基本構造
労働安全衛生法は昭和47年に制定され、職場における労働者の安全と健康確保を目的としています。建築業界では特に以下の措置が重要です:

  • 機械・器具による危険防止措置
  • 墜落・土砂崩落などの危険防止
  • 有害物質による健康障害防止
  • 作業方法による危険防止

事業者の責務と安全教育
建築業の事業者には、以下の安全教育実施義務があります:

  • 雇い入れ時の教育(第59条第1項)
  • 作業内容変更時の教育(第59条第2項)
  • 危険有害業務従事者への特別教育(第59条第3項)
  • 職長等教育(第60条)

リスクアセスメントの義務化
2016年の改正により化学物質のリスクアセスメント実施が義務化され、建築現場でも塗料、接着剤、防腐剤などの化学物質使用時の安全評価が必要になっています。
建築業界では、国際安全規格のリスクアセスメント手法(ISO14121)と労働安全衛生法の要求事項を組み合わせた包括的な安全管理体制の構築が求められています。

 

安全規格実装における建築業界特有の課題と対策

建築業界における安全規格の実装には、他の製造業とは異なる特有の課題があります。これらの課題を理解し、適切な対策を講じることが現場の安全性向上に直結します。

 

多工種・多工程同時進行の安全管理
建築現場では、型枠工事、鉄筋工事、コンクリート工事、設備工事などが同時進行します。各工程で使用される機械の安全規格が異なるため、統合的な安全管理システムの構築が必要です。

 

ISO11161(統合生産システムの基本要求事項)の適用により、複数の機械システムが連携する建築現場での安全性を確保できます。この規格は、異なる機械間の安全インターフェースや緊急停止システムの統合方法を規定しています。
移動型機械・設備の安全対策
建築現場では、クレーン、ダンプトラック、ポンプ車などの移動型機械が多用されます。これらの機械は作業場所が頻繁に変わるため、設置型機械とは異なる安全配慮が必要です。

 

移動型機械の安全規格では、以下の要素が重要になります。

  • 作業範囲の明確化と立入禁止区域の設定
  • 移動経路の安全確保
  • 他の作業との干渉防止
  • 不安定地盤での作業時の転倒防止

気象条件による安全性への影響
屋外作業が中心の建築現場では、風速、降雨、気温などの気象条件が機械の安全性に大きく影響します。特にクレーン作業では、風速規制値の遵守が法的に義務付けられています。

 

安全規格の実装においては、気象条件モニタリングシステムと連動した自動停止機能や警報システムの導入が効果的です。これにより、危険な気象条件下での作業を未然に防止できます。

 

建築現場での機械安全教育を実施する際の参考資料として、厚生労働省の機械安全指針が有用です。

 

厚生労働省「国際規格タイプA、B、Cの主要安全規格」一覧表
現場での実践的な安全規格適用方法については、キーエンスの安全知識サイトが詳細な解説を提供しています。

 

機械安全の国際安全規格体系図解説