ici粘度とは何か・測定方法・建築塗装への活用

ici粘度とは何か・測定方法・建築塗装への活用

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ici粘度とは・測定方法・建築塗装の実務への活用

ICI粘度を「感覚でわかる」と思っていると、塗り替え後に膜厚不足でクレームが来ます。


この記事でわかること:ICI粘度 3つのポイント
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ICI粘度の定義

せん断速度10,000 s⁻¹という「刷毛やローラーが動く瞬間の力」を再現して測定する高せん断粘度のこと。KU値やB型粘度計では測れない領域をカバーします。

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測定に使う機器

ICIコーンプレート粘度計(JIS K 5600-2-3準拠)を使用。約1mlの少量サンプルで1分以内に結果が出ます。単位はポイズ(P)またはPa・sで表示。

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建築塗装への直結影響

ICI粘度が適正でないと、タレ・ゆず肌・ミスト飛散・膜厚不足が現場で起きます。塗料のカタログ値と照合することで品質不良を事前に防ぎます。


ici粘度(ICI粘度)の定義と「ICI」という名前の由来


ICI粘度とは、塗料に対してせん断速度10,000 s⁻¹(秒マイナス1乗)という非常に高い力をかけたときに測定される粘度のことです。一般的に「高せん断粘度」とも呼ばれ、塗料業界では特にICI値という名で定着しています。


「ICI」とは英国の化学・塗料メーカーであるImperial Chemical Industries(インペリアル・ケミカル・インダストリーズ)の略称です。同社がこの測定方法と粘度計を業界に広めたことから、コーンプレート型の高せん断粘度計そのものを「ICI粘度計」、その測定値を「ICI粘度」と呼ぶようになりました。名前の由来を知ると、なぜこれほど塗料業界に特化した概念なのかがわかります。


塗料は「非ニュートン流体」と呼ばれる流体に分類されます。水やアルコールのようなニュートン流体は力を加えても粘度が変わりませんが、塗料は加える力(せん断速度)によって粘度が大きく変化します。つまり「缶の中でじっとしているとき」と「刷毛で勢いよく塗るとき」とで、全く異なる粘度を示します。


これが原則です。そのため、1種類の粘度だけでは塗料の性質を十分に表せません。


| 測定条件 | せん断速度の目安 | 代表的な測定器 |
|--------|-------------|------------|
| 貯蔵・静置時 | 0.01〜0.1 s⁻¹ | B型粘度計(低速)|
| 缶内かき混ぜ・KU測定 | 50〜100 s⁻¹ | ストーマー粘度計 |
| 刷毛・ローラー塗布時 | 9,000〜12,000 s⁻¹ | ICIコーンプレート粘度計 |
| スプレー微粒化時 | 10,000 s⁻¹以上 | 高せん断レオメーター |


刷毛やローラーで塗装する瞬間には、約10,000 s⁻¹に相当するせん断速度が塗料にかかります。ICI粘度はまさにその条件を実験室で再現するための指標です。建築塗装の現場において、ICI粘度を理解することは、仕上がりの品質を左右する根本的な知識となります。


参考:JIS K 5600-2-3「塗料一般試験方法 第3節:粘度(コーン・プレート粘度計法)」の全文はこちら(日本産業規格・公式)
JIS K 5600-2-3:2014 塗料の性状・安定性―粘度(コーン・プレート粘度計法)|kikakurui.com


ici粘度の測定方法:ICIコーンプレート粘度計の仕組みと手順

ICI粘度の測定には「コーンプレート粘度計」を使用します。名前の通り、円錐形(コーン)と平板(プレート)の間に試料をはさんで回転させ、そのときに生じるトルクから粘度を算出する装置です。


コーンの角度は0.5°(または2°)と非常に小さく、この角度によってサンプル全体に均一なせん断速度がかかります。測定に必要な試料量はわずか約1mlです。はがきの切れ端を丸めて少量の塗料を乗せる程度のイメージです。少量で済むため、貴重な試作サンプルの評価にも適しています。


測定の基本手順は以下の通りです。


1. 🌡️ 粘度計のプレートを23.0±0.2℃に温度調整する(JIS規定値)
2. 🧪 試料を均一になるまで撹拌し、気泡を混入させないようにプレートへ約1ml乗せる
3. ⚙️ コーンを所定の位置に降ろして回転(750rpm)を開始する
4. ⏱️ 読みが安定したら記録。不安定な場合は15秒時点の値を採用する
5. 📋 結果をPa·s(パスカル秒)またはmPa·s、ポイズ(P)で記録する


測定誤差は±2%(フルスケール)以内が求められます。同一条件で2回測定した結果が平均値から5%を超えて異なる場合は再測定が必要です。これが条件です。


温度管理が特に重要で、粘度は温度変化に非常に敏感に反応します。基本的に温度が上がると粘度は下がり、気温が下がると粘度は上がります。建築現場で夏と冬とでまったく同じ希釈率の塗料を使うと、ICI粘度は大きく異なる値になります。室温20℃での測定が理想的とされていますが、現場温度がそれと異なる場合は補正が必要になります。


また、測定後のコーンとプレートの清掃も精度に直結します。前の試料が残っていると次の測定値が狂います。適切な溶剤でふき取り、金属製の清掃器具は絶対に使用しないことがルールです。


参考:塗料粘度の測定方法・現場での実践的な管理ポイントについての解説
「塗料粘度」の重要性と測定方法|NCC株式会社


ici粘度・KU値・TI値の違い:建築塗装で使い分けるべき粘度指標

塗料の粘度評価には複数の指標があり、それぞれが異なる現場状況を評価しています。ICI粘度だけを見ていれば良いわけではないのですが、それぞれの役割の違いを理解せずに使うと判断を誤ります。


KU値(クレブス単位) はストーマー粘度計で測定する中せん断領域(約50〜100 s⁻¹)の粘度です。缶内の塗料をかき混ぜたとき・ローラーで塗料を含ませたときの抵抗感を表しており、「缶を開けたときの硬さ」のイメージに近い値です。建築塗装の現場でも広く使われており、カタログに「KU値:90〜110」のように記載されていることがあります。


TI値(チキソトロピーインデックス) はB型粘度計の低回転数と高回転数の粘度比で求める値です。値が大きいほど「静止すると硬くなり、動かすと柔らかくなる」性質が強いことを示します。垂直面への塗装でタレを防ぐためには、TI値が一定以上必要です。


一方、ICI粘度(高せん断粘度) は刷毛・ローラー・スプレーで実際に塗料が基材に接触する瞬間の挙動を表します。この値が適切でないと、どれだけKU値やTI値が正常でも、実際の塗布時に問題が生じます。


| 指標 | 測定器 | せん断速度の目安 | 評価する現象 |
|------|------|-------------|---------|
| KU値 | ストーマー粘度計 | 50〜100 s⁻¹ | 缶内粘度・塗料の含みやすさ |
| TI値 | B型粘度計 | 6rpmと60rpmの比 | タレ防止・貯蔵安定性 |
| ICI粘度 | コーンプレート粘度計 | 9,000〜12,000 s⁻¹ | 刷毛・ローラー時の塗り広げやすさ |


つまり、3つとも必要です。建築塗装では特に刷毛塗り・ローラー塗りが多い外壁仕上げ工程でICI粘度の把握が品質管理の鍵になります。KU値が正常でもICI粘度が高すぎると、刷毛が重く動かしにくくなり塗膜が不均一になります。反対にICI粘度が低すぎると、ローラー回転時に塗料が霧状に飛散(ミスト)して近隣へ付着する汚染トラブルを招くことがあります。


参考:塗料のレオロジー(粘流動性)・各粘度指標についての詳細な学術的解説


ici粘度が建築塗装の仕上がりに直接影響する理由:タレ・ゆず肌・膜厚不足との関係

ICI粘度の管理が不十分なまま施工を進めると、複数の塗装不良が現場で連鎖的に発生します。これは見た目の問題にとどまらず、塗膜性能(耐候性・防水性)の低下にも直結します。


ICI粘度が高すぎる場合(塗料が刷毛やローラーで動かしにくい状態)


塗料を伸ばすのに余分な力が必要になり、塗布量が不均一になります。厚みが出る部分と薄い部分が混在し、薄い箇所では膜厚不足が起きます。一般的な外壁塗装の目標膜厚は60〜100µm(0.06〜0.1mm、人の髪の毛の太さ1本分弱)程度ですが、ICI粘度が高すぎると局所的に30µm以下になることもあります。膜厚不足の部分は耐候性が著しく低下します。


また、高すぎるICI粘度は刷毛目(ハケ跡)が残りやすくなります。塗料が均一に広がらず、刷毛の動いた筋が乾燥後も塗膜に残る「刷毛目残り」が発生します。


ICI粘度が低すぎる場合(塗料がサラサラで伸びすぎる状態)


垂直面ではタレが発生しやすくなります。タレた部分は乾燥後に厚みが偏り、均一な塗膜が形成されません。痛いですね。


さらに、ICI粘度が低い塗料をローラーで塗布すると、ローラーの回転による遠心力で塗料が細かい粒子として飛散する「ミスト」が増加します。このミストが周囲の車・植栽・隣家へ付着するトラブルは、建築現場でのクレームの中でも特に多い種類の一つです。養生をどれほど丁寧に行っても、塗料自体のICI粘度が低すぎる場合はミスト飛散を完全には防げません。


ゆず肌(オレンジピール)との関係


塗料の表面張力とICI粘度の相互作用によって「レベリング性」が決まります。レベリングとは、塗布直後の凹凸が乾燥過程で自然に平滑化する現象のことです。ICI粘度が特定の範囲を外れると、レベリングが十分に進まず、表面がゆずの皮のように細かくデコボコした「ゆず肌」状態になります。外壁仕上げ材などでは美観上の大きな問題となります。


ICI粘度が原則です。タレ・ゆず肌・膜厚不足の多くはICI粘度の管理から始まる品質問題です。使用する塗料のカタログ・技術資料に記載されているICI粘度の推奨値を事前に確認し、施工当日の温度条件に合わせて希釈率を調整する工程が、高品質な施工の前提となります。


参考:建築用塗料における各種塗膜欠陥の発生メカニズムと具体的対策
建築用塗料における塗膜欠陥の種類と対策|engineer-education.com


ici粘度を現場で活かすための実践的な管理ポイントと増粘剤の選び方

ICI粘度の概念を知っていても、現場で活かせなければ意味がありません。建築塗装の実務において、ICI粘度を正しく管理するための具体的なポイントをまとめます。


① 塗料カタログのICI値を必ず事前確認する


塗料メーカーが発行する製品技術資料には、KU値・TI値とともにICI粘度(ICI値)が記載されているケースがあります。単位はmPa·s(ミリパスカル秒)やP(ポイズ)で表示され、例えば「ICI粘度:0.5〜1.5 P(23℃)」のように記載されます。これを確認しておくことで、希釈率の上限が明確になります。塗料ごとの確認が基本です。


② 気温・温度管理を徹底する


現場での粘度管理において最大の変動要因は気温です。一般的に気温が10℃下がると塗料粘度は大幅に上昇し、ICI粘度も高くなります。夏場(30℃超)は逆に低くなります。カタログ値は多くの場合23℃基準で記載されているため、実際の施工温度が大きく異なる場合は塗料メーカーへ問い合わせるか、試し塗りでICI粘度の挙動を確認してから本施工に入ることを推奨します。


③ レオロジー添加剤(増粘剤)の種類を使い分ける


水性塗料にはレオロジーコントロール剤(増粘剤)が配合されており、ICI粘度を調整する役割を担っています。大きく分けると「低せん断増粘剤」「中せん断増粘剤(KUドライバー)」「高せん断増粘剤(ICIドライバー)」の3種類が存在します。特に高せん断領域(ICI粘度)を調整するにはICIドライバーと呼ばれる会合性ポリウレタン増粘剤が有効です。塗料の配合設計段階の話になりますが、建築塗装を専門とする会社が独自調合や特注品を使う場合には、このICIドライバーの配合量がICI粘度の鍵を握ります。


| 増粘剤の種類 | 対応するせん断領域 | 主な役割 |
|-----------|----------------|--------|
| 低せん断増粘剤 | 静置・貯蔵時 | タレ防止・貯蔵安定性 |
| KUドライバー | 中せん断(缶内) | 缶内粘度・作業性 |
| ICIドライバー | 高せん断(刷毛・ローラー) | 塗り広げ性・ミスト制御 |


④ 温度・粘度・仕上がり品質の記録管理


建築現場での品質管理において、施工当日の気温・湿度・希釈率・仕上がり状況を記録に残すことが後のトラブル対応に役立ちます。特に複数人で分担施工する場合、粘度管理のマニュアル化(誰が測定しても同じ結果になる手順の確立)が、塗膜品質のバラつきを防ぎます。記録がなければ原因追跡が困難です。


これは使えそうです。ICIコーンプレート粘度計は研究機関・大手塗料メーカーが所有していることが多く、一般の建築施工会社が自社で保有するケースは多くありません。そのため現場では「塗料メーカーの技術部門に問い合わせてICI粘度を確認した上で希釈率の推奨値をもらう」という実践的な方法が最も現実的です。問い合わせの際は施工気温・使用目的(刷毛/ローラー/スプレー)・下地の種類を事前にまとめておくと、正確な回答が得やすくなります。


参考:会合性ポリウレタン増粘剤(ICIドライバー)の作用原理と各せん断領域への対応について
会合性ポリウレタン増粘剤(ICIドライバー)の解説|BYK(ビックケミー)




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