
一発ベンダー(ロールベンダー)を使用した電線管の寸法出しには、正確な計算式があります。基本となる計算式は以下の通りです。
【実寸法 + アール寸法 - 電線管外径寸法】
この計算式を使って、E19電線管で実寸法1,000mmの場合を例に見てみましょう。
計算結果:1,000 + 95 - 19 = 1,076mm
つまり、1,076mmの電線管が必要となります。この寸法から曲げ加工の始点分190mmを罫書いて曲げ加工を行えば、90°の曲げ加工で実寸法1,000mmとなります。
天井面から壁面への引き下げを行う場合は、さらに計算が必要です。天井面から目標物までの実寸からアール寸法114mmを引いた寸法を加算します。引き下げ寸法が1,000mmの場合。
1,000 - 114 = 886mm
先の1,076 + 886 = 1,962mm
このように複雑な計算も基本式を理解していれば対応可能です。
実務では迅速な作業が求められるため、電線管の外径寸法の約10倍で計算する簡易方法が広く使われています。以下に主要な電線管サイズの一覧を示します。
電線管サイズ | 外径寸法 | 90°曲げ必要長 | アール寸法 |
---|---|---|---|
E19 | 19.1mm | 191mm | 95mm |
E25 | 25.4mm | 254mm | 127mm |
E31 | 31.8mm | 318mm | 159mm |
E39 | 39.0mm | 390mm | 195mm |
E51 | 51.0mm | 510mm | 255mm |
この一覧表は現場での即座の判断に役立ちます。例えば、E25電線管を使用する場合、25.4mmの約10倍である250mmと覚えておけば、計算ミスを防げます。
さらに詳細な寸法については、電気用品の技術基準を定める省令の解釈文書に規定されています。この文書には、ボックスの寸法、ティの寸法、クロスの寸法、カップリングの寸法、ノーマルベンドの寸法など、電気工事に必要な全ての部材の標準寸法が記載されています。
現場での効率的な寸法出しには、経験に基づいたコツがあります。多くの熟練電気工事士が「経験」や「勘」と表現する技術の裏には、実は簡単な計算方法が隠されています。
🔧 実務で使える時短テクニック
📏 精度向上のポイント
一発ベンダーの最大の特徴は、誰でも簡単に同じアールの曲げ加工ができることです。ベンダーヘッド自体がアールになっているため、パイプをセットして力任せに曲げても失敗することはほぼありません。
この特性を活かすためには。
内線規定の「3110-8 管の屈曲」にも適合した曲げ加工を行うことで、公共事業の現場でも問題なく使用できます。
電線管の曲げ加工には、一発ベンダー以外にもハイヒッキーという工具があります。両者の寸法精度と使用特性を比較することで、適切な工具選択が可能になります。
一発ベンダー(ロールベンダー)の特徴
ハイヒッキーの特徴
寸法精度の比較
項目 | 一発ベンダー | ハイヒッキー |
---|---|---|
再現性 | 高い | 作業者依存 |
学習コスト | 低い | 高い |
作業速度 | 速い | やや遅い |
複雑加工 | 限定的 | 対応可能 |
現場での使い分けとしては、標準的な90°曲げ加工には一発ベンダーを、特殊な角度や複雑な形状にはハイヒッキーを使用するのが効率的です。
寸法ミスは工期遅延や材料費の無駄につながるため、事前のチェックが重要です11。以下のチェックポイントを実践することで、寸法ミスを大幅に削減できます。
📋 事前確認チェックリスト
✅ 使用する電線管のサイズと外径寸法の確認
✅ 図面での実寸法の正確な読み取り
✅ 支持金具や付属部材の寸法考慮
✅ 曲げ加工後の最終仕上がり寸法の計算
✅ 内線規定への適合性確認
🔍 作業中の確認ポイント
⚠️ よくある寸法ミスとその対策
対策:電線管外径×10倍法の徹底
対策:施工図での事前確認
対策:天井面からの実測と計算の照合
対策:材料受け取り時のサイズ確認
これらのチェックポイントを標準作業手順として定着させることで、一発ベンダーを使った寸法出しの精度が大幅に向上します。特に新人作業者への教育においては、これらの基本的なチェック項目を確実に身につけさせることが重要です。
一発ベンダーの基本的な使用方法を習得した後は、より高度な応用テクニックを身につけることで、複雑な配管工事にも対応できるようになります。
🏗️ 複数箇所曲げ加工の寸法計算
S字加工など、複数箇所での曲げ加工が必要な場合、各曲げ点での寸法を個別に計算し、全体の寸法整合性を確認する必要があります。
📐 特殊配管における寸法調整
建築構造の制約により、標準的な配管ルートが取れない場合の対応方法。
💡 現場での実践事例
実際の建設現場では、図面通りの施工が困難な場合があります。そのような状況での一発ベンダー活用事例。
天井懐が図面より狭い場合、曲げ半径を小さくして対応。一発ベンダーの特性を活かし、複数回の小角度曲げで対応。
既設配管を避けるため、予定ルートを変更。寸法の再計算により、材料の無駄を最小限に抑制。
作業空間が限られた場所での配管作業。一発ベンダーの機動性を活かし、分割施工による効率化を実現。
これらの応用テクニックと実践事例を参考に、現場での様々な状況に対応できる技術を身につけることで、一発ベンダーを使った寸法出しの専門性をさらに高めることができます。継続的な技術向上により、より複雑で高精度な電気工事を効率的に実施できるようになります。