次亜塩素酸カルシウムの化学式と性質、危険性と安全な用途

次亜塩素酸カルシウムの化学式と性質、危険性と安全な用途

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次亜塩素酸カルシウムの化学式

次亜塩素酸カルシウムのすべて
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化学式と基本特性

化学式Ca(ClO)₂。白色の固体で強い酸化作用を持つ、不安定な物質です。

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危険性と安全対策

酸との反応で有毒ガス発生。火災・爆発の危険も。適切な保護具と保管が不可欠。

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現場での活用法

現場の消毒、カビ防止からコンクリート混和水の水質改善まで、用途は多岐にわたります。

次亜塩素酸カルシウムの化学式Ca(ClO)₂の基本性質と反応

 

次亜塩素酸カルシウムは、一般的に「さらし粉」や「カルキ」とも呼ばれ、その化学式は Ca(ClO)₂ と表されます 。純粋なものは無色の粉末ですが、市販されている製品は、製造過程に由来する水酸化カルシウム Ca(OH)₂ などを不純物として含むため、白色から灰白色の固体(粉末や顆粒状)をしています 。
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この物質の最も重要な性質の一つは、強力な酸化作用を持つことです。この酸化力が、細菌の細胞膜やウイルスを破壊する殺菌・消毒作用の源となっています 。水に溶けると、次亜塩素酸(HClO)と次亜塩素酸イオン(ClO⁻)を生成し、この次亜塩素酸が特に強い殺菌力を発揮します。
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性質を理解する上で欠かせないのが、その不安定さです。次亜塩素酸カルシウムは熱に対して非常に敏感で、常温では比較的安定していますが、150℃以上に加熱されると急激に分解し、酸素を放出して爆発的に反応することがあります 。また、光(特に紫外線)や湿気によっても徐々に分解が進行します。
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最も注意すべき反応は、酸との接触です。塩酸などの強酸と反応すると、極めて有毒な塩素ガス(Cl₂)を発生させます 。化学反応式は以下の通りです。
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Ca(ClO)₂ + 4HCl → CaCl₂ + 2H₂O + 2Cl₂

この反応は非常に危険であり、建設現場などで酸性の洗浄剤と絶対に混ざらないように管理しなければなりません。誤って吸入すると、呼吸器系に深刻なダメージを与え、命に関わる危険があります 。
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さらに、有機物やアンモニア化合物、金属粉などとも激しく反応し、火災や爆発を引き起こす可能性があるため、保管や取り扱いには細心の注意が必要です 。
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こちらの資料では、化学物質としての基本情報がまとめられています。
職場のあんぜんサイト:次亜塩素酸カルシウム

次亜塩素酸カルシウムの危険性と建設現場での安全な取り扱い

次亜塩素酸カルシウムは、その強力な効果の裏返しとして、多くの危険性をはらんでいます。建設現場のように、様々な物質や機材が混在する環境では、特に厳重な安全管理が求められます。主な危険性と、遵守すべき取り扱い方法を具体的に解説します。
主な危険性 ☠️

  • 火災・爆発の危険: 強力な酸化性物質であるため、木くず、紙、布、油類などの可燃物と接触すると、火災を引き起こすおそれがあります 。また、熱、摩擦、衝撃によっても分解し、発火源となり得ます。
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  • 有毒ガスの発生: 前述の通り、酸性の液体(トイレ用洗剤など)と混合すると、猛毒の塩素ガスが発生します。絶対に混ぜてはいけません。
  • 人体への影響:

    • 皮膚・眼: 溶液や粉末が直接触れると、重篤な化学熱傷(薬傷)を引き起こします 。特に眼に入った場合は失明の危険もあります。
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    • 吸入: 粉じんを吸入すると、鼻、喉、気管支を激しく刺激し、肺水腫など生命に関わる重篤な症状を引き起こす可能性があります 。
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    • 経口摂取: 誤って飲み込むと、口内、食道、胃の粘膜がただれ、非常に危険な状態に陥ります 。
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  • 自己反応性: 密閉された容器内で温度が上昇すると、分解が暴走的に進み、容器が破裂する危険があります 。
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建設現場での安全な取り扱い方法 👷

  1. 保護具の着用: 取り扱う際は、必ず保護メガネ、耐薬品性の保護手袋、長袖の作業着、必要に応じて防じんマスクや呼吸用保護具を着用してください 。
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  3. 適切な保管:

    • 直射日光を避け、熱源や火気のない、涼しく乾燥した換気の良い場所に保管します。
    • 可燃物、酸、有機物、金属粉などとは必ず離れた場所に隔離して保管してください。
    • 容器は必ず密閉し、施錠して関係者以外が触れないように管理します 。
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  4. 使用時の注意:

    • 水に溶かす際は、必ず大量の水に少量ずつ投入し、ゆっくりと攪拌します。一度に大量に投入すると、急激な反応や温度上昇を招くことがあります 。
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    • 風通しの良い屋外や、強制換気設備のある場所で使用します。
    • 使用後は、手や顔を十分に洗浄してください。

  5. 緊急時の備え: 漏洩や火災に備え、近くに消火用の水や砂などを準備しておきます。また、眼に入った場合に備え、すぐに洗浄できる水道設備(洗眼器など)の場所を確認しておくことが重要です。

厚生労働省が公開しているGHS対応モデルラベルには、危険有害性情報や安全対策が具体的に示されており、取り扱い前の必読資料です。
GHS対応モデルラベル:次亜塩素酸カルシウム

次亜塩素酸カルシウムの消毒・殺菌用途と建築分野での活用法

次亜塩素酸カルシウムの最も広く知られた用途は、その強力な殺菌・消毒能力を活かしたものです。プールや公衆浴場の水質管理、水道水の消毒、食品工場の衛生管理など、様々な場面で微生物の繁殖を防ぐために使用されています 。細菌、ウイルス、真菌(カビ)など、広範囲の微生物に対して高い効果を発揮するのが特徴です 。
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一見、建築業界とは縁遠いように思えるかもしれませんが、その特性を理解することで、建設現場の衛生管理や品質管理において、意外な形で有効活用することが可能です。
✨ 建築分野での具体的な活用アイデア ✨

  • 仮設トイレや休憩所の衛生管理: 現場に設置される仮設トイレの消毒や、休憩所の清掃時に使用することで、感染症のリスクを低減し、労働環境を衛生的に保ちます。
  • コンクリート打設前の型枠内のカビ防止: 特に湿潤な環境や梅雨の時期など、木製型枠の内部にカビが発生することがあります。打設前に低濃度の溶液を塗布または噴霧することで、コンクリート表面へのカビの付着を防ぎ、品質を維持します。(※後述のコンクリートへの影響を考慮し、濃度管理と適切な養生が前提です)
  • 地下室や床下の防カビ・防藻処理: 改修工事などで、既存のコンクリート面にカビや藻が発生している場合、洗浄後の仕上げとして使用することで、再発を抑制する効果が期待できます。
  • 現場で使用する水の殺菌処理: 山間部や水源が確保しづらい現場で、河川水や貯水槽の水をコンクリートの練り混ぜ水や洗浄用水として使用する場合、次亜塩素酸カルシウムで処理することで水質を安定させることができます。
  • 災害時の緊急用消毒剤として: 地震や水害などの災害発生時、断水した地域の井戸水や貯留水の緊急的な消毒に役立ちます。事業継続計画(BCP)の一環として備蓄しておくことも有効です。

これらの用途は、医療や食品分野での活用事例からヒントを得たものです 。ただし、建築資材への影響も考慮する必要があるため、使用する際は対象物の材質を確認し、低濃度から試すなどの注意が不可欠です。
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次亜塩素酸カルシウムと次亜塩素酸ナトリウムの性質・用途の違い

消毒剤としてよく比較されるのが、「次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)」です。家庭用の塩素系漂白剤の主成分としても知られ、液体で供給されることが一般的です。名前は似ていますが、性質や取り扱い方法、適した用途が異なります。現場の状況に応じて適切に使い分けるために、その違いを正確に理解しておくことが重要です。
以下に、両者の主な違いをまとめました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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項目 次亜塩素酸カルシウム 次亜塩素酸ナトリウム
化学式 Ca(ClO)₂ NaClO
形状 固体(白色の粉末・顆粒) 液体(淡黄色の水溶液)
安定性 比較的安定しており、長期保管に向いている 不安定で、紫外線や熱で分解しやすい。長期保管には不向き 。
pH 水に溶かすと弱アルカリ性を示す。 強アルカリ性を示す。皮膚への刺激がより強い。
取り扱い 固体の計量が必要。粉じんの吸入に注意が必要。 液体のため希釈が容易で、ポンプでの自動注入などに適している 。
溶解性 水に溶けるが、不純物(水酸化カルシウム等)が沈殿することがある。 水に完全に溶解する。
主な用途 プールのショック処理、粉末のまま使用する場面、長期備蓄用。 水道水の消毒、食品工場のライン洗浄、家庭用漂白剤 。

使い分けのポイント

長期間の備蓄や、電源がない場所での使用、粉末のまま散布したい場合などは、安定性の高い次亜塩素酸カルシウムが有利です。一方、水道水のように連続的に一定濃度で注入する場合や、正確な濃度管理が求められる場面では、希釈が容易な次亜塩素酸ナトリウムの方が管理しやすいと言えるでしょう 。
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次亜塩素酸カルシウムがコンクリートや金属に与える長期的影響

次亜塩素酸カルシウムは便利な消毒剤ですが、建築材料であるコンクリートや金属に対して、長期的には劣化を促進する要因となり得るため、その影響を理解しておくことは極めて重要です。特に、構造物の耐久性に関わる部分への使用には注意が必要です。
金属への影響:腐食の促進
次亜塩素酸カルシウムは強力な酸化剤であり、金属の酸化、すなわち腐食(サビ)を著しく促進します。鉄、アルミニウム、ステンレス鋼でさえも、高濃度の次亜塩素酸塩に長期間さらされると腐食する可能性があります 。
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  • 鉄筋: 溶液がコンクリートのひび割れなどから内部の鉄筋に到達すると、鉄筋の腐食を急速に進行させ、コンクリートの爆裂(かぶりコンクリートが剥がれ落ちる現象)を引き起こす原因となります。
  • 金属製の配管・設備: 溶液が直接触れる金属製の配管やサッシ、金物などは腐食のリスクに常にさらされます。使用後は速やかに真水で十分に洗浄し、薬剤が残留しないようにすることが不可欠です。

コンクリートへの影響:塩素イオンの浸透
コンクリート自体は強アルカリ性のため、ある程度の耐薬品性を持っています。しかし、次亜塩素酸カルシウムに含まれる「塩素イオン(Cl⁻)」が、長期的にはコンクリート構造にとって大きな脅威となります。

  1. 中性化の促進と不動態被膜の破壊: コンクリート中の鉄筋は、セメントの強アルカリ性によって表面に「不動態被膜」という薄い保護膜を形成し、錆から守られています。しかし、外部から塩素イオンが浸透すると、この不動態被膜が破壊されてしまいます 。
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  3. 鉄筋腐食の誘発: 不動態被膜が破壊された鉄筋は、水分と酸素があれば容易に腐食を開始します。腐食によって生成される錆は、元の鉄の体積の数倍に膨張するため、その圧力で周囲のコンクリートを内側から破壊し、ひび割れや剥離を引き起こします。
  4. 材質の劣化: 塩素イオンは、コンクリートのセメント水和物の一部と反応し、コンクリートの組織を脆弱化させる可能性も指摘されています 。これにより、コンクリートの強度や水密性が低下する恐れがあります。
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したがって、構造体コンクリートに次亜塩素酸カルシウムを直接、繰り返し使用することは、構造物の寿命を縮めるリスクを伴います。特に、塩害が問題となる沿岸部の構造物と同様の劣化メカニズムを促進してしまうため、使用は表面的なカビ取りなどに限定し、構造体内部に浸透しないように注意深く適用する必要があります。
コンクリート中の鉄筋腐食における塩素イオンの影響については、専門的な研究報告で詳しく解説されています。
コンクリート構造物における鉄筋腐食と塩害に関する研究

 

 


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