住宅の品質確保の促進等に関する法律住宅性能表示制度とは評価項目メリット

住宅の品質確保の促進等に関する法律住宅性能表示制度とは評価項目メリット

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住宅の品質確保の促進等に関する法律と住宅性能表示制度

住宅性能表示制度の3つの柱
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瑕疵担保責任10年義務化

新築住宅の基本構造部分について、引渡しから10年間の瑕疵担保責任を義務付け

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住宅性能表示制度

住宅の性能を等級や数値でわかりやすく表示し、消費者が比較検討できる仕組み

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住宅紛争処理機関の整備

トラブル発生時に専門家が迅速に解決する体制を全国52の弁護士会に設置

住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)は、平成12年4月1日に施行された法律で、良質な住宅を安心して取得できる市場を形成することを目的としています。この法律は3本の柱で構成されており、その中核となるのが住宅性能表示制度です。
参考)住宅性能表示制度とは

品確法が制定された背景には、住宅の品質や性能を消費者が判断することが困難であったという課題があります。住宅は外観や簡単な間取図だけでは判断しにくい性能項目が多く、専門知識を持たない消費者にとって適切な住宅選びが難しい状況でした。
参考)[品確法] 住宅性能表示制度

住宅性能表示制度は任意の制度であり、希望する方であれば誰でも申請することができます。この制度により、住宅の性能(構造耐力、省エネルギー性、遮音性等)に関する表示の適正化を図るための共通ルールが設けられ、消費者による住宅の性能の相互比較が可能になりました。
参考)住宅性能表示制度

国土交通大臣は、住宅の評価を客観的に実施する第三者機関を「登録住宅性能評価機関」として登録しており、これらの機関が評価方法基準に従って住宅の性能評価を行います。評価結果は「住宅性能評価書」として交付され、設計段階の「設計住宅性能評価書」と、施工・完成段階の「建設住宅性能評価書」の2種類があります。
参考)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001586565.pdf

住宅の品質確保の促進等に関する法律における瑕疵担保責任10年義務化の詳細

品確法の第一の柱である瑕疵担保責任の10年義務化は、建築事業者にとって極めて重要な規定です。この制度により、新築住宅の構造耐力上主要な部分や雨水の侵入を防止する部分として政令で定めるもの(構造耐力上主要な部分等)について、工事請負人は完成した住宅を引き渡してから10年間は瑕疵担保責任を負うことが義務付けられています。
参考)新築住宅でも瑕疵担保責任期間の10年でホームインスペクション…

構造耐力上主要な部分等には、基礎、壁、柱、床版、屋根版などの構造躯体と、屋根や外壁などの雨水の侵入を防止する部分が含まれます。これらの部分に瑕疵があった場合、引渡しから10年以内であれば、注文者は請負人に対して修補や損害賠償を請求することができます。
参考)新築住宅の瑕疵担保責任は10年間? 品確法について弁護士が解…

特に重要なのは、この10年間の瑕疵担保責任に反する特約で注文者に不利なものは無効とされる点です。例えば、特約で瑕疵担保責任を引渡しから2年とする契約を結んでも、構造耐力上主要な部分等については無効となり、10年間の責任を負うことになります。​
建築事業者は、この10年間の瑕疵担保責任に備えて、住宅瑕疵担保責任保険への加入や保証金の供託が義務付けられています。万が一、引渡しから10年以内に重大な瑕疵が発見された場合、その影響は建物の耐久性や耐震性に著しい影響を与える可能性があるため、施工段階での品質管理が極めて重要です。
参考)住宅紛争審査会(住宅紛争処理機関)|住宅瑕疵担保責任保険協会

あまり知られていない点として、瑕疵担保責任の期間は引渡しから10年ですが、瑕疵があることを知ってから1年以内にその旨を請負人に通知する必要があるという点があります。つまり、引渡しから9年11ヶ月後に瑕疵を発見した場合、発見から1年以内に通知すれば、引渡しから10年を超えても請求が可能となります。​

住宅性能表示制度の10分野33項目の評価基準と必須項目

新築住宅における住宅性能表示制度では、10分野33項目について評価基準が設定されています。このうち、「構造の安定」「劣化の軽減」「維持管理・更新への配慮」「温熱環境・エネルギー消費量」の4分野10項目は必須項目として定められており、必ず評価を受ける必要があります。
参考)住宅性能表示制度とは?新築住宅における10の評価項目と基準を…

必須項目が設定された理由は、これらが住宅取得者の関心が高く、かつ建設後では調査しにくい項目であるためです。建築事業者は、これらの必須項目について確実に基準を満たす必要があります。
参考)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001586568.pdf

10分野の評価内容は以下の通りです:
参考)【2023年版】住宅性能評価の項目・等級について専門家が徹底…

評価分野 主な評価基準 必須/選択
構造の安定 耐震性、地盤、基礎の構造、地震・防風・積雪対策 必須
火災時の安全 耐火性、警報機器の設置、延焼防止への対策 選択
劣化の軽減 建物の耐久性、木材の腐朽やシロアリ被害の軽減 必須
維持管理・更新への配慮 給排水・ガスなどの配管の点検・清掃・補修のしやすさ 必須
温熱環境・エネルギー消費量 断熱性、気密性、建物の省エネルギー性能 必須
空気環境 化学物質への対策、使用する建材や換気方法 選択
光・視環境 開口率、方位別開口比、良好な日照・通風・眺望 選択
音環境 床衝撃音、外部騒音に対する対策 選択
高齢者等への配慮 バリアフリー性、介護のしやすさ 選択
防犯 バルコニーや窓などへの侵入防止対策 選択

各評価分野は等級や数値で表示され、等級は数字が大きいほど性能が高いことを示します。建築事業者は、顧客のニーズに応じて選択項目についても評価を受けることで、住宅の付加価値を高めることができます。
参考)住宅性能表示制度:ご検討中のみな様へ|株式会社アーネストワン

特に注目すべき点として、2023年の制度改正により、必須評価項目が4分野10項目に変更されました。これにより、省エネルギー性能が必須項目に追加され、建築事業者は温熱環境とエネルギー消費量について必ず評価を受ける必要があります。
参考)「住宅性能表示制度」7項目最高等級を取得|株式会社飯田産業

住宅性能表示制度における耐震等級と省エネ等級の実務的理解

建築事業者にとって最も重要な評価項目の一つが耐震等級です。耐震等級は1から3まであり、等級1は建築基準法レベルの耐震性能(数百年に一度発生する地震に対して倒壊・崩壊しない程度)を示します。
参考)住宅性能表示制度とは?等級の意味と評価基準をわかりやすく解説…

耐震等級2は、等級1で耐えられる地震力の1.25倍の力に対して倒壊や崩壊等しない程度を示しており、等級3では1.5倍の力に耐えることができます。等級3は住宅性能表示制度で定められた耐震性の中でも最も高いレベルであり、消防署や警察署など防災の拠点となる建物の基準に相当します。
参考)地震などに対する強さ(構造の安定)

実務上、耐震等級3を取得するためには、壁量計算、床倍率のチェック、接合部のチェック、基礎のチェックなど、詳細な構造計算が必要です。建築事業者は、設計段階からこれらの基準を満たすよう計画する必要があります。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/ac8cce12ed594486e4b45c84fffe043aee9752de

あまり知られていない実務的なポイントとして、耐震等級には「構造躯体の倒壊等防止」と「構造躯体の損傷防止」の2つの評価項目があります。前者は大地震時の倒壊に対する性能、後者は中規模地震時の損傷に対する性能を評価するもので、両方とも等級3を取得することで、より高い信頼性を示すことができます。​
省エネ等級については、2023年の制度改正により、一次エネルギー消費量等級が最高等級6まで拡充されました。等級6は、一次エネルギー消費量が基準値から20%以上削減されたレベルであり、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)水準に相当します。
参考)ご存知ですか?住まいの「等級」。今、住宅性能が注目される理由…

建築事業者が注目すべき点として、2025年4月から建築物省エネ法の改正により、新築住宅について省エネ基準への適合が義務化されています。設計住宅性能評価を取得した住宅は、必要図書の代わりに設計住宅性能評価書を提出することで、省エネ基準適合判定を省略または合理化できるという実務上のメリットがあります。
参考)設計住宅性能評価とは?建設住宅性能評価との違いや取得するメリ…

温熱環境については、断熱等性能等級も評価されます。断熱等性能等級は外皮(外壁、窓など)の断熱性能を評価するもので、現在は等級1から7まで設定されています。等級が高いほど冷暖房のエネルギー消費を抑えることができ、快適な室内環境を実現できます。​

登録住宅性能評価機関への申請手順と費用の実態

住宅性能評価を受けるためには、国土交通大臣が登録した「登録住宅性能評価機関」に申請する必要があります。全国には100以上の登録住宅性能評価機関があり、建築事業者は地域や専門性に応じて適切な機関を選択できます。
参考)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001594049.pdf

一般社団法人住宅性能評価・表示協会のウェブサイトでは、登録住宅性能評価機関を検索することができます。​
登録住宅性能評価機関検索ページ
申請には設計段階と建設段階の2段階があります。まず、設計図書を基に設計住宅性能評価の申請を行い、評価機関による審査を経て「設計住宅性能評価書」が交付されます。その後、工事が進む中で、評価機関による現場検査が実施され、完成後に「建設住宅性能評価書」が交付されます。
参考)住宅性能評価書とは? 評価を受けるメリットと住宅性能表示制度…

建設住宅性能評価では、基本的に4回の検査対象工程が標準とされています。これには基礎配筋検査、躯体検査、中間検査、完了検査などが含まれます。4回を超える検査が必要な場合は、1回の検査につき追加料金が発生します。
参考)住宅性能評価(料金表)

評価にかかる費用は、評価機関ごとに独自に定められています。一般的な戸建住宅の場合、設計住宅性能評価書の費用は10~20万円程度、建設住宅性能評価書を含めた全体では15~30万円程度が相場です。
参考)【2023年最新】住宅性能評価で必要な費用・料金を専門家が徹…

具体的な料金例として、200㎡未満の木造戸建住宅の場合、設計住宅性能評価が44,000円(税込)、建設住宅性能評価が追加で必要となる機関もあります。200㎡以上または併用住宅の場合は、設計住宅性能評価が66,000円(税込)となります。​
あまり知られていない実務的なポイントとして、長期優良住宅の認定を同時に申請する場合、長期使用構造等確認の料金が別途必要になります。200㎡未満の場合で68,200円(税込)、200㎡以上または併用住宅の場合で90,200円(税込)が標準的な料金です。​
また、電子申請を利用することで、手続きの効率化や一部費用の削減が可能な場合があります。評価書を紙面で交付してもらう場合は、1住戸当たり2,000円(税込2,200円)の追加費用が発生することもあります。
参考)新築住宅 性能評価料金

再検査(是正確認等)が必要になった場合は、別途費用が発生するため、初回の検査で合格できるよう、施工管理を徹底することが重要です。​

住宅紛争処理機関を活用した建築トラブル解決の仕組み

品確法の第三の柱である住宅紛争処理機関は、建築事業者にとって重要なリスク管理の仕組みです。住宅紛争審査会は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づき、全国52の弁護士会に設置された民間型の裁判外紛争処理機関(ADR)です。
参考)住宅紛争審査会による住宅紛争の解決に向けた手続|住まいるダイ…

この制度を利用できるのは、建設住宅性能評価書が交付された住宅、住宅瑕疵担保責任保険または住宅瑕疵担保責任任意保険を付した住宅についてです。つまり、建築事業者が住宅性能評価を取得した住宅を供給することで、顧客は万が一のトラブル時にこの制度を利用できるようになります。​
住宅紛争審査会の大きな特徴は、弁護士と建築士など、住宅についての紛争に関する専門家が紛争処理委員となって、公平で専門的な判断を行う点です。法律と建築技術の両面から専門的な知見を活用することで、適切な解決が図られます。​
裁判と比較した住宅紛争処理手続のメリットは以下の通りです:​
📋 専門家の関与: 弁護士や建築士など、住宅についての紛争に関する専門家による、公平で専門的な判断が得られます​
🔒 手続の非公開: 解決までの過程は非公開で行われるため、プライバシーや企業秘密が守られます​
迅速な解決: 裁判に比べ簡易な手続で当事者の合意に従い進められることや、専門家の知識を活用することで、迅速な解決を図れます​
💰 低コスト: 申請手数料は1万円(消費税非課税)のみで、原則として現地調査費などその他の費用はかかりません​
あまり知られていない重要な点として、住宅紛争審査会では、あっせん、調停、仲裁の3つの手続が用意されています。あっせんは当事者間の話し合いを促進する手続、調停は専門家が調停案を提示する手続、仲裁は専門家の判断に従うことを事前に合意する手続です。​
建築事業者にとって、この制度の存在は顧客への安心材料となる一方、万が一紛争が発生した場合には専門家による公正な判断を受けることになるため、施工段階での品質管理と記録の保存が極めて重要です。​
また、住宅リフォーム・紛争処理支援センターが指定住宅紛争処理機関をバックアップしており、住宅事業者や住宅取得者から相談を受けたり助言を行ったりしています。建築事業者は、トラブルの予防や初期対応について、この支援センターを活用することもできます。​
住宅紛争審査会による紛争処理手続きの詳細(公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター)

建築事業者が住宅性能表示制度を活用する独自の戦略的メリット

住宅性能表示制度は、建築事業者にとって単なる評価制度ではなく、事業戦略上の重要なツールとなります。第三者機関による評価結果を示すことで、自社の技術力や提案内容を具体的な数値で証明できるため、営業活動において大きなアドバンテージとなります。
参考)住宅性能表示とは?制度のメリットから評価項目までわかりやすく…

差別化戦略としての活用: 住宅市場において、性能が数値で明確に示されることで、他社との差別化が容易になります。特に、耐震等級3や一次エネルギー消費量等級6など、最高等級を複数取得することで、高品質住宅の供給者としてのブランドイメージを確立できます。​
顧客とのコミュニケーション円滑化: 住宅性能が等級という形で可視化されることで、建築主との認識のずれを防ぎ、安心して工事を進められます。専門用語を使わずとも、性能の高さを伝えることができるため、顧客満足度の向上につながります。​
金融機関との連携強化: 住宅性能評価書を取得した住宅は、多くの金融機関で住宅ローンの金利優遇を受けることができます。これは顧客にとって大きなメリットであり、建築事業者にとっては成約率向上につながります。一般的に、フラット35Sの金利Aプランなど、年0.25%程度の金利引き下げが適用されることが多く、顧客の総返済額が大幅に削減されます。
参考)住宅性能表示制度とは?仕組みとポイントを解説|暮らしのコラム…

保険料削減による付加価値: 耐震等級2以上を取得した住宅は、地震保険料の割引を受けることができます。耐震等級3の場合、地震保険料が50%割引となるため、顧客にとって長期的なコストメリットが大きくなります。​
将来の資産価値向上: 住宅性能評価書を取得した住宅は、将来売却する際にも評価が高く、想定より高い価格で売却しやすいという特徴があります。これは顧客への大きな訴求ポイントとなります。​
あまり知られていない戦略的メリットとして、住宅性能表示制度の評価書を取得することで、設計住宅性能評価書の記載事項が契約内容とみなされる点があります。これにより、トラブルを未然に防ぐことができ、また万が一紛争が発生した場合でも、評価書が契約内容の証拠となるため、事業者側のリスクも軽減されます。​
また、2025年の建築物省エネ法改正により、省エネ基準適合が義務化されたことで、設計住宅性能評価を取得することで省エネ基準適合判定の手続きが合理化されるという実務上のメリットもあります。審査期間の短縮や手続きの簡素化により、工程管理の効率化が図れます。​
さらに、長期優良住宅の認定を受ける際にも、住宅性能評価書があることで手続きが円滑になります。長期優良住宅は税制優遇や補助金の対象となることが多いため、顧客への提案力が強化されます。
参考)★住宅性能表示?混同されやすい新築住宅の性能を表す用語とは?…

建築事業者にとって重要なのは、住宅性能表示制度を単なるコストではなく、顧客満足度向上、営業力強化、リスク管理、業務効率化など、多面的なメリットをもたらす投資として捉えることです。特に、地域で高品質住宅の供給者としてのポジションを確立したい事業者にとって、この制度の戦略的活用は不可欠といえるでしょう。​