角パイプの規格から材質まで建築事業者向け完全ガイド

角パイプの規格から材質まで建築事業者向け完全ガイド

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角パイプの規格を完全理解

角パイプ規格の基礎知識
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JIS G 3466規格

構造用角形鋼管の標準規格で品質と寸法を統一

STKR材質分類

STKR400とSTKR490の強度別グレード体系

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多様な寸法展開

9×9mmから150×150mmまでの豊富なサイズ規格

角パイプのJIS規格とSTKR分類体系

角パイプの規格は日本工業規格のJIS G 3466「構造用角形鋼管」で定められており、STKRは「Steel Tube K Rectangular」の略称です。この規格により、建築現場で使用される角パイプの品質と寸法が統一され、安全で信頼性の高い構造物の建設が可能になっています。
STKRには主に2つの強度グレードが存在します。

  • STKR400:引張強度400 MPa以上の標準グレード
  • STKR490:引張強度490 MPa以上の高強度グレード

STKR400は一般的な建築構造物に幅広く使用されており、常時製造されているため入手性に優れています。一方、STKR490は高い荷重を受ける重要構造部材に使用されますが、事前相談が必要な場合があります。
寸法許容差については、辺の長さが100mm以下の場合は±1.5mm、100mmを超える場合は±1.5%と規定されており、精密な施工管理が求められる建築工事において重要な基準となっています。

角パイプの正方形・長方形サイズ規格詳細

角パイプの規格寸法は正方形と長方形に大別され、それぞれ用途に応じた豊富なサイズが用意されています。
正方形断面の主要規格

  • 小型:9×9mm~30×30mm(軽量フレーム・装飾用途)
  • 中型:40×40mm~75×75mm(一般構造物・設備フレーム)
  • 大型:80×80mm~150×150mm(重量物支持・主構造材)

長方形断面の代表例

  • 60×30mm、75×45mm(軽量構造向け)
  • 100×50mm、125×75mm(中荷重構造向け)
  • 150×100mm以上(重量構造向け)

肉厚は1.0mmから12.0mmまで段階的に設定されており、構造計算に基づいて適切な肉厚を選定することが重要です。特に50×50mmサイズは汎用性が高く、肉厚1.6mm~6mmまで選択できるため、多様な建築用途に対応可能です。
標準長さは6,000mm~12,000mmが一般的ですが、特注により異なる長さでの製造も可能で、現場の施工効率向上に貢献しています。

角パイプの材質特性とSTKMRとの違い

角パイプには主にSTKRとSTKMRの2つの材質区分があり、製造方法と表面処理に違いがあります。
STKR(Steel Tube K Rectangular)

  • 製造方法:ホットコイルを使用した溶接管
  • 表面処理:黒皮(酸化被膜付き)
  • 対象サイズ:主に50角以上の中大型サイズ
  • 用途:一般構造物、設備フレーム

STKMR(Steel Tube K Mechanical Rectangular)

  • 製造方法:冷延コイル・酸洗コイルを使用
  • 表面処理:酸洗(表面の酸化被膜除去済み)
  • 対象サイズ:主に45角以下の小型サイズ
  • 肉厚範囲:0.8mm~2.0mmの薄肉仕様

STKMRは酸洗処理により表面が清浄で、溶接性や塗装性に優れているため、精密機械部品や軽量構造物に適しています。一方、STKRは黒皮付きで経済性に優れ、大型構造物の骨組み材として広く使用されています。

 

この材質の違いを理解することで、コストと性能のバランスを考慮した最適な材料選定が可能になります。

 

角パイプの寸法許容差と品質管理規格

建築工事において角パイプの寸法精度は構造物の品質に直結するため、JIS規格では厳格な許容差が定められています。
辺の長さ許容差

  • 100mm以下:±1.5mm
  • 100mm超:±1.5%(最大±3mm)
  • Uコラム:±1.5%(最大±3mm)

その他の重要な許容差規定

  • 各辺平板部分の凸凹:辺の長さ100mm以下で0.5mm以下
  • 隣接平板部分の角度:±1.5度
  • 長さ:+規定なし、-0mm
  • 曲がり:全長の0.3%以下(角パイプ)、0.1%以下(Uコラム)

肉厚許容差
JIS規格では肉厚に対して±10%の許容差が認められており、この範囲内での変動は正常な製品として扱われます。
角部寸法(R)については、標準で2.0t(tは肉厚)として計算されており、構造計算時にはこの値を考慮する必要があります。
これらの許容差規定により、建築現場での精密な組み立て作業が可能になり、構造物の安全性と品質が確保されています。

 

角パイプの独自加工技術と表面処理選択法

現代の角パイプ製造では、従来の規格を超えた独自の加工技術と表面処理が開発されており、建築事業者の多様なニーズに対応しています。

 

革新的な製造技術

  • レーザー溶接による高精度接合
  • 冷間成形による残留応力最小化
  • インライン熱処理による機械的性質均一化

特殊表面処理の選択肢

  • 亜鉛メッキ処理:耐食性向上、屋外使用に最適
  • 塗装下地処理プライマー処理による塗装密着性向上
  • 研磨仕上げ:意匠性重視の内装用途向け

材質選定の戦略的アプローチ
建築用途別の最適な材質選定には以下の要素を考慮する必要があります。

  • 構造荷重:設計荷重に対する安全率の確保
  • 環境条件:湿度、温度変化、化学的腐食の影響
  • 経済性:初期コストと維持管理費のライフサイクルコスト
  • 施工性:現場での取り扱いやすさと加工性

特に注目すべきは、近年開発された高耐候性鋼材を使用した角パイプで、従来比1.5倍の耐食性能を実現しながら、コストは従来材の1.2倍程度に抑えられています。

 

日本製鉄建築用材ハンドブック - 角パイプの詳細規格と選定指針