建設需要の見通しと今後の動向と対策

建設需要の見通しと今後の動向と対策

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建設需要の見通しと現場が知るべき構造変化

受注額が増えているのに手元に残る利益が薄くなったと感じているなら、それはあなただけではありません。


📊 この記事の3ポイント要約
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2026年度の建設投資は30年ぶり81兆円超

建設経済研究所の予測では2026年度の建設投資額は81兆700億円と1996年度以来初めて80兆円台を突破。公共投資・民間非住宅が牽引するが、実質工事量は横ばいに近い。

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大手・中堅の7割が大型工事を受注できない

人手不足を背景に、大手・中堅建設会社の約7割が2026年度内に大型工事の新規受注を断念する見込み。需要はあるのに「取れない・やれない」状況が拡大中。

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改修・リニューアル需要が新たな主役に

建築補修・改修投資は2026年度に17兆2,900億円が見込まれ、国土強靭化5か年計画(20兆円超)も追い風。新設工事に依存しない事業基盤づくりが生き残りの鍵。


建設需要の見通しを示す「81兆円」の数字が意味すること


一般財団法人建設経済研究所と経済調査会が2026年1月14日に公表した予測によれば、2026年度の建設投資額(名目値)は81兆700億円にのぼる見通しです。これは2025年度見通しの76兆6,800億円を5.7%上回る数字であり、1996年度以来実に30年ぶりに80兆円の大台を突破することを意味します。


この数字だけを見れば、建設業は久しぶりの好景気に見える。ところが現場の肌感覚は、必ずしもその通りではありません。


なぜそのギャップが生まれるのかを理解するには、「名目値」と「実質値」という二つの物差しを使い分ける必要があります。名目値とは、資材費や人件費などの物価上昇をそのまま含んだ工事金額の合計です。一方、実質値とは物価変動の影響を差し引いた、「実際にどれだけの量を建てられるか」を示す数字です。


たとえば、10年前に1000万円で建てられた倉庫が、今は資材と労務費の高騰で1380万円かかるとします。投資額として計上されるのは1380万円(名目値)ですが、建てられる倉庫の数は変わっていません(実質値は横ばい)。これが、「金額は増えているのに手応えが薄い」感覚の正体です。


実際、建設物価調査会が公表したデータによれば、東京のRC造集合住宅の工事原価は2015年比で2025年時点に38%上昇しています。名目の投資額が増えても、実質の工事量は横ばいかわずかな増加にとどまるのが現状です。つまり「81兆円」は、建設工事の量が飛躍的に増えることを意味しているわけではないのです。


建設経済研究所の最新予測では、2026年度の名目成長率が前年度比5.7%増である一方、実質ベースでの成長はそれより大幅に低い水準にとどまる見通しが示されています。受注額を額面通りに喜んでいると、コスト上昇に足元をすくわれるリスクがあります。これが基本です。


建設需要の見通しを示す数字を正確に読む力こそが、これからの経営判断の出発点となります。


参考:建設投資見通しの分野別データ(建設経済研究所・総合資格ナビによる解説)
【建設業の基礎知識】建設経済モデルによる建設投資の見通し(2026年1月版)|総合資格ナビ


建設需要の見通しが良くても「仕事が取れない」2026年問題の実態

建設投資額が伸びているにもかかわらず、現場では深刻な課題が広がっています。帝国データバンクの2026年1月調査によれば、建設業で正社員の人手不足を感じている企業の割合は69.6%で、調査対象の全業種でトップに立っています。


日本経済新聞の調査では、大手・中堅の建設会社の約7割が2026年度内に大型工事を新規受注できないと回答しました。さらに約4割は、すでに契約済みの工事においても工期が遅れる可能性があると見込んでいます。これが2026年問題の核心です。


需要は存在するのに施工できない。これは痛いですね。


この「受注できない」状況の背景には、2024年4月から建設業にも適用が始まった時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)の影響があります。月45時間・年360時間を上限とする残業規制が加わったことで、一人の技術者が担える工事の量に物理的な上限が生まれました。以前のように長時間労働でカバーする手法が通用しなくなったのです。


さらに深刻なのが技能者の高齢化です。建設技能者の約25.7%が60歳以上を占める一方で、29歳以下の若年層はわずか11.7%にとどまります(国土交通省データ)。今後10年で多くのベテランが現役を退いていく中、若手の入職数は追いついていません。


一方で、建設業で働く若者が全くいないわけではありません。実は20代の就業者数は近年増加傾向にあり、不足しているのは30〜40代の中間層です。バブル崩壊後の就職氷河期・リーマンショック期に業界への入職が大きく減った世代の穴が、今まさに顕在化しています。組織の中堅が薄い「ひょうたん型」の人員構成が多くの会社で起きているということですね。


人手不足を解消する手段として、現実的に効果を上げているのがデジタル化の推進です。ドローン測量、BIM/CIMによる設計・施工の一体管理、遠隔臨場システムなど、ICTを活用することで一人の技術者がカバーできる範囲を広げることができます。国が推進するi-Constructionは、こうした技術導入を補助金でサポートしており、中小企業でも活用できる制度が整っています。


人手不足対策に最も効果的なのは業績を上げることです。業績が好調な企業ほど採用が順調である、という構造がデータでも裏付けられています。


参考:建設業の人手不足と2026年問題の詳細
【2026年】建設業界は今後10年でどう変わる?需要予測|ベスキャリ建設


建設需要の見通しで見逃せない「改修・リニューアル市場」の急拡大

新設工事が注目されがちな一方で、改修・リニューアル市場が急速に存在感を高めています。建設経済研究所の予測によると、2026年度の建築補修(改装・改修)投資額は17兆2,900億円に達する見込みです。


これは、建築投資全体の約30%に相当する規模です。つまり、建設投資の3分の1近くがすでに新設ではなく既存建物の改修に向けられているのです。


なぜここまで需要が膨らんでいるのか。理由は複数の強力な要因が重なっているからです。


まず、高度成長期に大量に建設されたビル・マンション・工場・学校・橋梁・トンネルが一斉に「老齢期」を迎えています。国土交通省のデータによれば、全国に約73万橋ある橋梁のうち、2032年度には建設後50年を超えるものが全体の約59%を占めるようになります。これは東京ドームの建築面積(約4.7万㎡)の1万倍以上の規模のインフラが修繕期を迎えることを意味します。


次に、2050年のカーボンニュートラル実現という国の目標が省エネ改修需要を押し上げています。断熱改修や高効率設備への交換は、建物オーナーにとって補助金を活用できるビジネスチャンスです。「住宅省エネキャンペーン2025」の追い風もあり、住宅分野での改修工事受注高は2025年度第2四半期に前年同期比35.8%増を記録しています。


そして、2026年度からスタートした「第1次国土強靭化実施中期計画」も大きな需要源となります。5年間で20兆円超の事業規模が見込まれており、ライフラインの強靭化(約10.6兆円)が中心的施策として位置づけられています。上下水道、道路・橋梁、防災施設など、全国各地でのインフラ更新が本格的に進みます。


改修・リニューアル需要は、新設工事に比べて景気の波に左右されにくく、安定した受注が見込めるという特性があります。これは使えそうです。


新設住宅着工戸数が低迷を続ける中、事業ポートフォリオを改修・補修分野にシフトさせている会社が業績を伸ばしています。国が推進する「予防保全型メンテナンス」への転換を念頭に置いた受注戦略の見直しが、今後の経営安定につながるでしょう。


参考:国土強靭化実施中期計画の詳細と建設業への影響
国土強靭化実施中期計画(第1次)が2026年度から始動!建設業への影響を解説|建設データ


建設需要の見通しに対して二極化する企業の実態と生き残り戦略

建設業界では今、増収増益企業の増加と倒産件数の増加が同時進行するという、一見矛盾した現象が起きています。帝国データバンクの調査によれば、2025年の建設業倒産件数は前年比6.9%増の2,021件となり、過去10年で最多、2013年以来12年ぶりに2,000件を超えました。


一方で、大手ゼネコンの業績は好調です。価格転嫁を進め、採算重視の受注姿勢を徹底した結果、売上高・利益ともに過去最大水準を更新する企業が続出しています。


つまり「仕事はある、でも取れる会社と取れない会社に二分された」というのが現状です。


倒産が増えている主因は、人件費と資材費の急騰に対してコストを価格に転嫁できていない中小・零細企業の苦境です。クラフトバンク総研の2025年8月調査によれば、年商1億円未満の企業では単価が上がったと答えた割合が32%にとどまり、年商1億円以上の企業(49%)に比べて大きく見劣りします。小規模事業者ほど価格交渉力が弱く、コスト上昇分を吸収せざるを得ない構造が続いているということです。


さらに、2025年12月施行の改正建設業法も小規模元請への打撃となっています。標準労務費の導入や短工期規制により、外注依存度の高い会社の利益率・資金繰りが一層圧迫される見込みです。この構造変化を乗り越えるためには、外注から自社施工(直営化)へのシフト、あるいはより規模の大きな元請・グループへの参加が選択肢となります。


業績が悪い会社の共通点としてデータが示すのは「ホームページなし」「協力会社会への不参加」「取引先・営業エリアの拡大活動をしない」という三点です。いずれも、変化する市場に向き合わず「現状維持」を続けることのリスクを端的に示しています。


これからの建設需要の見通しを生かすためには、価格転嫁の徹底・デジタル化による事務コスト削減・改修分野への進出という三方向での動きが不可欠です。大成建設による東洋建設の買収や大和ハウス工業による住友電設の買収など、M&Aによる規模拡大の流れも加速しており、単独では難しい課題を規模の力で解決しようとする動きが業界全体で広がっています。


参考:建設業の倒産動向と企業二極化の詳細
「建設業」の倒産動向(2025年)|帝国データバンク


建設需要の見通しを読む上で見落とされがちな「地域格差」という独自視点

建設需要の見通しを語る際、全国平均の数字だけを見ていると経営判断を誤るリスクがあります。実は地域別の実態は、平均値とかけ離れた場合も多いのです。


建設経済研究所のデータを物価高の影響を除いた実質値で見ると、2015年から2025年にかけて建設投資が伸びているのは長野・大阪・熊本・鹿児島・佐賀など一部の地域に偏っており、岩手・宮城・福島・和歌山などでは大きく減少しています。


なぜこのような差が生まれるのか。背景には人口動態・製造業の集積・外国人就業者の受け入れ状況という三つの要因があります。


外国人技能実習生・特定技能労働者の増加は建設業の人手不足を緩和する手段として注目されていますが、実は雪が多い東北・新潟エリアでは外国人就業者がほとんど増えていません。亜熱帯出身の方が多いため、冬の厳しい環境への適応が難しいためです。一方、愛知・群馬など製造業が強い地域では外国人就業者が多いものの、建設業と製造業で人材の奪い合いが起きています。


また、公共工事設計労務単価と最低賃金を比較すると、大阪・京都・兵庫・広島など西日本の主要都市圏でその差が小さく、職人の相対的な待遇が低い傾向があります。そのため関西圏では、人口は減っていないのに他産業との人材争奪戦に負けるというケースが起きています。


建設投資は増えているが局所的にしか増えない、これが原則です。


したがって自社の商圏でどの分野・地域に需要が集中しているかを見極めることが重要です。市区町村レベルまで需要動向を細分化して把握し、成長エリアへの営業所展開・受注領域の拡大・M&Aによるエリア進出を検討することが、今後5〜10年の経営安定に直結します。


全国一律に「建設需要は好調」と捉えて動かないでいると、気づかないうちに自社の商圏だけが縮小していたという事態になりかねません。地元の仕事量の変化を肌感覚だけでなく、国土交通省・建設経済研究所の地域別データで確認する習慣が大切です。


参考:地域別建設投資動向と市場変化の分析
2026年建設業界動向予測 ~ 痛みを伴いながら変わる建設業界|クラフトバンク総研




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