

公共測量の費用を国が一部でも補助すれば、あなたの会社が発注した民間工事でも「公共測量」に該当し、届出を怠ると最大50万円の罰金リスクがあります。
建築業に携わっていると、「基本測量」と「公共測量」という言葉を書類や契約で目にすることがあります。しかし、その正確な違いを即答できる人は意外と少ないのが実情です。
まず「基本測量」とは何かを確認します。測量法第4条には、「すべての測量の基礎となる測量で、国土地理院の行うものをいう」と定められています。つまり、基本測量を実施できる主体は国土地理院ただ1つです。全国の三角点・水準点・電子基準点などを設置・管理し、日本全土の測量の"背骨"を作る作業がこれにあたります。建設会社や測量業者が基本測量を自ら行うことは法律上できません。これが基本です。
一方、「公共測量」の定義は測量法第5条に定められており、次の2つの要件のいずれかを満たすものを指します。
ポイントは「実施主体が国や地方公共団体かどうか」ではなく、「費用負担に国や公共団体が関与しているかどうか」が判断軸になる点です。意外ですね。道路・河川・都市計画・区画整理など、建設現場で日常的に関わる測量業務の多くが公共測量に該当します。
なお、比較のためにもう一つの区分も覚えておくと便利です。「基本測量及び公共測量以外の測量」(第三種)とは、基本測量または公共測量の成果を使用して実施するそれ以外の測量を指します。民間企業が純粋に自社費用で実施する測量がここに該当することが多く、この場合にも測量法第46条に基づく届出が必要です。
| 区分 | 実施主体 | 費用負担 | 法律上の根拠 |
|------|---------|---------|------------|
| 基本測量 | 国土地理院のみ | 国 | 測量法第4条 |
| 公共測量 | 国・公共団体等 | 国・公共団体が全部または一部を負担 | 測量法第5条 |
| 基本・公共以外の測量 | 主として民間 | 民間(公的補助なし) | 測量法第6条 |
結論はシンプルです。建設業従事者にとって最も関わりが深いのは「公共測量」と「基本・公共以外の測量」の2区分であり、どちらの区分でも測量法に基づく手続きが求められます。
基本測量は国土地理院だけが実施するものですが、その成果は「国民の共有財産」として広く公開・活用できます。これは建設業従事者にとって、知っていると大きくトクする情報です。
測量法第27条の規定により、国土交通大臣は基本測量の成果のうち一般の利用に供すべきものを刊行・公開しなければなりません。具体的には、国土地理院の公式ウェブサイトからアクセスできる「基盤地図情報ダウンロードサービス」を通じて、全国の基準点成果・数値標高モデル・地形図データなどを入手できます。
建設プロジェクトの初期段階では、現地に入る前にこれらのデータを参照することで、大まかな地形・標高・既存基準点の位置を把握できます。これは使えそうです。
ただし、基本測量の成果を複製・転載したり、他の測量に使用する際は注意が必要です。測量法第29条・30条の規定により、成果を複製または使用して測量を実施する場合は、事前に国土地理院長の承認を得る必要があります。承認なしで使用した場合には法的リスクが発生します。
申請先は国土地理院の各地方測量部・支所です。手続きはオンラインまたは郵送で対応しており、建設会社の担当者でも申請できます。承認が下りると、当該成果を活用した測量成果に「基本測量の測量成果を使用した旨」の明示が義務となります。これが条件です。
測量の基準となる日本経緯度原点(東京都港区麻布台2-18-1)と日本水準原点(東京都千代田区永田町1-1-2)の数値は、2011年の東北地方太平洋沖地震後に改正されています。古いデータをそのまま使い続けると座標に誤差が生じるため、現在の成果(経度:東経139°44′28″.8869、水準原点:24.3900m)を確認することが不可欠です。古い数値のまま使用しないよう注意に越したことはありません。
国土地理院:基本測量・公共測量等の在り方(基本測量成果の公開・利用ルールについての公式解説)
公共測量は、実施前にいくつかの法的手続きが必要です。建築業の現場担当者が見落としやすいポイントを整理します。
まず、公共測量を実施する場合には、測量法第33条に基づき「作業規程」を定め、国土交通大臣の承認を得ることが必要です。作業規程とは、観測機械の種類・観測法・計算法などを定めたもので、国土地理院が公示する「作業規程の準則」(平成20年国土交通省告示第413号)を準用するのが一般的です。
さらに、測量法第36条により、公共測量実施計画書を国土地理院に提出し、技術的助言を求めることが義務付けられています。届出は実施前に行う必要があります。
ここで多くの建設関係者が誤解しやすいのが「どの測量が公共測量に該当するか」の判定です。
注意すべきは、民間の建設会社であっても補助金付き事業の一環として測量を行う場合、公共測量に該当する可能性がある点です。その場合、測量計画の作成は「測量士」が行わなければなりません(測量法第48条)。社内に測量士がいない場合は外部委託が必要であり、コスト・スケジュールに影響します。これは痛いですね。
公共測量の手続きのフローを簡単にまとめると次のとおりです。
国土地理院:公共測量の一般的事項に関するQ&A(民間会社・個人が対象になるかどうかの判定も詳述)
実は、「公共測量」という名称でも、すべての測量が測量法の厳格な規制を受けるわけではありません。測量法第5条・施行令第1条では、公共測量から除外される測量の範囲が定められており、建設業従事者にとって非常に重要な内容です。
公共測量から除外される主な測量は次の3つです。
建設業従事者にとって最もなじみ深い「建物の設計図面に関する測量」や「建物の登記用図面の作成」は、公共測量の適用外となります。つまり、建築確認申請に添付する配置図・平面図の作成に関わる測量は、測量法上の公共測量とは別の扱いになります。これなら問題ありません。
一方で注意が必要なのは、「横断面測量」が除外されるのは小範囲・局地的なものに限られる点です。広域にわたる道路の縦断・横断測量を実施する場合は公共測量に該当する可能性があり、一概に「横断面だから大丈夫」とは言えません。
また、建設工事の現場で日常的に行われる「工事基準点の確認・点検」についても注意が必要です。公共工事において、発注者から貸与された公共測量成果(公共基準点成果簿)を使用して現地の測量を行う場合、これは公共測量の成果に基づく測量として扱われます。この場合、測量を行う業者に測量業登録・測量士の資格が求められることがあります。
「工事のついでに基準点を確認しているだけ」という認識では、思わぬ法的リスクを抱える可能性があります。実施前に「これは公共測量の範囲か、除外対象か」を確認する習慣をつけておくことが重要です。これが原則です。
国土地理院:公共測量とは(除外される測量の具体的リストを掲載)
建設業従事者にとって、測量法の罰則規定を正確に知ることは、現場リスクを回避するうえで不可欠です。「届出を忘れていた」では済まないケースがあります。
測量法では、複数の罰則規定が設けられています。主要なものを整理すると次のとおりです。
特に建設業者が気をつけるべきは、「測量業登録なしに測量業務を受注した場合」のリスクです。測量法第10条の2の定義による「測量業」(基本測量・公共測量・第三種測量を請け負う営業)は、同法第55条の5第1項に基づく測量業者登録が必要です。登録を受けずに営業した場合は罰則の対象となります。
また、建設工事の一環として測量を実施する際に「建設業許可があれば問題ない」と考える担当者がいますが、測量業の登録は建設業許可とは別の制度です。両方の登録・許可が必要な場合もあります。これは必須の知識です。
測量業者登録に必要な主な要件は次のとおりです。
罰則を受けると、測量業者登録の取り消し・建設業者としての信用低下・指名停止など、経営全体に波及するリスクがあります。金銭的なペナルティにとどまらない点が深刻です。現場の担当者レベルでも、自社の業務が測量法の適用を受けるかどうかを把握しておくことが大切です。
なお、建設会社の担当者が公共測量に関する疑問を持った場合、国土地理院の地方測量部・支所に問い合わせると技術的な助言を得られます。費用はかかりません。無料ですので積極的に活用してください。
中部地方整備局:測量業者の不正行為に対する監督処分の基準(具体的な処分基準の詳細)
現場では「うちの工事測量は公共測量でも基本測量でもないから、特に手続きは要らない」と思われがちです。しかし、測量法にはもう一つ重要な区分があります。それが「基本測量及び公共測量以外の測量」(通称・第三種測量)です。
測量法第6条にその定義があり、「基本測量または公共測量の測量成果を使用して実施する、基本測量および公共測量以外の測量」を指します。重要なのは、公的な補助がなくても「基本測量・公共測量の成果を使用している」だけで第三種測量に該当する点です。
たとえば、民間開発事業の測量でも、国土地理院の三角点や公共基準点を基準として使用した場合、この第三種測量の定義に当てはまります。そして、第三種測量を実施しようとする者は、測量法第46条に基づき事前に国土交通大臣(国土地理院)への届出が義務付けられています。
届出は国土地理院の地方測量部・支所へ、郵送またはメールで行えます。この届出義務を知らずに測量を進めてしまうケースが、建設現場では少なくありません。
また、第三種測量には測量法上の罰則規定もある点を押さえておく必要があります。同法第46条の届出を怠った場合には法的問題が生じるリスクがあり、工事全体の適法性にも影響する可能性があります。測量法は「測量の専門家だけが知っていれば十分」という性格の法律ではなく、建設業全体に関係する規制です。これが条件です。
一方、完全に測量法の適用を受けない測量もあります。次のような局地的・低精度の測量は法の適用外です。
ただし現実には、ほとんどの建設現場での測量は何らかの形で既存の基準点成果を参照しているため、完全に「測量法適用外」となるケースは限られています。「うちの作業は関係ない」という思い込みは危険です。
迷った場合は、国土地理院が公開しているフローチャート(「公共測量に関する令和7年のトピックス」資料内)で判定できます。現場担当者であっても、このフローチャートを一度確認しておくことをおすすめします。
国土地理院:公共測量に関する令和7年のトピックス(公共測量の該当判定フローチャートを収録)