気孔率の求め方と建築材料の品質管理への活用

気孔率の求め方と建築材料の品質管理への活用

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気孔率の求め方と建築材料の品質管理

気孔率を「目視で問題なければOK」と判断していると、完成後に補修費用が数百万円になるケースがあります。


この記事の3ポイント要約
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気孔率の基本と計算式

気孔率とは材料の総体積に対する気孔(空隙)の体積割合。基本式は「気孔率(%) = 気孔の体積 ÷ 全体積 × 100」で表され、建築材料の強度・耐久性を左右する重要指標です。

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アルキメデス法が現場の基本

建築・セラミック材料の気孔率測定で最も広く使われるのがアルキメデス法。乾燥重量・飽水重量・水中重量の3点計測で開気孔率が求められ、JIS A 1509-3でも採用されています。

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気孔率と凍害・強度の関係

気孔率が高すぎる材料は吸水しやすく、寒冷地では凍害リスクが急増します。コンクリートの空気量管理では4.5%±1.5%が基準。気孔率の適切な管理が長寿命化の鍵です。


気孔率の求め方に必要な基本計算式とその意味


気孔率(ポロシティ)とは、材料の全体積に占める気孔(空隙・穴)の体積割合をパーセンテージで表した数値です。建築の現場では「この材料の中にどれくらい空洞があるか」を定量的に示す指標として使われます。


基本的な計算式はシンプルです。
























計算対象 計算式 記号の説明
全気孔率 P(%) = Vp ÷ Vt × 100 Vp:気孔の体積、Vt:全体の体積
密度から求める全気孔率 P(%) = (ρt − ρb) ÷ ρt × 100 ρt:真密度、ρb:かさ密度
開気孔率 P(%) = (ρa − ρb) ÷ ρa × 100 ρa:見掛け密度、ρb:かさ密度


ここで、「気孔の体積」を直接測るのは難しいため、実務では密度の差を利用して間接的に求めます。つまり密度差が基本です。


気孔率には大きく3種類があり、建築材料の評価ではそれぞれ意味が異なります。


- 全気孔率:開気孔・閉気孔を合わせた全ての空隙の割合。材料全体の軽さ・断熱性に関係します。


- 開気孔率(見掛け気孔率):外部と連通している気孔の割合。吸水・透水性に直結し、凍害リスクの評価に使います。


- 閉気孔率:外部と連通していない独立した気孔の割合。断熱材や軽量材では意図的に閉気孔を高めることもあります。


計算式のイメージを具体的にいうと、例えば10cm × 10cm × 10cmのコンクリートブロック(容積1,000 cm³)のうち、実際の固体が900 cm³で空隙が100 cm³であれば、気孔率は10%になります。名刺を二回り小さくした厚みが約1cmですから、1,000 cm³はちょうど牛乳パック1本分のイメージです。その中に牛乳パック0.1本分の空洞があるという意味になります。


密度の差を使った計算が主流なのは、気孔の体積を直接測るより、秤と水槽で密度を計測するほうが精度が高く再現性があるためです。これは使えそうです。


参考:気孔率の基礎定義・計算式について詳しく解説されています(粉体工学会用語辞典)
https://www.sptj.jp/powderpedia/words/10443/


気孔率の求め方:アルキメデス法の手順と計算

建築材料・セラミック材料の現場でもっとも広く使われているのが、アルキメデス法(水中ひょう量法)です。特別な大型装置が不要で、乾燥炉・精密天秤・水槽があれば測定できます。


アルキメデス法の手順は以下のとおりです。





























ステップ 操作 測定値
試料を105℃以上の乾燥器で完全乾燥させる 乾燥重量(m₁)
煮沸法(2時間沸騰+12時間静置)または真空法で試料の気孔を水で飽和させる
試料表面を固く絞った湿布で素早く拭き取り、空気中で計量する 飽水重量(m₂)
試料を水中に吊るして計量する(アルキメデスの原理を利用) 水中重量(m₃)


これら3つの測定値から、見掛け気孔率(開気孔率)とかさ密度を次の計算式で求めます。


見掛け気孔率(開気孔率)の計算式:


$$P(\%) = \frac{m_2 - m_1}{m_2 - m_3} \times 100$$


かさ密度の計算式:


$$B = \frac{m_1}{m_2 - m_3}$$


ここで m₁は乾燥重量、m₂は飽水重量、m₃は水中重量です。


具体的な数値例を挙げると、タイルの試料が以下の場合。


- 乾燥重量(m₁)= 120.0 g
- 飽水重量(m₂)= 125.5 g
- 水中重量(m₃)= 75.0 g


見掛け気孔率 = (125.5 − 120.0) ÷ (125.5 − 75.0) × 100 = 5.5 ÷ 50.5 × 100 ≒ 10.9% となります。


アルキメデス法の注意点が2点あります。表面の水分の拭き取り方がばらつくと飽水重量が変動しやすいこと、薄壁材料ほど誤差が出やすいことです。JIS A 1509-3(セラミックタイル試験方法)では煮沸法と真空法の両方が認められており、精度が必要な場合は真空法が推奨されます。


アルキメデス法だけが方法ではありません。材料の種類や必要な精度によって、以下の3つから選びます。


- 重量気孔率法(密度比較法):真密度とかさ密度を比較して全気孔率を算出。計算が単純で迅速。ただし真密度の事前測定が必要です。


- アルキメデス法(水中ひょう量法):開気孔率の測定に適す。JIS R 1634・JIS A 1509-3などに採用。汎用性が高く現場向き。


- 水銀圧入法(ポロシメトリー):気孔の大きさと分布まで詳細に解析できる。設備が高価なため分析機関への委託が現実的です。


測定方法の選択が精度を決めます。


参考:アルキメデス法を含む各種密度・気孔率測定方法を詳しく解説(日鉄テクノロジー株式会社)
https://www.nstec.nipponsteel.com/technology/physical-properties/powder-sinter/powder_01.html


JIS規格で定められた気孔率の求め方と建築材料への適用

建築の現場では、気孔率の測定はJIS規格に準拠して行うのが原則です。主な関連JIS規格を整理します。





























JIS規格番号 対象材料 測定項目
JIS A 1509-3:2014 セラミックタイル 吸水率・見掛け気孔率・かさ密度
JIS R 1634:1998 ファインセラミックス焼結体 見掛密度・かさ密度・開気孔率
JIS R 2205 耐火れんが 見掛気孔率・吸水率・比重
JIS Z 2501 焼結金属材料 密度・含油率・開放気孔率


JIS A 1509-3の計算式を改めて確認します。


$$P_b(\%) = \frac{m_{2b} - m_1}{m_{2b} - m_3} \times 100 \quad \text{(煮沸法)}$$


$$P_v(\%) = \frac{m_{2v} - m_1}{m_{2v} - m_3} \times 100 \quad \text{(真空法)}$$


ここで m₁は乾燥時の質量、m₂は吸水時の質量、m₃は吸水時の水中質量です。JIS規格に則った形式です。


JIS規格で重要なのは、結果の表示が小数第2位まで四捨五入で統一されている点です。現場での報告書作成時に桁数を誤ると数値の比較ができなくなるため注意が必要です。


建築工事における受入検査や品質確認試験では、施主や監理者から「JISに準拠した試験方法による報告」を求められるケースが多くあります。試験記録には「測定方法(煮沸法か真空法)」「試料数」「各試料の質量の計測値」「算出結果」を必ず明記することが定められています。記録の省略は後のトラブルのもとです。


参考:JIS A 1509-3の詳細な試験手順・計算式・記録事項が確認できます
https://kikakurui.com/a1/A1509-3-2014-01.html


気孔率が建築材料の強度・耐久性に与える数値的影響

気孔率は「測定するだけの数値」ではなく、建築物の寿命・耐久性に直接関係する管理値です。具体的にどう影響するのかを確認します。


まず、コンクリートの場合です。コンクリートの耐久性は空隙構造(気孔構造)と密接に関係しています。水セメント比が高くなるほど硬化後の余剰水が蒸発し、キャピラリー細孔が増加して空隙率(気孔率)が上昇します。空隙率の上昇は圧縮強度の低下を招きます。空隙率が上がると強度が下がります。


コンクリートの凍害耐性については、連行空気量(エントレインドエア)の管理が重要です。一般の現場打ちコンクリートでは空気量4.5%±1.5%(3.0〜6.0%)が標準基準とされており、寒冷地や凍結融解環境では気泡間隔係数とあわせた管理が求められます。空気量が基準を外れたコンクリートは凍害で急速に劣化します。これは痛いですね。


建築用タイル・レンガ類では、気孔率と凍害の関係がより直接的です。保水性煉瓦の研究では、気孔率33%以上で強度低下なく高い保水冷却効果が得られることが確認されていますが、一方で開気孔率が高い材料ほど含水率が上がり、凍結融解サイクルによるひび割れ・剥離リスクが高まります。気孔率は「高ければ良い」でも「低ければ良い」でもなく、用途に合った適正範囲で管理するのが原則です。


たとえばせっ器質タイルの凍害試験では、吸水率と飽和係数(24時間浸漬吸水率 ÷ 煮沸吸水率)が凍害抵抗性の評価指標になります。飽和係数が高い材料は気孔内の水分が氷結時に膨張する余地が少なく、凍害リスクが高くなります。開気孔率が高いほど吸水率も高くなる傾向があるため、寒冷地向け外装材では開気孔率の上限を設けた材料選定が必要です。


こうした材料性能の確認に加えて、外装タイルや耐火煉瓦の施工前には仕入れロットごとに気孔率・吸水率を確認することが、長期的な品質トラブルを防ぐうえで有効です。製造メーカーから試験成績書を取り寄せ、JIS規格値と照合するのが現実的な手順です。


参考:セラミック建材の凍害と気孔率・細孔径の関係について学術的に解説されています(J-Stage)


気孔率の求め方:現場で使える測定ミス防止のチェックポイント

気孔率の測定は手順を知っていても、測定ミスや記録ミスが起きやすい工程がいくつか存在します。現場目線でのチェックポイントを押さえておきましょう。


乾燥工程の落とし穴


JIS A 1509-3では乾燥温度は105℃以上と定められており、タイルの厚さが20mm以下であれば3時間以上、20mmを超える場合は5時間以上の乾燥が必要です。乾燥不足は乾燥重量(m₁)を実際より重く計測させ、結果として気孔率が低く算出されます。乾燥時間の不足が測定誤差の原因です。


⚠️ よくあるミス:「十分乾いている」と見た目で判断し、乾燥時間を短縮してしまうケースです。


飽水工程の注意点


煮沸法では沸騰後2時間の継続加熱と、熱源を切った後12時間以上の静置が必要です。冷却が不十分なまま取り出すと飽水が不完全になり、飽水重量(m₂)が軽くなって気孔率が低めに算出されます。また、試料を引き上げた後の表面拭き取りは「固くしぼった湿布で手早く」が原則です。強く拭きすぎると開気孔の水まで除去してしまいます。素早さと加減が重要です。


水中計量の精度


水中重量(m₃)の測定では、試料を水中に完全に沈めた状態で計量します。試料が浮く場合はおもりや容器を使います(JIS A 1509-3に手順あり)。水温は密度に影響するため、測定ごとに一定の水温で統一するのが精度を上げるポイントです。水温変化は数値をわずかに変えます。


記録の管理


試験記録には以下を必ず記載します。


- 試験材料の概要(タイルの種類・品名・形状寸法)
- 測定方法(煮沸法 or 真空法)
- 試料の数(JIS A 1509-1に基づく数量)
- 各試料の乾燥重量・飽水重量・水中重量
- 算出した気孔率・かさ密度


独自視点:同一ロット内でも気孔率のばらつきに注意


製品規格品であっても、同一ロット内で気孔率のばらつきが発生することがあります。特に焼成温度が均一でない窯出し品や、輸送中の衝撃で微細なひび割れが入った材料では、見掛け気孔率が意図せず高くなっているケースがあります。


受け入れ検査で1枚だけ試験する現場も少なくありませんが、JIS規定の試料数(全形タイル5個)での測定を徹底することが、後からの品質トラブルを防ぐ最短の対策です。全数確認が難しい場合でも、複数試料のばらつき幅を確認して施工可否を判断するのが現実的なリスク管理になります。ばらつきの確認が品質の基本です。


参考:建築材料評価事業の気孔率・吸水率を含む評価基準が確認できます(建材試験センター)
https://www.pbaweb.jp/img/content/r7hyokakijun_a_kijun07_ceramictiles.pdf




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