
CH型強力サポートは建築現場において最も信頼性の高い支保工として広く採用されています。各型式の詳細な寸法と重量データは以下の通りです。
CH型強力サポート仕様一覧表
型式 | 使用長(mm) | 組立重量(kg) | 最大破壊強度 | 許容強度 |
---|---|---|---|---|
CH-18型 | 1,840~1,230 | 34.5 | 294kN(30ton) | 147kN(15ton) |
CH-24型 | 2,460~1,845 | 40.1 | 294kN(30ton) | 147kN(15ton) |
CH-32型 | 3,260~1,895 | 49.0 | 294kN(30ton) | 147kN(15ton) |
CH-40型 | 4,060~2,695 | 58.0 | 264kN(27ton) | 127kN(13ton) |
CH-50型 | 5,060~3,695 | 69.3 | 225kN(23ton) | 98kN(10ton) |
CH型の特徴として、型式が大きくなるにつれて使用長の範囲が広がり、重量も増加する傾向があります。特にCH-18型からCH-32型までは許容強度が15tonと統一されており、現場での使い分けが容易です。
興味深いことに、CH-40型以降では許容強度が段階的に減少する設計となっています。これは長尺になることで座屈の危険性が高まるため、安全率を考慮した設計思想によるものです。
断面性能の詳細データ
この断面性能により、従来の軽荷重サポートでは対応できない高荷重条件下でも安定した支持力を発揮します。
アルミ合金製強力サポートは、従来の鉄製に比べて大幅な軽量化を実現しながら、必要十分な強度を確保した次世代型の支保工です。
スーパー・アルミサポート仕様詳細
型式 | 調節長さ(mm) | 重量(kg) | 内管長さ(mm) | 外管長さ(mm) |
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26型 | 2,610~1,970 | 29.0 | 1,137 | 1,760 |
38型 | 3,820~2,580 | 36.0 | 2,353 | 1,760 |
50型 | 5,030~3,800 | 43.0 | 3,570 | 1,760 |
アルミ製の最大の利点は作業効率の向上です。例えば、26型では29kgと、同等の鉄製サポートと比較して約30%の軽量化を実現しています。これにより作業員の負担軽減と作業スピードの向上が期待できます。
耐力性能について
注目すべきは、50型のみ水平つなぎなしの場合に許容耐力が98kNに制限されることです。これは長尺サポートの座屈防止を目的とした安全設計であり、現場では必ず水平つなぎの設置が推奨されます。
建入れサポートとの使い分け
PC材建入調整用サポートとして、より軽量なアルミニウム合金製の建入れサポートも存在します。
型式 | 有効使用長(mm) | 重量(kg) |
---|---|---|
S型 | 1,120~1,790 | 6.7 |
M型 | 1,730~3,120 | 8.7 |
L型 | 2,390~3,780 | 10.1 |
LL型 | 3,590~4,780 | 12.3 |
これらは主にPC工事の積層工法で使用され、精密な建入れ調整が可能な特殊用途向けサポートです。
現場での適切な型式選定のために、使用長の範囲と重複部分を詳細に比較検討することが重要です。
使用長範囲の重複分析
CH-18型: 1,230mm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 1,840mm
CH-24型: 1,845mm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2,460mm
CH-32型: 1,895mm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 3,260mm
CH-40型: 2,695mm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 4,060mm
CH-50型: 3,695mm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 5,060mm
この比較から、以下の最適選定パターンが見えてきます。
✅ 推奨選定パターン
重複範囲での選定基準
→ 重量差5.6kgを考慮し、短期使用ならCH-18型を選択
→ 許容強度の違い(15ton vs 13ton)を考慮し、高荷重ならCH-32型を選択
パイプサポートとの使い分け
一般的なパイプサポートとの使用長比較も重要です。
パイプサポート | 使用寸法(mm) | 重量(kg) | 強力サポート対応 |
---|---|---|---|
9尺 | 2,600~3,940 | 15 | CH-32型~CH-40型 |
7尺 | 2,100~3,350 | 13 | CH-24型~CH-32型 |
6尺 | 1,800~3,040 | 12 | CH-18型~CH-32型 |
5尺 | 1,500~2,590 | 11 | CH-18型~CH-24型 |
パイプサポートは軽量で取り扱いが容易ですが、強力サポートは約5~10倍の強度を持つため、高荷重が予想される現場では強力サポートの選択が必須となります。
現場での作業効率向上と安全性確保の両立を図るため、重量軽量化を考慮した選定ポイントを詳しく解説します。
重量による作業効率への影響
作業効率の観点から、1日の運搬本数と作業員負担を数値化すると以下のような差が生まれます。
例:高さ3mの支保工設置(100本設置の場合)
・CH-32型(49.0kg): 総重量4,900kg → 作業時間約8時間
・アルミ36型(36.0kg): 総重量3,600kg → 作業時間約6時間(25%短縮)
この2時間の短縮は、大規模現場では大幅なコスト削減につながります。
材質別の特性比較
材質 | 重量比 | 耐食性 | 初期コスト | ランニングコスト |
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高抗張力鋼管 | 100% | 中 | 低 | 中(メンテナンス要) |
アルミ合金 | 67% | 高 | 高 | 低(長寿命) |
アルミ合金製は初期投資は高いものの、以下の隠れたメリットがあります。
🔧 メンテナンス性の向上
⚡ 作業安全性の向上
環境配慮の選定基準
近年、建設業界でも環境負荷軽減が重視されており、以下の観点での選定も重要です。
コスト最適化の実例
大手建設会社の導入事例では、アルミ製強力サポート導入により以下の効果が報告されています。
✅ 作業効率25%向上
✅ 作業員疲労度30%軽減
✅ 機材運搬コスト15%削減
✅ メンテナンス費用40%削減
これらの総合効果により、初期投資の回収期間は約3年程度と試算されています。
強力サポートの安全性確保には、適切な耐力計算と現場での検証が不可欠です。設計時の理論値と実際の使用条件には差異があるため、実務的な検証手法を理解することが重要です。
軸荷重試験による性能確認
CH-40型の軸荷重試験結果では、垂直荷重と変形量の関係が明確に示されています。
荷重-変形特性(CH-40型実測データ)
・10ton時: 縮み2mm、x軸方向挽み1mm、y軸方向挽み1mm
・15ton時: 縮み4mm、x軸方向挽み2mm、y軸方向挽み2mm
・20ton時: 縮み6mm、x軸方向挽み3mm、y軸方向挽み3mm
・25ton時: 縮み8mm、x軸方向挽み4mm、y軸方向挽み4mm
この試験データから、許容荷重13ton(127kN)での変形量は約3mm程度と予測でき、実用範囲内での安定性が確認できます。
座屈長さ係数の考慮
長尺サポートでは座屈現象が安全性の最大のリスクとなります。建築基準法に基づく座屈長さ係数の適用が必要です。
支持条件 | 座屈長さ係数(K) | 適用場面 |
---|---|---|
両端固定 | 0.5 | 理想的固定条件 |
固定-ピン | 0.7 | 一般的な現場条件 |
両端ピン | 1.0 | 標準計算値 |
固定-自由 | 2.0 | 避けるべき条件 |
実際の現場では「固定-ピン」条件(K=0.7)での計算が現実的であり、許容荷重は理論値の約70%程度で設定することが安全です。
水平つなぎの効果検証
水平つなぎの有無による耐力差は予想以上に大きく、特に長尺サポートでは必須です。
50型アルミサポートの耐力比較
・水平つなぎあり: 147kN (100%)
・水平つなぎなし: 98kN (67%)
→ 33%の耐力低下
🔍 現場検証のチェックポイント
安全率の設定基準
実務では以下の安全率を適用することが一般的です。
CH型強力サポートの場合、メーカー公表値は既に安全率2.0が考慮されているため、現場ではさらに1.2~1.5倍の余裕を見込むことが推奨されます。
荷重計算の実務例
3階建て住宅のスラブ支保工の場合。
設計条件
・スラブ厚: 150mm(自重3.6kN/m²)
・積載荷重: 1.5kN/m²
・支保工間隔: 1.8m × 1.8m
・総荷重: (3.6 + 1.5) × 1.8² = 16.6kN/本
選定結果: CH-18型(許容147kN)で十分対応可能
安全率: 147 ÷ 16.6 = 8.9倍(十分な余裕)
このように理論計算と実際の安全性確保を両立させることで、事故のない安全な施工が実現できます。
建設現場で使用する強力サポートは、正確な寸法データと適切な選定により、作業効率と安全性の両立を図ることができます。特に重量と耐力のバランスを考慮した選択により、長期的なコストパフォーマンスの向上も期待できるでしょう。