
旧JISネジ規格は、1960年代まで使用されていた日本の工業規格で、現在のISO規格(新JIS規格)とは異なる寸法基準を持っています。正式には「JISねじ」と呼ばれ、昭和39年まで使用されていた規格の略称です。
現在では基本的に使用されることはありませんが、建築関係や船舶用品、文房具の一部で依然として利用され続けています。これは、ISO統合以前の日本特有の規格が実務上まだ多くの業界で必要とされているためです。
旧JIS規格が現在でも残存している理由として、古い設備や建造物のメンテナンス時に、既存のネジ穴に適合するネジが必要になるケースが挙げられます。特に建築業界では、リノベーションや改修工事において、元の仕様と同じ規格のネジを使用する必要性が高いのです。
旧JIS規格の最大の特徴は、M3、M4、M5におけるピッチの違いです。以下の表は、旧JIS規格と現行ISO規格(新JIS規格)のピッチ比較です:
ピッチ比較表
ねじの呼び | 旧JIS規格 | 新JIS規格(ISO) |
---|---|---|
M3 | 0.6mm | 0.5mm |
M4 | 0.75mm | 0.7mm |
M5 | 0.9mm | 0.8mm |
旧JIS規格のメートル並目ねじの詳細寸法は以下の通りです:
旧JIS規格メートル並目ねじ寸法表(抜粋)
ネジの呼び | ピッチ P | ヒッカカリの高さH1 | 外径d | 有効径d2 | 谷の径d1 |
---|---|---|---|---|---|
M3 | 0.6 | 0.325 | 3.000 | 2.610 | 2.350 |
M4 | 0.75 | 0.406 | 4.000 | 3.513 | 3.188 |
M5 | 0.9 | 0.487 | 5.000 | 4.415 | 4.026 |
M5.5 | 0.9 | 0.487 | 5.500 | 4.915 | 4.526 |
これらの寸法は、現在の建築現場でも時折必要となることがあります。例えば、昭和時代に建設された建物の改修工事では、既存の金具やブラケットが旧JIS規格で作られているケースが散見されます 🏗️。
旧JIS規格のネジを現行規格と判別する方法は複数あります。最も確実な方法は、ピッチの違いを利用した判別です。
視覚的判別方法
物理的判別方法
刻印による判別
建築現場では、既存の設備に合うネジを選定する際、まずピッチゲージで確認することが重要です。特に電気設備や配管工事において、古い建物では旧JIS規格のネジが使用されていることが多く、適切な判別が工事の品質に直結します ⚡。
興味深いことに、旧JIS規格のネジは現在でも限定的に市販されています。ナベ、皿、トラスの小ねじは小箱単位で販売されており、キャップスクリューや六角ボルトも少量在庫が残っているメーカーがあります。
旧JIS規格のネジは現在でも入手可能ですが、市場での取り扱いは限定的になっています。
現在の入手状況
販売チャネル
価格動向
旧JIS規格のネジは製造量が少ないため、一般的なISO規格のネジと比較して価格が高めに設定されています。例えば、六角ナット(旧JIS M3)は1個あたり1.61円(税込)で販売されているケースがあります。
建築業界では、改修工事や補修工事において旧JIS規格のネジが必要になるケースが多いため、事前に在庫状況を確認し、必要数量を計算しておくことが重要です。特に大規模な改修プロジェクトでは、調達期間を考慮した工程管理が必要となります 📊。
建築現場において旧JIS規格のネジが必要となる具体的な場面は多岐にわたります。
主な使用場面
工事種別による使用頻度
特殊な用途例
船舶用品や文房具の一部で使用されている細目規格の場合、建築関連では船舶内装工事や特殊設備の設置で遭遇することがあります。また、産業機械の古い型式では、メンテナンス部品として旧JIS規格のネジが指定されているケースも存在します ⚙️。
実務上の注意点として、旧JIS規格のネジを使用する際は、強度計算や耐久性の検討が必要です。現行規格と微妙に寸法が異なるため、安全率の再計算や構造的な影響を慎重に評価する必要があります。
調達における工程管理のポイント
建築現場で旧JIS規格のネジを使用する際の品質管理は、現行規格以上に慎重に行う必要があります。
品質検査の重要ポイント
検査機器と方法
現場での実践的検査手順
古い規格のネジは製造時期によって品質にばらつきがある可能性があるため、現場での全数検査が推奨されます。特に構造上重要な箇所に使用する場合は、抜取検査ではなく全数検査を実施することが安全管理上重要です 🔒。
品質記録の管理
旧JIS規格のネジを使用した場合は、使用箇所、規格、数量、検査結果を詳細に記録し、将来のメンテナンス時に参照できるよう管理することが重要です。これにより、次回の改修工事でも適切な部材選定が可能となります。
品質管理の観点から、旧JIS規格のネジは「特殊材料」として扱い、一般的なネジとは別の管理フローで取り扱うことが建築現場での実務上の重要なポイントとなります。