

A票を収集運搬業者に全部渡したまま手元に何も残さないと、5年間の保管義務違反で罰金対象になります。
マニフェスト票(産業廃棄物管理票)とは、建設現場などから出る産業廃棄物が、どの収集運搬業者・処分業者を通じてどこへ運ばれ、最終的にどう処分されたかを追跡するための伝票です。廃棄物の"通行手形"のようなもので、1枚ずつに廃棄物の種類・数量・運搬先などが記録されます。
建設業において、このマニフェストを発行する義務を負うのは「排出事業者」です。建設工事の場合、2011年(平成23年)の廃棄物処理法改正によって、元請業者が排出事業者であることが法律上に明文化されました。つまり、下請けの工務店が現場で廃棄物を出したとしても、元請業者がマニフェストの交付責任者になります。これは意外に知られていない重要なポイントです。
マニフェストには、紙マニフェストと電子マニフェストの2種類があります。建設6団体(日本建設業連合会など)が発行する「建設系廃棄物マニフェスト」は、建設現場で出るコンクリートがら・木くず・廃石膏ボードといった多種多様な廃棄物に対応した専用様式で、建設業協会の窓口で購入できます。
電子マニフェストはJWNET(日本廃棄物処理振興センターが運営するシステム)を通じて運用し、排出事業者・収集運搬業者・処分業者の3者全員がJWNETに加入している場合のみ利用可能です。紙とは違って保管スペースが不要になり、年に1回の行政への報告義務も免除される点が大きなメリットです。
これが基本です。まずマニフェストが「誰の責任で」「何のために」発行されるのかを押さえておけばOKです。
参考:建設系廃棄物マニフェストの制度概要と元請業者の責任について
建設系廃棄物マニフェストの作成義務や書き方を詳しく解説 – 山一商事
建設系廃棄物マニフェストはA票からE票まで7枚の複写式です。各票がどの業者のもとへ渡り、どのタイミングで返ってくるのかを理解することが、法令遵守の第一歩になります。
| 票の種類 | 役割 | 誰が保管・受け取るか |
|:---:|:---|:---|
| A票 | 廃棄物を引き渡したときの排出事業者の控え | 排出事業者が保管(交付日から5年間) |
| B1票 | 収集運搬業者の控え | 収集運搬業者が保管 |
| B2票 | 運搬完了の証明として排出事業者へ返送 | 排出事業者が受け取り保管(返送日から5年間) |
| C1票 | 処分業者の控え | 処分業者(中間処理業者等)が保管 |
| C2票 | 処分完了後に収集運搬業者へ返送 | 収集運搬業者が受け取り保管 |
| D票 | 中間処理完了の証明として排出事業者へ返送 | 排出事業者が受け取り保管(返送日から5年間) |
| E票 | 最終処分完了の証明として排出事業者へ返送 | 排出事業者が受け取り保管(返送日から5年間) |
流れを大まかにまとめると「排出事業者→収集運搬業者→中間処理業者→(最終処分業者)」という順番で廃棄物と一緒にマニフェストが動き、各段階で担当業者の署名(またはハンコ)が入ります。そして各工程が完了するたびに、対応する票が排出事業者のもとへ返送されてくる仕組みです。
つまり「票が戻ってくること」が、廃棄物が適正に処理された証拠になるということですね。
ひとつ注意点があります。A票はかつて保管義務がありませんでしたが、2011年(平成22年)の廃棄物処理法改正により、排出事業者がA票を交付日から5年間保管することが義務化されました。改正前の常識で「A票は捨ててもいい」と思っている方は、今すぐ見直しが必要です。
排出事業者が最終的に手元に保管すべき票は、A票・B2票・D票・E票の4枚です。これだけ覚えておけばOKです。
参考:各票の役割・保管義務・返送期限について詳しくまとめられた公益社団法人の公式ページ
マニフェストの流れ – 公益社団法人 全国産業資源循環連合会
建設業の現場担当者が見落としがちなのが、マニフェスト票の「返送期限」です。期限を知らずに放置してしまうと、報告義務違反につながります。
紙マニフェストの返送期限は次の2段階です。
- B2票・D票:マニフェスト交付日から 90日以内 に排出事業者へ返送
- E票:マニフェスト交付日から 180日以内 に排出事業者へ返送
なぜ2段階になっているかというと、廃棄物の処理には「中間処理」と「最終処分」の2つのプロセスがあるためです。中間処理(破砕・焼却など)が先に終わってB2票・D票が戻り、その後に埋立などの最終処分が完了してE票が戻ってくる流れになります。
90日という期間は、カレンダー上だと約3ヶ月分です。工事の繁忙期には書類の確認が後回しになりがちですが、3か月は意外に早く過ぎます。
もし期限内にB2票・D票が返送されてこない場合、排出事業者は「その期限が過ぎた日から30日以内」に都道府県知事へ報告書(措置内容等報告書)を提出する義務があります。これが「90日ルール+30日報告」の組み合わせです。同様にE票が180日以内に戻らない場合も、30日以内の報告が必要です。
報告義務違反も廃棄物処理法の罰則対象になるため、票が戻らないからといって放置するのは絶対に避けなければなりません。
特別管理産業廃棄物(石綿廃棄物など)を含む場合は期限がさらに短縮されます。B2票・D票の返送期限が90日ではなく 60日 になるため、建設解体現場でアスベスト系廃棄物が出る場合は特に注意が条件です。
参考:返送期限と報告義務についての宮城県公式ページ
産業廃棄物管理票(マニフェスト)制度について – 宮城県
建設現場では1回の搬出でも複数の廃棄物が出ることが多く、マニフェストを1枚しか用意していなかったために違反になるケースがあります。交付単位のルールをきちんと知ることが大切です。
マニフェストは原則として「廃棄物の種類」「運搬車両」「運搬先」の3つの組み合わせごとに1枚交付しなければなりません。たとえば、同じトラックで「コンクリートがら」と「木くず」を一緒に運ぶ場合は、廃棄物の種類が2種類あるためマニフェストは2枚必要です。
また、1種類の廃棄物であっても運搬車両が2台に分かれれば2枚、運搬先が2か所に分かれれば2枚必要です。現場では「まとめて1枚でいい」という思い込みが多いですが、これは違法になります。
ただし例外があります。シュレッダーダストのように複数の廃棄物が混合していて物理的に分別できない場合は、1種類とみなして1枚で対応可能です。また、同一タイミングで収集され、かつ運搬先が同一であれば、複数台のトラックでも1枚にまとめられます。これは問題ありません。
記載事項についても確認しておきましょう。建設系廃棄物マニフェストに記載が必要な主な項目は、交付年月日・交付番号、排出事業者の情報(住所・電話番号・担当者名)、廃棄物が発生した事業場(工事現場)の所在地と名称、廃棄物の種類・数量・荷姿、収集運搬業者と処分業者の情報、最終処分場の所在地などです。
記載漏れや虚偽記載も廃棄物処理法違反です。1年以下の懲役または100万円以下の罰金という重い罰則があります。
委託先の業者が「書いておきますよ」とサービスでマニフェストを記入することがあります。しかし、その内容を確認してサインした時点で、記載内容の責任はすべて排出事業者(元請業者)に移ります。痛いですね。
参考:マニフェストの交付単位・記載事項の詳細
産業廃棄物マニフェスト(産業廃棄物管理票)とは?8つのポイントで解説 – e-reverse.com
「マニフェストは必ず必要」と思っている方は多いですが、実は廃棄物処理法には発行が不要な例外が10種類存在します。建設業に関わる方が知っておくべき主なケースを整理します。
まず代表的な例外が「専ら業者」への委託です。古紙・金属くず・空きびん類・古繊維の4品目(専ら物)を専門に取り扱う業者(専ら業者)へ引き渡す場合は、マニフェストの発行が不要です。建設現場から出る鉄くずや銅線などの金属くずは、この専ら物に該当することがあります。
次に「環境大臣から再生利用認定制度の認定を受けた業者」への委託もマニフェスト不要です。廃プラスチック類・廃木材・廃ゴムタイヤなどが対象品目に含まれており、建設工事でも関係する場面があります。
また、自社で収集運搬と処分の両方を行う場合(外部業者に委託しない場合)も、マニフェストの交付は必要ありません。廃棄物処理法の規定が「処理を他人に委託する場合」を対象としているためです。
ただし、これらの例外に当てはまるケースでも「産業廃棄物処理委託契約書」の締結義務は変わりません。マニフェストが不要でも、書面契約なしに処理を委託すると5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金という、マニフェスト違反よりも重い罰則が科される場合があります。つまり「マニフェストが要らない=何もしなくていい」ではないんです。
建設現場でよくある誤解として、下請けの解体業者が廃棄物を持ち帰って処理する場面で「自分たちが処理するからマニフェストは要らない」と判断するケースがあります。しかし元請業者が排出事業者であるため、下請けが処分業者として動く場合は委託契約とマニフェストが必要です。これは違反になりませんが、意外に混同されやすいポイントです。
参考:マニフェスト交付が不要な10の例外の詳細
産業廃棄物のマニフェストが不要なケースがある!?10種類の例外を解説 – てきせつ
紙マニフェストの管理は、実際のところ非常に手間がかかります。建設現場が複数あれば票の枚数も増え、5年間の保管スペースも必要です。電子マニフェストへの切り替えを検討するのは、現実的なコスト削減策です。
電子マニフェストとは、マニフェスト情報を電子化してJWNET(公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターが運営するシステム)でやり取りする仕組みで、1998年から運用が始まっています。
紙との主な違いは次の通りです。
- 🗂️ 保管義務がない:票の情報はJWセンターがシステム上で管理するため、排出事業者側での紙の保存が不要
- 📊 行政への年次報告が免除:排出事業者は毎年1回、マニフェスト交付状況を都道府県に報告する義務がありますが、電子マニフェストではJWセンターが代わりに報告してくれます
- ✅ 記載漏れ防止機能:システムが入力チェックを行うため、記載不備による廃棄物処理法違反のリスクが大幅に減少
- 📱 進捗がリアルタイムで確認可能:返送を待たなくても、廃棄物の運搬・処分状況をPC・タブレットからいつでも確認できる
電子マニフェストを利用するには、排出事業者・収集運搬業者・処分業者の3者すべてがJWNETに加入する必要があります。委託先がまだ紙マニフェスト運用の場合は、電子化を移行してもらう調整が先決です。
2020年4月からは「前々年度に特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)を年間50トン以上排出した事業場」に電子マニフェストの使用が義務化されました。対象かどうかは年度ごとに判定されるため、毎年自社の排出量を確認するのが原則です。大規模な解体・改修工事を手がける元請業者であれば、この基準に達する可能性があります。
まずはJWNETの公式サイトで利用費用や加入手続きを確認することを、一つの行動として挙げておきます。年間の基本使用料は排出事業者の規模によって異なりますが、紙マニフェストの購入・管理・報告にかかるコストと比較すると、電子化のほうがトータルでコストを抑えられるケースが少なくありません。
参考:電子マニフェストシステム(JWNET)の公式情報
電子マニフェスト ガイドブック2025年版 – 日本廃棄物処理振興センター(JWNET)
参考:電子マニフェスト義務化の対象と条件の解説
Q&A 電子マニフェスト使用の一部義務化等について – 環境省