

木材防蟻処理剤は、現場で主流の農薬系薬剤と、近年採用が増えているホウ酸系薬剤に大きく分けられる。農薬系はシロアリの神経系を阻害する神経毒性を利用し、即効性と駆除力に優れる一方、揮発や経年で有効成分が減衰しやすいという性質がある。
ホウ酸系木材防蟻処理剤は、ホウ酸塩鉱物を精製した無機物を主成分とし、シロアリや腐朽菌の体内代謝を阻害することで長期的に効果を発揮する。哺乳類は腎機能によりホウ酸を体外へ排出できるため、適切な濃度管理のもとでは人やペットへの毒性が比較的低いとされ、屋内の構造材に広く用いられている。
木材防蟻処理剤の性能は薬剤そのものだけでなく、「どのように木材へ含浸させたか」によっても大きく変わる。表面処理は工場・現場を問わず施工しやすく、刷毛塗りや噴霧で木材表層をコーティングするため、コストや段取り面では扱いやすい一方、内部まで薬剤が届かず、切断や欠き込み部から無処理部分が露出しやすいという弱点を抱える。
加圧注入処理は、釜の中で木材を減圧し空気を抜いてから、加圧状態で防腐・防蟻剤を注入し、木材細胞内の導管まで薬剤を深く浸透させる工法である。AQ2種(JAS K3相当)などの規格に応じた条件で処理することで、土台や屋外デッキなど厳しい環境でも長期耐久を期待できる。
木材防蟻処理剤は、建築基準法や関連告示、JIS規格により性能・安全性の基準が定められており、それを満たす製品を選定することが前提となる。表面処理用の木材保存剤は、人体や環境への影響に配慮され、JIS K 1571「木材保存剤―性能基準及びその試験方法」に適合するもの、もしくは同等性能を有する薬剤を使用することが求められている。
過去には、有機リン系防蟻剤クロルピリホスによる室内空気汚染や健康被害が社会問題となり、平成15年の建築基準法改正で建材への使用が禁止された。現在ではこの教訓を踏まえ、居室内に揮発成分が入りにくいホウ酸系や、低揮発型の薬剤、適切な換気計画と併せた総合的な対策が重視されている。
木材防蟻処理剤を使いこなすには、仕様書に記載された「施工手順」と「有効期間」を現場で具体的な段取りに落とし込むことが欠かせない。一般に、地面から1m以内の柱・筋かい・土台などは防蟻処理が義務付けられており、この範囲を確実にカバーする噴霧・塗布が必要とされる。
ホウ酸系工法では、基礎天端から1m程度までの木部を所定のホウ酸換算濃度で処理する標準仕様に加え、玄関周りや配管周りなどシロアリ侵入リスクの高い部分を重点的に噴霧するケースが多い。アメリカカンザイシロアリ対策としては、1階全部処理に加えて2階床組みから上までの全構造材処理を行う仕様もあり、施工範囲を図面上で明示することが重要になる。
木材防蟻処理剤の選定や施工情報は、竣工後には図面から読み解きにくくなりがちだが、BIMやクラウド型台帳を活用することで「どの部位に、どの処理を、いつ実施したか」を長期的に追跡しやすくできる。例えば、柱・土台・横架材を要素ごとに属性付けし、「加圧注入AQ2種」「ホウ酸系標準処理」「現場表面塗布(○年再処理推奨)」といった情報をモデルに紐付ければ、改修時にシロアリ被害のリスク判断や再処理優先順位を決めるうえで大きなヒントとなる。
また、地域ごとのシロアリ分布や気候条件を考慮し、断熱仕様・換気方式とセットで防蟻仕様をテンプレート化しておくと、標準詳細として全社で共有しやすい。たとえば多雪地域や高湿地域では、ホウ酸系防蟻処理と床下点検口の配置、定期点検チェックリストをパッケージで設計プロトコル化することで、担当者が変わっても一定レベルの耐久性能を維持しやすくなる。
木材防蟻処理剤の基本と健康・法規の考え方の詳細解説(薬剤の種類や建築基準法・JISの概要の整理に役立つ)。
防腐・防蟻・防虫処理/木工事の標準仕様とJIS K 1571に関する解説
ホウ酸系防蟻処理剤の工法と濃度設定、処理範囲の具体例を写真付きで説明している資料(ホウ酸系仕様の検討部分の参考)。
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