内線規程ブレーカー選定で定格電流と電線許容電流計算

内線規程ブレーカー選定で定格電流と電線許容電流計算

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内線規程ブレーカー選定

📋この記事の重要ポイント
電動機回路の遮断器選定基準

内線規程JEAC8001-2016に基づき、定格電流の3倍(50A超は2.75倍)以下で始動電流に対応する配線用遮断器を選定する方法を解説

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電線許容電流の計算方法

分岐回路の電線は過電流遮断器定格の40%以上、連続運転電動機では定格電流の1.25倍または1.1倍の許容電流が必要

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過負荷保護装置との協調設計

サーマルリレー等の過負荷保護装置がある場合、電線許容電流の2.5倍以下まで遮断器を大型化できる特例規定を紹介

内線規程改定による電動機ブレーカー選定の変更点

 

2016年10月に内線規程JEAC8001-2016が改定され、配線用遮断器の定格電流選定方法に重要な変更が加えられました。特に電動機回路では、始動電流を考慮した遮断器選定が不可欠となり、トップランナーモータ以外の電動機については従来の選定表が引き続き活用できる形となっています。改定では、直入れ始動の場合は全負荷電流の900%で6秒以内、始動直後の非対称電流は全負荷電流の1300%以下という条件が明確化されました。
参考)https://ntec.nito.co.jp/news/pdf/0000004229.pdf

配線用遮断器の特性として、定格電流100A以下の場合は定格電流の300%で動作時間6秒以上、瞬時引外し電流が定格電流の750%以上であることが求められます。一方、定格電流125A以上の場合は定格電流の500%で動作時間6秒以上の性能が必要です。これらの基準により、電動機の始動時に発生する大電流でも誤作動しない適切な遮断器を選定することが可能になります。
参考)https://harita2021.com/%E5%88%86%E9%9B%BB%E7%9B%A4%E3%81%AE%E8%A8%AD%E8%A8%88%EF%BD%9C%E5%8B%95%E5%8A%9B%E8%B2%A0%E8%8D%B7%E3%81%AE%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%81%AE%E9%81%B8/

電動機定格電流に基づくブレーカーの定格電流算定

電技解釈149条では、電動機分岐回路の過電流遮断器の定格電流は、電動機定格電流の3倍(定格電流50A超の場合は2.75倍)に他の電気使用機械器具の定格電流合計を加えた値以下とすることが定められています。この基準は、電動機始動時の突入電流による誤動作を防ぐために設けられており、通常運転時の定格電流の3~6倍にも達する始動電流を考慮した設計が必要です。​
具体的な選定手順として、まず電動機の定格電流を内線規程JEAC8001-2016資料3-7-3の「電動機の規約電流値」から確認します。例えば三相200V 7.5kWの電動機の場合、全負荷電流は34Aとなり、これに基づいて内線規程の選定表から配線用遮断器の定格電流75Aが選定されます。ただし、電動機に過負荷保護装置(サーマルリレー等)が設置され保護協調が適切な場合は、電線の許容電流の2.5倍以下とする特例が認められています。
参考)http://www.eonet.ne.jp/~y-326/newpage10.htm

日東工業の内線規程改定に伴うブレーカ選定の変更に関する技術資料では、電動機容量別の詳細な選定表と計算例が掲載されています。

分岐回路電線の許容電流と遮断器の関係性

連続運転する電動機に供給する分岐回路の電線は、過電流遮断器の定格電流の1/2.5(40%)以上の許容電流が必要です。内線規程3705-4によれば、電動機の定格電流が50A以下の場合は定格電流の1.25倍以上、50Aを超える場合は1.1倍以上の許容電流を持つ電線を選定することが求められます。この基準により、電線の過熱や焼損を防止し、安全な電気設備の運用が可能となります。
参考)https://harita2021.com/%E5%86%85%E7%B7%9A%E8%A6%8F%E7%A8%8B%E3%81%AE%E8%A7%A3%E9%87%88%E3%81%A8%E8%A7%A3%E8%AA%AC%E3%80%90%EF%BC%91%EF%BC%91%EF%BC%95%E3%80%91%EF%BD%9C%E9%85%8D%E7%B7%9A%E8%A8%AD%E8%A8%88%EF%BC%88%E9%9B%BB/

電線サイズの選定では、許容電流だけでなく電圧降下も考慮する必要があります。三相200V 7.5kW電動機の事例では、CV8-3cケーブル(許容電流43A)とCV14-3cケーブル(許容電流59A)の両方が許容電流基準を満たしますが、電圧降下計算の結果、45m離れた電動機への配線ではCV14-3cを採用することが適切と判断されました。分岐回路の負荷容量は、内線規程3605-3により連続負荷の場合は定格電流の80%を超えないよう設計することが推奨されています。
参考)https://ameblo.jp/yoda-denki/entry-12865040706.html

幹線用ブレーカーの選定手順と電動機複数台の対応

電動機を複数台含む回路の幹線用ブレーカー選定では、電動機の合計電流と電線の許容電流の関係により異なる計算式が適用されます。内線規程では、電動機定格電流の合計ΣImと他の負荷電流ΣIℓの大小関係に応じて、50A以下の場合は電線許容電流Iwを1.25ΣIm+ΣIℓ以上、50A超で電動機電流が他の負荷以下の場合は1.1ΣIm+ΣIℓ以上とする基準が定められています。​
ブレーカーの定格電流Inは、「3ΣIm+ΣIℓ以下」または「2.5Iw以下」のいずれか小さい値を選定します。ただし、電線許容電流が100Aを超える場合で標準定格に該当しないときは、直近上位の定格を選択することが認められています。内線規程の幹線用ブレーカー選定表には、電動機容量の合計と最大使用電流に基づいて、電動機中最大容量に応じた適切なブレーカー定格電流が一覧化されており、実務での選定作業を効率化しています。​
動力負荷のブレーカーサイズ選定に関する詳細な解説記事では、電技解釈149条に基づく具体的な計算例と選定根拠が掲載されています。

始動方式別のブレーカー選定と保護協調の実務対応

電動機の始動方式により必要となるブレーカー容量が大きく異なります。直入れ始動では始動電流が全負荷電流の約6~8倍に達するのに対し、スターデルタ始動ではデルタ切換え時の突入電流が全負荷電流の1600%以下に抑えられるため、相対的に小容量のブレーカーで対応可能です。例えば三相200V 5.5kW電動機(全負荷電流24.6A)の場合、直入れ始動では75Aブレーカーが必要ですが、スターデルタ始動では60Aブレーカーで対応できます。​
保護協調の観点では、電動機に電磁開閉器のサーマルリレーが設置されている場合、過負荷保護はサーマルリレーが担い、ブレーカーは短絡保護を主目的とする構成が一般的です。この場合、ブレーカーの定格電流を電線許容電流の2.5倍以下まで大きくすることができ、電線サイズの最適化が可能となります。ただし、正逆運転など突入電流が非常に大きい特殊な始動方式や、直入れ・スターデルタ以外の始動方式では、標準選定表が適用できないため個別の検討が必要です。​

不動産設備管理における内線規程ブレーカー選定の重要性

不動産従事者にとって、内線規程に基づく適切なブレーカー選定は建物の電気設備の安全性と信頼性を確保する上で極めて重要です。特にビル管理や賃貸物件の電気設備改修では、既設設備の定格確認と新規負荷追加時のブレーカー容量検討が頻繁に発生します。内線規程JEAC8001-2016では、分電盤や幹線の設計基準が体系的に整理されており、電気工事業者との協議においても共通の技術基準として機能します。
参考)https://www.jea-kansai.jp/documents/naisenkitei2016yoyaku.pdf

住宅用分電盤の選定では、主幹容量と分岐回路数の決定に内線規程の推奨値が広く活用されています。一般世帯や二世帯住宅では標準負荷分岐数が内線規程に準拠して設定され、エアコンなどの専用負荷分岐数も考慮した適切な回路構成が求められます。また、2019年の内線規程追補版では感震遮断機能付き住宅用分電盤の施設が推奨事項として追加され、地震時の電気火災防止対策として重要性が増しています。
参考)https://www2.panasonic.biz/jp/basics/electric/breakers/residential-panelboard-selection/

不動産物件の電気容量増強や設備更新の際には、電線の許容電流とブレーカー定格の関係を正確に把握することで、過大投資や不足容量のリスクを回避できます。特に動力設備を含む商業施設やオフィスビルでは、電動機負荷の始動電流を考慮した幹線設計が必要となり、内線規程の計算手順に従った適切な遮断器選定が設備の長期安定運用に直結します。
参考)https://ameblo.jp/yoda-denki/entry-12855483072.html