
建築業において遮断器は電圧レベルによって大きく2つに分類されます。低圧遮断器は直流750V以下、交流600V以下で使用され、主に一般家庭や中小規模の建築物に設置されます 。高圧遮断器は1,000V以上の電圧で使用され、大型工場や商業施設、病院などで必要となる設備です 。
参考)回路ブレーカーの種類: 総合ガイド
電気の契約では、契約電力が50kW未満の場合は低圧電力を、50kW以上の場合は高圧電力を選択する必要があります 。この基準により、建築物の規模と電力需要に応じて適切な遮断器の種類を選定することが重要です 。
参考)高圧と低圧の違い―電力使い分けの理由と必要な受電設備
建築現場では負荷の特性や保護目的に合わせて、サーキットブレーカー(MCB)、モーターブレーカー(MMCB)、漏電遮断器(ELB)の3つの主要な種類から選択します 。
参考)ブレーカーの種類
配線用遮断器(MCCB)は過電流などの大電流が流れた際に自動的に電路を遮断し、一般家庭やオフィス、工場など多くの電気設備で使用されます 。交流600V・直流500V以下の低圧で使用され、消弧室内の障壁により冷却・裁断して消弧する仕組みです 。
漏電遮断器(ELB)は内蔵された零相変流器で漏電を検知し、自動的に電路を遮断します 。配線用遮断器に地絡検出機能を組み込んだもので、漏電が発生した時に遮断して感電や火災を防ぎます 。テストボタンにより動作確認ができるため、定期的な保守点検が可能です。
参考)TERASU辞書
電動機保護兼用配線用遮断器(モーターブレーカ)は電動機の保護を目的とした特殊な配線用遮断器で、電動機の始動電流で動作しないよう設計されています 。動力負荷の選定では始動電流が定格電流の10倍から15倍程度流れるため、不要動作を防ぐ特性が重要です 。
参考)配線用遮断器・漏電遮断器の機能と選定
真空遮断器(VCB)は真空バルブと呼ばれる磁器やガラス製の真空容器内に接触子を封入したタイプです 。真空は拡散作用が大きく、遮断時に発生するアークを消滅させることが可能で、絶縁性能が高く極間が小さく済みます。経済性や消弧能力の高さから高圧受変電設備で汎用的に使用されています 。
参考)【高圧遮断器】VCBやGCBの構造・種類について ~継電器に…
ガス遮断器(GCB)は絶縁性能の高いSF6(六フッ化硫黄)ガスにより消弧する遮断器で、主に特別高圧の受変電設備で使用されます 。SF6は消弧能力が高く性能的には優秀ですが、温暖化ガスのため大気中に排出しないよう管理が義務付けられています 。
参考)断路器・開閉器・遮断器の違いを解説【間違えては絶対ダメ】
油遮断器(OCB)は接触子を内蔵した容器内に絶縁油を入れたタイプで、遮断時のアークで油が分解されて発生する水素ガスの冷却作用により消弧します 。絶縁油を使用するため定期的な油の管理が必要となり、近年はあまり使用されなくなっています 。
遮断器の選定では3つの主要な条件を満たす必要があります。遮断器に流れる最大負荷電流値以上であること、定格遮断電流が系統の短絡電流以上であること、定格短時間耐電流が系統の短絡電流の通電に耐えられることです 。
参考)受変電設備の設計|高圧交流遮断器『CB』の使用用途と選定方法…
電動機回路の配線用遮断器選定では、始動電流による瞬間的な大電流を考慮する必要があります 。具体的な計算式は「遮断器定格電流 =(電動機定格電流の合計×3)+ 他の機器の定格電流の合計」となります 。
高圧受電の場合、受電電圧が6600Vのため定格電圧7.2kVのものを選定します 。これは常時の系統電圧変動を考慮し、公称電圧の1.2/1.1倍として設定されています 。
感震ブレーカーは震度5強以上の地震を感知し、分電盤の主幹ブレーカーを強制遮断して電源をストップする装置です 。阪神大震災では出火原因の約6割が電気の復旧に伴う「通電火災」によるもので、地震時の二次災害防止対策として重要です 。
参考)https://www.monotaro.com/k/store/%E5%9C%B0%E9%9C%87%E5%AF%BE%E7%AD%96%20%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%BC/
家庭用電源遮断器「スイッチ断ボール3」は震度5強相当以上の地震で確実にブレーカーを落とし、感知震度を震度5・6・7相当の3段階で設定可能です 。電源不要のシンプルな構造で取付も簡単で、重り玉が落下してブレーカーが自動的に下がる仕組みです 。
緊急遮断弁は高圧ガス保安法や消防法により設置が義務付けられており、機械式の場合は電源・制御盤・電気配線・バッテリー不要の安心・安全・省エネ形です 。災害時の燃料供給ライン遮断や飲料水確保など、緊急時の遮断に外部動力を不要とした機械式が効果的です 。
参考)緊急遮断弁
遮断器の主な故障原因として、回路の過負荷による隠れた危険性があります 。過負荷が継続すると接点やコイルの過熱により機器の寿命が短縮され、最終的には遮断機能の低下を招きます 。
参考)回路遮断器損傷の7つの主な原因の分析
短絡故障は瞬間的な電流サージにより、中性線と活線が物理的に接触し電流が瞬時に増加する現象です 。主に回路の老朽化や絶縁不良、配線の欠陥により発生し、焦げ臭い匂いやソケットの汚れで判別できます 。
高圧受電設備の保守点検は法律で義務付けられており、電圧・電流の測定、機器の動作確認、異常発熱や騒音のチェックが主な内容です 。機器の種類やメンテナンス頻度により異なりますが、大体10~20年で交換が必要となります 。定期的な月次点検・年次点検により、突発的な設備停止や電力供給トラブルを未然に防ぐことが可能です 。
参考)https://u-power.jp/sdgs/future/000793.html