

三種ケレンで済む現場を二種ケレンで施工すると、余計な費用が1㎡あたり1,000円以上かかる損をします。
ケレンとは、塗装前に行う下地処理(素地調整)のことで、英語の「clean(クリーン)」を語源とする呼び方です。塗面のさびや旧塗膜、汚れを取り除くことで、塗料の密着性を高め、塗装の耐久性を向上させる最重要工程です。ケレンの種別は大きく4段階(1種〜4種)に分かれており、なかでも現場で最も判断を迷うのが「二種」と「三種」の選び分けです。
結論から言えば、二者の最大の違いは「活膜(かつまく)を残すかどうか」の一点に集約されます。
二種ケレンは、ディスクサンダーや電動ワイヤーブラシなどの動力工具を中心に使い、さびや旧塗膜をすべて除去して鋼材面を露出させる作業です。活膜・死膜を問わず旧塗膜を全面的に取り除くのが前提となります。旧塗膜と異なる種類の塗料を使う場合や、さびの発生面積が鋼材の30%以上に及ぶ場合に選択されます。
三種ケレンは、動力工具と手工具を組み合わせて使い、密着性が維持されている旧塗膜(活膜)は残しながら、剥がれ・浮き・ひび割れが起きている旧塗膜(死膜)とさびだけを除去する方法です。一般的な住宅の外壁・屋根・鉄部塗装において最も多く採用されており、現場でのケレン作業の主力と言えます。
つまり二種ケレンが「全面除去」、三種ケレンが「選択的除去」ということです。
下記の日本ペイント公式サイトでは、ケレンの定義と各種別の解説が詳しくまとめられています。
ケレン | 日本ペイント株式会社(ケレンの各種別と活膜・死膜の定義)
二種ケレンの適用基準は「発錆面積が30%以上」ですが、実際の現場でこの数字をどう読み取るかは、現場担当者の経験と目視判断に委ねられています。ここを曖昧にすると種別の誤選定につながるため、具体的なイメージを持っておくことが重要です。
発錆面積30%というのは、たとえば横10cm・縦10cm(はがきよりやや小さいサイズ)の範囲を1つの単位として見たとき、そのうち3cm×10cmぶんの面積、つまり1/3程度がさびで覆われている状態に相当します。鉄骨の柱や梁の1面全体を目視したときに、さびが点在しているのではなくある程度連続して広がっている状態です。さびが点々と発生しているだけであれば、三種ケレンの範囲内であることが多いです。
三種ケレンのなかでも、さらに次のように細かく3段階(A・B・C)に分類されます。
| グレード | さび面積 | 塗膜異常面積 |
|---|---|---|
| 三種A | 15〜30% | 30%以上 |
| 三種B | 5〜15% | 15〜30% |
| 三種C | 5%以下 | 5〜15% |
三種AはさびがかなりあってもB・Cより多い段階で、二種ケレン手前の最も重いランクです。三種A〜Cの作業内容そのものは同一ですが、グレードの違いは記録・仕様書上の根拠となるため、現場確認の際にどのランクに相当するかを明確にしておきましょう。
現場で迷ったときの判断材料として、(公社)日本道路協会『鋼道路橋防食便覧 平成26年3月』が基準として広く使われています。施主によって定義が異なる場合もあるため、工事仕様書の確認が条件です。
ケレン・素地調整の種類「1種・2種・3種・4種ケレン」の概要、違い | DNT(各種別の判定基準と表一覧)
二種と三種ケレンは、どちらも動力工具と手工具を使う点では共通していますが、その使い方と比重が大きく異なります。
二種ケレンでは、ディスクサンダー(ディスクグラインダー)やワイヤーホイールなどの電動工具を主力として全面的に旧塗膜・さびを削り取ります。電動工具で届きにくい隅部や複雑な形状の部位では、ハンマーやスクレーパーなどの手工具を補助的に使います。作業負荷は高く、粉塵の飛散対策も必要です。
三種ケレンでは、ワイヤーブラシ・スクレーパー・サンドペーパー・ケレン棒などの手工具を中心に使い、動力工具は補助的に活用します。活膜を残す必要があるため、除去しすぎに注意しながら慎重に作業を進めることが求められます。これが使い方が難しいと言われる理由です。
現場でよく起きるミスは「三種指定なのに電動工具を全面にかけてしまい、活膜まで削り落とす」というケースです。活膜を無駄に除去すると、仕様上は三種施工でも実質的に二種相当の状態になってしまいます。結果として施主への説明責任が生じる可能性もあるため、注意が必要です。
工具選定で迷う場合は、作業対象の部位・形状・さびの程度を現場で再確認してから選ぶのが原則です。
素地調整、ケレン作業で用いる工具・道具とその使い方 | DNT(各工具の役割と選び方の解説)
「活膜はなぜ残すのか」という疑問は、ケレンを初めて学ぶ人に限らず、ベテランでも本質を言語化できていないことがあります。ここが曖昧だと、現場の判断がぶれます。
活膜とは、旧塗膜のうち下地との密着性が十分に保たれており、上から新しい塗料を塗っても支障がない状態の膜のことです。活膜を除去せずに残す理由は大きく2つあります。
1つ目はコスト効率です。密着性が保たれている塗膜を無理に除去しても、塗装品質の向上には寄与しません。むしろ除去にかかる時間と費用が増えるだけです。三種ケレンの単価(500〜1,200円/㎡)が二種(1,300〜2,500円/㎡)より安い背景には、活膜を活用する合理性があります。
2つ目は素地保護です。活膜が鋼材面を覆っている間は、素地への直接的な水分・酸素の接触を防いでいます。必要以上に除去して鋼材を露出させると、さびの再発リスクが高まります。これは三種ケレンを選んだ現場では特に重要な視点です。
ただし活膜に見えても、実際には密着性が低下していることもあります。コインスクラッチやナイフカットなどの簡易テストで膜の状態を確認する習慣をつけると、判断精度が上がります。
ケレンの種別は塗装工事のコストに直接影響します。現場担当者として、相場感を把握しておくことは必須です。
| ケレン種別 | 単価目安(/㎡) |
|------------|----------------|
| 一種 | 3,000〜5,000円 |
| 二種 | 1,300〜2,500円 |
| 三種(A〜C)| 500〜1,200円 |
| 四種 | 200〜500円 |
二種と三種では、単価に最大2〜3倍の差があります。たとえば100㎡の鉄部塗装の現場で三種指定のところを誤って二種で施工した場合、費用差は8万〜13万円規模になることもあります。施主への追加請求が発生するリスクや、逆に二種必要な現場を三種で終わらせてしまい後から塗装剥がれが発生するリスクも見逃せません。
見積書のチェックポイントとして、次の点を押さえておきましょう。
- ✅ ケレンの種別(何種か)が明記されているか
- ✅ 面積(㎡)の根拠が現地確認に基づいているか
- ✅ 「下地処理」「さび落とし」など別称で記載されていないか(確認が必要)
- ✅ 一式表記になっていないか(種別が不明瞭になる)
「塗装面積に対してケレン費用が小さすぎる」場合は、種別の誤記入や作業省略の可能性があるため、必ず確認を取ることが重要です。一般住宅の工事では工事監督者がいないケースも多く、ケレン作業の品質は現場任せになりがちです。スケジュールを事前に把握し、工程中に確認する機会を設けることを強くお勧めします。
ケレンの4つの種類とは?価格相場と依頼の際の注意点についても紹介 | 塗り替え情報館(費用相場と注意点の詳細)