

手工具だけでケレンをこなしても、塗膜寿命が電動工具使用時の約半分に縮まることがある。
ケレン作業とは、塗装前に行う下地処理のことで、専門用語では「素地調整」とも呼ばれます。古い塗膜やサビ、汚れを除去し、新しい塗料がしっかりと密着できる面を作ることが目的です。この工程を省略したり、不十分なまま塗装をすると、数年以内に塗膜が剥がれてしまうことがあります。結論はシンプル:ケレンの質が塗装全体の寿命を決めます。
ケレンには1種から4種までの区分があり、下地の劣化状態に応じて使う道具と処理レベルが変わります。1種ケレンはショットブラスト・サンドブラストなどのブラスト工法を用いる最も徹底した処理で、主に橋梁や大型鋼構造物に適用されます。2種ケレンは発錆面積が30%以上の場合に電動工具を使って広範囲のサビと旧塗膜を除去します。3種ケレンは30%未満の部分的なサビを電動工具と手工具の併用で処理し、活膜(まだ密着している健全な旧塗膜)は残します。4種ケレンは劣化が軽度な場合に手工具のみで行う目荒らし・清掃レベルの処理です。
道具の選び方が変わるということですね。ケレンの種別ごとに適切な道具を揃えることが、現場での仕上がりと作業効率の両方につながります。ここからは、動力工具・エアー工具・手工具それぞれの代表的な道具と選び方を詳しく解説していきます。
| ケレン種別 | 主な使用道具 | 適用場面 | 費用相場(㎡) |
|---|---|---|---|
| 1種 | ショットブラスト・サンドブラスト | 橋梁・大型鋼構造物 | 3,000〜5,000円 |
| 2種 | ディスクサンダー・カップワイヤーブラシ | 発錆30%以上の鋼材 | 1,000〜2,500円 |
| 3種 | ディスクサンダー+ワイヤーブラシ・スクレーパー | 部分的なサビが点在 | 600〜1,200円 |
| 4種 | サンドペーパー・研磨パット・スクレーパー | 劣化が軽微な付帯部など | 200〜500円 |
ケレン作業における電動工具は、手工具では対応しきれない広範囲のサビ除去や厚い旧塗膜の剥離に力を発揮します。主な電動工具として現場でよく使われるのは、ディスクグラインダー(ディスクサンダー)、サンダー、ブリストルブラスター、パワーブラシ(カップワイヤーブラシ・ワイヤーホイルブラシ)などです。
ディスクグラインダー(ディスクサンダー) は、円盤状の先端パーツを付け替えることで金属やコンクリートの切断・研削が可能な電動工具です。ケレン用途では研磨ディスクやカップワイヤーブラシを装着し、広範囲のサビや古い塗膜を一気に削り落とします。2種・3種ケレンの主力工具です。刃の種類を現場の素材に合わせて選ぶことが基本です。
ブリストルブラスター は、建築業従事者の間でも注目度が高まっている比較的新しい工具です。縦回転するブラシ先端がアクセルバーで加速され、素材表面に衝撃を与えることで、ショットブラスト工法(1種ケレン)と同等レベルの素地調整が可能とされています。大掛かりな設備不要でハンディに使えるため、港湾や橋梁の局所的な処理、高所など大型機材の持ち込みが難しい場面で特に重宝されます。これは使えそうです。
カップワイヤーブラシ・ワイヤーホイルブラシ はどちらもパワーブラシの一種で、ディスクグラインダーに取り付けて使います。カップ型は広い平面に向いており、ホイル型(ワイヤーホイル)は接地面が狭く凹凸や狭い箇所のサビ取りに向いています。毛材の種類(スチール・ステンレス・真鍮など)によって硬さや用途が変わるため、素材に合わせた選択が必要です。
電動工具を使う際、騒音・粉塵・振動の3点は必ず考慮してください。長時間作業では防振グリップ付きモデルを選ぶことで、手や腕への負担を大幅に軽減できます。マキタの電動ケレンは従来機比で約25%の振動低減を実現しており、疲労の蓄積を防ぐ選択肢の一つです。電動工具が条件です。
参考:電動工具を含むケレン工具の種類と用途についての詳細解説
素地調整、ケレン作業で用いる工具・道具とその使い方|大日本塗料
手工具は、電動工具では届かない細かい部分や狭い箇所の処理、そして3〜4種ケレンのような比較的軽度な下地調整に欠かせない存在です。代表的な手工具として、スクレーパー(皮スキ)、ケレン棒、ワイヤーブラシ、やすり(マジックロン)、サンドペーパーがあります。
スクレーパー(皮スキ) は、ケレン作業で最も一般的に使われる道具の一つです。ステンレス製や鋼製のヘラ状の刃を塗布面に対して約30度の角度で当て、削ぎ落とすように使います。刃を交換できる交換式タイプを選ぶと、劣化・破損時のコストを抑えられます。幅広タイプ・3枚刃タイプなど形状が豊富で、作業面の広さや形状に合わせた使い分けが可能です。
ケレン棒 は先端に刃が付いた金属製のヘラで、スクレーパーと同義で使われることもあります。全長960mmのような長柄設計のタイプを選ぶと、かがまずに作業できるため腰への負担が軽くなります。グリップエンドがハンマー打ちに対応しているタイプは、頑固なサビや厚い塗膜の除去にも対応できます。
ワイヤーブラシ は、毛の部分が金属(ステンレスや真鍮)またはナイロンでできたブラシです。電動工具が入らない細かい隙間・狭い部分の仕上げに不可欠です。ステンレス毛は平面のサビ落としに、真鍮毛は磨き・仕上げ用として向いています。毛の形状はストレートとちぢれタイプがあり、ちぢれタイプのほうが接触面積が増えてサビを絡め取りやすい特徴があります。
サンドペーパー は番手選びが仕上がりを大きく左右します。サビ落としや旧塗膜の除去には#80〜#180の粗目〜中目を、目荒らし(足付け)には#240〜#320の中目を使うのが基本です。素材や塗料メーカーの指定に従うことが原則です。
手工具の使い方にも注意点があります。スクレーパーは力任せに使うと素材自体を傷つけてしまうことがあるため、適度な角度と力加減の調整が必要です。厳しいところですね。また、手工具による長時間作業は手首や指への負担が大きいため、こまめな休憩と適切なグリップ設計の道具選びが健康管理の観点からも重要です。
参考:スクレーパーやワイヤーブラシの使い方や種類の詳細
おすすめのケレン工具ランキングを電動・エアー・スクレーパー別に解説|ヌリカエ
一般的な記事では取り上げられることが少ないですが、現場では特殊な形状の箇所に対応する専用工具が求められることがあります。この視点を持っておくと、作業品質が大きく変わります。
リベットシェーバー は、金属構造物の接合に使われるリベット(クギ状の結合部品)のケレン作業専用工具です。ディスクグラインダーに取り付け、刃でリベット頭部を覆うように回転させて塗膜を剥がします。リベット部分は旧塗膜が厚く、根本やキワの処理が難しいため、手工具では相当な時間がかかります。リベットシェーバーを使うことで、そのような箇所の作業時間を大幅に短縮できます。
ケレンマイスター は、六角ボルトやナット接合部のケレン作業に特化した工具で、ディスクグラインダーに接続して使います。螺旋状の「ヘリカルブレード」が回転することで、ボルト・ナットの複雑な側面の溝にも柔軟に対応し、鋼材面が露出するまでの素地調整が可能です。重量が軽く、騒音や反動も比較的少ないのが特徴です。
これらの工具は決して高頻度で使うものではありませんが、いざ橋梁や大型鉄骨構造物の塗装工事を担当したときに知っているか知らないかで、現場の作業効率と完成品質に大きな差が出ます。知らないと損するということですね。
ウォータージェット も特殊箇所向けの選択肢として覚えておく価値があります。高圧水を噴射して塗膜を剥離する工法で、振動・騒音・粉塵を発生させない点が最大のメリットです。ただし、大量の排水処理が必要になるため、作業環境と排水対策のコストを事前に確認しておく必要があります。
特殊工具の導入を検討する場面では、まず「どの箇所のケレンに問題が生じているか」を明確にしてから工具を選ぶことが重要です。道具ありきで考えると、必要のないコストが発生することがあります。それが条件です。
ケレン作業は塗装工程のなかでも特に粉塵が多く発生する工程であり、安全・健康管理の面でも正しい知識が求められます。意外ですね、と感じるかもしれませんが、道具の選び方と同じくらい保護具の選び方が重要です。
ケレン作業中に除去した旧塗膜や錆が粉塵として飛散します。特に注意が必要なのが、2000年以前に施工された建物や構造物の塗膜です。古い建物の旧塗膜には石綿(アスベスト)や鉛系顔料が含まれている可能性があり、これをケレンで削り取ると高濃度の有害粉塵が発生します。こうした現場では、一般的な防塵マスク(使い捨て式)では対応できません。石綿則では、石綿粉塵が飛散するおそれのある作業では防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具(G-PAPR)または給気式呼吸用保護具の使用が求められています。
鉛含有塗膜を対象とするケレン作業においても、鉛中毒予防規則に基づいた呼吸用保護具の選定と管理が義務付けられています。現場の塗膜の成分確認が条件です。施工前に「事前調査」として旧塗膜の分析を行い、含有物質に応じた保護具を準備することがプロとしての基本姿勢です。
電動工具使用時には、飛散する粉塵から目を守るゴーグル(保護メガネ)も不可欠です。また、高速回転する工具の刃・ブラシの飛散を防ぐため、耐切創性の手袋着用も推奨されます。
石綿含有建材の有無は、目視では判断できません。古い建物の塗装工事を請け負う際は、施工前に専門機関への分析依頼か、石綿作業主任者への確認を行うことが安全管理の原則です。
参考:石綿作業時の呼吸用保護具の選び方に関する詳細
アスベスト作業時の防じんマスク選びとは?作業従事者が守るべきルール|アスナビ
参考:鋼構造物塗替え塗装における事故事例と鉛対策(国交省・業界団体資料)
鋼構造物塗替え塗装における事故事例と対策(PDF)|橋梁塗装業界団体資料
道具選びは品質面だけでなく、コスト管理の観点からも重要です。ケレン作業にかかる費用相場(業者発注時)は、4種ケレンで㎡あたり200〜500円、3種で600〜1,200円、2種で1,000〜2,500円ほどが目安とされています。自社施工の場合、道具の初期投資とランニングコストをこの相場と照らし合わせることで、投資対効果を判断できます。
電動工具の場合、ディスクグラインダー(サンダー)は5,000円〜15,000円程度で購入でき、汎用性が高く幅広いケレン種別に対応できます。一方、手工具のワイヤーブラシやスクレーパーは1,000円〜5,000円程度が相場で、初期コストは低いですが、広範囲の作業では圧倒的に時間がかかります。つまり電動工具が原則です。
消耗品のコスト管理も見落としがちなポイントです。スクレーパーの刃は消耗品で、切れ味が落ちた状態で作業を続けると研磨力が低下するだけでなく、素材を傷つけるリスクも高まります。刃交換式のスクレーパーを選び、定期的に交換する習慣を持つことがコスト削減につながります。
電動工具のブラシ・砥石類も同様で、摩耗したまま使い続けると作業時間が伸びて人件費がかさみます。消耗品の交換サイクルを把握しておくことが現場の効率化につながるということですね。
また、工具の互換性も見逃せません。マキタの18Vバッテリーは同社の350機種以上の工具と互換性があります。バッテリーを統一することで購入・管理コストを大幅に抑えられます。複数の電動工具を持つ現場では、同一メーカー・同一バッテリー規格で揃えることを検討する価値があります。
道具への投資は「使える予算の中で最低限を揃える」ではなく、「作業品質と安全性を担保できる基準で選ぶ」という考え方が長期的なコスト削減につながります。安価な工具で作業品質が落ち、塗装のやり直しが発生した場合、そのコストは道具代の何倍にもなりえます。痛いですね。現場のプロとして、道具選びの基準を持っておくことが最終的なコストダウンにつながると覚えておけばOKです。
参考:ケレン作業の種類ごとの費用相場と道具についての詳細解説
塗装工事に欠かせない!仕上がりをキレイにするために重要なケレン作業とは|株式会社ミヤケン