繊維補強コンクリート種類と特徴、用途、施工方法

繊維補強コンクリート種類と特徴、用途、施工方法

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繊維補強コンクリートの種類

この記事で分かること
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4つの主要な繊維種類

鋼繊維・ガラス繊維・炭素繊維・有機繊維の特性と用途を詳しく解説します

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各種類の性能比較

強度・耐久性・コスト面から最適な繊維補強コンクリートを選択できます

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施工と品質管理のポイント

現場での製造方法や品質確保のための管理手法をご紹介します

繊維補強コンクリートにおける鋼繊維の種類と特性

鋼繊維補強コンクリート(SFRC)は、コンクリート中に鋼繊維を混入した複合材料で、主にカットワイヤーと呼ばれる鋼線を切断したものが使用されます。一般的に直径0.2~0.5mm、長さ10~60mm程度の寸法で製造され、スチールファイバーとも呼ばれています。鋼繊維の形状は製造法により3種類に分類され、1種(角形断面)、2種(円形断面)、3種(三日月断面)があり、繊維長は25~40mm、強度は60kg/mm²以上が標準とされています。
参考)繊維補強コンクリート メーカー10社 注目ランキング【202…

SFRCの最大の特徴は、コンクリートの弱点である引張り・曲げ・せん断強度を1.3~1.8倍に改善できる点です。圧縮強度はほとんど改善されませんが、破壊性状が大きく変化し、極めて粘り強く靭性のある材料となります。また、耐磨耗性や耐熱性にも優れており、AE剤と併用することで凍結融解に対する耐久性も著しく改善されます。
参考)https://www.jepoc.or.jp/tecinfo/library.php?_w=Libraryamp;_x=detailamp;library_id=37

実際の施工現場では、鋼床版の疲労耐久性向上対策として広く採用されています。鋼床版とSFRC舗装を一体化させることで剛性を付与し、デッキプレートとUリブの溶接部の局部変形や応力を軽減し、疲労亀裂の発生を抑制します。アスファルト舗装と比べて感温性が小さいため、季節を問わず床版の剛性を確保できる利点があります。
参考)鋼床版補強用SFRC工法|前田道路株式会社

繊維補強コンクリートにおけるガラス繊維の種類と用途

ガラス繊維補強コンクリート(GRC)は、耐アルカリガラス繊維をセメントまたはセメントモルタルに混入した複合材料です。耐アルカリガラス繊維にはジルコニアが16%前後含有されており、セメントのアルカリ環境に対応できる特性を持っています。1965年代後半から繊維補強コンクリートの先駆けとして実用化され、1973年に日本に技術導入が開始されました。
参考)日本GRC工業会

GRCの主な特徴として、軽量性、高い強靱性、不燃性が挙げられます。表面が緻密で加工性に優れており、特に建築における装飾目的の構造物やファサードなどに使用される場合が多いです。高層ビルの内外装や大面積の天井に最適で、高レベルの耐久性と耐火性を備えています。
参考)GRCの特徴・用途|GRCとは|日本GRC工業会|環境にやさ…

耐塩害性に優れているため海岸や海上施設での使用が可能で、凍害にも強く寒冷地でも問題なく使用できる点が大きな利点です。また、セメントもアルカリ性をpH11~12に抑制した低アルカリセメントを使用することで、長期的な耐久性を確保しています。
参考)https://www.infratec.co.jp/images/contents/catalog-data/1721/FRC2020-08-A4.pdf

繊維補強コンクリートにおける炭素繊維の種類と施工方法

炭素繊維補強コンクリート(CFRC)に使用される炭素繊維には、PAN系とピッチ系の2種類があります。PAN系はポリアクリロニトリルを原料とし1000℃以上で焼かれて製造され、ピッチ系は石炭ピッチを精製・重合して製造されます。炭素繊維の最大の特徴は、鉄の1/4の比重で軽量でありながら、鉄の10倍の引張強度を持ち、錆びない、腐食しないという優れた性質です。​
炭素繊維補強セメント系材料は、軽量で強度と靱性の向上が得られ、耐熱・耐火性を備えています。一方で、セメント系材料との付着強度はあまり大きくなく、破断伸びが小さいという特性も持っています。そのため、施工時には繊維の分散性と付着性を十分に確保する必要があります。
参考)https://bridge.eng.hokudai.ac.jp/wp-content/uploads/2020/06/FractureOfFiberComposite_Chapter2.pdf

建築現場での補強工法としては、炭素繊維シートを施工用エポキシ樹脂で既存鉄筋コンクリート構造物の躯体表面に巻き付けるCFRP補強工法が一般的です。軽量・耐食性に優れた特徴を活かし、既存構造物の補修・補強に広く適用されています。youtube​
参考)連続繊維補強工法

繊維補強コンクリートにおける有機繊維の種類と特徴

有機繊維補強コンクリートに使用される繊維には、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ナイロン繊維などがあります。これらは鋼繊維に比べて軽量で密度が小さいという特徴を持ちます。特にポリプロピレン短繊維は、コンクリートのひび割れの進展を抑制する目的で広く使用されており、ひび割れを架橋することで進展を抑制します。
参考)https://www.kajima.co.jp/news/digest/dec_2002/techno/index-j.htm

ポリプロピレン繊維補強コンクリートの重要な用途として、爆裂防止対策があります。設計基準強度100~70N/mm²の高強度コンクリートに適用されており、火災時の爆裂を抑制する効果が認められています。土間コンクリートなどの建築構造物の非構造部材では、乾燥収縮ひび割れ抑制のための鉄筋やワイヤーメッシュを省略し、ポリプロピレン短繊維補強コンクリートだけで部材を作製することが可能です。
参考)コンクリートおよびモルタル用ポリプロピレン短繊維によるコンク…

ポリアミド繊維は直径19.5μmの微細な繊維を544本に集積した組糸形で使用され、付着比表面積を大きくし、繊維表面に界面活性剤を塗ることで分散性を改善しています。繊維径を細くすることで、ひび割れ面に含まれる繊維の表面積を増加させ、少ない混入率でも剥落防止効果を付与できることが明らかになっています。
参考)https://data.jci-net.or.jp/data_pdf/33/033-01-1034.pdf

繊維補強コンクリートにおける超高性能繊維の種類(UHPFRC)

超高性能繊維補強コンクリート(UHPFRC)は、世界共通の明確な定義はありませんが、一般に圧縮強度150MPa以上、引張強度5MPa以上とされることが多い次世代の高強度材料です。水結合材比が15%程度で極めて緻密なセメント系材料を繊維で補強したもので、非常に緻密な構造を有するため透気性が極めて低いという特徴があります。
参考)公益社団法人 日本コンクリート工学会

UHPFRCは鋼繊維を多量に混入して現場で製造・打設し、薄層でありながら高耐久な床版を構築できます。コンクリート床版や鋼床版のリニューアルにおいて、床版増厚の量を最小限に抑えることができ、道路橋床版自体の重量を減らせるため橋梁下部工の補強が不要となります。
参考)https://www.kajima.co.jp/news/press/202012/23c1-j.htm

超速硬型のUHPFRCも開発されており、急硬材を添加することで早期強度発現性に優れ、早期に交通開放が可能となります。既設床版の耐久性向上を目的とした床版上面増厚工法に適用される補修材として、高強度かつ高耐久性を有しています。施工現場近くのプラントや現場に設置した仮設プラントでUHPFRCを製造し、現場打ちで工事を進めることができ、道路勾配最大12%でも成形可能です。
参考)https://www.mu-cc.com/corporate/business/pdf/report_022.pdf

繊維補強コンクリートの種類別施工と品質管理

繊維補強コンクリートが性能を正しく発揮するためには、製造段階における正確な計量と十分な混和が必要です。通常のコンクリートよりも粘性が高いため、オムニミキサ、ホバートミキサ、強制練りミキサなど、練混ぜ性能・効率の高いミキサが使用されます。コンクリート中の繊維はできるだけ均等に分散され、ランダムに配向されることが性能発揮の必須条件となります。​
品質管理試験としては、スランプ、空気量、振動式試験機による曲げ強度測定などが実施されます。鋼繊維補強コンクリートの場合、掃流式試験機による耐摩耗性試験の結果では、鋼繊維補強により耐摩耗性が約2倍以上向上することが認められています。混入率については実用的には2Vol%以下が良いとされており、繊維の品質は土木学会指針・規準「コンクリート用鋼繊維」またはそれと同等以上とされます。
参考)鋼繊維補強コンクリートの品質管理例

ポリプロピレン短繊維を部材表層のみに混入させる工法も開発されており、この工法を用いたコンクリートは繊維を混入していないコンクリートで発生するひび割れを98.9~100%抑制することが確認されています。配筋作業がなくなることでの工期短縮や、配筋がなくなることでの作業員の足元安定による作業効率改善は、建設現場の生産性向上にも寄与しています。
参考)https://www.tokyu-cnst.co.jp/technology/lab/report/pdf/No45_02.pdf

繊維種類 主な特徴 代表的な用途 混入率の目安
鋼繊維(SFRC) 引張・曲げ・せん断強度1.3~1.8倍、高い靭性 道路舗装、トンネルライニング、橋床版 0.5~2Vol%
ガラス繊維(GRC) 軽量、高い加工性、耐塩害性 建築装飾、ファサード、海岸構造物 -
炭素繊維(CFRC) 超軽量(鉄の1/4)、超高強度(鉄の10倍) 既存構造物補強、高耐久構造物 -
有機繊維 軽量、ひび割れ抑制、爆裂防止 土間コンクリート、高強度コンクリート 少量添加
UHPFRC 圧縮強度150MPa以上、超高耐久性 橋梁床版リニューアル、薄層補強 鋼繊維多量混入

超高性能繊維補強コンクリート(UHPFRC)の詳細 - 日本コンクリート工学会
UHPFRCの定義、特性、最新の研究動向について専門的な解説が掲載されています。

 

SFRC(鋼繊維補強コンクリート)の技術資料 - 日本電力
SFRCの基礎から応用、ダム・水路構造物への適用事例まで詳しく解説されています。

 

GRCの特徴と用途 - 日本GRC工業会
ガラス繊維補強コンクリートの公式技術情報と50年の歴史について確認できます。