

密度55kg/㎥を下回って吹き込むと、壁内で沈下が起き断熱欠損のクレームになります。
セルロースファイバーの吹込み工法には「乾式(ドライ)」と「湿式(ウェット)」の2種類がありますが、日本の住宅現場で主流になっているのは乾式吹込みです。代表的な工法として「デコスドライ工法」があり、認定施工技術者が専用ブロワーマシンを使って施工します。
乾式施工には明確な手順があります。順番を守ることが断熱欠損ゼロにつながります。
| 手順 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ①準備 | 電気・配管配線の確認、清掃 | 専用ブロワーマシンの事前確認必須 |
| ②シート貼り | 透湿シートを柱間に張る | ピンと張る(たるみ禁止) |
| ③貫通部処理 | 電気ボックス・配管廻りのシール | 隙間があると吹込み圧で材料が噴出する |
| ④穴あけ | シートにカッターで小穴を開ける | できるだけ小さく開ける |
| ⑤ブロワー投入 | マシンにセルロースファイバーを投入 | ホース内の詰まりに注意 |
| ⑥吹込み | 奥から隅々まで圧力をかけて充填 | 手で押してシートの張りを確認しながら進める |
| ⑦穴ふさぎ | 専用テープでシートの穴を塞ぐ | テープの密着性を確認する |
| ⑧清掃 | 上階から順に清掃 | 細粉が下地に積もるため掃除機で念入りに |
手順⑥の吹込み作業が最も重要です。ホースをシート内に差し込み、奥や隅々まで丁寧に動かしながら圧力をかけて充填します。構造金物・筋交い・補強金物の周辺は特に材料が届きにくいため、ホースを細かく動かして確認することが求められます。
吹込みが完了したら、必ず手でシート表面を押さえて密度感を確認してください。次のスパンに移動する前に「シートがパンパンに張り切った感触」があることを確認するのが基本です。
シートがたるんでいると断熱がムラになります。
参考:施工手順の詳細と失敗しない7つのポイント
断熱材セルロースファイバー施工の8つの手順と失敗しない7つのポイント | セルロースファイバーナビ
セルロースファイバー吹込みで最も多いトラブルが「沈下による断熱欠損」です。施工直後は問題なく見えても、数年後に壁上部に隙間が生まれて断熱性能が落ちるケースが業界内で報告されています。原因は施工時の密度不足がほとんどです。
部位別の推奨密度はメーカーや施工会社によって若干異なりますが、以下が業界の目安となっています。
これを具体的にイメージすると、壁1㎥の空間(縦1m×横1m×奥行1m、一辺が電話ボックスの幅程度)に55kgの材料を充填することになります。これは一般的なグラスウール(密度16kg/㎥)の約3.4倍の重量です。
密度が条件です。
問題なのは「自重沈下」のメカニズムです。セルロースファイバー製造メーカーの沈下性試験では、天井吹込みで施工後に自重で約8%沈下することが確認されています。200mm厚で施工した場合、8%沈下で16mm分の断熱欠損が天井上部に発生する計算です。
この対策として、天井部では仕様厚みより10%増しで施工することが推奨されています。200mm仕様なら実際は220mm相当で吹込むことで、沈下後も設計値を確保できます。
壁や床は施工後に目視確認ができません。新築・リフォームともに、着工前に施工会社と密度管理の手順を明確に取り決めておくことが、後々のクレーム防止に直結します。
参考:沈下メカニズムと対策の詳細
セルロースファイバー断熱材の沈下問題を徹底解説!知っておくべき沈下メカニズムと対策 | 断熱長野
セルロースファイバー吹込みの費用感は、施工単価として1㎡あたり6,000〜9,000円程度が相場です。一方、グラスウールの施工単価は材工込みで1㎡あたり2,500〜5,500円程度のため、単純比較で1.5〜3倍の差があります。
一般的な延べ床面積36坪・切妻屋根の戸建てを例に取ると、グラスウールとセルロースファイバーの総費用差はおよそ48万円になるというデータがあります。48万円という金額は、普通車の軽整備費用の数十回分、あるいは太陽光パネル1枚分以上の費用感です。これをどう評価するかが、採用判断の分かれ目です。
価格が高いのは理由があります。
まず材料の量の差があります。セルロースファイバーはグラスウールに比べて3倍以上の体積密度で吹込むため、単純に材料費がかさみます。次に施工の手間です。大工が現場合わせで充填するグラスウールと異なり、専用ブロワーを持ち込んだ専門業者が1スパンずつ吹込む手間が、コストに直接反映されます。
長期視点で見ると、初期費用の差は縮まります。断熱性能が高いため年間の光熱費を削減でき、結露が起きにくいため柱の腐食・金物のサビ・カビによる修繕費を抑えられます。また、施工後に断熱性能を上げる大規模改修が不要になる点も、コスト面での大きなメリットです。これは使えそうです。
一方で、「コストが高いからと施工密度を落とす」という判断は最もやってはいけないことです。密度を落とすことで沈下・断熱欠損のリスクが高まり、完成後のクレーム対応や補修施工のコストがかえって大きくなります。
セルロースファイバーは新聞紙(古紙)を主原料とするため、そのままでは可燃性・虫害のリスクがあります。この課題を解決しているのがホウ酸系薬剤の添加です。つまり性能面の要です。
一般的なセルロースファイバー製品には、ホウ酸系薬剤が20〜23%配合されています。このホウ酸が以下の複合効果を発揮します。
施工品質を保証する観点から重要なのが、「JIS A 9523(吹込み用繊維質断熱材)」の存在です。この規格は吹込みセルロースファイバー断熱材の防火性・防カビ性・寸法精度などを定めており、JISマーク表示認証を取得した製品を使用することが品質保証の基本となります。
参考:JIS A 9523の規格内容
セルローズファイバーの特徴 | 日本セルローズファイバー工業会
注意が必要なのは、ホウ酸の均一な混合は専用マシンで行うため、DIY施工では防火・防虫効果が設計通りに発揮されないという点です。また、施工中に材料の入替えや異なる製品の混用が起きると、ホウ酸含有量が変わる可能性があります。材料ロットの管理も現場管理の一部として意識しておくことが重要です。
ここでは、検索上位の記事ではあまり触れられていない、現場経験者が気づきにくいポイントに絞って解説します。
まず「貫通部処理の見落とし」です。電気ボックス・給排水管・換気スリーブの周囲からセルロースファイバーが噴出すると、その箇所の密度が上がらないまま施工が進んでしまいます。吹込み前に全ての貫通部のシール処理が完了していることを確認するのが鉄則です。厳しいところですね。
次に「工程調整の連絡ミス」です。木造住宅40坪程度の壁・勾配天井を施工すると2〜4日間を要し、その期間は他業種の作業が制限されます。電気・設備工事との工程調整を事前に行わないと、工期遅延のトラブルに直結します。工務店として現場の工程表に吹込み専用日を確保しておくことが条件です。
また、「天井吹込み後のダウンライト取付け隙間」の問題もよく起きます。天井裏にセルロースファイバーを積もらせた後にダウンライトを取り付ける場合、器具と天井材の隙間から材料が室内側に落下することがあります。換気扇が強く空気を引っ張ると、この現象が顕著になります。ダウンライト廻りのシーリング処理は内装工事完了前に必ず確認してください。
さらに盲点になりやすいのが「施工後の配線変更」です。吹込み後は壁内が断熱材で緻密に充填されているため、電気配線の追加・変更が非常に困難です。後から「コンセントを増設したい」「スイッチ位置を変えたい」となると、壁を開口して断熱材を除去・再充填する大規模作業になります。入居前の最終確認で電気設備の配置を施主と念入りに確認しておくことが、引渡し後のクレーム防止につながります。
参考:施工でミスしないために知っておきたいこと
断熱材セルロースファイバー施工でミスしないために知っておきたい7のこと | セルロースファイバーナビ