
接合法とは、建築物を構成する部材同士を連結する技術の総称です。接合部は基となる部材(母材)よりも重要な役割を果たしており、接合部が壊れると建物の崩壊に繋がるため、適切な接合法の選定が建築物の安全性を左右します。建築業では、柱と梁、壁と床など、様々な部位で接合技術が必要とされ、使用する材料や構造形式によって最適な接合法が異なります。
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接合部は、部材同士を連結した部分を指し、地震などの外部からの強い圧力が加わった際にも、建築物全体の耐震性能を維持する重要な役割を担っています。特に、建築基準法では木造住宅の継手及び仕口の緊結について詳細な規定が設けられており、金物による補強が義務づけられているなど、接合法は法的な観点からも重要です。
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溶接品質においても、接合部の外観の美しさだけでなく、接合の強度や耐食性、寸法精度などの様々な品質が求められ、品質が不十分だと溶接した製品の使用中に破損や劣化を引き起こすリスクがあるため、慎重な品質管理が必要とされています。
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接合法は接合原理の違いによって、大きく3つに分類されます。第一に機械的接合法があり、これは外部からの力・変形・摩擦などの物理的作用を利用して金属同士を固定する方法で、ボルト・ナット・リベット・カシメなどが該当します。
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第二に冶金的接合法(材料的接合)があり、融解や圧力などで溶接をして接合する方法で、溶接には「融接(ゆうせつ)」「圧接(あっせつ)」「ろう接」の3つの方法があり、最も広く利用されているのは融接です。溶接接合法は建築設備では大口径管に採用され、非常に信頼性のある鋼管接合法とされていますが、溶接工の熟練度を必要とする接合法でもあります。
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第三に科学的接合があり、これは接着剤などを用いた接合方法を指します。建築鉄骨における接合技術では、溶接部が強度のみでなく変形性能が必要とされる接合部に用いられることが多く、特に建築鉄骨の柱梁接合部では重要な役割を果たしています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/qjjws1943/70/1/70_1_39/_pdf
機械的接合法には複数の種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。ボルト・ナット接合(ねじ締結)は最も一般的な方法で、簡便な工具で容易に組み立て解体することができ、信頼性の高い接合が可能です。
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リベット接合(かしめ接合)は、リベットと呼ばれる金属製の鋲を用いて部材を接合する方法で、永久的な接合を実現します。クリンチング(圧着接合)は、部材を圧力で変形させて接合する方法で、別部品を使用せずに接合できる利点があります。
特に建築鉄骨で使用される高力ボルト接合は、通常のボルト接合より高い強度と張力をもつ接合方法で、重量鉄骨構造の建築物のほとんどに使用されています。高力ボルトで接合材を締付けた際に生じる大きな材間圧縮力によって得られる接合材間の摩擦抵抗で応力を伝達する摩擦接合が主流で、ボルト周辺に広く分散した材間圧縮力を介して応力伝達が行なわれるため、局部的な支圧力で応力を伝達するリベット接合などと違って応力集中も少なく、応力の流れは滑らかになります。
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機械的接合法のメリットとして、結合部分の強度が高く安心して使うことができ、ボルトを緩めると分解できるので、あとで分解する必要がある場合に便利です。また、損傷が起きてもその広がりを防ぐことができ、接合部で切り離すことで損傷の広がりを防ぎ、部品単位で交換することが可能です。
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溶接接合は、金属部材を融解や圧力によって一体化させる接合技術で、自動車や建築、インフラ、プラント、造船など多くの産業において欠かせない工程です。継手の形状が簡単でしかも自由度が高く、気密や水密性に優れているだけではなく、電気や熱などの絶縁効果があるのもメリットです。
参考)接合方法の種類について 【通販モノタロウ】
建築鉄骨における溶接は剛接合の一種で、治金的接合法として融解や圧力などで溶接をして接合しているため繋ぎ目が強固なのが特徴です。剛接合で作られた建物の大きな特徴は梁や柱の接合部分が一体化されていることから、地震の揺れの影響を受けにくいため耐震性が非常に優れており、水平荷重にも耐えられるため台風から来る揺れにも耐えることができます。
溶接における品質とは、単に見た目が美しいというだけではなく、接合部の強度や靱性、耐食性、欠陥の有無、寸法精度といった多岐にわたる性能のことを指します。溶接部が設計通りの性能を満たし、使用中に破損や劣化を引き起こさないことが求められるため、事前の材料選定・適切な溶接条件の設定・作業者の技能・施工後の検査までを含めた厳格な品質保証体制が必要です。
材料的接合のメリットとして、金属同士を隙間なく接合するので気密性を保持するには最適な接合方法で接合強度や組立形状の自由度も高いことが挙げられます。
参考)【材料的接合方法とは】
木造建築では、木材同士を接合するための伝統的な技術である継手・仕口が用いられます。継手とは2本の材を長手方向に継ぎ合せることで、仕口とは2本以上の材を直角または角度をもって組み合わせることを指します。
参考)Column004 of YO設計
在来軸組工法では枘(ほぞ)が必要不可欠な仕口として使用されており、ほぞ、ほぞ穴による接合方法を基本としています。鎌(かま)も基本的な継ぎ方の一つで、滑り勾配を付け、ほぞだけで力を受けるのではなく、面で受ける工夫が施してあります。
参考)木造建築における木組みの継手仕口とは何?
この技術は、金物に頼らず木材同士を直接かみ合わせることで、強固な接合を実現するもので、伝統木造建築から引継がれた工法です。ただし、現在ではほとんど金物による補強がされ、建築基準法ではその使用が義務づけられています。
参考)2025年最新版【大工のための継手仕口ガイド】伝統に基づく木…
平成12年に施行された建設省告示第1460号では、柱や梁などの接合方法や接合金物の仕様が詳細に規定され、筋かいの端部における仕口にあっては、筋かいの種類に応じた接合方法又はこれらと同等以上の引張耐力を有する接合方法によることが定められました。よい木組とは、地震などの外力などに対しても安全で、万が一の場合にも瞬時につぶされてしまうことがなく、たとえ大きく傾いても、住み手が避難できる空間を保持することも大切な機能です。
参考)https://www.tatsumi-web.com/wp-content/uploads/2020/10/reference_data.pdf
接合法の選定には、使用する材質、板厚、接合後の要求性能などを総合的に考慮する必要があります。製品に使用する材質、板厚に応じた接合方法を選択しなければ、適切な接合品質を確保することができません。
参考)板金加工:4つの接合法(溶接・液相・固相・機械的接合) - …
溶接品質を安定させるためには、外観品質(ビードの幅、高さ、形状に異常がないか)、寸法精度(設計寸法とのズレ、熱による変形や歪み)、機械的特性(引張強度、疲労強度など)、溶接条件(電流・電圧・溶接速度など)、材料の適合性といった管理項目を的確にチェックすることが重要です。
溶接部の品質保証は非常にむずかしい問題とされており、溶接前の工程設計・実際の施工中・施工後の検査工程でそれぞれ確認・管理される必要があります。構造耐力上重要な金物については、Zマーク金物、Dマーク金物(同等認定金物)、Sマーク金物などの認定制度があり、品質を保証するための様々な制度が整備されています。
参考)【徹底解説】建築金物の種類と選び方
近年では、富山大学オリジナルの「円盤摩擦接合法」など新たな接合技術の開発が進められており、今後は異種材料接合技術などの発展も期待されています。異種材料接合とは、異なる種類の材料を結合させる技術のことで、材料の独特な特性を組み合わせることで、新たな機能や性能を持った製品を創出できる可能性があります。
参考)#03 新たな接合技術を拓く 柴柳 敏哉 教授
接合部の意味と建築物の接合部の種類について詳しく解説された記事(構造力学の基礎知識)
金属接合方法の分類について詳しく解説された技術資料(溶接の基礎知識)
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