シャックル寸法一覧とJIS規格による選び方

シャックル寸法一覧とJIS規格による選び方

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シャックル寸法一覧

シャックル寸法選定のポイント
📏
JIS規格寸法表

標準的なSB・SC・SA型の詳細寸法データ

⚖️
使用荷重対応

0.05t~50tまでの幅広い荷重範囲

🔧
実務選定法

現場での効率的な寸法確認方法

シャックルJIS規格別寸法表

JIS B 2801-1977に準拠したシャックルの寸法は、建築現場での安全性確保において極めて重要です。以下の表は、最も一般的に使用されるSB・SC・SA型シャックルの詳細寸法を示しています。

 

SB・SC・SA型共通寸法表

呼び 使用荷重(t) d(mm) B(mm) D(mm) L1(mm) d1(mm) ピン径(mm) ネジ径 重量(kg)
6 0.05 6 18 22 26 9 6 M8 0.05
8 0.1 8 22 26 30 11 8 M10 0.08
10 0.2 10 26 30 35 13 10 M12 0.14
12 0.3 12 30 35 40 16 12 M14 0.22
16 0.6 16 40 45 50 21 16 M18 0.45
20 1 20 45 50 56 25 20 M22 0.7

特筆すべきは、JIS規格では呼び44~46のネジ径がM48と規定されているものの、実際の製品ではピンとの釣り合いを考慮してM52が採用されることが多い点です。この寸法差は、交換部品の調達時に重要な確認ポイントとなります。

 

BD・SD型シャックル寸法表
長型シャックルであるBD・SD型は、より深いふところが必要な作業で使用されます。

 

呼び 使用荷重(t) d(mm) B(mm) B1(mm) D(mm) L2(mm) d1(mm) 重量(kg)
6 0.05 6 9 12 22 40 9 0.08
8 0.1 8 11 16 26 45 11 0.13
10 0.2 10 13 20 30 50 13 0.2
12 0.3 12 16 24 35 55 16 0.32

鍛造品の特性により、若干の寸法誤差が発生することは避けられません。このため、精密な組み合わせが必要な作業では、実測による確認が重要となります。

 

シャックル使用荷重と安全率による寸法設計

シャックルの寸法設計において、使用荷重と安全率の関係は密接です。クロスビー製シャックルを例に、安全率5倍設計による寸法の特徴を解説します。

 

クロスビーG-209スクリューピン・バウタイプ寸法表

型番 サイズ 使用荷重(t) A(mm) B(mm) C(mm) D(mm) E(mm) F(mm) 重量(kg)
G209-5 3/16 0.33 9.65 6.35 22.4 4.85 15.2 14.2 0.03
G209-6 1/4 0.5 11.9 7.85 28.7 6.35 19.8 15.5 0.05
G209-8 5/16 0.75 13.5 9.65 31.0 7.85 21.3 19.1 0.09
G209-10 3/8 1 16.8 11.2 36.6 9.65 26.2 23.1 0.14

クロスビー製品の特徴は、型打ち鍛造による寸法の正確性と一貫性です。これにより疲労寿命が向上し、長期使用において寸法変化が少ないという利点があります。

 

強力長シャックルの特殊寸法
矢板引抜きなど特殊用途には、強力長シャックルが使用されます。

 

呼び t×L1 d(mm) B(mm) D(mm) d3(mm) 使用荷重(t)
2.5t 16×130 16 45 38 19 2.5
4t 19×200 19 50 45 21 4
6t 22×170 22 50 54 22 6
8t 25×200 25 50 60 25 8
10t 30×300 30 60 70 32 10

L1寸法(長さ)の確認が特に重要で、作業スペースの制約により適切なサイズ選定が必要です。

 

シャックル材質と重量による寸法への影響

材質による寸法への影響は、実務選定において見落とされがちな重要ポイントです。ステンレス製シャックルは一般鋼材製と比較して、同一使用荷重でも寸法が異なる場合があります。

 

ステンレス製シャックル寸法比較
一般的なM級ステンレスシャックルの例として、BB-22型(使用荷重3.15t)の寸法は以下の通りです。

  • 重量:2.2kg
  • 材質特性により、同等荷重の一般鋼材製より約15%重量増加
  • 耐食性向上のため、表面処理厚みを考慮した寸法設計

軽量シャックルRS・RB型の寸法最適化
軽量化を重視した設計では、以下の寸法特性があります。

呼び 使用荷重(t) RS型d1(mm) RS型L1(mm) RB型B1(mm) RB型L(mm) 重量比較
5 0.5 22 120 88 156 標準比-20%
8 1 26 144 104 190 標準比-18%
10 1.5 30 160 120 210 標準比-15%

B寸を短縮することで強度を維持しつつ軽量化を実現しており、高所作業での作業性向上に寄与します。

 

捻込シャックルの特殊寸法設計
捻込シャックルは、ワイヤーロープとの接続時の偏荷重軽減を目的とした特殊設計です。

呼び 使用荷重(t) t(mm) B(mm) d(mm) D(mm) L1(mm) d3(mm)
12 0.5 12 24 12 24 46 12
16 0.8 16 32 16 32 60 16
22 1.5 22 44 22 44 86 22
32 3.2 32 64 32 64 118 32

従来型と比較してB寸(口幅)が2倍の設計となっており、ワイヤーロープの動きやすさを確保しています。

 

シャックル型番による寸法確認と選定方法

現場での効率的な寸法確認には、型番による判別法の習得が不可欠です。各メーカーの型番体系を理解することで、迅速な寸法確認が可能となります。

 

キトー製シャックル型番解読法
キトー製シャックル(VNシリーズ)の型番から寸法を読み取る方法。

  • VN2060:適合チェーン6mm、使用荷重1.1t、重量0.53kg
  • VN2070:適合チェーン7mm、使用荷重1.5t、重量0.89kg
  • VN2080:適合チェーン8mm、使用荷重2t、重量0.89kg
  • VN2100:適合チェーン10mm、使用荷重3.2t、重量1.5kg

型番末尾の数字が適合チェーン径を示し、これにより概算寸法の推定が可能です。

 

大洋製器工業製品の型番システム
TSLS(強力長シャックル)シリーズの型番解読。

  • TSLS-2.5T:使用荷重2.5t、16×130mm
  • TSLS-4T:使用荷重4t、19×160mmまたは19×200mm
  • TSLG(軽量シャックル)、TSLSR(ランヤード捻込タイプ)

型番中の数字が直接使用荷重を表示するため、現場での判別が容易です。

 

寸法測定時の重要確認ポイント
実際の寸法測定では以下の点に注意が必要です。

  • 摩耗診断基準:d(元の径)とc(摩耗径)から変形率を算出

    計算式:変形率(%) = (d³-c³)/d³ × 100

  • ピン先取り加工の確認:多くの製品でピンの先取り加工が施されており、交換時の互換性確認が重要
  • ローラー仕様の判別:ローラー付きシャックルではブッシュの有無を確認
  • 塗装仕様の識別:赤色焼付塗装製品の判別により、特殊用途向け製品かを確認

シャックル寸法選定における現場トラブル回避法

建築現場でのシャックル寸法に関するトラブルは、作業効率と安全性に直結する重要な問題です。実際の現場経験に基づく予防策を解説します。

 

寸法不適合によるトラブル事例と対策
最も頻繁に発生するのは、チェーンやワイヤーロープとの接続部における寸法不適合です。例えば、16mm径のワイヤーロープに対して呼び12のシャックル(口幅30mm)を使用した場合、接続部でのこじり現象が発生し、偏荷重による破損リスクが高まります。

 

対策として、以下の寸法確認ルールを推奨します。

  • ワイヤーロープ径の1.5~2倍の口幅を持つシャックルを選定
  • チェーン接続時は、チェーン線径+5mm以上の余裕を確保
  • 複数本吊りの場合は、角度による荷重増加を考慮した寸法選定

環境条件による寸法変化への対応
海岸部や化学プラントでは、塩分や薬品による腐食で寸法が変化します。ステンレス製シャックルでも、塩化物環境では孔食による局部的な寸法変化が発生する可能性があります。

 

定期点検での寸法測定基準。

  • 口幅(B寸)の5%以上の減少で交換検討
  • ピン径(d3寸)の3%以上の減少で即座交換
  • クラック発生時は寸法に関わらず即座交換

効率的な在庫管理のための寸法分類法
現場では多種多様な寸法のシャックルが必要となるため、効率的な分類管理が重要です。

 

推奨分類方法。

  1. 荷重別分類:軽荷重(~2t)、中荷重(2~10t)、重荷重(10t~)
  2. 用途別分類:一般用、長型用、軽量用、ステンレス用
  3. 接続先別分類:チェーン用、ワイヤー用、アイボルト用

この分類により、作業員が迷うことなく適切な寸法のシャックルを選定できるようになります。特に、安全率を考慮した余裕のある寸法選定を心がけることで、長期的な安全性と経済性を両立できます。

 

最終的に、シャックルの寸法選定は単純な数値の照合作業ではなく、現場条件・作業内容・安全性を総合的に判断する技術的決定であることを認識し、適切な寸法選定により建築現場の安全性向上に貢献することが重要です。