吊りピース規格表の選び方と寸法

吊りピース規格表の選び方と寸法

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吊りピース規格表

吊りピース規格表の重要ポイント
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荷重別規格の選定

3t、6t、10tなど吊り荷重に応じた適切な規格の選択が重要

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寸法と板厚の基準

板厚9mm〜22mmまで荷重に応じて規格化された寸法表

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シャックル対応規格

JIS規格シャックルとの適合性を考慮した穴径設計

吊りピース規格表の基本構成と荷重分類

吊りピースの規格表は、主に吊り荷重によって分類されており、建築現場で最も使用頻度が高いのは3t用、6t用、10t用の3つです。これらの規格表は、鉄骨部材の重量に応じて選定され、必ず2個使用することが前提となっています。
一般的な規格表の構成は以下の通りです。

  • 3t用(KK-4タイプ): 板厚9mm、外形130×100mm、穴径φ42mm
  • 6t用(KK-5タイプ): 板厚12mm、外形130×100mm、穴径φ42mm
  • 10t用(KK-6タイプ): 板厚16mm、より大型の外形寸法

これらの規格表は、SS400相当の材料を使用し、引張強度490N/mm²級または同等以上の材料基準に準拠しています。規格表には穴径、板厚、外形寸法、使用荷重、推奨シャックル径が明記されており、現場での選定ミスを防ぐ重要な役割を果たしています。

吊りピース規格表の寸法設計基準と計算方法

規格表の寸法設計は、吊り荷重に対する安全性を確保するため、厳密な計算に基づいて策定されています。最も重要な設計基準は、ピン孔まわりの支圧に対する安全度です。
寸法設計の主要ポイント。

  • 穴径設計: ピン径の+2mm以上を基準とし、φ40〜φ42mmが標準
  • 板厚設計: 開口部の-1mm以下で、荷重に応じて9mm、12mm、16mm、19mmの段階設定
  • 外形設計: 溶接長さを確保するため、底辺が長い台形状が一般的

新型の栃木式標準吊金具では、従来の板厚変更による対応から脱却し、最小面積で最大荷重を追求した高効率設計を採用しています。この設計では、吊り荷重に関わらず板厚・脚長が同一となり、溶接管理が大幅に簡素化されます。
計算基準として、吊孔径の90%の径のピンを用いる条件で計算されており、高強度で細径のシャックルを用いる場合は、従来品に比べて支圧安全度が向上します。

吊りピース規格表におけるシャックル適合性基準

規格表で最も重要な要素の一つが、シャックルとの適合性です。JIS規格シャックルとの組み合わせが義務付けられており、穴径とシャックルピン径の関係が厳密に規定されています。
シャックル適合性の基準。

  • 穴径基準: シャックルピン径+2mm以上の穴径が必要
  • 推奨シャックル径: 3t用は18mm、6t用は24mm、10t用は28mm程度
  • クランプ対応: マイティシャックルエース等の専用クランプとの適合

規格表には各荷重クラスに対応する推奨シャックル径が明記されており、これに従うことで安全な玉掛作業が可能になります。特に、クランプ式の吊り具を使用する場合は、開口部寸法との関係も重要で、板厚は開口部-1mm以下で設計されています。
意外な事実として、船舶用のJIS F3410-1999 C形タイプの吊りピースも建築現場で使用可能で、これらは溶接取付けタイプとして構造物への固定に適しています。

吊りピース規格表の材質規格と強度基準

規格表における材質規格は、建築構造物の安全性に直結する重要な要素です。一般的にSS400相当またはSM490A材が使用され、引張強度490N/mm²級以上が基準となっています。
材質規格の詳細基準。

  • 基本材質: SS400相当(一般構造用圧延鋼材
  • 高強度材: SM490A(溶接構造用圧延鋼材)を10t超で使用
  • 強度基準: 引張強度490N/mm²級または同等以上

規格表では、材質と板厚の組み合わせによって使用可能荷重が決定されます。興味深いことに、栃木式標準吊金具では全荷重クラスでSM490材を使用し、板厚を一定(9mm)に統一することで、材料の無駄を削減しながら高効率を実現しています。
材質規格で注意すべき点は、溶融亜鉛めっき処理との関係です。スリット付きの吊りピースは、スリット部に溶融亜鉛が入りにくいため、めっき処理には不適とされています。このため、めっき仕様が必要な現場では、スリットなしの規格品を選定する必要があります。

吊りピース規格表の独自検証と現場適用時の注意点

規格表に記載された標準仕様だけでは、実際の現場条件に完全に対応できない場合があります。特に、偏心荷重や動的荷重が発生する状況では、独自の検証が必要になります。

 

現場適用時の重要な検証ポイント。

  • 取付位置の検証: 梁の吊りピースはウェブ心上への配置が必須
  • 溶接仕様の確認: 隅肉全周溶接による確実な固定
  • クリアランス計算: クランプ先端と鉄骨梁の干渉回避(50mm以上の間隔)

独自検証として、複数メーカーの規格表を比較すると、同一荷重クラスでも微細な寸法差があることが判明します。例えば、コンドーテック製とくろがね製の6t用では、穴径や外形寸法に若干の違いがあり、使用するシャックルメーカーとの適合性確認が重要です。

 

また、建て方エース(テクノス社製)やATOMU-701(大洋製器工業社製)といった専用治具との組み合わせでは、それぞれ異なる対応規格が存在するため、現場で使用する治具に応じた規格表の選択が必要です。
特筆すべき点として、繰り返し使用の禁止が全メーカー共通で規定されており、これは疲労破壊のリスクを避けるための重要な安全基準となっています。現場では、使用済み吊りピースの管理と廃棄が適切に行われているかの確認が、事故防止の観点から極めて重要です。