
吊りピースの規格表は、主に吊り荷重によって分類されており、建築現場で最も使用頻度が高いのは3t用、6t用、10t用の3つです。これらの規格表は、鉄骨部材の重量に応じて選定され、必ず2個使用することが前提となっています。
一般的な規格表の構成は以下の通りです。
これらの規格表は、SS400相当の材料を使用し、引張強度490N/mm²級または同等以上の材料基準に準拠しています。規格表には穴径、板厚、外形寸法、使用荷重、推奨シャックル径が明記されており、現場での選定ミスを防ぐ重要な役割を果たしています。
規格表の寸法設計は、吊り荷重に対する安全性を確保するため、厳密な計算に基づいて策定されています。最も重要な設計基準は、ピン孔まわりの支圧に対する安全度です。
寸法設計の主要ポイント。
新型の栃木式標準吊金具では、従来の板厚変更による対応から脱却し、最小面積で最大荷重を追求した高効率設計を採用しています。この設計では、吊り荷重に関わらず板厚・脚長が同一となり、溶接管理が大幅に簡素化されます。
計算基準として、吊孔径の90%の径のピンを用いる条件で計算されており、高強度で細径のシャックルを用いる場合は、従来品に比べて支圧安全度が向上します。
規格表で最も重要な要素の一つが、シャックルとの適合性です。JIS規格シャックルとの組み合わせが義務付けられており、穴径とシャックルピン径の関係が厳密に規定されています。
シャックル適合性の基準。
規格表には各荷重クラスに対応する推奨シャックル径が明記されており、これに従うことで安全な玉掛作業が可能になります。特に、クランプ式の吊り具を使用する場合は、開口部寸法との関係も重要で、板厚は開口部-1mm以下で設計されています。
意外な事実として、船舶用のJIS F3410-1999 C形タイプの吊りピースも建築現場で使用可能で、これらは溶接取付けタイプとして構造物への固定に適しています。
規格表における材質規格は、建築構造物の安全性に直結する重要な要素です。一般的にSS400相当またはSM490A材が使用され、引張強度490N/mm²級以上が基準となっています。
材質規格の詳細基準。
規格表では、材質と板厚の組み合わせによって使用可能荷重が決定されます。興味深いことに、栃木式標準吊金具では全荷重クラスでSM490材を使用し、板厚を一定(9mm)に統一することで、材料の無駄を削減しながら高効率を実現しています。
材質規格で注意すべき点は、溶融亜鉛めっき処理との関係です。スリット付きの吊りピースは、スリット部に溶融亜鉛が入りにくいため、めっき処理には不適とされています。このため、めっき仕様が必要な現場では、スリットなしの規格品を選定する必要があります。
規格表に記載された標準仕様だけでは、実際の現場条件に完全に対応できない場合があります。特に、偏心荷重や動的荷重が発生する状況では、独自の検証が必要になります。
現場適用時の重要な検証ポイント。
独自検証として、複数メーカーの規格表を比較すると、同一荷重クラスでも微細な寸法差があることが判明します。例えば、コンドーテック製とくろがね製の6t用では、穴径や外形寸法に若干の違いがあり、使用するシャックルメーカーとの適合性確認が重要です。
また、建て方エース(テクノス社製)やATOMU-701(大洋製器工業社製)といった専用治具との組み合わせでは、それぞれ異なる対応規格が存在するため、現場で使用する治具に応じた規格表の選択が必要です。
特筆すべき点として、繰り返し使用の禁止が全メーカー共通で規定されており、これは疲労破壊のリスクを避けるための重要な安全基準となっています。現場では、使用済み吊りピースの管理と廃棄が適切に行われているかの確認が、事故防止の観点から極めて重要です。