
JIS B2801-1977に基づくシャックルの標準寸法は、建設現場での安全確保に欠かせない基準です。呼び径と使用荷重の関係は厳密に定められており、適切な選定が事故防止の鍵となります。
JIS規格M級シャックル標準寸法表
呼び(mm) | 使用荷重(tf) | A寸法(mm) | B寸法(mm) | C寸法(mm) | D寸法(mm) |
---|---|---|---|---|---|
6 | 0.2 | 6 | 17 | 11 | 24 |
8 | 0.315 | 8 | 22 | 14 | 32 |
10 | 0.6 | 10 | 27 | 17 | 38 |
12 | 1.0 | 12 | 32 | 20 | 46 |
16 | 1.6 | 16 | 42 | 26 | 60 |
20 | 2.5 | 20 | 52 | 32 | 76 |
24 | 3.6 | 24 | 62 | 38 | 90 |
JIS規格では安全率5倍が標準とされており、実際の使用荷重の5倍まで耐えられる設計となっています。この安全率は、動荷重や衝撃荷重を考慮した値で、建設現場での過酷な使用条件に対応しています。
呼び径の選定では、ワイヤーロープやチェーンの太さとの適合性も重要です。一般的に、ワイヤーロープ径の3倍程度の内幅を持つシャックルを選定することで、ロープの損傷を防ぎ、荷重の均等分散が可能になります。
使用荷重に応じたシャックルの寸法選定は、作業効率と安全性を両立させる重要な要素です。特に大型建設機械や重量物の吊り上げでは、過小な選定は致命的な事故につながります。
使用荷重別推奨寸法範囲
🏗️ 軽荷重域(0.2tf~2tf)
⚡ 中荷重域(2.5tf~10tf)
🏭 重荷重域(10tf~50tf)
使用荷重の計算では、荷物の重量だけでなく、吊り角度による荷重増加も考慮する必要があります。例えば、60度の吊り角度では荷重が1.15倍、45度では1.41倍に増加するため、余裕を持った寸法選定が不可欠です。
強力長シャックルは通常のシャックルよりも内寸が長く設計されており、複数のワイヤーロープを通す場合や、厚いアイプレートとの接続に適しています。呼び径25mmで長さ200mmの強力長シャックルは、使用荷重8tfで重量約1.2kgとなります。
SC型(ねじ込み式)とSB型(ボルトナット式)では、同じ使用荷重でも寸法が異なります。これは構造の違いによるもので、適切な選定には両者の特性理解が重要です。
SC型とSB型の寸法差異
SC型シャックルは、ピンがねじ込み式になっているため、ピン径を太くできる利点があります。一方、SB型はボルトとナットで固定するため、ピン径は細くなりますが、より確実な固定が可能です。
呼び | 使用荷重 | SC型A寸法 | SB型A寸法 | SC型重量 | SB型重量 |
---|---|---|---|---|---|
12 | 1.0tf | 12mm | 12mm | 0.18kg | 0.22kg |
16 | 1.6tf | 16mm | 16mm | 0.35kg | 0.42kg |
20 | 2.5tf | 20mm | 20mm | 0.68kg | 0.81kg |
24 | 3.6tf | 24mm | 24mm | 1.15kg | 1.38kg |
🔧 SC型の特徴
🔩 SB型の特徴
建設現場では、仮設工事や頻繁な付け替えが必要な場合はSC型、本設工事や長期間の固定が必要な場合はSB型を選定するのが一般的です。特に、風荷重や地震力を受ける構造物では、SB型の確実な固定性能が重視されます。
幅広型シャックル(SD型・BD型)は、通常のシャックルよりも内幅を広く設計されており、複数のワイヤーロープやチェーンを通すことが可能です。呼び径20mmの幅広型では、内幅が通常の32mmから45mm程度まで拡大されます。
ステンレス製シャックルは、耐食性が要求される環境での使用に特化した仕様となっています。SUS304材質が一般的で、JIS規格に準拠した寸法体系を採用しています。
ステンレスシャックル特有の寸法考慮点
🌊 耐食性と寸法精度
ステンレス材は一般鋼材よりも加工が難しく、寸法精度の確保に高い技術が必要です。そのため、JIS規格寸法に対してやや厳しい公差管理がなされています。
呼び | 使用荷重 | 線径 | 開口幅 | 全長 | 重量 |
---|---|---|---|---|---|
M4 | 50kg | 4mm | 8mm | 14mm | 8g |
M5 | 100kg | 5mm | 10mm | 18mm | 13g |
M6 | 140kg | 6mm | 12mm | 21mm | 23g |
M8 | 250kg | 8mm | 16mm | 28mm | 54g |
M10 | 400kg | 10mm | 20mm | 33mm | 110g |
⚙️ 海洋環境での使用寸法選定
海岸近くの建設現場では、塩害対策としてステンレス製シャックルが必須となります。この場合、通常よりも1サイズ大きめの選定を行い、塩分の堆積による動作不良を防ぐことが重要です。
ステンレス製シャックルの引張強度は、一般鋼材製と比較して約80%程度となるため、同じ使用荷重でもピン径をやや太く設計する必要があります。これにより、全体寸法が若干大きくなる傾向があります。
高力ステンレス材(SUS316L等)を使用したシャックルでは、一般鋼材と同等以上の強度を確保しながら、優れた耐食性を実現しています。ただし、コストが高いため、特に腐食環境が厳しい箇所に限定して使用されます。
シャックルの価格は寸法・材質・表面処理によって大きく変動します。建設プロジェクトでのコスト管理には、価格と性能のバランスを考慮した選定が重要です。
価格帯別寸法グループ分類
💰 エコノミークラス(500円以下)
💎 スタンダードクラス(500円~2000円)
👑 プレミアムクラス(2000円以上)
価格差の主要因は製造方法の違いにあります。型打ち鍛造品は機械加工品よりも高価ですが、疲労強度に優れ、長期使用での信頼性が高くなります。
🏭 海外製品との寸法互換性
クロスビー社などの海外製シャックルは、インチ規格ベースのため、JIS規格との寸法互換性に注意が必要です。3/8インチ(約9.5mm)規格は、JIS10mm規格とほぼ同等ですが、微細な差異により完全な互換性はありません。
特殊用途向けの高価格帯シャックルには、以下のような特徴があります。
建設現場での調達戦略では、使用頻度の高い中間サイズ(16mm~24mm)は品質重視で選定し、使用頻度の低い大型サイズはコスト重視で選定するという使い分けが効果的です。また、定期交換が必要な箇所では、初期コストよりもライフサイクルコストを重視した選定が重要となります。