

シート防水の端部は、雨水が「端から回り込む」「重ね端から吸い上がる」「立上り末端に滞留する」などのルートで不具合が出やすく、端部処理は防水性能の最終関門になります。タジマのJASS8対応仕様の注意事項でも、出入隅角の端部は液状シール材で処理すること、立上り・立下りの末端は固定金具で固定したうえで不定形シール材で処理することが明記されています。https://bousui.tajima.jp/category/sheet/WF_SPEC_AIJ_S_1_PM_1_NO_1_AIJ2020_202502_1/
現場感覚として「シール材は穴埋め」になりがちですが、端部では“止水+応力緩和+末端のディテール完成”を同時に担います。たとえば出入隅はシートが折れ・引張り・剪断を受けやすく、成形役物(コーナー材)を張った「端」を液状シール材で処理する指定があるのは、形状追従と止水の両立を狙っているからです。端部が露出する納まりでは、紫外線・熱・雨だれ・清掃時の摩耗まで加わるため、単に硬い材料で埋めるほど割れやすくなる点も要注意です。
「液状シール材」と「不定形シール材」は、同じ“隙間を埋める材料”でも役割が少し違います。液状はヘラ仕上げで連続した被膜を作りやすく、端部の線状処理に向きます。一方、不定形は厚みを持って充填し、末端固定部のすき間や立上り末端の納まりで“体積を持って追従させる”イメージが近いです。仕様書の指示(端部=液状、末端=不定形+固定)に沿って納めると、施工者の工夫に依存しすぎない品質に近づきます。
端部のシールは「材料の良し悪し」より「下地の状態」で失敗が決まりやすい工程です。メーカーの施工資料でも、塗装面や施工面をアルコール含浸ウエスで拭く、凹凸・サビ・浮きなどの不具合を確認する、といった“前処理のチェック”が手順として組み込まれています。https://www.silicone.jp/catalog/pdf/Inubaseal_ConstructionProcess.pdf
端部施工で特に多いのが、湿気・結露・微粉(脆弱層)の見落としです。雨上がりの翌朝など、表面が乾いて見えても下地の微細な水分が残っていると、硬化中に界面が弱くなり、数週間〜数か月後に「端部だけ浮く」症状になります。ここは“乾燥時間を守る”だけでなく、触って冷たい・しっとりする感覚があるなら一旦止める判断が合理的です。温度と通風で乾燥が大きく変わるため、同じ現場でも北面・日陰・ピット周りは別条件として扱うと事故が減ります。
施工手順の組み立ては、細部ほどルール化が効きます。例として、床シート系の端部処理では「周囲に3〜5mm程度の隙間を空ける」「マスキングテープを貼る」「コーキングガンで充填」「専用ヘラで仕上げ」「マスキングを全て剥がす」といった定型手順が資料に整理されています。
https://www.toli.co.jp/product_floor/bathna/pdf/bathna_process.pdf
この“隙間を確保してからシールする”発想は、防水シートでも応用が効きます。端を突き付けて材料を押し込むより、意図した逃げ(目地幅)を確保したほうが、ヘラで均しやすく厚みも安定します。結果として、薄塗り部ができにくく、硬化後のピンホールや端部の欠けも減らせます。現場では「ギリギリまで詰めたほうが水が入らない」と感じがちですが、シール材は“適正断面”があって初めて追従します。
端部用シール材の選定で迷ったら、まず「露出(紫外線を受ける)か」「塗装する前提か」を軸に整理すると早いです。セメダインのQ&Aでは、ポリウレタン系は紫外線による耐候性が良くないため屋外使用は塗装が前提、変成シリコーン系は紫外線に対する耐候性が良好で塗装なしでも大丈夫、と違いが端的に示されています。https://faq.cemedine.co.jp/architecture/detail?site=T5WB9K2B&category=99&id=40
ここでの落とし穴は「端部=露出」とは限らない点です。押え金物や笠木の内側に納まる端部は、紫外線よりも“水分の滞留”“アルカリ”“温度差”“金物による拘束”が支配的になります。つまり、耐候性が強い材料=万能ではなく、納まりの環境(露出・非露出、通気の有無、塗装の可否、金物の拘束)で材料の優先順位が入れ替わります。
材料を決める際は、仕様書・メーカー指定の範囲に収めるのが大前提です。そのうえで現場目線のチェック項目としては、次を先に確定させると判断がぶれません。
・端部が露出する期間はあるか(仮防水期間を含む)
・その部位は塗装をかけるのか(塗装工程が後続するのか)
・端部が動く方向はどちらか(伸縮目地の近傍か、立上り取り合いか)
・清掃や薬品(洗剤)に晒されるか(厨房・浴室・外部通路など)
意外に効くのが「仮防水期間」の見立てです。金物が後日施工で、端部シールが数週間〜数か月、直射日光を受けるなら、その期間だけでも耐候性を重視した選択が合理的になります。引き渡し後に隠れる部位でも、工期中に劣化して初期不良の芽を作るケースは現場で起きます。
端部トラブルの典型は「端だけ開く」「末端から水が回る」ですが、原因の多くは“接着”ではなく“拘束と逃げの設計”にあります。JASS8対応仕様の注意事項でも、防水層の立上り・立下りの末端は固定金具に固定し、不定形シール材で処理するとされており、末端は機械的固定+充填で成立させる思想が読み取れます。https://bousui.tajima.jp/category/sheet/WF_SPEC_AIJ_S_1_PM_1_NO_1_AIJ2020_202502_1/
ここを軽視すると、どれだけ高性能なシール材でも「引っ張られて剥がれる」「金物の端で切れる」方向の破壊が起きます。特に立上り末端は、躯体の微振動・温度伸縮・風荷重の影響が集まるので、接着に全てを背負わせると長期的に不利です。固定金具でシートを押さえ、シール材は“水密の連続性”と“端部の局部追従”に役割を限定すると、材料性能を使い切れます。
施工の実務では、固定金具周りの“すき間形状”が品質差になります。ネジ頭・段差・端部のバリ・不陸があると、シール材が薄肉になり、硬化後に欠けやすいからです。対策としては、金具端部の面取り、清掃、必要なら増し充填(一次充填→ならし→二次で表層を整える)など、断面確保の工夫が効きます。端部は外観的に小さい処理ですが、雨水の入口はミリ単位で生まれるので「連続断面」と「薄肉ゼロ」を目標に置くと判断が速くなります。
検索上位の記事は「施工手順」「材料の種類」に寄りがちですが、現場の再発防止に効くのは“硬化までの管理”と“検査の設計”です。端部シールは施工直後より、硬化途中に雨・結露・粉じん・清掃水が当たったときに品質が崩れやすく、しかも不具合が内部で進むと発見が遅れます。だからこそ、端部は「施工したら終わり」ではなく、「硬化するまで壊さない」工程として段取りに組み込む価値があります。
実務で使える、仮養生と点検のコツをまとめます。
✅仮養生(意外に効く)
・翌日に別業者が通行する動線は、端部周りだけでも簡易バリケードを設置する(踏みつけ・台車の擦れを防ぐ)
・雨が読めない日は、端部の上流側だけでも一時的な雨返し(ブルーシートの水切り)を作り、直撃を避ける
・硬化前の端部に粉じんが積もると表層が脆くなりやすいので、近接のハツリ・研磨の工程順を調整する
🔎検査(後戻りを減らす)
・ヘラ仕上げ後に、マスキング境界の“欠け”“ピンホール”“薄肉”をその場でライト斜め当てで確認する(微細欠陥が見つかりやすい)
・末端固定金具の際は、金具とシール材の境界が連続しているかを重点確認する(ここが途切れると水みちになる)
・「硬化後にもう一度触診」して、柔らかすぎる部分やベタつき残りがないかを見る(混和不足・湿潤下地の兆候になり得る)
また、検査記録の取り方を変えるだけで品質が上がることがあります。端部は延長が長く、全数写真が難しいので、「基準となる良品の断面写真(ヘラ形状)」を先に撮り、以降は“基準との差分”を残す運用が実用的です。さらに、同じ納まりでも方位や日射条件で硬化が変わるため、北面・日陰・水回りなど“悪条件側”の写真を優先して残すと、後で説明がしやすくなります。
端部は材料名よりも工程管理で差が出る領域です。材料選定(露出条件・塗装の有無)と、下地乾燥・断面確保・硬化までの保護・検査という一連を、同じ帳票で回せるようにしておくと、属人性が下がり、クレームの芽も早く摘めます。