
建築現場で使用されるスタイロフォームの標準寸法は、JIS A 9521規格に基づいて厳格に管理されています。主要製品の寸法規格は以下の通りです。
基本寸法規格
特筆すべきは、スタイロフォームRB-GK-Ⅱのみが910×910mmの正方形サイズとなっている点です。これは特殊用途向けの製品で、通常の長方形サイズでは対応困難な箇所での使用を想定した設計となっています。
許容差規格
JIS規格では、厚さ5mm以上160mm以下の製品について、スキン層なしの場合+2,0の許容差が設定されています。幅については1000mm未満で±5mm、1000mm以上で±8mmの許容差が認められており、長さは1000mm未満で±8mm、1000mm以上で±10mmとなっています。
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各スタイロフォーム製品の物性値は、用途と要求性能によって大きく異なります。建築現場での適切な選定には、これらの数値を正確に理解することが不可欠です。
熱伝導率による性能ランキング
圧縮強度による耐荷重性能
注目すべきは、スタイロフォームFGが最高の断熱性能を誇る一方で、使用可能厚みが40/50/75mmに限定されている点です。これは製造技術上の制約によるもので、薄い断熱層で高性能を求める場合に威力を発揮します。
透湿係数の重要性
全製品で透湿係数145ng/(m²・s・Pa)以下を実現していますが、RB-GK-Ⅱのみ55ng/(m²・s・Pa)以下と格段に優れた防湿性能を示します。これは湿度管理が重要な地下構造物や高湿度環境での使用に適しています。
熱抵抗値の計算は、断熱設計において最も重要な要素の一つです。計算式は「熱抵抗R[m²・K/W] = 厚さd[m] ÷ 熱伝導率λ[W/(m・K)]」で表されます。
実用的な熱抵抗値比較表(50mm厚の場合)
この数値から分かるように、同じ厚みでもスタイロフォームFGはIBの約1.6倍の断熱性能を発揮します。コスト面では高価ですが、限られたスペースで高い断熱性能が要求される場合には非常に有効です。
建築物省エネ法対応の必要厚み
2030年度の目標基準値0.03036W/(m・K)に向けて、各製品の必要厚みも変化しています。現行基準では、地域区分や部位によって異なりますが、一般的な外壁用途では50-100mm程度の厚みが標準的です。
熱橋対策の重要性
実際の施工では、木材や鉄骨などの構造材による熱橋効果を考慮する必要があります。特に外張り断熱工法では、スタイロフォームの連続性確保が断熱性能に大きく影響するため、継手部分の処理が重要になります。
建築現場でのスタイロフォーム施工効率は、適切な寸法選定によって大幅に改善できます。特に大型物件では、この効率化が工期短縮とコスト削減に直結します。
効率的な割付け計算手法
標準サイズ910×1820mmを基準とした割付けでは、建物の外周寸法を1820mmで除した商と余りを計算し、端材の発生を最小限に抑える設計が重要です。例えば、外壁長さ5460mmの場合、1820mm×3枚で完全に収まり、端材が発生しません。
現場加工時の注意点
運搬・保管時の寸法管理
スタイロフォームは軽量で取り扱いやすい反面、衝撃に弱い特性があります。特に薄い製品(20-30mm)では、運搬時の変形や欠けが寸法精度に影響するため、専用の保護材を使用した梱包が推奨されます。
継手処理と寸法調整
実際の施工では、製品寸法と建物寸法の微妙な差異が生じることが多く、現場での寸法調整技術が重要になります。テープ継手や専用接着剤を使用した処理により、断熱性能を損なわない継手処理が可能です。
標準規格では対応困難な特殊用途について、多くのメーカーでオーダーメイド対応を実施しています。これは建築設計の多様化に伴い、ますます重要性が増している分野です。
オーダーメイド対応可能範囲
コスト算出の考え方
オーダーメイド品のコストは、標準品に対して1.5-3倍程度が目安となります。ただし、現場加工費や施工時間短縮効果を考慮すると、総合的なコストメリットが得られる場合も多く、詳細な比較検討が必要です。
発注時の注意事項
特殊用途での活用事例
近年では、BIM(Building Information Modeling)との連携により、3Dデータから直接オーダーメイド寸法を算出する手法も確立されています。これにより、設計段階から最適な断熱材配置を検討し、無駄のない施工計画を立案することが可能になっています。
また、省エネ基準の厳格化に伴い、従来の標準厚みでは対応困難な高断熱仕様において、100mm超の厚み製品のニーズが急増しています。このような案件では、複数層施工よりも一体成型品の方が、施工精度と断熱性能の両面で優位性があることが実証されています。