
熱抵抗値は、断熱材がどれだけ熱を伝えにくいかを示す指標で、計算式は「熱抵抗(R値)=材料の厚さ÷熱伝導率」となります。単位は㎡・K/Wで表され、この数値が大きいほど断熱性能が高いことを意味します。
参考)断熱材の熱伝導率とは|熱抵抗値との違いや計算方法を解説
熱伝導率の単位はW/(m・K)で、厚さの単位はメートル(m)で計算する必要があり、ミリメートル(mm)ではない点に注意が必要です。例えば、厚さ100mmの断熱材を使用する場合、計算時には0.1mに換算します。
参考)熱抵抗(R値)の計算
熱抵抗値の計算では、外気側表面熱抵抗と室内側表面熱抵抗も考慮する必要があります。外壁の場合、外気側表面熱抵抗(Ro)は0.04~0.11㎡・K/W、室内側表面熱抵抗(Ri)は0.11㎡・K/Wが標準値として使用されます。
参考)熱貫流率(U値)とは|計算の仕方【住宅建築用語の意味】
熱伝導率は材料そのものの熱の伝わりやすさを表す固有の値で、材料の厚さは考慮しません。値が小さいほど熱を伝えにくく、断熱性能が高いことを示します。
参考)https://www.isover.co.jp/glossary/thermal-conductivity
一方、熱抵抗値は材料の厚さを考慮した熱の伝わりにくさを表し、値が大きいほど断熱性能が高くなります。熱伝導率が水道の蛇口の太さに例えられるなら、熱抵抗値は蛇口に付けたフィルターのようなもので、厚いフィルターほど水の勢いは弱まります。
参考)失敗しない断熱材選び|厚み・熱伝導率を踏まえた熱抵抗値(R値…
熱伝導率と熱抵抗値の関係性を理解することが、適切な断熱材選定の鍵となります。熱伝導率が0.040W/m・Kのグラスウール16Kを厚さ100mm(0.1m)で使用した場合、熱抵抗値は0.1÷0.040=2.5㎡・K/Wとなります。
参考)熱伝導率と熱抵抗 - 岐阜・愛知の新築・注文住宅ならユーハウ…
高性能グラスウール(熱伝導率0.036W/m・K)を厚さ105mm(0.105m)で施工する場合の熱抵抗値は、0.105÷0.036=2.916㎡・K/Wとなります。同じ厚さでも、グラスウール16K(熱伝導率0.045W/m・K)を使用すると、0.105÷0.045=2.33㎡・K/Wとなり、性能が低下します。
参考)[H28年基準] 熱貫流率(U値)とは
複数層の断熱材を使用する場合、各層の熱抵抗値を単純に足し合わせることができます。例えば、グラスウール10cm(熱抵抗値2.3㎡・K/W)と高性能グラスウール10.5cm(熱抵抗値2.8㎡・K/W)を二枚敷きにすると、合計の熱抵抗値は2.3+2.8=5.1㎡・K/Wとなります。
参考)エムアールホームの断熱材『熱抵抗値』 省エネ基準・誘導基準で…
壁体全体の熱貫流率(U値)を計算する際には、一般部と熱橋部(柱や間柱部分)を分けて計算し、面積比率で加重平均する必要があります。木造軸組構法で柱・間柱間に断熱する場合、一般部の面積比率0.83、熱橋部の面積比率0.17を使用します。
参考)[H28年基準] 外皮平均熱貫流率(UA値)
断熱材の種類 | 熱伝導率[W/(m・K)] | 厚み[mm] | 熱抵抗値[㎡・K/W] |
---|---|---|---|
高性能グラスウール | 0.036 | 105 | 2.916 |
グラスウール16K | 0.045 | 105 | 2.33 |
構造用合板 | 0.160 | 12 | 0.08 |
石こうボード | 0.220 | 12 | 0.05 |
断熱性能を考える上で、熱伝導率と厚みの両方を同時に評価することが不可欠です。熱伝導率が低いほど熱を伝えにくく、厚みがあるほど熱の移動距離が長くなるため、両方の数値が断熱性能を左右します。
熱伝導率が0.04W/m・Kの断熱材を厚み100mm(0.1m)で使用した場合、R値は0.1÷0.04=2.5㎡・K/Wとなります。同様に、熱伝導率0.02W/m・Kで厚み50mm(0.05m)の場合も、R値は0.05÷0.02=2.5となり、両者は同等の断熱性能を示します。
厚みが足りない場合でも、より熱伝導率の低い断熱材を用いれば性能を補うことができます。逆に、安価な素材でも十分な厚みを確保すれば必要な断熱性能に達することも可能で、スペースやコストとのバランスを見ながら適切な選択を行うことが大切です。
建築材料の熱伝導率は、材料の種類によって大きく異なります。木材の熱伝導率は0.08~0.5Kcal/mh℃(約0.12~0.58W/m・K相当)で、コンクリートの0.94Kcal/mh℃(約1.09W/m・K相当)と比較すると約12倍の断熱性能を持ちます。
参考)家づくりに適した木材。その理由とは??? href="https://www.marushichi.co.jp/tips/%E5%AE%B6%E3%81%A5%E3%81%8F%E3%82%8A%E3%81%AB%E9%81%A9%E3%81%97%E3%81%9F%E6%9C%A8%E6%9D%90%E3%80%82%E3%81%9D%E3%81%AE%E7%90%86%E7%94%B1%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F%EF%BC%9F%EF%BC%9F/" target="_blank">https://www.marushichi.co.jp/tips/%E5%AE%B6%E3%81%A5%E3%81%8F%E3%82%8A%E3%81%AB%E9%81%A9%E3%81%97%E3%81%9F%E6%9C%A8%E6%9D%90%E3%80%82%E3%81%9D%E3%81%AE%E7%90%86%E7%94%B1%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F%EF%BC%9F%EF%BC%9F/amp;#8211; 春…
鉄の熱伝導率は38.6~105Kcal/mh℃(約45~122W/m・K相当)と非常に高く、木材の約483倍も熱を伝えやすい材料です。このため、鉄骨造の建築物では充填断熱工法を採用し、柱・梁部分の熱橋対策が重要になります。
参考)https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/kenchikubutsu_energy/pdf/016_09_02.pdf
断熱材の中では、フェノールフォーム保温板1種1号の熱伝導率が0.022W/(m・K)以下と最も性能が高く、次いで硬質ウレタンフォーム保温板2種1号が0.023W/(m・K)以下となります。グラスウールやロックウールなどの繊維系断熱材は0.034~0.045W/(m・K)程度の熱伝導率を持ちます。
参考)断熱材ランキングTOP15を性能の高さ順に紹介!選ぶ時のチェ…
材料分類 | 代表的な材料 | 熱伝導率[W/(m・K)] | 相対性能 |
---|---|---|---|
高性能断熱材 | フェノールフォーム1種1号 | 0.022以下 | 最高性能 |
発泡系断熱材 | 硬質ウレタンフォーム2種1号 | 0.023以下 | 高性能 |
繊維系断熱材 | 高性能グラスウール | 0.036 | 標準的 |
構造材 | 木材(すぎ) | 0.120 | 低性能 |
躯体材料 | コンクリート | 約1.09相当 | 断熱性低 |
断熱材の選定では、熱伝導率の低さだけでなく、耐水性・耐久性・施工性・コストなどを総合的に判断する必要があります。フェノールフォームは高性能ですが、シロアリに弱くコストが高めという欠点があります。一方、グラスウールは性能と価格のバランスが良く、住宅用断熱材として広く採用されています。
参考)住宅用断熱材の比較表!11種類の特徴やおすすめハウスメーカー…
建築物省エネ法では、地域区分ごとに外壁・屋根・床などの部位別に必要な熱抵抗値が定められています。省エネ基準と誘導基準の2段階があり、誘導基準の方がより高い断熱性能を要求します。
参考)https://www.jfe-rockfiber.co.jp/pdf/2016_catalog_19-38.pdf
木造戸建住宅の外壁における充填断熱工法の場合、1~2地域(北海道など)では省エネ基準で熱抵抗値2.2㎡・K/W以上、誘導基準で2.9㎡・K/W以上が必要です。4~7地域(東京・大阪など)では省エネ基準で1.6㎡・K/W以上、誘導基準で2.2㎡・K/W以上となります。
天井断熱の場合、1~2地域では誘導基準で4.4㎡・K/W以上、屋根断熱では5.7㎡・K/W以上の熱抵抗値が求められます。床の熱抵抗値は2.0㎡・K/W以上とされ、この基準を満たすには断熱材の2枚重ねなどの工夫が必要になることがあります。
省エネ基準への適合を確認するには、使用する断熱材の熱伝導率と厚みから熱抵抗値を計算し、地域区分と部位に応じた基準値と比較します。実務では、簡略計算法として予め決められた面積比率を使用する方法と、詳細計算法として部材1本ごとに拾い出す方法があります。
断熱材の熱伝導率とは|熱抵抗値との違いや計算方法を解説 - フォームライトSL
熱伝導率と熱抵抗値の違い、計算方法の基本が分かりやすく解説されており、断熱材選定の基礎知識として参考になります。
熱抵抗(R値)の計算 | 住宅の省エネ基準
省エネ基準における熱抵抗値の計算方法が具体的に示されており、実務での計算手順の確認に有用です。
H28年基準 熱貫流率(U値)とは - 学ぼう!ホームズ君
熱貫流率の計算における面積比率の詳細な解説があり、簡略計算法の理解を深めるのに役立ちます。