

コンクリートのpHは13前後もあるため、使用する材料を間違えると1年以内に劣化が始まります。
耐アルカリ性試験とは、材料がアルカリ性環境にさらされたときに、どの程度劣化せず性能を維持できるかを評価する試験です。建築現場でとくに重要になるのは、コンクリートやモルタルが強アルカリ性(pH12〜13程度)を示すためです。このような環境に接する繊維、塗料、シート、樹脂などの材料は、施工前に耐アルカリ性を確認しておくことが品質保証の基本です。
JIS(日本産業規格)では、材料の種類に応じて耐アルカリ性を評価するための複数の規格が存在します。代表的なものを挙げると次のとおりです。
つまり、「耐アルカリ性試験JIS」は1つの規格ではなく、材料カテゴリごとに適用規格が異なります。これが基本です。
建築従事者が誤解しがちなのは、「耐アルカリ性試験をクリアしていれば、どんなアルカリ環境でも使える」という考え方です。しかし各JIS規格が規定するアルカリ濃度・浸漬時間・温度条件はそれぞれ異なるため、実際の現場環境と試験条件が一致しているかどうかを確認することが欠かせません。
試験方法の基本的な流れは、規格によって多少の違いはありますが、おおよそ共通したステップで構成されています。ここではとくに建築現場との関連が深い防水シート(JIS A 6008)とガラス繊維(JIS R 3420)を例に、手順の概要を解説します。
JIS A 6008 の耐アルカリ性試験手順
試験片は幅25mm・長さ150mm程度に切り出します。試験溶液は1mol/L(モル濃度)の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液で、温度は23±2℃に管理します。試験片をこの溶液に168時間(約1週間)浸漬したあと、取り出して洗浄・乾燥させます。その後、引張試験機を用いて引張強さを測定し、浸漬前の値と比較します。引張強さ保持率が80%以上であれば合格です。
保持率80%というのが条件です。
JIS R 3420 の耐アルカリ性試験手順
ガラス繊維の場合は、5%炭酸ナトリウム(Na₂CO₃)水溶液または水酸化ナトリウム水溶液を用います。試験温度・時間は製品グレードや試験項目によって変わりますが、一般的には80℃の高温アルカリ溶液に数時間〜数十時間浸漬するケースが多く見られます。温度を高めることで、長期間の使用を短時間で模擬する加速試験の考え方が採られています。
これは使えそうです。
建築現場でよく使われるガラスネット(メッシュシート)は、コンクリートの表面保護に使われることが多いですが、このガラス繊維の耐アルカリ性が不十分だと、コンクリートのアルカリ成分によって繊維が溶けてしまいます。実際に、耐アルカリコーティング処理のないガラス繊維メッシュをモルタル補強に用いた場合、3〜5年程度で繊維の引張強さが試験初期値の50%以下に低下するという事例も報告されています。
施工後に劣化が判明すれば、補修コストは材料費の数倍に膨らむことがあります。材料選定の段階でJIS規格の試験条件を確認する習慣が、長期的なコスト管理に直結します。
試験結果の「合否」をどう読むかは、現場の担当者にとって重要なスキルです。意外ですね。しかし試験成績書の見方を知らないまま製品を採用しているケースは少なくありません。
試験成績書に記載される主な数値と見方は以下のとおりです。
合格基準の数値だけを確認して安心してしまう担当者も多いですが、「ギリギリ合格」の製品と「余裕をもって合格」の製品では、実際の耐久性に大きな差が生じることがあります。試験成績書には保持率の具体的な数値(例:82%など)が記載されていることが多いため、合否の「○」だけでなく実数値を確認する癖をつけることが大切です。
実数値の確認が原則です。
また、試験成績書には試験を実施した機関名・試験日・ロット番号が記載されています。第三者試験機関(一般財団法人建材試験センターなど)が発行した成績書か、メーカー自社試験によるものかを区別して確認することも品質管理の観点から重要です。第三者機関の試験はより信頼性が高く、公共工事の仕様書でも第三者機関による試験成績書の提出を求めるケースが増えています。
一般財団法人建材試験センター(JTCCM)公式サイト:試験・認証業務の概要、試験方法、申請方法などを確認できます。
建築現場で耐アルカリ性が問題になる場面は、主に次のような状況です。コンクリート打設直後の下地に防水シートやコーティングを施す場面、外壁のモルタル下地にガラスメッシュを埋め込む場面、そして地下構造物のコンクリート面に断熱材や仕上げ材を接着する場面です。これらの場面では、接触するコンクリートやモルタルのpHが12〜13という強アルカリ性を示すため、材料の耐アルカリ性確認は省略できません。
材料選定で確認すべき3つの軸があります。
なお、建築仕様書に「耐アルカリ性JIS適合品であること」と記載されている場合、どの規格を指しているかが曖昧なことがあります。仕様書の担当設計者に確認を取ることを省略すると、後で指摘を受けて材料の入れ替えが発生し、追加費用が生じるリスクがあります。これは痛いですね。
発注前の確認が最大のコスト削減策です。
日本産業標準調査会(JISC):JIS規格の全文閲覧・検索ができます。耐アルカリ性に関連する規格番号の確認に活用できます。
JIS規格の試験は製品出荷前の工場試験が中心ですが、建築現場の担当者が「受け入れ時」に簡易確認を行う取り組みが、品質志向の高い現場で注目されています。これはあまり知られていない視点です。
工場出荷時の試験成績書は製品ロットに基づいて発行されますが、実際の納入品が試験済みロットと同一であるとは限りません。梱包ラベルのロット番号と成績書のロット番号を照合することは、コスト・手間ゼロでできる最低限のチェックです。
実務で使える管理のポイントを整理します。
施工記録は資産です。
また、近年は建材メーカー各社がウェブサイト上でJIS試験成績書をPDF公開するケースが増えています。現場担当者がメーカーサイトから直接最新の成績書を取得できる体制を活用することで、代理店経由の情報ロスを防ぐことができます。
さらに、複数のメーカー製品を比較検討する際は、試験条件(濃度・温度・時間)が揃っていないと単純比較ができません。比較表を作る際は試験条件の列も加えることで、実態に即した選定が可能になります。これは使えそうです。
国土交通省 国土技術政策総合研究所(国総研):建築材料の耐久性に関する研究報告や技術資料が公開されており、JIS試験結果の実務的な解釈に参考になります。