

電動攪拌機を使うと、上塗り塗料の粒子が潰れて模様が消えます。
日本ペイントが展開する多彩模様塗料の代表製品は、水性ペリアートUV(外装用)とペリアートⅡ(内装用)の2系統です。なかでも水性ペリアートUVは、建築業界で最もよく採用される外装用の多彩模様塗料として広く知られています。
水性ペリアートUVの最大の特長は「高耐候性」にあります。塗膜の表層にシリコン系クリヤーが形成されるため、紫外線による色褪せや艶の低下が起きにくく、美しい意匠を長期間維持できます。期待耐用年数は一般に15年前後とされており、シリコン塗料(7〜12年程度)と比べても遜色のない水準です。
意匠面では「高意匠性」が特長として挙げられます。単一色ではなく、複数色の着色粒子(ゲル状の色玉)が不規則に散らばることで、天然石・御影石のような風合いが生まれます。施工前と施工後ではまったく雰囲気が変わるほどの質感で、現場で初めて見た職人が「本物の石みたいだ」と驚くケースも珍しくありません。
その他の機能面として、以下の点が特長です。
- 🛡️ 防藻・防カビ性:外部からの藻類・カビ類を塗膜で抑制し、長期的な美観を守る
- 🌊 微弾性機能:専用下塗りとセット使用することで微弾性塗膜となり、旧微弾性塗膜のひび割れに追従する
- 💧 完全水系:有機溶剤を使わない水性システムのため、施工中の臭気がほとんどなく、F☆☆☆☆相当で環境負荷が低い
- 🌧️ 低汚染性:雨水と一緒に汚れが流れ落ちやすいセルフクリーニング機能を持つ
色相展開は下塗り・上塗りともに16色です。ゾラコートEX(関西ペイント)の30色と比べると少なめに感じますが、Soft・Dress・Classic・Monoの4カテゴリに整理されており、建物のテイストに合わせた選択がしやすい構成になっています。仕上がりは「3分つや有り」で、しっとりとした落ち着いた質感が得られます。
内装用のペリアートⅡは36色展開で、モルタル・コンクリート・鉄部・アルミ・各種ボードなどに幅広く対応しています。臭気がほとんどない水性タイプなので、居ながら工事の現場でも採用しやすい点が現場担当者に喜ばれています。
参考:水性ペリアートUVの製品詳細・仕様・色相一覧(日本ペイント公式)
https://www.nipponpaint.co.jp/products/building/176/
水性ペリアートUVの施工は「吹付け2工程仕上げ」が基本です。通常の外壁塗装が下塗り・中塗り・上塗りの3回塗りなのに対し、この塗料は下塗り+上塗りの2工程でも仕上がります。つまり工程数だけを見れば少ないのですが、吹付けという特殊な工法が必要なため、職人の技術力が仕上がりに直結します。
【工程①:下地処理】
膨れ・割れ・浮きがある劣化塗膜は周辺を含めて入念に除去します。ゴミ・砂じん・油脂分なども除去し、乾燥した清浄な面とすることが前提です。釘頭の錆はサンドペーパーで除去し、錆止め塗料で補修します。これが原則です。
【工程②:シーラー(必要な場合)】
標準的な改修工事ではシーラーは不要ですが、新築面や劣化の著しい面ではエポキシ樹脂シーラー(ファイン浸透シーラーなど)が必要です。金属サイディングや鉄部については、目荒らしを十分に行った上でエポキシ樹脂プライマーを塗布します。
【工程③:下塗り(ローラー・刷毛)】
水性ペリアートUV下塗をウールローラー(中毛)または刷毛で塗布します。使用量は0.25〜0.35kg/㎡。ここで重要なのは「下塗りの色相は上塗りと同じ色相名を選ぶ」ことです。理由は、上塗り吹付け後に下塗り面が一部露出する仕様になっているためで、色相が違うと仕上がりが崩れます。乾燥時間は23℃で3時間以上を確保します。
💡 下塗りは絶対に吹付け禁止ではありません。施工要領書では「はけかウールローラー推奨」と記載されていますが、タイル目地など複雑な形状では施工性を優先して吹付けで代用するケースも実務上は存在します。ただしメーカー推奨外の施工となるため、現場判断が必要です。
【工程④:上塗り(万能ガン吹付け)】
水性ペリアートUV上塗(S)を万能ガン(ガン口径5〜6mm、手元圧1.0〜2.0kgf/cm²)で吹付けます。使用量は0.50〜0.70kg/㎡。入り隅・出隅から先に処理し、その後平面部を縦横1回ずつの運行で施工します。乾燥時間は23℃で16時間以上。
吹付け直後は表面の凹凸が大きく、色も「ウェット色」で見た目が異なります。乾燥後に色が大きく変化する(「色の昇り」と呼ばれる現象)のはこの製品の仕様であり、異常ではありません。仕上がりの最終確認は必ず乾燥後に行います。
【補修時の注意】
部分補修も吹付けが基本ですが、わずかな補修面であれば刷毛で叩くように上塗りを塗付することも可能です。補修用に現場施工時の塗料を保管しておくことを強く推奨します。多彩模様塗料はロット差により色相・模様にばらつきが生じるため、後から同色を取り寄せても完全に一致しないことがあります。これは知らないと痛いですね。
参考:水性ペリアートUV施工要領書(日本ペイント公式PDF)
https://www.nipponpaint.co.jp 施工要領書(PDF)
現場でうっかりやりがちなミスが、水性ペリアートUVの「攪拌方法」と「希釈」に関するものです。これが原因で仕上がりが大きく崩れるケースが報告されており、施工前に必ず確認すべきポイントです。
まず電動攪拌機の使用は絶対にNGです。缶を開けると上部にクリヤー成分が浮き上がっているヨーグルト状の外観ですが、内部には着色粒子(色玉)がダンゴ状のかたまりで存在しています。電動攪拌機を使うと、この粒子が破砕されて潰れてしまい、多彩模様の表情が出なくなります。ひしゃくや攪拌棒を使い、手で「ゆるやかに」かき回すことが原則です。
次に水での希釈も禁止です。下塗り・上塗りともに「無希釈」が指定されています。希釈すると塗装適性が失われ、色玉の分布が崩れたり、乾燥後の塗膜に白化やシミが生じるリスクがあります。粘度が高くて吹付けにくいからといって水を足すのは厳禁です。
また、上塗りは「経時により流動性が低下する」特性があります。使用前には必ず流動性を確認し、缶を長時間開封したまま放置しないよう注意が必要です。使用しない間はポリエチレンシートなどでシールして皮張りを防ぎます。
さらにローラーによる上塗りも原則NGです。施工要領書では上塗りの施工方法として「万能ガン(吹付け)○、ローラー×、刷毛×」と明記されています。ローラーで上塗りを塗ろうとすると、色玉が潰れて模様が均一化し、せっかくの天然石風の仕上がりが失われます。吹付けが原則です。
| 項目 | 推奨 | 禁止 |
|---|---|---|
| 攪拌方法 | ひしゃく・攪拌棒(手動) | 電動攪拌機 |
| 希釈 | 無希釈 | 水希釈 |
| 下塗り塗装 | ウールローラー・刷毛 | 吹付け(推奨外) |
| 上塗り塗装 | 万能ガン吹付け | ローラー・刷毛 |
なお、蓄熱されやすい建材(軽量モルタル・ALC・窯業サイディング・発泡ウレタン使用建材)で、旧塗膜が弾性リシン・弾性スタッコ・アクリルトップなどの場合は、塗り替え時点ですでに膨れが生じていることがあります。そのまま塗装すると膨れが拡大するため、完全除去が必要です。高弾性タイプの旧塗膜への施工は避けることが条件です。
参考:施工現場の多彩模様塗料施工事例レポート(ヌマノ塗装)
https://numano.info/crystal-art/
水性ペリアートUVの施工単価は㎡あたり4,400〜6,000円程度です。日本ペイント公式の設計価格では「吹付け2工程(下塗り+上塗り)で5,160円/㎡」と明記されています(300㎡以上が基準)。これに足場代や付帯塗装などが加わるため、総工費は大きくなります。
実際の施工事例を見ると、外壁面積120㎡程度の戸建住宅では材料費+工賃の合計が37万円前後(外壁のみ)という報告もあります。足場・屋根・破風板・雨樋など付帯工事を含めると70〜80万円に達するケースも多いです。
一般的な塗料との比較は以下のとおりです。
| 塗料種別 | 施工単価(㎡) | 期待耐用年数 |
|---|---|---|
| シリコン塗料 | 1,800〜3,500円 | 7〜12年 |
| フッ素塗料 | 3,000〜5,000円 | 15〜20年 |
| 水性ペリアートUV | 4,400〜6,000円 | 約15年 |
| 多彩模様塗料(全般) | 5,000〜10,000円 | 10〜15年 |
比較すると、シリコン塗料の2倍前後のコストがかかります。しかし耐用年数が15年前後と長く、意匠性も格段に高いことを考えると、予算に余裕がある物件や高級感を重視するオーナーには十分な費用対効果が期待できます。これは使えそうです。
40坪(外壁面積158㎡程度)の住宅で多彩模様塗料を使った場合の外壁塗装費用は79万〜158万円が目安です。同じ住宅にシリコン塗料を使った場合は28万〜55万円程度なので、差額は最大で100万円以上になることもあります。見積りを出す際には、この費用差をオーナーにきちんと説明することが重要です。
また、費用を左右するもう一つの要因が「職人の技術料」です。多彩模様塗料は吹付け技術が必要なため、施工経験が少ない業者では断られるケースや、割増料金が発生するケースがあります。施工経験・実績の確認は業者選定の際に必須と言えます。
参考:多彩模様塗料のデメリット5つとメリット解説(やまもとくん塗装)
https://yamamotokun-tosou.com/tasaimoyotoryo-demerit/
建築業従事者がとくに注意すべき点として、水性ペリアートUVは吹付け工法を使うため、塗料の飛散対策が欠かせないという現実があります。近隣の住宅・車・植栽・洗濯物などへ塗料が飛散すれば、トラブルに発展するリスクが高いです。
施工要領書では「建物周囲にメッシュ養生し、近隣への飛散を防ぐ」ことが必須事項として明記されています。車には専用のシートで養生し、マスカーテープ等で未塗装面も全て覆います。万が一塗料が飛散した場合に備えた準備も含め、養生にかかる時間と費用は通常のローラー塗装よりも大きくなります。
隣家との距離が1〜2m以内の密集地では、吹付け工法そのものが実質的に不可能になる場合があります。その場合、対応策として「ローラー施工が可能な別製品(水谷ペイントのラテラトーンRなど)への変更」を提案することが現実的です。吹付けと同じ水性ペリアートUVでローラー上塗りはできないため、製品自体を切り替える判断が求められます。
風が強い日の施工も原則禁止です。日本ペイントの施工要領書でも「強風時は塗装を避けてください」と明記されています。当日の天候・風速を確認してから施工を開始することが重要で、急な風の変化にも対応できるよう現場に養生材を十分に用意しておくことが安全です。
施工できない気象条件として以下を覚えておくと大丈夫です。
- ❌ 気温5℃以下
- ❌ 湿度85%以上
- ❌ 降雨・降雪のおそれがある場合
- ❌ 強風時
- ❌ 塗装後24時間以内に結露・降雨が見込まれる場合
塗装後24時間以内に降雨・結露が発生すると、膨れ・剥離・白化・シミが発生するリスクがあります。乾燥が不十分なまま降雨にさらされた場合は、乾燥後に水拭きしてシミを除去する対処が必要です。天気予報をしっかり確認してから着工することが原則です。
参考:多彩(模様)仕上げ工法の特徴と施工料金(ペイントスタッフ)
https://paintstaff.co.jp/wall-material/pattern-finish/
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