

無許可でも500万円未満なら問題ないと思っていると、消費税込みで計算されて気づかず違反になります。
建具工事業とは、木製建具やアルミサッシ、金属製建具などを取り付ける工事を専門とする業種です。建設業法上では「建具工事業」として独立した許可区分が設けられており、一定規模以上の工事を請け負う際には建設業許可の取得が義務付けられています。
許可が必要になる基準は、1件の請負金額が500万円(税込)以上の工事です。ここで注意が必要なのが「税込み」という点です。
例えば、税抜きで460万円の工事であっても、消費税10%を加算すると506万円となり、許可が必要な金額を超えてしまいます。「税抜きで500万円未満だから大丈夫」と思っていると、実は無許可営業になっているケースが少なくありません。これは見落としがちな点ですね。
対象となる工事の種類としては、以下のようなものが含まれます。
ただし、ガラスのはめ込みだけを行う場合は「ガラス工事業」に分類されることがあるため、工事の内容によって業種区分が変わる点にも注意が必要です。業種の判断は1件ごとに確認するのが原則です。
また、建設業許可には「一般建設業許可」と「特定建設業許可」の2種類があります。元請として下請に出す工事の総額が4,000万円(建築一式工事は6,000万円)以上になる場合は特定建設業許可が必要です。多くの建具工事業者は一般建設業許可の取得を目指すことになります。
建設業許可を取得するためには、建設業法が定める5つの要件をすべて満たす必要があります。1つでも欠けると許可は下りません。これが条件です。
① 経営業務の管理責任者(経管)の設置
経営業務の管理責任者とは、建設業の経営について一定の経験を持つ人物のことです。具体的には、建設業に関して5年以上の経営経験(役員・個人事業主としての経験)を有する人物が、常勤で会社に在籍している必要があります。
以前は「許可を受けようとする業種」での経験が必要でしたが、2020年の建設業法改正により要件が緩和され、建設業全般での経営経験があれば認められるようになりました。意外ですね。これにより、異業種からの参入ハードルが下がっています。
② 専任技術者の設置
専任技術者は、営業所ごとに常勤で配置する必要がある技術者です。建具工事業の専任技術者として認められるには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
実務経験で証明する場合、10年分の工事請負契約書や注文書などの書類をすべて揃える必要があります。書類の準備は早めに動くのが基本です。
③ 財産的基礎・金銭的信用
一般建設業許可の場合、以下のいずれかを満たす必要があります。
④ 誠実性
請負契約に関して不正・不誠実な行為をするおそれがないことが必要です。具体的には、詐欺・脅迫・横領などの行為をするおそれがない人物・法人であることが求められます。
⑤ 欠格要件に該当しないこと
成年被後見人・被保佐人、破産者で復権を得ない者、建設業法違反などで5年以内に刑罰を受けた者などは許可を受けられません。役員全員が欠格要件に該当しないことの確認が必要です。
許可申請の手続きは、申請先となる都道府県の建設業課(または国土交通省の地方整備局)に書類を提出する形で進めます。申請から許可取得まで、標準的に1〜2ヶ月程度かかります。
申請に必要な主な書類は以下のとおりです。
書類の量が多いのが現実です。特に実務経験で専任技術者を証明する場合、10年分の証拠書類を一式揃えるのが最も手間のかかる作業になります。
申請手数料は、知事許可(1都道府県のみで営業)の場合は9万円、大臣許可(2以上の都道府県で営業)の場合は15万円です。この費用は返還されないため注意が必要です。
手続きの大まかな流れは次のとおりです。
申請前に都道府県の担当窓口へ事前相談するのが、スムーズに進めるコツです。書類の不備を指摘されてから揃え直すと大幅に時間をロスします。行政書士に依頼する場合は別途報酬が発生しますが、書類準備の負担を大幅に減らせます。依頼費用の相場は10〜15万円程度が一般的です。
参考:国土交通省「建設業許可申請・変更の手引き」各都道府県版
国土交通省|建設業許可申請等について(申請書類ダウンロード含む)
建設業許可を取得しても、それで終わりではありません。許可には5年間の有効期限があり、継続して営業するためには期限満了の30日前までに更新申請を行う必要があります。更新を忘れると許可が失効します。
更新申請の費用は新規と同額の9万円(知事許可の場合)がかかります。5年ごとに9万円が必要ということですね。更新を忘れた場合、一度許可が失効するため、再取得には新規申請と同じ手続きと費用が必要になります。
また、許可取得後に以下のような変更が生じた場合は、変更届の提出が義務付けられています。
中でも見落としが多いのが、毎年の決算変更届(事業年度終了報告)です。許可取得後、毎年決算が終わるたびに提出が必要であることを知らない事業者が一定数存在します。この届出を怠ると、更新申請ができなくなる場合があるため注意が必要です。
専任技術者が退職した場合は2週間以内に変更届を提出し、新たな専任技術者を配置しなければ許可の取消し事由となります。厳しいところですね。人員の急な変動が起きた際に慌てないよう、あらかじめ専任技術者の候補者を社内で育成・確保しておくことが現実的な対策です。
参考:国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン」
国土交通省|建設業法令遵守ガイドライン(許可業者向け義務事項の詳細)
建具工事業者の多くは、建具の取り付けだけでなく、内装工事や塗装工事なども手がけているケースが実態として多くあります。この「複数業種の兼業」において、見落とされがちな重要ポイントがあります。
建設業許可は業種ごとに取得する必要があります。つまり原則です。建具工事業の許可を持っていても、内装仕上工事業や塗装工事業の許可を別途取得しなければ、それらの工事を500万円以上で受注することはできません。
「一式工事として受注すれば問題ないのでは?」と考える方もいますが、これは誤解です。建築一式工事の許可は、複数の専門工事を組み合わせた大規模な建築工事全体を元請として管理する許可であり、個別の専門工事の代わりにはなりません。
注目すべきは、1つの建設現場で複数業種の工事が混在する場合の判断です。例えば建具の取り付けと同時に内装塗装も施工する場合、どの業種の許可が必要かは「主たる工事の種類」と「それぞれの請負金額」で判断されます。
| 状況 | 必要な許可 |
|---|---|
| 建具工事500万円以上+内装工事400万円(一体の契約) | 建具工事業許可が必要(主たる工事で判断) |
| 建具工事300万円+内装工事600万円(別々の契約) | 内装仕上工事業許可が必要 |
| 建具工事250万円+内装工事230万円(別々の契約) | 許可不要(各500万円未満) |
複数の業種許可を同時に申請することも可能です。新規申請時に複数業種をまとめて申請すれば、申請手数料は1回分(9万円)で済みます。業種ごとに別々に申請すると、その都度9万円が必要になるため、将来的に必要になる業種はまとめて申請するのが効率的です。これは使えそうです。
業種の判断に迷う場合は、都道府県の建設業課や行政書士への相談を早めに行うことが、無許可営業リスクを避ける最善策です。無許可営業が発覚した場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金という重い罰則が科せられます。法的リスクが大きい点は覚えておくべきです。
参考:建設業振興基金「建設業許可の業種区分と対象工事の考え方」
建設業振興基金|建設業に関する各種情報・支援情報