

平面図だけ完璧に描いても、立面図と断面図を添えないとカーテンウォールの納まりは承認されません。
カーテンウォールとは、建物の構造を支えない非耐力壁で、工場で生産した部材を現場で取り付ける外壁システムです。構造体(柱・梁・床)に対してファスナー(取付金物)を介して吊り付けるため、RC造やS造の躯体ラインと外装ラインが完全に一致しないことが多くあります。この「ずれ」を平面図上でどう扱うかが、カーテンウォール図面の最初の関門です。
平面図を描くときの大原則は、躯体の外周ライン(構造体の外面)と外装ライン(カーテンウォールの外面)を別々の線として管理することです。2本のラインが数十ミリ〜100ミリ以上ずれる場合もあり、この差分をファスナー(ブラケット)が吸収します。平面図でこの2本の線を一本化してしまうと、後工程の施工図承認やファスナー設計のときに大きな混乱が生じます。
実際の躯体付け金物の取付け位置の寸法許容差は、公共建築工事標準仕様書で鉛直方向±10mm、水平方向±25mmと定められています(参考:春日部市学校温水プール建設工事仕様書より)。躯体精度には必ずバラつきが生まれるため、カーテンウォール側にはルーズホールと呼ばれる調整孔が設けられており、この仕組みを念頭に置きながら平面図を描く必要があります。
つまり「躯体ライン=カーテンウォールの取付面」という前提は危険です。
平面図の外周には、通り芯→躯体外面→外装面の三段階で情報を整理し、それぞれの寸法を別の段に入れると読み手が混乱しません。図面が複雑になるようなら、外装ライン(オフセット量)は注記で補足する方法も有効です。
参考:カーテンウォール工事の品質管理ポイントと施工図チェック一覧(日本建設業連合会関西支部)
建具・カーテンウォールの品質管理のポイント|日本建設業連合会関西支部(PDF)
カーテンウォールの意匠を決定する最大の要素が「割付(わりつけ)」です。方立(マリオン)と無目が格子状に入り、その間にガラスやスパンドレルパネルがはまります。この格子のピッチと位置が外観デザインそのものになるため、平面図での表現精度は非常に重要です。
方立とは縦方向の部材で、カーテンウォールを上下の床や梁の間に「掛け渡す」役割を担います。無目とは横方向の部材で、窓部とスパンドレル部(腰壁・梁カバー部)を仕切る横桟です。建具の「方立」と同じ名称ですが、カーテンウォールにおける方立は一本で階高分(例:3,000〜4,000mm)を受け持つ大型部材です。
平面図での割付は以下の手順で進めると破綻しにくくなります。
平面図に全ての方立を等間隔で描いてしまうと、出入口周りや建物コーナー部で割付が崩れることがあります。特に角部の処理は要注意です。ガラスを突き付け(コーナーレス)にするのか、方立で受ける(コーナーマリオン)のかによって、平面図の表現が大きく変わります。コーナーレスの場合はガラス同士の接合部にシリコーン系のシーリング材を使用するため、平面図上でそれが伝わる表現が必要です。
方立位置は角と出入口周りを優先して示すのが原則です。
なお、ガラス一枚の標準的な幅は製造・搬入の都合から概ね600〜2,400mm程度が目安です。高さについては同様に最大で6,100mm前後まで対応できる製品もありますが、重量と搬入経路の両方の制約を受けます。平面図の割付スパンを設定するときは、ガラス製作サイズの上限も念頭に置く必要があります。
参考:カーテンウォールの構成方式・マリオン方式の解説(東京大学・建築系団体資料より)
カーテンウォール構成方式の分類と方立方式の詳細(PDF)
カーテンウォールの組立て方式は大きく分けてノックダウン方式・ユニット方式・セミユニット方式の3つがあります(日本建設業連合会分類)。どの方式を採用するかによって、平面図の表現が変わるため、設計者や施工図担当者はあらかじめ方式を確認してから図面作成に入る必要があります。
| 組立て方式 | 概要 | 平面図での注意点 |
|---|---|---|
| ノックダウン方式 | 方立・無目・ガラスなどを現場で順次取り付ける古典的な工法 | 方立・無目の位置を詳細に描く必要がある。現場での調整代が大きい分、寸法に余裕を持たせる |
| ユニット方式 | 工場でユニット(階高分のパネル)を組み立てて搬入・取り付ける工法 | ユニット割付ラインが意匠グリッドと一致するため、平面図上でユニット境界を明記する |
| セミユニット方式 | ガラス・外装材を工場で小型ユニット化し、現場で方立に取り付ける中間的な工法 | 方立は現場組みのため位置を確定し、パネルのサイズ範囲を図面に反映させる |
ユニット方式は特に工期短縮の効果が大きく、高層ビルや大規模建築では多く採用されています。この場合、ユニットの境界ライン(ユニット割付)が平面図で意匠グリッドと一致するように描かれているかどうかが、承認の際のチェック重点項目になります。
ノックダウン方式の場合はまったく逆で、現場での調整幅が大きい代わりに複雑なデザインに対応しやすいのが特徴です。設計段階の平面図では方立の位置を確定させても、実際の取付け時に躯体の精度誤差を吸収してファスナー位置が数ミリ動くことがあります。これが前述の水平方向±25mmの許容差に対応しています。
方式が決まったら、施工図の作成依頼のタイミングも変わります。重要なのは、カーテンウォールの専門工事業者が決定してから施工図の作成を依頼することです。
実務では方式確定を後回しにして設計図を進めた結果、後から施工図との整合がとれず手戻りが発生するケースがあります。平面図の段階から「この建物はどの方式か」を確認しながら描くことが、全体の品質管理につながります。
建築業従事者の中には、平面図さえ仕上げれば後は他の担当者に任せられると思っている方も少なくありません。しかし現場の実態では、カーテンウォールの施工図は複数の図面がセットになって初めて承認できる仕組みになっています。平面図単体での承認は、実務ではほとんど行われません。
日本建設業連合会の「建具・カーテンウォールの品質管理のポイント」によれば、施工図には平面・立面・断面の形状、寸法および取付け方法を明示することが求められています。さらに、方立・無目のスパンドレル接合部のクッション材に関する情報も施工図上で確認事項とされています。
通常、カーテンウォール施工図で求められる図面の構成はおおよそ以下のとおりです。
平面図(1/100スケール)に記載できる情報量は限られています。例えば枠の厚みやガラスの飲み込み寸法、シーリング目地の幅(許容差±3mm)などは、1/100では線が潰れて表現できません。これらは1/5〜1/10の詳細図に情報を「分担」させる必要があります。
これは使えそうです。
1/100の平面図は「位置と割付を伝える図」と割り切り、細部の寸法は詳細図や建具表へ移すことで、修正が生じたときの対応も楽になります。どの情報をどの図面に置くかを最初に整理しておくことが、全体の品質を高める最短ルートです。
参考:施工図でのカーテンウォール図面チェックポイントの全体像
建築のデザインこだわりのディテール①ガラスカーテンウォール|stado.jp
カーテンウォールの平面図や施工図の承認プロセスで、経験の浅い担当者が特につまずきやすいのが「防耐火性能の確認」と「層間変位への対応」です。意匠的な納まりのチェックに集中するあまり、このふたつの視点が抜けてしまうと、後から大幅な設計変更につながることがあります。
まず防耐火性能について整理します。カーテンウォールが防火区画を構成する部分にかかる場合、層間に設けるスパンドレル(層間ふさぎ)部の耐火性能が建築基準法上の要求を満たしているかどうかを確認しなければなりません。防火区画に面するガラスは「防火設備」として認定された製品を使う必要があり、一般のフロート板ガラスや複層ガラスでは要件を満たしません。
網入板ガラスを使う場合、カーテンウォールに用いる際は厚さ6.8mmまたは10mmで、高さが2.4mを超える場合は10mm厚が必要とされています(日建連の品質管理資料より)。この選択ミスは現場での全面交換につながるため、平面図の段階で開口部が防火区画に関係するかどうかを確認することは実務上の鉄則です。
厳しいところですね。
次に層間変位の問題です。高層建築では地震時に上下の床が水平方向に異なる変形量で動くため、床と床の間に取り付けられたカーテンウォールは「追従」する性能が求められます。日本の建築基準法ではカーテンウォールを「帳壁(ちょうへき)」と定義し、地震による層間変位に対して破損しないことを求めています。
この追従方式にはスウェイ方式(上部固定・下部スライド)とロッキング方式(面外変形で吸収)などがあります。採用する追従方式によって、平面図上でファスナーの取り合いや目地の扱いが変わります。目地の幅の寸法許容差は±3mmが標準仕様書での規定値であり、地震時の相対変位量を吸収できるだけの目地幅が確保されているかを図面チェックで確認する必要があります。
参考:防火区画・耐震性能に関するカーテンウォールの法的根拠と確認事項
建具・カーテンウォールの品質管理のポイント(防耐火・耐震章)|日本建設業連合会関西支部(PDF)