

低粘度エポキシ注入材の「低粘度」とは、一般的な接着用エポキシと比べて流動性が高く、微細なひび割れや空隙に自重や低圧で入り込めるレベルの粘度を指します。 コンクリートひび割れ補修用としては、数百〜数千mPa・s程度の粘度帯が用いられ、その中でも特に流動性に優れたものが「超低粘度形」として区別されます。
超低粘度形エポキシ樹脂は、従来注入が難しかった0.2mm以下の細かいひび割れに対応できるよう設計されており、ひび割れ幅が小さいほど接着強度が高い傾向を示すという研究報告もあります。 一方で、極端に低粘度な材料は流動性が高い反面、漏れやすく、シール不良や貫通ひび割れでは予想以上に樹脂が流出するリスクがあるため、ひび割れ状況に応じたシール計画や排出口管理が必須です。mirix+3
低粘度形・超低粘度形のどちらも二液反応硬化型で、配合比や混練りの均一性が性能に直結しますが、とくに超低粘度形はポットライフが長く設定され、低圧でゆっくり注入しやすいよう調整されている製品もあります。 建築・土木分野では、構造部材の再一体化が目的の場合には硬質形、変形追従性よりも高い接着強度が評価されるケースが多く、その点もウレタン系やセメント系注入材と異なる特徴です。okachu+2
低粘度エポキシ注入材は、主にコンクリート構造物のひび割れや間隙、モルタルやタイルの浮き補修などに用いられ、既設コンクリートとの接着により構造的な一体性を回復させることを目的とします。 建築補修注入エポキシ樹脂規格に適合した製品では、コンクリートのひび割れ内部に浸透した後、硬化して高い圧縮強度・曲げ強度を発現し、耐久性の向上にも寄与します。
コンクリートひび割れ補修工法では、ワイヤーブラシや圧搾空気でひび割れ周囲を清掃し、注入口(パッカー)の設置とシール材による表面封鎖を行ってから低粘度エポキシを注入するのが基本的な流れです。 ひび割れ幅や深さに応じて注入口のピッチや充填量を調整し、注入圧力を0.4N/mm²以下の低圧に抑えることで、クラック先端部まで樹脂を行き渡らせつつ、構造体への不要な負荷を避けます。lpis+2
また、タイル・モルタルの浮き補修では、低粘度エポキシを「接着剤」として背面空隙に充填する使い方がされ、樹脂モルタルやアンカーピンと組み合わせるケースもあります。 ここで重要なのは、材料選定の段階で「注入材としての流動性」と「硬化後の接着強度・弾性」をセットで見ておくことで、単にひびを塞ぐのではなく、長期的な剥離や再ひび割れを抑える補修につなげられます。aica+3
低粘度エポキシ注入材の施工は、調査・計画、下地処理、シール・注入口設置、混練り、低圧注入、養生・確認という基本ステップを丁寧に踏むことが、トラブルを防ぐ最も確実な方法です。 特に、ひび割れ幅・長さ・深さ、含水の有無、漏水状況を事前に把握して材料と工法を選定しておくことで、「そもそもエポキシを使うべきでなかった」失敗を避けられます。
混練りでは、二液型エポキシの配合比を秤で正確に量り、均一に混合してから注入器具に移すのが基本で、可使時間を過ぎた材料は粘度が上がって浸透性が低下し、未充填や空隙の原因になります。 自動式低圧注入器やスプリング式カプセルを使う場合も、注入圧を一定の低圧に保ち、下から上、奥から手前へと順序よく進め、隣接するパッカーからの吐出状況を確認しながら行うことで、ひび割れ内部の連続性と充填完了を見極めやすくなります。okachu+3
意外に見落とされやすいのが、シール材と注入口の取り合い部分の処理で、ここが不十分だと超低粘度材ほどピンホールから漏れ出し、充填不足や仕上げの汚染につながります。 そのため、試し注入で流動性と漏れ箇所を事前にチェックし、必要に応じてシールの追い打ちを行ってから本注入に入る運用は、手間はかかっても再補修を防ぐ「安い保険」と考えられます。mirix+2
寒冷地環境で低粘度エポキシ注入材を使う場合、温度低下により硬化反応が遅くなり、所定の接着強度に達するまでの時間が長くなることが知られており、施工計画段階で養生期間を長めに見込む必要があります。 研究報告では、低温環境でも材齢28日で室温時の90%以上の接着強度が回復する例が示されており、「強度が出ない」のではなく「強度発現が遅れる」という前提で工程を組むことが重要です。
また、含水状態や漏水があるひび割れにエポキシ系を適用すると、界面に水が残って付着不良や泡混入を起こしやすく、硬化後の接着性能が十分に発揮されないケースが多く報告されています。 このため、一次止水として発泡ウレタン注入を行い、その後の乾燥・確認を経てから低粘度エポキシで二次補修を行うといった段階的な工法が推奨されることもあります。sanyu-rec+1
寒冷地では、ひび割れ内に残った水分が凍結・融解を繰り返すことで、樹脂とコンクリートの界面に応力が集中するリスクもあり、単に「エポキシで埋めればよい」という発想では対応しきれません。 実務的には、施工時温度だけでなく、凍結融解作用の有無、融雪剤や塩害の影響、水みちの継続性などを踏まえて、「エポキシ+表面含浸」「エポキシ+表面保護」まで見据えた補修体系として検討する価値があります。data.jci-net+1
低粘度エポキシ注入材を使ったひび割れ補修は、短期的にはひび割れの閉塞と剛性回復に効果がありますが、長期的には周囲のコンクリートと弾性差が出るため、温度応力や乾燥収縮が繰り返される環境では「ひびを固めた部分」と「未注入部」の境界に新たなひび割れが発生する可能性も指摘されています。 特に、構造的にひび割れが再発しやすい部位では、エポキシ注入だけでなく、排水計画や伸縮目地の見直しなど、上流の原因対策までセットで評価することが再補修リスクの低減につながります。
現場目線で効果的なのは、注入量・注入時間・吐出確認位置を記録し、後日の点検時に「どこまで樹脂が届いていたか」「どの経路に水が回りやすかったか」を追跡できるようにしておくことです。 こうした記録があると、再補修や別業者による追加工事の際にも判断材料となり、むやみに新たな削孔や再注入を繰り返すことを避けられます。bsys+1
さらに、低粘度エポキシ注入材は、材料そのものの寿命よりも、コンクリート側の劣化や周辺環境の変化の影響を受けやすいため、定期点検とセットで「補修の寿命」を管理する考え方が重要です。 例えば、橋梁や高架下など環境負荷の大きい部位では、注入後の表面保護塗装や防食対策、排水改善といった一連のメニューの中で、どこまでを1セットの補修と定義するかを、設計段階から明確にしておくとよいでしょう。alpha-kogyo+2
建築・土木構造物におけるエポキシ樹脂注入材の接着強度や寒冷地での挙動について詳しい試験結果がまとまっています。
寒冷地環境におけるエポキシ樹脂ひび割れ注入材の接着強度に関する研究(日本コンクリート工学会)
低粘度・超低粘度のエポキシ注入材の特性や使用方法、建築補修用規格への適合情報が整理されています。
超低粘度形注入補修用エポキシ樹脂「ボンドE205」技術資料
注入工法全体の流れや、ひび割れ幅・含水条件に応じた低粘度エポキシと他材料の使い分けについて、現場向けに整理されています。