

低臭ケミカルアンカー樹脂の多くは、主剤に非スチレン系エポキシアクリレート樹脂や変性ビニルエステル樹脂を採用しており、従来品のような強いスチレン臭が発生しないことが最大の特徴です。 スチレンモノマーを含まないことで、不快な臭気の低減だけでなく、シックハウスの原因物質や特定化学物質としての規制対象から外れる製品もあり、室内改修や密閉空間の工事で採用しやすくなっています。
エポキシアクリレート系の低臭ケミカルアンカー樹脂は、高い固着力と優れた耐アルカリ性を備え、コンクリート中性化後の長期使用でも性能低下が小さい点が評価されています。 一方、変性ビニルエステル樹脂を用いたタイプは、速硬化性と幅広い温度域での施工性に優れ、短工期を求められる現場や夜間工事で重宝されます。niigata-bond+4
また、低臭タイプの中にはチクソトロピー性を付与したものもあり、天井面や壁面への施工時でも樹脂の液ダレを抑え、仕上げ面の美観や安全性を確保しやすくしています。 施工時に電動工具の回転のみで打ち込み可能なカプセル型やカートリッジ型も多く、打撃音や振動を抑えた低騒音施工と併せて、近隣環境に配慮したアンカー工法として位置付けられています。decoluxe+3
この部分では、非スチレン系樹脂の採用による低臭・環境配慮の仕組みと、エポキシアクリレート系・ビニルエステル系それぞれの性質を押さえておくことが重要です。 調達時には「非スチレン」「低臭」「VOC13物質不使用」などの表記とあわせて、樹脂種類・適用母材・設計耐力を一体で確認すると、性能と作業環境の両立が図りやすくなります。axel.as-1+4
低臭・非スチレン系樹脂が室内環境や健康に与える影響の解説(シックハウスとスチレンの関係)に関する参考リンクです。
病院や高齢者施設、ショッピングモールなど人の出入りが多い建物では、改修工事中も施設を稼働させたまま施工する「居ながら工事」が一般的であり、臭気対策は安全衛生計画の重要なテーマになります。 低臭ケミカルアンカー樹脂は、施工時のスチレン臭を抑えることで、患者や利用者だけでなく、夜間も常駐する医療従事者・店舗スタッフへの負担を軽減しやすくなります。
さらに、低臭タイプの多くは速硬化性に配慮されており、短時間で所定強度の一定割合に達するため、病室前の手すり増設やモール固定など短時間しか作業スペースが確保できない場面で有利です。 養生時間が短いほど工期短縮や夜間作業の削減につながり、施設側の営業損失と施工側の夜間割増コストの両面を抑制できる点は、発注者への説明材料としても説得力があります。chemical-setter+2
意外なポイントとして、低臭ケミカルアンカー樹脂が「設備更新時のリスク説明」にも活用されている事例があります。 例えば、MRI室や手術室など臭気・粉塵に特に敏感な区画では、あと施工アンカーを避けてケミカルスリーブを用いるケースもありますが、臭気を抑えた樹脂アンカーであれば、施工時間と養生計画を工夫することで、完全停止を避けつつ補強を行う選択肢を提案できるようになります。mirix+1
また、商業施設での増設工事では、テナント側のブランドイメージ維持の観点から、強い溶剤臭や樹脂臭を嫌うケースが増えています。 このような現場では、低臭ケミカルアンカー樹脂を採用した施工計画を提示することで、クレームリスク低減を数値化しにくい「付加価値」として説明でき、入札や見積比較の場面で他社との差別化にもつなげられます。axel.as-1+1
病院施設における改修工事の臭気・騒音対策事例を解説している資料です。
低臭ケミカルアンカー樹脂でも、樹脂の種類によって固着性能や適用範囲は大きく異なるため、臭気だけで製品を選定するのは危険です。 一般的に、エポキシ系やエポキシアクリレート系は高強度・高耐久で、重荷重や構造用アンカーに適しており、ひび割れコンクリートへの適用や耐アルカリ性の高さから橋梁・トンネル・ダムといった土木分野でも用いられています。
ビニルエステル系・変性ビニルエステル系は、速硬化性と耐薬品性のバランスがよく、屋外設備の固定や化学薬品を取り扱う工場、塩害環境下の屋外階段や手すりなどに採用されることが多くなっています。 一方、ポリエステル系はコスト面で優れているものの、軽中荷重向けとされるケースが多く、構造用途や高い安全率を求める場面では、設計上の照査やメーカー技術資料の確認が欠かせません。decoluxe+1
低臭タイプの中には、無機セメント系の注入材を用いて有機系樹脂と比べて臭気をさらに抑えたタイプもあり、耐火性能やクリープ特性を重視する鉄道・公共工事向けに用意されています。 ただし、無機系注入型は施工手順や養生管理が有機系より厳密で、注入量や水中施工時の管理など、現場側の段取り力が成果を大きく左右する点に注意が必要です。
参考)ARケミカルセッター® CI-400 無機セメント注入型タイ…
固着性能を確認する際は、カタログ記載の「短期許容引張耐力」だけでなく、ひび割れの有無、コンクリート強度、孔径と有効埋込み長さの条件まで読み込むことが重要です。 さらに、製造メーカーによっては、低臭ケミカルアンカー樹脂のクリープ試験結果や高温時荷重試験を公開しており、長期荷重が支配的な用途では、これらの試験データを元に安全率を検討することで、より説得力のある設計・提案につながります。monotaro+3
ここでは、あと施工アンカーに関する設計・施工の基本事項を整理した技術資料を参考として挙げます。
低臭ケミカルアンカー樹脂を使っても、穿孔や清掃方法によっては粉塵や騒音が問題になり、周辺環境への配慮が不十分と見なされることがあります。 低騒音型とされる接着系アンカーの多くは、カプセルをハンマーで打ち込む方式ではなく、電動ドリルの回転のみでガラスカプセルを破砕・混合する方式を採用し、打撃音を抑えているため、工具選定時には「回転専用・回転打撃不要」であるかどうかを確認するとよいでしょう。
穿孔時の粉塵対策としては、集塵機付きのドリルを使用する、あるいは孔内清掃時にブロワではなく専用ブラシと集塵機を組み合わせることで、粉塵の飛散と臭気の拡散を同時に抑制できます。 低臭ケミカルアンカー樹脂は臭気自体が少ないものの、完全に無臭ではないため、特に狭い機械室や地下ピットでの施工時には、換気計画と作業時間帯の調整をセットで検討しておくことが重要です。mirix+1
意外な注意点として、低臭タイプの一部は「作業者が臭いを感じにくいがゆえに、換気が不十分になりやすい」という指摘もあります。 臭気が弱いと、作業者が危険を感じるきっかけが減るため、SDS(安全データシート)に記載された換気条件や保護具の使用条件をあらかじめ周知し、「臭わないからマスクなしでよい」といった誤解を防ぐ必要があります。niigata-bond+1
また、低騒音施工をうたう製品であっても、既存仕上げ材や躯体の状態によっては共鳴や振動音が大きくなることがあり、夜間工事では居住者からのクレームにつながるリスクがあります。 このため、事前に代表箇所1~2点で試験穿孔を行い、実際の騒音レベルを簡易騒音計で確認したうえで、工事説明会や掲示物に「〇時~〇時は穿孔作業」「〇時以降は低騒音の樹脂注入と養生」といった時間帯別の説明を盛り込むと、発注者・居住者の安心感につながります。decoluxe+3
あと施工アンカーの施工管理や品質確保について整理されたガイドラインです。
低臭ケミカルアンカー樹脂は、施工時の臭気や作業者の健康負荷に配慮した製品ですが、固化後の廃棄や環境負荷については、現場で十分に議論されていないケースが多いのが実情です。 エポキシアクリレートや変性ビニルエステル樹脂は高い耐久性を持つ反面、物性が安定し過ぎているため、解体時にはコンクリート塊と一体で産業廃棄物として扱われ、分別・再資源化が難しいことがあります。
一部メーカーでは、樹脂充填量の削減やカプセル・カートリッジのフィルム縮小により、廃棄物の減量を図った製品を開発しており、低臭とともに「廃棄物削減」を訴求ポイントに挙げる動きも出てきています。 施工後のアンカー引き抜き試験で不要となったボルトや破壊試験体についても、鉄筋や金物部分の再利用・再資源化を前提とした試験計画を立てておくことで、環境配慮型工事としての説明力が増します。monotaro+2
また、無機セメント系の低臭注入材の中には、「海洋環境への樹脂浮遊を抑制する」といった観点で開発された製品もあり、港湾や護岸工事などで環境影響評価の一部として取り上げられています。 有機系樹脂の溶出・マイクロプラスチック化が社会的な関心事となるなかで、将来的には、低臭ケミカルアンカー樹脂にも「生分解性」「再資源化可能な樹脂」など、環境フットプリントの小さい素材への転換が求められる可能性があります。chemical-setter+1
現場としてできることは、現時点で入手可能なSDSや環境負荷に関する技術資料を整理し、発注者や設計者との打合せの中で「低臭・健康配慮」だけでなく「廃棄・環境負荷」の観点もセットで説明することです。 こうした情報を積み上げておくことで、次世代の環境配慮型アンカー工法の選定において、施工者側が単なるコスト比較ではなく、技術提案型の立場を取りやすくなります。niigata-bond+2
建設副産物と産業廃棄物のリサイクル・適正処理に関する技術資料です。