

許可なしで工事を進めると、6ヶ月以下の懲役が科される地区があります。
特別緑地保全地区とは、都市緑地法第12条に基づいて指定される制度で、都市の中に残された貴重な樹林地・草地・水辺地などを「現状凍結的に」保全することを目的としています。
「現状凍結的」というのは、指定された時点の緑地の状態をそのまま維持することを意図した厳しい規制で、緑地保全地域の「届出制」とは大きく異なります。これが原則です。
緑地保全地域は届出だけで足りるのに対し、特別緑地保全地区では建築行為・宅地造成・土石採取・木竹の伐採・水面の埋立など、ほぼすべての土地改変行為に都道府県知事(または市の区域内では市長)の事前許可が必要です。
| 項目 | 緑地保全地域 | 特別緑地保全地区 |
|---|---|---|
| 規制の方式 | 届出制 | 許可制(厳格) |
| 建築行為 | 届出後、条件付きで可能 | 原則不許可(例外あり) |
| 木竹の伐採 | 届出制 | 許可が必要 |
| 無許可の場合の罰則 | 30万円以下の罰金 | 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金 |
指定主体は市町村が原則ですが、10ha以上かつ2以上の区域にわたる場合は都道府県が計画決定します。指定には都市計画法上の「地域地区」の手続きを経るため、都市計画図に明示されています。
つまり「都市計画図を確認する」が基本です。
工事案件の現場調査の段階で、対象地が特別緑地保全地区かどうかを確認しておかないと、後から大きな問題に発展するリスクがあります。施工業者・設計者ともに、着工前に必ず都市計画情報を確認する習慣が求められます。
参考:制度の概要・指定要件・優遇税制が一覧で確認できる国土交通省の公式ページです。
令和6年3月31日時点での全国の指定状況は、657地区・86都市・総面積約2,943haに上ります。
面積の広さを実感しやすい例えを出すと、東京ドームの面積が約4.7haですから、2,943haは東京ドーム約625個分に相当します。決して小さくない面積です。
都道府県・政令市別では指定数・面積ともに最多なのが神奈川県(284地区・826.7ha)で、次いで福岡県(90地区)・愛知県(74地区)が続きます。
🗾 主要都市の指定状況(令和6年3月末時点)
| 都道府県・政令市 | 地区数 | 面積(ha) |
|---|---|---|
| 神奈川県(横浜市含む) | 284地区 | 826.7 |
| うち横浜市 | 53地区 | 321.0 |
| 東京都 | 38地区 | 64.3 |
| 愛知県(名古屋市含む) | 74地区 | 213.7 |
| 福岡県(北九州市・福岡市含む) | 90地区 | 204.6 |
| 千葉県(千葉市含む) | 23地区 | 80.6 |
| 埼玉県(さいたま市含む) | 12地区 | 64.3 |
| 北海道(札幌市含む) | 27地区 | 239.8 |
神奈川県が突出して多い理由は、首都圏近郊緑地保全法の対象となる近郊緑地特別保全地区制度との併用が多く、丘陵地や樹林地の保全が古くから積極的に行われてきた経緯があります。意外ですね。
東京都は区部(20地区・87.07ha)と市部(36地区・236.51ha)を合わせて56地区・合計323.58haが指定されています(令和7年7月時点)。
指定数は年々増加傾向にあり、令和5年度は新規4件・面積拡大4件で、合計4.0haが新たに指定されました。建築業に従事する方は、以前は制限のなかった土地が指定される可能性があることも念頭に置いておく必要があります。
参考:全国の特別緑地保全地区の指定数・面積の推移と都道府県別一覧が掲載された国土交通省の資料です。
施工前の確認で一番確実なのは、各自治体の都市計画情報システムや窓口で対象地の地番を確認することです。
東京都の場合は、「東京の緑」ポータルサイトに一覧が公表されています。東京都の特別緑地保全地区は代々木(69.90ha)・上野(6.50ha)・七国・相原(44.60ha)・青梅の森(91.70ha)など、規模の大きな地区が多く存在します。これが条件です。
横浜市では令和7年9月12日時点で188地区・約564.2haが指定されており、市内で工事案件を受注した場合は必ず確認が必要です。
名古屋市では73地区・約200haが指定されており、熱田神宮緑地など文化的・歴史的に重要な緑地を含みます。
🔍 各都市の特別緑地保全地区一覧の確認先
- 🗂️ 東京都:東京都緑のポータルサイト「東京の緑」に一覧が掲載
- 🗂️ 横浜市:横浜市公式サイト「近郊緑地特別保全地区制度」ページに一覧あり
- 🗂️ 名古屋市:名古屋市公式サイト「特別緑地保全地区」ページに73地区を掲載
- 🗂️ 神奈川県(横浜・川崎・相模原以外):神奈川県建設局公園部公園課に確認
- 🗂️ その他市町村:各市町村の都市計画課または公園緑地課
実際の施工現場では、地番レベルで特別緑地保全地区の指定を確認する必要があります。地番が指定区域に隣接している場合でも、境界線の取り扱いには注意が必要です。
近接した工事であっても、工作物の設置や樹木への影響が及ぶ可能性がある場合は、担当窓口に事前相談することをお勧めします。これが原則です。
参考:東京都の特別緑地保全地区一覧が地区名・位置・面積・告示日付きで確認できる公式ページです。
特別緑地保全地区内で制限される行為は以下のとおりです。
- 🚫 建築物・工作物の新築・改築・増築
- 🚫 宅地造成・土地の開墾・土石採取・鉱物採掘などの土地の形質変更
- 🚫 木竹の伐採
- 🚫 水面の埋立・干拓
これらの行為を行うには、都道府県知事または市長の事前許可が必要です。
ただし、例外もあります。「公益性が特に高く緑地保全上著しく支障を及ぼすおそれのない一定の行為」「計画決定の際に既に着手していた行為」「非常災害の応急措置」については、許可なく実施できる場合があります。
許可申請の一般的な手順は次のとおりです。
1. 事前相談:担当窓口(都道府県・市町村の公園緑地課等)に行為内容・規模を相談
2. 書類準備:申請書・位置図・平面図・現況写真・行為区域図など
3. 申請提出:窓口に書類を提出(自治体によりオンライン受付も一部対応)
4. 審査:担当部局による現地確認を含む審査
5. 許可または不許可の通知:許可の場合は許可書が交付される
6. 標識設置:工事期間中は行為許可標識を見やすい場所に設置が必要
7. 工事完了報告:完了後に報告書を提出
許可申請から許可通知まで、自治体によって異なりますが概ね1ヶ月前後かかることが多いです。工程計画にこの期間を盛り込んでおかないと、着工日に間に合わないケースが出てきます。これは使えそうです。
無許可で工事を進めた場合は都市緑地法違反となり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。さらに原状回復命令が下された場合に従わないと、1年以下の懲役または50万円以下の罰金と刑が重くなります。厳しいところですね。
参考:施工管理技士向けに都市緑地法の罰則と違反行為を体系的に解説しているページです。
施工管理技士なら知っておきたい!罰則や違反行為:都市緑地法編
特別緑地保全地区の指定は、建築業者にとって「制限」だけではなく、知っておくと受注につながる知識でもあります。
まず、指定地区内では行為許可申請の代行や、許可を前提とした維持管理工事の需要が継続的に発生します。
緑地の「機能維持増進事業」として認定を受けると、国の社会資本整備総合交付金を活用した工事の発注が行われます。具体的には倒木処理・外来種除去・散策路整備・案内板設置などの作業が含まれ、地元建設業者への発注が多い分野です。これは使えそうです。
令和6年5月には都市緑地法が改正され、特別緑地保全地区で行う機能維持増進事業について「手続の簡素化特例」が創設されました。今後、維持管理の工事件数が増加していく可能性があります。
また、指定地区内の土地所有者が行為の制限により土地の利用に著しい支障をきたしている場合、都道府県知事等への買入れ申出が可能です。この買入れに際して行われる土地境界確定・測量・造成整備などは建築・土木業者の業務範囲に直結します。
さらに、令和6年度から東京都では「特別緑地保全地区買取等補助事業」が新たに始まり、区市町村による緑地の買入れおよび施設整備に補助が出るようになりました。
土地所有者への税制優遇も把握しておくと、顧客への説明力が増します。
- 💰 相続税:山林・原野については8割評価減(財産評価基本通達50-2、58-5、123-2)
- 💰 固定資産税:最大1/2まで減免
- 💰 譲渡所得:行為申請が不許可となり買入れ申出した場合、2,000万円の控除が適用
これらのメリットを顧客に丁寧に説明できる施工業者・コンサルタントは、土地所有者からの信頼を得やすく、維持管理業務の継続受注につながります。知って損はない情報です。
参考:東京都都市整備局による特別緑地保全地区の制度説明ページ。令和6年度の新補助事業の概要も掲載されています。
特別緑地保全地区|民有地の緑の保全・創出 - 東京都都市整備局