
塩化カルシウムは、吸湿・溶解性に優れ、溶解時に強い発熱を伴う特性を持つ凍結防止剤です。この発熱作用により、雪や氷を速やかに溶かすことができます。塩化カルシウムの凝固点は約-50℃で、他の融雪剤と比較して極めて低温まで対応可能です。水に溶けやすく多量の溶解熱を発生させることで、水の凍結温度を効果的に下げます。
参考)塩化カルシウム|凍結防止剤
塩化カルシウムは、ガラスや粉末洗剤の原料となるソーダ灰を製造する際に生成される副産物で、カルシウムと塩素の化合物として構成されています。凍結防止・融雪効果に加え、溶解液は凍結点が降下するため、他の凍結防止剤と比べて溶解熱が高く、優れた効果を発揮します。建築現場では、通称「塩カル」と呼ばれ、積雪量の多い地域において冬の必須アイテムとして活用されています。
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即効性に優れているため、凍結しやすい橋のたもとや急な坂道などに設置され、ホームセンターなどでも袋入りで販売されており、自宅周辺の融雪にも使用されています。防塵・締め固め効果も持ち、グランドやテニスコートなどに散布すると、空気中や土中の水分で潮解し、湿潤状態となって防塵効果を発揮します。時間の経過とともにカルシウムと反応して表土の強度を増加させる効果もあります。
塩化カルシウムの散布量は、1平方メートルあたり50~200gが基準ですが、気温、氷雪の厚み、道路状況などによって散布量の調整が必要です。新雪や薄い氷(厚さ2cm程度)の場合は50~80g/㎡、固まった雪や厚い氷(厚さ5cm程度)の場合は100~150g/㎡が目安となります。一握りで約1平方メートルに散布でき、ペットボトル1本(2リットル)で約30平方メートル、幅3メートルの道路なら10メートルの範囲に散布可能です。
参考)https://www.city.taku.lg.jp/uploaded/attachment/15047.pdf
散布方法として、雪かきをした後の路面への散布が効果的で、踏み固められた凍結した道路等に散布することが推奨されます。ムラなく均一に散布し、坂道の場合は上のほうに多めに散布することが重要です。一度に多くを散布するのではなく、二度に分けて少量を散布する方法が無駄がなく効果的です。高い所から低い所にむかって散布し、降雪後は雪が降ってから散布することで、水分により熱を発生させ雪を溶かす性質を最大限に活用できます。
参考)https://www.city.yawata.kyoto.jp/cmsfiles/contents/0000008/8349/touketsuboushizai.pdf
凍結防止剤は、路面が凍結する前に散布するのが基本で、特に気温が0℃を下回る夜間や早朝に凍結が発生しやすいため、夕方から夜にかけて事前に散布することで氷の形成を防ぐことができます。散布すると数分から数十分で雪が溶けていきます。降雪中や降り積もった雪、シャーベット状の雪に散布する方法は効果があまり期待できないため避けるべきです。
参考)凍結防止剤の散布方法
建築現場において塩化カルシウムは、凍結しやすい特定の場所への散布が効果的です。坂道、交差点、橋梁部、日陰で凍結しやすい場所に重点的に散布することが推奨されます。道路の凍結を防ぎ、交通事故の防止として降雪前に散布し、凍結を防ぐ目的で使用されます。路面凍結は降雪以外でも発生するため、路面凍結が起こりやすい部分には事前に散布し、路面凍結を事前に防ぐことが重要です。
参考)https://www.kkyano.co.jp/%E7%AC%AC%EF%BC%94%EF%BC%92%E5%9B%9E%EF%BC%9A%E5%A1%A9%E5%8C%96%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%A9%E3%82%93%E3%81%AA%E4%BA%8B%E3%81%A7%E4%BD%BF%E3%82%8F%E3%82%8C/
建設現場では、庭や玄関、テニスコート、車庫、駐車場等に使用でき、1㎡あたり0.5~1kgが標準使用量となっています(使用環境や気温・積雪量により異なります)。テニスコートでは締め固め促進効果を目的として約250㎡に対し約10袋(250kg)、野球場では砂ぼこり防止として約730㎡(内野)に対し約15袋(375kg)が使用されます。1袋25kgで、コンビニ1軒分相当の約180㎡の散布が可能です。
参考)https://www.monotaro.com/s/q-%E5%87%8D%E7%B5%90%E9%98%B2%E6%AD%A2%E5%89%A4%20%E5%A1%A9%E5%8C%96%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0/
自分自身の身を守る、周りの大切な人を守るためにも散布することが推奨されており、路面凍結による事故は自動車だけでなく、凍結部分はとても滑りやすく、足元を取られると転倒しケガに繋がる可能性があります。環境にやさしい無塩タイプの凍結防止(融雪)剤も存在し、玄関まわりや階段、駐車場などの凍結を防止したい場所や凍結した場所に直接散布する事で効果を発揮します。
凍結防止剤は主に塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムの3種類に分けられ、それぞれ特徴が異なります。塩化カルシウムは凝固点が約-50℃で、短時間で雪を溶かすことができ、すでに雪が降り積もった状態や凍結した状態の道路の使用にも適しています。最も多く使用される凍結防止剤として知られ、即効性と高い融雪効果が特徴です。
参考)コンクリート中の鉄筋も車も錆びる?凍結防止剤による塩害の基礎…
塩化ナトリウムは食塩に近い成分で、凝固点は約-20℃、持続時間が長く、同じ量の塩化カルシウムよりも多い量の融雪効果が期待できます。人体への影響も少ないという特徴がありますが、金属などをサビやすくするというマイナス点もあります。塩化マグネシウムは、にがりの主成分として活用されており、凝固点は約-30℃で、人体への影響性も低く、塩害もほとんどないというメリットがあります。供給率も安定しているため比較的リーズナブルな価格で購入できます。
参考)融雪剤・凍結防止剤の違いとは?使い方や注意点 -YukiBu…
塩化物は凍結防止の面では高い効果を発揮しますが、鉄の腐食やコンクリート、自動車への悪影響も問題となっており、近年は無塩タイプの凍結防止剤も使用されてきています。凍結防止剤は水の凍結温度を低下させることで凍結を防ぎ、塩化カルシウムがその中でも最も多く使用される成分とされています。建築現場では、用途や環境条件に応じて適切な凍結防止剤を選択することが重要です。
塩化カルシウムの保管には適切な条件が必要です。直射日光の当たらない湿気の少ない場所に保管し、袋を開封後は速やかに使用することが基本です。開封後、長時間保管をする場合は、包装容器を密閉して収納する必要があります。湿気、直射日光を避け、容器を密閉し換気の良い所に施錠して保管することが推奨されます。涼しいところに置き、日光から遮断することも重要です。
参考)https://www.tokuyama.co.jp/products/antifreeze_calciumchlorideformeltingsnow.pdf
塩化カルシウムは吸湿性が非常に強く、空気中の水分を吸収して潮解する性質があります。このため、気密性がある樹脂製の包装容器に保管し、酸と離して貯蔵することが必要です。小さな子どもの手の届かない所に保管し、誤飲や誤使用を防ぐ配慮も欠かせません。散布時期については、年2~3回の散布が推奨され、散布中や散布後に激しい降雨があると土中にしみこむ前に流れてしまうので、降雨中や降雨直前直後の散布は避けるべきです。
参考)https://hamaen.co.jp/H6kjMfax/wp-content/uploads/2023/09/GH-C004Hb2%E5%A1%A9%E5%8C%96%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%83%81%E3%83%A9%E3%82%B7.pdf
内容物や容器の廃棄は、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に業務を委託する必要があります。少量の場合は多量の水で希釈して廃棄するか、拭き取り、溶液がアルカリ性を示す場合は中和後廃棄します。漏出時には、人体に対して皮膚に付着しないよう気をつけ、河川等に多量に流れ込むと生態系に影響を与える可能性があるため注意が必要です。
参考)http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/03052250.pdf
塩化カルシウムに含まれる塩化物イオンは、車や道路、コンクリート構造物への悪影響があることが知られています。塩化物イオンは酸化皮膜を化学的に破壊する作用が極めて強く、濃度の高い塩化物水溶液中では孔食や応力腐食割れ等の局部腐食が容易に発生します。塩化カルシウムは湿気を吸収しやすく、塩化物イオンを放出することで金属の腐食を促進するため、車両や金属製品に対する防錆対策が必要です。
参考)塩カルをやめてほしい!雪や除草で使う塩カルの錆対策と取り扱い…
融雪剤は塩なので鉄製品(特に車両)などは、速やかに水で洗浄することが必要で、塩カル対策コーティングを施すことである程度の保護が可能です。素手で塩化カルシウムを撒くと皮膚炎の原因となりますので、ゴム手袋を着けて撒く必要があります。散布の際はゴム手袋、保護衣、保護眼鏡、防塵マスクを着用して行うことが推奨されます。
参考)凍結防止剤とは|大起建設株式会社│長崎県│諫早市│小野島町│…
コンクリート構造物への影響については、普通ポルトランドセメントで作製したポーラスコンクリートは、高い濃度の水溶液に浸漬すると崩壊し、低い濃度の場合でも浸漬後の強度増進が望めないことがわかっています。しかし、普通ポルトランドセメントの一部を高炉スラグで置換すると耐久性が向上し、40%を高炉スラグで置換し、材齢7日まで湿潤養生を行うことによって、塩化カルシウム水溶液に対する高い劣化抑制効果が得られます。塩化カルシウムの使用量がセメント重量の2%を超過しなければ、鉄筋の腐食に関し有害な影響はないとされています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/coj1963/8/3/8_45/_pdf/-char/ja
コンクリート構造物における凍結防止剤の塩害対策と影響に関する詳細な解説
国土技術政策総合研究所による凍結防止剤散布の技術的ガイドライン(PDF)
建築現場での使用にあたっては、適切な散布量の管理と、構造物や機材への影響を考慮した対策が不可欠です。