

施工直後に合格しても、5年後には基準値を割り込む現場が続出しています。
透水性舗装とは、表層・基層・路盤まで透水性の高い材料を重ねることで、降った雨水を地面の下へ直接浸透させる構造の舗装です。通常の密粒度アスファルト舗装は空隙をほぼもたない「水を通さない構造」が前提ですが、透水性舗装は意図的に空隙率を高め、雨水をスポンジのように吸い込む仕組みになっています。
この空隙率は設計上おおむね20%前後が標準とされており、骨材間の隙間や骨材自体の多孔質構造が水の通り道になります。空隙率が確保されているかどうか、そしてその空隙が実際に機能しているかを確認するのが「現場透水試験」の役割です。つまり透水試験は、設計どおりの透水性能が舗装面に備わっているかを数値で証明するための検査です。
背景にある社会的ニーズも大きいです。都市型洪水の抑制やヒートアイランド現象の緩和が透水性舗装に期待されており、国土交通省の研究では透水性舗装が全降雨量の少なくとも約60%程度のピークカットに貢献する可能性があると報告されています(近畿技術事務所・京都大学共同研究)。これほどの効果を発揮するには、施工時点でしっかりと透水性能を担保することが前提です。
透水試験を行わないまま引き渡しを行うことは、性能未確認の舗装を発注者に届けることを意味します。品質管理の観点から、透水性試験は施工完了後の必須プロセスです。
参考:国土交通省近畿技術事務所・透水性舗装の経年特性に関する研究
大型交通量の多い車道へ適用された透水性舗装の各種特性の経年変化(国土交通省)
現場透水試験の合否を判断する規格値は、測定箇所の種別によって明確に区分されています。具体的な数値は、車道が1,000ml/15秒以上、歩道が300ml/15秒以上です。この差は約3倍以上あります。
「車道のほうが歩道より厳しい」というのは直感と一致するかもしれませんが、その背景には交通量・荷重・浸透面積あたりの雨水処理量という観点があります。車道は大型車の通行による荷重を受けながら大量の路面雨水を短時間で処理する必要があり、より高い透水流量が求められます。
各都道府県の品質管理基準でも、この数値は統一して規定されています。例えば神奈川県、香川県、茨城県の施工管理基準では、いずれも「車道1,000ml/15sec以上、歩道300ml/15sec以上(1,000㎡ごとに測定)」と記載されており、測定頻度もあわせて定められています。これが条件です。
注意が必要なのは、測定単位の読み方です。「1,000ml/15秒」とは、試験器に注いだ1,000mlの水が15秒以内に透過することを意味します。時間が短いほど透水性が高いと判断されます。歩道の「300ml/15秒」は、300mlが15秒以内に通過することが要件であり、規格値をクリアした場合に合格となります。
実務的には1,000㎡ごとに測定を行うことが基本であり、延長が長い現場では複数の測定箇所を適切に分散させて記録を残す必要があります。測定箇所の選定が偏ると、局所的に性能が低い区間を見落とすリスクがあります。
参考:DK試験センター・舗装路面の品質管理ページ
舗装路面の品質管理|試験・調査・分析(DK試験センター)
現場透水試験は「舗装調査・試験法便覧-154」に基づいて実施します。手順そのものはシンプルですが、測定上のポイントをひとつでも外すと数値の信頼性が大きく落ちます。
試験の基本フローは次のとおりです。まず、養生期間が完了した舗装面に現場透水試験器(円筒型)を密着させて設置します。次に、試験器内に水を注入し、一定量の水が透過するまでの時間を計測します。1測点あたり3回実施し、その平均値を試験成績として記録します。車道であれば1,000mlの水が15秒以内に透過するかを確認し、歩道であれば300mlの水が15秒以内に通過するかを確認します。
注意点として特に重要なのは、試験前に舗装体をある程度飽和状態に近づけておくことです。乾燥した状態の舗装に水を注ぐと、最初の数秒間は水が表層の骨材にいったん吸収されてしまい、実際の透水量より少ない数値が出る場合があります。土木学会の研究でも「舗装体を飽和状態にしておくことが試験上の注意点」と明示されています。
また、試験器の設置面が舗装面としっかり密着していないと、器具の脇から水が漏れて透水量として計測されてしまいます。測定前に試験器の接地状態を目視で確認してから水を注入することが大切です。
3回の平均値を算出したら、所定の試験成績表に記入します。単に合否だけを記録するのではなく、各測定値・測定箇所・測定日時・天候を合わせて記録することで、後日の検査や管理に使える記録書類になります。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験実施タイミング | 舗設完了・養生期間終了後 |
| 測定回数 | 1測点につき3回、平均値を採用 |
| 車道基準値 | 1,000ml/15秒以上 |
| 歩道基準値 | 300ml/15秒以上 |
| 測定頻度 | 1,000㎡ごとに1測点 |
| 飽和状態の確保 | 測定前に舗装面を湿潤にする |
透水試験の記録は、舗装工事の完了検査においても提出を求められる書類です。記録の書き方や書式は自治体によって異なりますが、測定値・場所・日時の3点を抑えれば基本要件は満たせます。これだけ覚えておけばOKです。
参考:三和グランド・現場透水試験方法について(詳細な試験手順と成績表の記入例あり)
当社透水性舗装の現場透水試験方法について(三和グランド)
透水性舗装の最大の弱点は、時間の経過とともに空隙が塞がっていく「目詰まり」です。施工直後は基準値を大幅にクリアしていても、数年後には透水性能が著しく低下するケースが報告されています。
セメント協会の研究報告では、供用5年経過後のポーラスコンクリート舗装で、現場透水量が150〜500ml/15秒(車輪走行部)、さらには100ml/15秒以下(非走行部)にまで低下した事例が記録されています。歩道基準値である300ml/15秒を下回っていた測点が半数近くに達していたという内容です。意外ですね。
目詰まりの主な原因は、砂・ほこり・落ち葉・路面排水に含まれる細粒子が空隙に蓄積することです。交通量の多い車道では、タイヤが巻き上げた粉塵が繰り返し路面に降り積もり、数年単位で空隙を埋めていきます。また、舗装面に勾配がある箇所では浸透した雨水が内部の細粒子を移動させ、特定の層に詰まりを生じさせることもあります。
ただし、目詰まりは必ずしも永久的なものではありません。高圧洗浄を行うことで透水機能の回復が見込める場合があり、これを「機能回復」と呼びます。施工業者や道路管理者の間では、定期的な清掃・洗浄が維持管理の基本として認識されています。
なお、目詰まりは空隙率の高さだけでは防げません。空隙率20%の透水アスファルトであっても、アスファルトバインダーの粘度設定が適切でなければ、骨材間の連結が弱まり、走行荷重によって空隙自体が圧壊(空隙つぶれ)するケースもあります。これは目詰まりとは別のメカニズムによる透水機能低下です。
透水試験が「施工直後」のみを対象にしている点は、維持管理の観点から考えると課題でもあります。供用後の定期的な透水試験実施が、舗装の機能寿命を実態に基づいて管理するうえで有効です。
参考:セメント協会・供用5年を経過した車道用ポーラスコンクリート舗装の調査報告
供用5年を経過した車道用ポーラスコンクリート舗装(セメント協会)
現場で「透水性舗装」と「排水性舗装」が混在している場面は少なくありません。両者はどちらも空隙率の高いアスファルトを使用しますが、構造上の考え方が根本的に異なります。この違いを理解していないと、透水試験の適用方法や合否判定を誤るリスクがあります。
透水性舗装は、表層から路盤・路床にいたるすべての層に透水性を持たせ、雨水を地中へ浸透させることを目的とした構造です。一方、排水性舗装は表層のみが高空隙であり、その下に不透水層を設けることで雨水を横向きに導き、道路側溝へ排水する構造です。排水性舗装では水を地面の下には浸透させません。
この構造の違いが、透水試験の位置づけにも影響します。透水性舗装においては路床まで水を通す必要があるため、表層だけでなく各層の透水性確保が求められます。排水性舗装では「排水機能」の確認が主目的となり、試験方法の詳細も異なります。
現場透水試験器(ポータブルタイプ)は主に透水性舗装の表層確認に用いられますが、排水性舗装に対しても排水性能の参考指標として活用されることがあります。ただし、排水性舗装では現場透水量よりも「現場透水係数」を用いた評価が行われるケースもあり、試験結果の解釈には注意が必要です。
つまり、どちらの舗装であるかによって、適用する試験基準や評価のロジックが変わるということです。特に発注仕様書に「透水性舗装」と「排水性舗装」を混同した記載がある場合は、発注者との事前確認が重要です。
建築業従事者として、舗装の種別とそれに対応した試験方法をセットで把握しておくと、施工計画の段階からトラブルを防ぎやすくなります。
参考:北海道舗装事業協会・特殊な舗装技術の解説
舗装の知識−特殊な舗装技術(北海道舗装事業協会)
透水試験は「やればよい」ではなく、「記録が仕事をする」という視点が重要です。合格数値が出ても記録が不十分であれば、完了検査で書類不備となるリスクがあります。また、将来の維持管理計画を立てるうえで初期値の記録が基準データになるため、正確な書類作成が長い目で見たコスト削減にもつながります。
記録にあたって意識したいのは、「平均値だけでなく3回の個別測定値も残す」ことです。3回の測定が大きくばらついている場合、試験器の設置ミスや舗装面のムラを示している可能性があります。平均値だけを記録していると、このばらつきが見えなくなります。
もうひとつの実務的なポイントは、測定位置の記録です。「1,000㎡ごと」という頻度は守っていても、測定箇所が毎回同一の場所に集中していると、施工品質のムラを把握できません。現場の延長・幅員を考慮して分散した測定が望ましいです。位置図に測定点を落とした資料を作成しておくと、後日の検査や管理者との打ち合わせで説明が格段にスムーズになります。
また、施工直後の透水量が基準値を大幅に超えた場合は、その数値をしっかり記録しておくことを勧めます。例えば300mlが5秒で透過したならば「150%以上の余裕をもって合格」という記録になります。これが後日、経年劣化を主張するクレーム対応で客観的な初期品質のエビデンスとなります。
なお、実務的なチェックツールとして、各都道府県が公開している「品質管理基準及び規格値」のPDFは無料でダウンロードでき、現場の管理基準確認に使いやすいです。香川県・神奈川県・茨城県などの公開資料には舗装工の管理基準が一覧で記載されており、確認作業の手間を大幅に省けます。
透水試験は一度行うだけで終わりではありません。供用後の定期確認を検討することで、補修タイミングの判断精度が上がります。高圧洗浄による機能回復の費用は状況にもよりますが、舗装の打ち直しよりはるかにコストを抑えられるケースがほとんどです。管理コストを抑えるためにも、記録の精度と定期確認のサイクルを習慣にすることが現場の品質を守る近道です。
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