

「上小材を指定されたが、正確な基準がよくわからない」まま発注すると、仕上がりで施主クレームになり追加費用が発生します。
上小節(じょうこぶし)は、略して「上小(じょうこ)」とも呼ばれ、建築業に携わる方なら一度は耳にしたことがある木材の等級名です。JASの造作用製材規格において明確に定められており、節の大きさと数によって決まります。
JAS規格では、上小節は「広い材面を含む1材面以上の材面において、節の長径が10mm以下、生き節以外の節であれば5mm以下、材長2m以下のものについては節が4個以下」と規定されています。つまり、直径約10mm以下(鉛筆の直径程度、あるいは1円玉の厚みよりやや大きい程度)の節が、1mにつき1個前後しか入らない、非常に清潔感のある木材です。
等級の全体像を整理すると、見た目の美しさが高い順に「無節(むぶし)」「特選上小節」「上小節」「小節(こぶし)」「特一等」となります。上小節は無節・特選上小節に次ぐ高品質の等級です。
重要なポイントが一つあります。上小節に含まれる節は「生き節のみ」が基本です。生き節とは、木の幹と一体化して固く結合した節のことで、見た目も比較的きれいで、落下したり穴が開いたりすることがありません。これに対し、枯れて木と分離しつつある「死節(しにぶし)」や、完全に抜け落ちた「抜節(ぬけぶし)」は基本的に上小節には含まれないため、仕上がりが安定しています。
等級名は産地や製材メーカーによって表現に幅があり、同じ「上小節」でも厳密な基準に若干のニュアンス差が生じることがあります。発注時には、施工仕様書に等級規格を明記しておくことが現場トラブルを防ぐ基本です。
上小節(ジョウコブシ)の建築用語辞書での定義(東建コーポレーション)
木材の等級は節で決まる|建築で使用される木材等級を紹介(eTREE)
等級の違いは、そのまま木材価格に直結します。これが基本です。
上小節は無節と小節の中間に位置しますが、価格差の感覚として参考になるのは、ある工務店の事例で「同一樹種(桧)のフローリングを全室・節なし(上小節)から切り替えた場合、節あり材との差額が約20万円」という試算です(中島工務店の事例より)。これは20畳程度の一般住宅での試算に相当し、いかに等級選定がコスト全体に影響するかがわかります。
等級ごとの価格感を大まかに整理すると以下の通りです。
| 等級 | 節の状態 | 価格帯の目安 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 無節(むぶし) | 節が一切なし | 最高価格帯 | 仏間・応接間・高級和室 |
| 特選上小節 | 鉛筆の芯程度の節が極少量 | 無節に準じる高価格 | 格式のある和室・玄関 |
| 上小節 | 直径10mm以下・1m間隔に1個程度 | コストパフォーマンス良好 | フローリング・化粧柱・天井材 |
| 小節(こぶし) | 直径20mm以下・1m間隔に1個程度 | 中程度 | 内装・フローリング・床材 |
| 特一等 | 大小の節が混在 | 比較的安価 | 構造材・下地材・見えない部分 |
建築業の現場では「見える面には上小節、見えない面には特一等」という使い分けが基本的なコストコントロールの考え方になっています。
また、無垢フローリングでの「小節材」と「上小節材」の価格差は一見大きくないように見えますが、施工面積が広くなるほど差が積み上がります。価格差が気になる場合は、「廊下や収納は小節材、リビングや和室は上小節材」といったゾーニングによる使い分けが現実的です。これは使えそうです。
一方、注意が必要なのは、「上小節材は節が目立たないので無節の代用として使える」と単純に判断してしまうケースです。施主が「無節指定」をしている場合、上小節では等級が一段下がり、検査時に問題になることがあります。仕様書の確認を怠ると、後から差し替えコストが発生するリスクがあります。
上小節木材の最大の強みは、「無節には及ばないが、目に見えても美しい」という中間的なポジションにあります。化粧材として実際に人の目に触れる場所で使われることが多い等級です。
具体的な使用場所を見ていきましょう。
- フローリング材:上小節はフローリングに最も活用される等級の一つです。節がほとんどなく木目が整っているため、リビング・寝室・和室の床材として視覚的に清潔感を保てます。
- 化粧柱:人の目に触れる柱(化粧柱)に使用する際、「四方上小節」(全4面が上小節基準)や「二方無節・二方上小節」といった組み合わせで発注します。柱の化粧面が何面見えるかによって、組み合わせを変えるのが一般的です。
- 天井板・羽目板:天井や壁の羽目板にも上小節が多く採用されます。見上げたときにほぼ節が目に入らず、落ち着いた空間を演出できます。
- 造作材(鴨居・敷居・廻縁など):造作材はJAS規格でも化粧用製材の材面品質基準として上小節が標準的に規定されており、化粧仕上げの場合は「製材のJAS規格の造作用製材の材面基準上小節」とする、とされています(全国木材検査・研究協会)。
柱の等級については少し細かい知識が必要です。「四面無節」が最上位で、次いで「二方無節・二方上小節」「四方上小節」といった順で価格が変わります。見える面の数に応じて等級を組み合わせる「面等級」の考え方を知っておくと、コストを抑えながら適切な材を選べます。
化粧材として上小節を使う際に現場で意外と見落とされがちなのが、「赤身(あかみ)」と「白太(しらた)」の比率です。特に杉材では、赤みがかった芯部を「赤身」、外周の白い部分を「白太(辺材)」と呼び、赤身ばかりの材を「赤(マル赤)」、混在した材を「源平(げんぺい)」と言います。上小節であっても源平材と赤身材では見た目の印象が大きく異なります。施主への事前説明と確認が不可欠です。
木材の等級について(吉田製材)-化粧柱の面等級・赤身と白太の解説が詳しい
建築とJAS製材(全国木材検査・研究協会)-造作用製材の材面基準上小節の規定が確認できます
上小節を選んでも、乾燥が不十分な木材を使えば施工後に割れや反りが発生します。乾燥状態の確認が条件です。
木材の乾燥方法には主に3種類あります。
- KD材(キルンドライ):人工乾燥。温度・湿度・風量を管理した専用の乾燥窯で、伐採後2週間〜1ヶ月で含水率20%以下まで乾燥できます。供給が安定しており、現代の建築現場で主流となっています。ただし高温乾燥の場合、木の脂分が失われ、木本来の香りやツヤが弱まることがあります。
- AD材(エアドライ):自然乾燥。半年〜1年かけてゆっくり乾燥させた木材で、脂分を保ち、木の香りやツヤが豊かです。ただし供給に時間がかかり、価格も高めになります。
- グリーン材(未乾燥材):含水率が高いまま流通する木材です。価格は安いですが、施工後に大きく割れたり反ったりするリスクが高く、化粧材として使う上小節には基本的に不適です。
JAS規格では構造用製材・造作用製材ともに、乾燥材の含水率基準は仕上げ材で20%以下と定められています(一部の枠組壁工法では19%以下)。化粧面に上小節を使う場合は、含水率が基準内に収まっているKD材またはAD材を選ぶことが施工品質の前提となります。
現場保管の段階でも注意が必要です。乾燥済み木材であっても、梅雨時や湿気の多い環境に長期間放置すると再吸湿して含水率が上昇します。上小節の化粧面に割れや狂いが生じた場合、施主から見た目のクレームに直結しやすいため、保管環境の管理は怠れません。
施工前には含水率計(木材水分計)で実測確認する習慣をつけると、トラブルを未然に防げます。含水率計は1万円前後から購入でき、感知面を木材に当てるだけで数値が表示される簡易な器具です。高価な上小節材を使う案件ほど、この一手間が重要です。
乾燥方法による強度と見栄えの違いについて(梅江製材所)-KD材・AD材の特性比較が詳しく解説されています
建築業の現場では、「上小節」という等級名の使い方に実は産地や流通段階によってニュアンスのズレが生じることがあります。これが施工後のトラブルを生む原因の一つです。
吉野中央木材(吉野杉・桧の産地)で長年木材の等級を扱ってきた専務によると、「等級は産地、メーカー、流通段階によってニュアンスが変わる」とされており、同じ「上小節」という名前でも、10mmとされる節の基準に解釈の幅が生じることがあります。また、「特一等」という等級についても「産地によっては化粧材としても使える一等という意味で取られる所もある」と指摘されており、業界内での呼称の混乱は珍しくありません。
こうした混乱を避けるための実務的なポイントをまとめると次の通りです。
- JAS規格の数値基準を明記して発注する:「上小節」という名前だけでなく、「長径10mm以下・1m間隔に1個以内・生き節のみ」という具体的な数値条件を仕様書に記載します。
- 四方の面等級を指定する:柱材であれば「四方上小節」「二方無節・二方上小節」など、面ごとの等級組み合わせを明示します。
- 産地と製材所を把握する:国産杉・桧の場合、吉野材・美作材・東濃桧など産地ごとに品質傾向がある程度異なります。信頼できる流通ルートを確保しておくことが重要です。
- 実物サンプルを事前確認する:上小節材は個体差があります。施主が関わる案件では、施工前にサンプル板を用意して確認・承認を得るプロセスを設けると、後からの「こんな節が入るとは思わなかった」というクレームを防げます。
また、見た目の等級とは別に、強度面での等級(目視等級・機械等級)があります。構造材に上小節を使う場合は、曲げヤング係数(E50〜E150の6段階)も合わせて確認が必要です。見た目の等級が高くても、強度等級が建築基準を満たしているかは別問題です。両方を把握しておくことが構造設計上の安全につながります。
節が少なく見た目がきれいな上小節は施主満足度が高い材ですが、その分だけ「期待値」も高くなります。丁寧な事前説明とサンプル確認が、結果的に現場を守ることになります。
木材製品の等級(吉野中央木材・製材所ドキュメント)-産地の専門家が等級の実態と混乱を詳しく解説しています
木材強度に大小はある?方向・年数・樹種による違い(樫田木材)-見た目の等級と強度等級の関係が整理されています