

ウレタン床塗料でいう「主材」は、一般にウレタン樹脂(ポリウレタン樹脂)を中心にしたA剤側の材料を指し、床面に連続した塗膜を作って発塵を抑えるための“母体”になります。工場・倉庫のコンクリート床で「粉が立つ」「タイヤ跡が取れない」といった悩みが出る現場では、薄膜型のウレタン樹脂系防塵塗料が“発塵防止材”として位置づけられていることが多いです。実際に、ウレタン樹脂を主成分とする溶剤タイプの床用塗料が、工場・倉庫のコンクリート床の発塵防止用途として明記されています。
ここで大事なのは、主材の性能(緻密さ・耐摩耗・耐油など)だけに目を奪われないことです。床が粉を吹く原因は「表面の脆弱層(レイタンス)」「汚染(油・薬品)」「水分」「旧塗膜の劣化」など複合要因になりやすく、主材のグレードを上げても下地側が悪いと、結局“密着不良→剥離→再施工”になります。主材は万能ではなく、あくまで「下地に密着して初めて性能が出る材料」と捉えるのが現場では安全です。
参考)https://www.obayashi.co.jp/technology/shoho/077/2013_077_23.pdf
また、ウレタン系は屋内外で使われる製品もあり、耐水・耐油・耐薬品・耐摩耗・速乾などの特性が謳われるケースがあります。こうしたカタログ上の特性は魅力的ですが、同じ“ウレタン”でも水性・溶剤・無溶剤、薄膜・厚膜、弾性・硬質などで現場の扱いはかなり変わります。まずは「主材がどのタイプか(2液か1液か、薄膜か厚膜か)」を確認してから段取りを組むのが、手戻りを減らす最短ルートです。
参考)https://www.monotaro.com/s/c-123442/attr_f4636-%E3%82%A6%E3%83%AC%E3%82%BF%E3%83%B3/
2液型ウレタン床塗料のキモは、主材(A剤)と硬化剤(B剤)の比率を守って反応させることです。床材でも製品により比率は異なり、例として「主剤と硬化剤を5:1(質量比)で混合」と明記された塗床材の資料があります。
つまり「2液ウレタン=何でも4:1」のような決め打ちは危険で、必ず当該製品の仕様(質量比なのか、容量比なのかも含む)に合わせる必要があります。
混合で失敗が起きやすいのは、次の3パターンです。
特に「撹拌不足」は見た目で気づきにくいのが厄介です。資料でも、攪拌不良が硬化不良や塗膜性能不良の原因になる旨が注意されています。さらに、調合した塗料は可使時間(例:23℃で8時間)以内に使い切るよう明記されています。
参考)https://www.isamu.co.jp/wp-content/uploads/2018/05/Catalog_IsamuFloorPU.pdf
現場での実務としては、混合は“手順の標準化”が最優先です。例えば、ペール缶の側面・底をヘラでさらい、低速回転(泡を巻き込みにくい)で一定時間撹拌し、最後に再度さらう、という型を作るとバラつきが減ります。混合の「型」がない現場ほど、主材の性能以前に品質が運任せになりやすいので注意してください。
可使時間は、混合した主材+硬化剤が“塗れる状態”でいられる猶予で、温度が上がるほど短くなりがちです。製品資料でも、調合塗料は可使時間(気温23℃時8時間)以内に使い切るよう示され、可使時間を過ぎると肌荒れ・光沢不良の原因になる旨が書かれています。
この「肌荒れ・光沢不良」は見た目の問題だけではなく、床の場合は清掃性や汚れの残り方(結果的に劣化促進)に直結しやすい点が実務上の痛みどころです。
また、硬化(歩行可能・軽歩行可能)の時間感覚も、製品で大きく異なります。例として、ウレタン系塗り床材の資料で「施工後、約3時間(23℃)で軽歩行が可能」とされているものがあります。
参考)https://www2.nttoryo.co.jp/dcms_media/other/yu_takku_r.pdf
この手の“早い歩行解放”は工程短縮に効く反面、早期に人や台車が入って砂を噛ませると、表面の傷や埋没異物が増えます。歩行可能=完成ではないので、「最終養生(完全硬化)までの運用ルール」を現場側で決めておくとクレームを減らせます。
段取り面では、可使時間から逆算して「1回に練る量」を決めるのが鉄則です。広い床で一度に練りすぎると、終盤で材料が重くなってレベリングが崩れ、膜厚が暴れて仕上がりが荒れます。可使時間内で“余裕を残して塗り終える”配合量に落とす方が、結果的に強い床になりやすいです。
ウレタン床塗料主材の良し悪しより、実は“下地処理の出来”が寿命を決めることが多いです。大林組の技術資料では、塗り床施工に適したコンクリート床下地処理として、水性硬質ウレタン樹脂系塗り床材の場合は「研削機の2回繰返し」または「ショットブラスト」が適切と考えられる、と整理されています。
この種の資料が示しているのは、「何となく目荒らし」では足りず、再現性のある機械処理が有効になりやすいということです。
現場の失敗例で多いのは、既設床の“見た目がきれい”に引っ張られて、研削を軽く済ませてしまうケースです。表面が締まって見えても、レイタンス層や清掃では落ちない油分が残っていると、主材がどれだけ高性能でも密着が安定しません。研削・ブラストで「脆弱層を落として健全部を出す」ことが、結局いちばんコストを守ります。
意外と盲点になるのが、下地処理後の清掃品質です。粉じんを残したままプライマーや主材を入れると、密着相手がコンクリートではなく“粉”になってしまいます。防塵床は粉対策のために施工するのに、施工時に粉を残すと矛盾が起きるので、バキューム回収や拭き取りまで工程として固定しておくと事故が減ります。
検索上位の“施工手順”系記事では、比率や下地処理は語られても、「硬化剤(イソシアネート)と湿気の化学的な相性の悪さ」を現場運用に落とし込んだ説明は意外と薄いことがあります。ウレタン樹脂製品の注意事項として、B剤(イソシアネート)は空気中の水分と反応して白濁やゲル化の原因となること、さらに水分と反応すると炭酸ガスを発生し容器内が加圧状態となることが明記されています。
ここが“知っているようで知られていない”ポイントで、雨天施工や結露環境だけでなく、開封後の保管や、濡れた器具の持ち込みでも事故が起こり得ます。
この性質を踏まえると、主材の施工品質は「現場の湿気管理」とほぼ同義になります。例えば、硬化剤側のフタの開けっぱなし、使い回しのポンプ、湿った刷毛やローラー、結露した床面への施工などは、白濁・ダマ・急激なゲル化のトリガーになりやすいです。さらに、容器内圧が上がるということは、保管中の漏れ・飛散リスクにもつながるので、保管姿勢や温度管理も“品質”であり“安全”です。
参考)取扱い・保管上の注意│ペルノックス株式会社
安全面でも、硬化剤のミスト・蒸気の吸引回避、着火源からの隔離、換気などはSDSで繰り返し注意されます。例えばSDSには、ミスト・蒸気・スプレーを吸引しないこと、換気をよくして吸入・接触を避けること、着火源から遠ざけることなどの注意が記載されています。
参考)https://www.washin-paint.co.jp/content/download/8918/96560/file/SDS_Two-Urethane_Uwanuri-Koukazai.pdf
床施工は面積が大きく、ローラーでも溶剤臭が溜まりやすいので、「換気・保護具・火気管理」を“段取りの一部”として固定しないと、施工後に体調不良やヒヤリハットが出やすくなります。
参考:硬化剤(イソシアネート)の水分反応(白濁・ゲル化・炭酸ガス発生)と保護具の注意
取扱い・保管上の注意│ペルノックス株式会社
参考:SDSの安全対策(換気、吸入回避、着火源管理、静電気対策など)
https://www.washin-paint.co.jp/content/download/8918/96560/file/SDS_Two-Urethane_Uwanuri-Koukazai.pdf