
溶接エルボの寸法計算には明確な法則があります。この法則を理解することで、現場での作図検討や寸法確認が格段に効率化されます。
基準となる寸法は以下の通りです:
例えば100A(4B)のロングエルボのF寸法を求める場合、以下の計算式を使用します。
38.1mm × 4(B)= 152.4mm
この計算法則は25A(1B)以上のサイズに適用され、25A以下は同一寸法(ロング:38.1mm、ショート:25.4mm)となる点に注意が必要です。
設計担当者にとって、この法則を暗記しておくことで現場での迅速な寸法確認が可能になります。特に配管設計時の概算検討において威力を発揮する知識です。
実用的な活用方法:
90度エルボは配管工事で最も使用頻度の高い継手です。以下に主要サイズの詳細寸法表を示します。
90度エルボ ロング・ショート寸法表
径の呼び (A) | ロング F (mm) | ショート F (mm) | B (inch) |
---|---|---|---|
15 | 38.1 | - | 1/2 |
20 | 38.1 | - | 3/4 |
25 | 38.1 | 25.4 | 1 |
40 | 57.2 | 38.1 | 1 1/2 |
50 | 76.2 | 50.8 | 2 |
80 | 114.3 | 76.2 | 3 |
100 | 152.4 | 101.6 | 4 |
150 | 228.6 | 152.4 | 6 |
200 | 304.8 | 203.2 | 8 |
300 | 457.2 | 304.8 | 12 |
大口径エルボの特徴:
大口径になるほど、ロングとショートの寸法差が顕著になります。例えば300Aでは、ロングが457.2mm、ショートが304.8mmと152.4mmもの差があります。
現場での選定時は、配管の圧力損失と設置スペースを考慮してロングまたはショートを決定します。ロングエルボは圧力損失が少ないメリットがありますが、設置スペースを多く要求します。
45度エルボは方向転換角度が小さく、180度エルボは配管の完全な折り返しに使用されます。これらの特殊角度エルボも配管設計において重要な役割を果たします。
45度エルボの特徴と用途:
45度エルボは90度エルボと比較して、以下の利点があります。
H寸法は90度エルボのF寸法の約70%程度になります。
180度エルボの設計考慮点:
180度エルボ(リターンベンド)は配管の完全な折り返しを行う継手です。
180度エルボは製作が複雑なため、別途相談が必要な場合が多く、標準品として在庫していないメーカーもあります。
材質別の寸法仕様:
ステンレス製エルボでは、厚さの表記が特殊で、5S、10S、20Sの記号が使用されます。これらは耐圧性能と関連しており、数値が大きいほど肉厚で高圧に対応します。
JIS B2313-2015(配管用鋼板製突合せ溶接式管継手)では、厳格な寸法許容差が規定されています。品質確保のため、これらの基準を理解することが重要です。
主要寸法の許容差基準:
径の呼びによる許容差の変化:
径の呼び | 外径許容差 | 内径許容差 | F寸法許容差 |
---|---|---|---|
1/2~2 1/2 | +1.6/-0.8 | ±0.8 | ±1.6 |
3~4 | ±1.6 | ±1.6 | ±1.6 |
5~8 | +2.4/-1.6 | ±1.6 | ±2.4 |
10~18 | +4/-3.2 | ±3.2 | ±2.4 |
品質管理のポイント:
厚さの許容差については「規定しない」とされていますが、最小厚さとして-12.5%までの減肉が許容されています。これは製造工程での加工マージンを考慮した設定です。
端面と端面のズレ(U)については、小径で最大1.6mm、大径で最大3.2mmまで許容されます。現場での溶接作業時は、この許容差範囲内での調整が求められます。
現場での溶接エルボ寸法確認では、理論値と実測値の差異を理解した適切な計測手法が重要です。経験豊富な施工管理者が実践している効率的な計測方法を紹介します。
計測時の基本ポイント:
現場での実用的な計測テクニック:
計測精度を向上させるため、以下の手順を推奨します。
施工品質向上のための配慮事項:
現場では理論寸法通りにいかない場合があります。特に以下の点に注意が必要です。
トラブル防止のための事前確認:
施工前の詳細確認により、手戻り工事を防止できます。
エルボ選定時は、単純な寸法適合だけでなく、配管系統全体の機能性と施工性を総合的に判断することが、品質の高い配管工事実現の鍵となります。