COD測定の原理と建設現場の排水管理の基礎知識

COD測定の原理と建設現場の排水管理の基礎知識

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COD測定の原理と建設現場での排水管理の基礎を理解する

工事現場の排水が「きれいに見えて」も、COD値が160mg/Lを超えると50万円以下の罰金になることがあります。


この記事の3つのポイント
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COD測定の基本原理

CODとは化学的酸素要求量のこと。酸化剤で有機物を分解し、消費された酸素量をmg/Lで表す水質汚濁の代表的な指標です。

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2種類の測定方法の違い

過マンガン酸カリウム法(CODMn)と二クロム酸カリウム法(CODcr)では使いどころが異なる。建設現場ではどちらを選ぶべきかがポイントです。

⚠️
法的義務と罰則リスク

水質汚濁防止法によりCOD基準は最大160mg/L。違反すると6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。


COD測定の原理とは|化学反応で「水の汚れ」を数値化する仕組み


COD(Chemical Oxygen Demand:化学的酸素要求量)とは、水中に含まれる有機物などを化学的に酸化分解する際に消費される酸素の量を示す指標です。単位はmg/L(1リットルあたりのミリグラム)で表されます。数値が高いほど水が汚れているということを意味します。


測定の原理はシンプルです。試料水に強力な酸化剤を加えて加熱・反応させ、有機物が分解されるときに消費された酸化剤の量を計算します。その消費量を酸素の量に換算したものがCOD値になります。たとえばCOD値が5mg/Lなら「1リットルの水を浄化するのに5mgの酸素が必要な程度の汚れ」というイメージです。


では、なぜわざわざ化学的に測定するのでしょうか?


BOD(生物化学的酸素要求量)という別の汚濁指標もありますが、BOD測定は微生物を使うため20℃で5日間もかかります。一方、COD測定は数時間で結果が出るため、建設現場のような「今すぐ管理が必要な現場」に向いているのです。これは使えそうです。


CODは有機物だけでなく、亜硝酸や鉄(II)などの無機性還元物質も酸化されるため、水中に含まれるさまざまな汚染物質を幅広く把握できます。湖沼・海域・工場排水など「自然浄化が遅い閉鎖性水域」の管理に特に有効とされており、日本の水質汚濁防止法でも湖沼・海域に排出される排水の基準はBODではなくCODで定められています。COD測定が基本です。




CODと混同されがちなBODとの違いを整理すると以下のとおりです。


| 項目 | COD(化学的酸素要求量) | BOD(生物化学的酸素要求量) |
|---|---|---|
| 測定手法 | 酸化剤による化学反応 | 微生物による生物分解 |
| 測定時間 | 数時間〜半日程度 | 約5日間(20℃培養) |
| 対象水域 | 湖沼・海域・工場排水 | 河川(流れのある水域) |
| 特徴 | 難分解性物質も測定可能 | 自然分解能力を反映 |


建設現場からの排水管理では、迅速な判断が求められる場面が多いため、COD測定のスピード面でのメリットは大きいと言えます。


参考:COD計測器の測定方式と原理(日本電気計測器工業会)
https://www.jemima.or.jp/tech/5-02-04.html


COD測定の原理に基づく2つの測定方法|過マンガン酸法と二クロム酸法の違い

COD測定で使われる酸化剤には大きく2種類あり、それぞれ測定原理・対象・注意点が異なります。どちらを選ぶかは測定目的と水質条件によって決まります。


過マンガン酸カリウム法(CODMn)


JIS K 0102「工場排水試験方法」に規定された日本の標準的な測定法です。試料を硫酸酸性の状態にして過マンガン酸カリウムを加え、沸騰水浴中で30分間反応させます。反応後に残った過マンガン酸カリウムの量を逆滴定で求め、消費された量を酸素量に換算してCOD値を算出します。


測定時間が短く操作が比較的簡単なのが特徴です。主に河川・湖沼など比較的きれいな自然水域や、有機物濃度が低い水の測定に用いられます。ただし酸化力がやや弱いため、難分解性の有機物(たとえばプラスチック可塑剤など)は完全には分解されず、測定値に反映されないケースがあります。


② 二クロム酸カリウム法(CODcr)


酸化力が非常に強い二クロム酸カリウムを用いる方法で、欧米では広くスタンダードとして使われています。強酸性条件下で長時間還流加熱を行うため、難分解性有機物まで含めてほぼすべての有機物を酸化できます。そのため過マンガン酸法よりも高い値が得られることが多く、高濃度排水の管理に向いています。


ただし、廃液に六価クロムや水銀(触媒として使用)が含まれるため、廃液処理に専門的な対応が必要です。取り扱いには保護手袋・保護眼鏡・排気設備が必須となります。厳しいところですね。




2つの方法を比較した場合のポイントは下表のとおりです。


| 比較項目 | 過マンガン酸カリウム法(CODMn) | 二クロム酸カリウム法(CODcr) |
|---|---|---|
| 酸化力 | 中程度 | 非常に強い |
| 測定値の傾向 | 低め | 高め(より正確) |
| 測定時間 | 短い(30分程度) | やや長い(還流2時間) |
| 廃液処理 | 比較的容易 | 六価クロム・水銀含有で要注意 |
| 日本の採用状況 | JIS規格で主流 | 欧米で主流 |


同じ試料でも方法が異なれば結果が変わります。過去のデータと比較する場合は、必ず同一の測定方法を使い続けることが条件です。これを忘れると測定結果の意味が失われてしまいます。


参考:COD測定方法の種類・基準・手順をわかりやすく解説(清水工業)
https://seisui-kk.com/column/cod_measurement_method


COD測定の原理における妨害物質|塩素イオンが結果を狂わせる理由

COD測定の原理で最も見落とされやすい落とし穴が、塩素イオン(Cl⁻)による妨害です。建設現場でもコンクリート打設水や地下水が混入する場面は珍しくなく、この問題を知らずに測定すると数値が実態より大幅に高く出てしまいます。


過マンガン酸カリウム法では、水中に塩素イオンが多く含まれると、酸化剤(過マンガン酸カリウム)が本来ターゲットにすべき有機物ではなく塩素イオンと先に反応してしまいます。その結果、実際の有機物量より多くの酸化剤が消費されたとカウントされ、COD値が実際よりも高く算出されてしまうのです。


これを防ぐために、測定の前に硝酸銀(AgNO₃)溶液を添加して塩素イオンを塩化銀(AgCl)として沈殿させてマスキングするのが標準的な前処理手順です。JIS K 0102でもこの操作は明記されており、建設現場の排水管理でもこの手順を守ることが求められます。塩素イオン対策は必須です。


また、亜硝酸イオンや鉄(II)イオンなど他の還元性無機物も妨害物質となります。これらが多く含まれる場合、実際の有機物汚染とは無関係にCOD値が高くなります。測定値が突然高くなったときは、こうした妨害物質の影響を疑うことが重要です。




現場でよく起こりうる「COD値が高く出てしまう原因」をまとめると以下のとおりです。


- 🧂 塩素イオンが多い水:海水が混入した試料、コンクリートアルカリ排水など
- 🔩 亜硝酸・鉄(II)イオン:鉄筋錆水や地下水からの混入
- 🎨 着色・濁りのある試料:比色法(吸光度法)では吸光度が干渉される
- 🌡️ 加熱時間のばらつき:30分の加熱時間がずれると再現性が下がる


建設工事では地盤改良剤・コンクリート洗浄水・雨水混入など多様な汚濁源が重なります。測定前に試料の性状を確認してから適切な前処理を施すことが、信頼できるCOD測定値を得るための基本です。測定精度に注意が必要です。


参考:COD測定の注意点と塩素イオンの影響(アムコン株式会社)
https://www.amcon.co.jp/useful/use-analysis/7586/


COD測定の原理を活かした排水基準と法的義務|建設現場が知るべき水質汚濁防止法

建設現場では「工事排水は水質汚濁防止法の対象外」と思っている方が多いかもしれません。しかし一般の土木・建築工事の排水は直接の規制対象外であっても、河川・湖沼・海域など公共用水域へ排出する際には、河川法・各都道府県条例・政令市条例などによる規制が別途かかります。また、特定施設(仮設コンクリートプラントなど)を設置する工事では、水質汚濁防止法が直接適用されます。


水質汚濁防止法で定められた一律のCOD排水基準は以下のとおりです。


| 項目 | 基準値 |
|---|---|
| COD(最大値) | 160mg/L |
| COD(日間平均) | 120mg/L |
| 対象 | 1日排水量50m³以上の特定事業場 |


この基準を超えて排水した場合、改善命令の不履行で6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります(水質汚濁防止法第31条)。さらに自治体の上乗せ基準が適用されている地域では、国の基準よりも厳しい値が設定されていることもあります。


また、COD基準が適用されるのは「海域・湖沼への排水」が主です(河川への排水はBOD基準)。これを混同すると、管理すべき指標を誤ってしまいます。海域・湖沼が対象なら必ずCODを測定するという原則を押さえておきましょう。




建設現場が押さえるべき排水関連法令を整理すると以下のとおりです。


- 🏗️ 水質汚濁防止法:特定施設を設置する工事、1日50m³以上の排水
- 🌊 河川法:公共用水域(河川)への工事排水の排出・届出
- 🏘️ 下水道法:下水道への排出基準管理(6ヶ月以下懲役・50万円以下罰金)
- 📋 各都道府県・政令市条例:上乗せ基準・独自規制が存在する地域あり


工事着手前に排水先の水域と適用法令を確認することが第一です。事前に都道府県・市区町村の担当部署へ問い合わせる手間を惜しまないことが、後の罰則リスクを回避することにつながります。COD管理を事前に徹底することが条件です。


参考:建設工事に伴う濁水の排水基準一覧(クリアーシステム
https://www.nakamura-k.jp/effluentstandard/


COD測定の原理を現場で活用する|簡易測定から自動計測まで建設担当者が選ぶべき機器

COD測定の原理を理解したうえで、実際の現場ではどのような機器・手法を使うのが現実的でしょうか。測定方法は「精度が必要か、スピードが必要か」によって選び方が変わります。


パックテスト(簡易測定キット)


小さなポリエチレン製チューブに試薬が密封されており、採水した水を吸い込ませるだけで色が変わり、標準色と比較してCOD値の目安を判定できます。数百円程度で入手でき、専門知識がなくても10分以内に結果が出るため、日常的な水質チェックに最適です。共立理化学研究所の「パックテスト」などが現場でよく使われています。


ただし、公的な報告や法的基準の管理に使う場合は、JIS法に準拠した正式な分析が必要です。パックテストはあくまでスクリーニング(ふるい分け)として位置づけましょう。スクリーニングが基本です。


電量滴定式簡易COD計測器


試料と試薬をセットしてスタートボタンを押すだけで、酸化・滴定・結果表示まで自動で行われます。手動の滴定法と比べて測定者による誤差が少なく、廃液量も従来比1/5以下に抑えられた機種もあります。現場の環境担当者が日常的に使う機器として適しています。


COD自動計測器(オンライン監視)


排水口に設置して連続的にCOD値を監視するシステムです。JIS K 0806「化学的酸素消費量(COD)自動計測器」の規格に準じた機種が市販されており、計測範囲は0〜20mg/Lから0〜200mg/Lまでをカバーします。1回の測定サイクルは約1時間です。建設仮設プラントや工場排水の常時監視に用いられます。




どの機器を選ぶかの目安をまとめると以下のとおりです。


| 場面 | 推奨方法 | コスト目安 |
|---|---|---|
| 日常の簡易確認 | パックテスト | 数百円/回 |
| 現場での定期測定 | 電量滴定式簡易計測器 | 数万円〜 |
| 特定施設・法定測定 | JIS準拠の公的分析機関への委託 | 数千円〜/回 |
| 連続排水監視 | COD自動計測器(オンライン) | 数十万円〜 |


排水量が多く法令上の測定義務がある場合は、公的計量証明事業者への委託を選んでください。測定結果は3年間の保存義務があります。これだけ覚えておけばOKです。


参考:COD計の種類と選び方(日本電気計測器工業会・詳細解説)
https://www.jemima.or.jp/tech/5-02-04.html




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