
M30ナットの基本寸法は、JIS B1181 附属書JAで厳格に規定されています。標準的な六角ナット1種の場合、以下の寸法が基準となります。
M30ナット並目の基本寸法
これらの寸法は、建築現場での互換性を確保するため、ISO規格とも整合性を保っています。特に対辺距離46mmは、標準的な工具との適合性を考慮して設定されており、多くのスパナやレンチで対応可能です。
M30ナットは中型サイズに分類され、構造物の主要接合部に使用されることが多いため、寸法精度が重要です。許容差の範囲内であっても、実際の使用では公差の影響を考慮した設計が必要となります。
M30ナットには並目(標準)と細目の2種類のピッチ仕様があり、用途に応じて使い分けが必要です。
並目 M30×3.5の特徴
細目 M30×2.0の特徴
細目ピッチの最大の利点は、ピッチが細かいことで同じ回転角に対する軸方向の移動量が小さくなり、より精密な調整が可能になることです。また、ねじ山の接触面積が増加するため、緩み止め効果も向上します。
建築現場では、エレベーターシャフトや機械設備の取り付け部など、振動が継続的に発生する箇所で細目が選択されることが多くなっています。
フランジ付きM30ナットは、JIS B1189(2014年版)で規定されており、座面の面圧分散効果により、薄板や軟質材への締結に適しています。
M30フランジ付きナット(細目)の寸法
フランジ付きタイプの特徴は、フランジ部分が座金の役割を果たすため、別途座金を使用する必要がないことです。建築現場では作業効率の向上と部品点数削減の観点から、特に鋼構造物の接合部で採用が増加しています。
フランジ外径42.8mmは、M30ボルトの呼び径に対して約1.4倍の面積を確保しており、薄板への局部応力集中を効果的に防止します。
M30ナットの材質選定は、使用環境と要求強度に基づいて行われます。建築現場で使用される主要材質と特徴は以下の通りです。
炭素鋼系材質
合金鋼系材質
ステンレス鋼系材質
材質選定では、母材との電位差腐食も考慮する必要があります。異種金属接触による腐食を防ぐため、ボルトとナットの材質を統一することが重要です。
特にM30サイズでは、高力ボルト接合での使用も多いため、JIS B1186に規定される高力六角ナットの使用も検討されます。この場合、引張強度10T以上の性能が要求されます。
建築現場でのM30ナット選定では、カタログ数値だけでは判断できない実践的な要素を考慮する必要があります。
工具適合性の確認
M30ナットの対辺46mmに対応する工具は限定的です。46mmスパナは一般的な工具セットには含まれないことが多く、専用工具の準備が必要です。電動工具使用時は、ソケットサイズ46mmの在庫確認も重要です。
施工環境による材質選定
品質確認のポイント
JISマーク表示の確認に加え、以下の項目をチェックする必要があります。
在庫管理と調達計画
M30ナットは中型サイズのため、汎用品と比較して在庫回転率が低く、調達リードタイムが長くなる傾向があります。特に細目ピッチやフランジ付きタイプは受注生産の場合も多いため、工程計画時に十分な余裕を見込む必要があります。
また、同一ロットでの調達により、寸法のばらつきを最小限に抑えることができ、施工品質の向上にもつながります。大量使用が予想される場合は、製造ロット情報の管理も重要な要素となります。
六角ナット規格に関する詳細情報
https://www.linex.co.jp/products/jis/parts05/
ボルト・ナット対辺寸法の詳細データ
https://www.toptools.co.jp/product-information/bolts-nuts-opposite-side-size-table/