
JIS5K規格のバタフライバルブは、低圧配管システムで最も多用される規格です。呼び径50A~600Aまでの標準寸法について詳細に解説します。
JIS5K バタフライバルブ主要寸法表
呼び径 | フランジ外径(D) | ボルト穴径 | ボルト本数 | 面間寸法(L) |
---|---|---|---|---|
50A | 155mm | M12 | 4本 | 43mm |
65A | 175mm | M12 | 4本 | 46mm |
80A | 185mm | M16 | 4本 | 46mm |
100A | 210mm | M16 | 8本 | 52mm |
125A | 250mm | M16 | 8本 | 56mm |
150A | 285mm | M16 | 8本 | 56mm |
JIS5K規格では、使用圧力1.0MPaまでの用途に適用され、一般的な給水・排水設備で広く採用されています。特に注目すべきは面間寸法で、水道用仕切弁(JIS B 2062)と同一寸法となっており、既設配管での置き換えが容易です。
フランジ形式はJWWA B138(水道用バタフライ弁規格)に準拠しており、配管設計時には必ずこの規格との整合性を確認する必要があります。また、呼び径100A以上ではボルト本数が倍増するため、施工時の作業効率も考慮した選定が重要です。
JIS10K規格は中圧配管用途で使用され、より高い耐圧性能を要求される場面で選択されます。5K規格との主な違いは、フランジ厚みとボルト仕様の強化です。
JIS10K ボルト・ナット寸法詳細表
10K規格の特徴として、配管用ガスケットが必要となる点があります。5K規格では弁本体のシート機能で十分でしたが、10K規格では追加のシール性能が求められるため、設計時にガスケット選定も含めた検討が必要です。
ボルト長さは鋼製フランジ厚みに適合するよう設定されており、16Kフランジとの兼用時は20Kフランジ寸法での余長を考慮する必要があります。これにより、将来的な圧力仕様変更への対応も可能となります。
高圧用途のバタフライバルブでは、従来の設計思想とは異なる考慮事項が多数存在します。特に16K・20K規格では、安全性確保のため厳格な寸法管理が要求されます。
高圧仕様特有の寸法要件
🔧 フランジ強化仕様
⚡ 耐圧試験対応寸法
16K・20K規格では、API・JPI・JV9規格への対応も求められる場合があり、国際基準との整合性も重要な設計要素となります。特に石油化学プラントや高圧水システムでは、これらの規格準拠が必須条件となることが多いです。
高圧仕様特有の注意点として、弁棒側加圧時の制限があります。350~600mmの大口径では、弁棒側からの圧力に対する耐久性に限界があるため、設計段階での詳細検討が必要です。この制限を超える用途では、専用設計や代替構造の検討が必要となります。
また、高圧仕様では温度影響も顕著に現れるため、-20℃~+80℃の温度範囲での寸法変化も考慮した設計が求められます。特に配管接続部では、熱膨張による応力集中を避けるため、十分な余裕を持った寸法設定が重要です。
主要メーカーごとの寸法差異を理解することは、設計変更や機器更新時の重要な判断材料となります。同一規格でもメーカー固有の特徴があり、これらを把握することで最適な選定が可能になります。
主要メーカー寸法比較表(200A JIS10K基準)
メーカー | 型式 | 面間寸法 | フランジ外径 | 質量 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
トモエバルブ | 304A | 235mm | 340mm | 64kg | API対応 |
昭和バルブ | 150型 | 224mm | 360mm | - | 汎用仕様 |
クボタ | BU-A形 | 224mm | - | - | 水道用特化 |
ニイガタ・チクサン | N15型 | 200mm | 256mm | 20.9kg | 軽量設計 |
互換性確認のポイント
🔍 寸法互換性チェック項目
メーカー間での最大の違いは、面間寸法の設定思想です。トモエバルブの304Aシリーズは235mmと長めに設定されており、これは高圧対応を重視した設計思想によるものです。一方、ニイガタ・チクサンのN15型は200mmと短く、軽量化を重視した設計となっています。
特殊な事例として、クボタのBU-A形シリーズは水道用バタフライ弁規格(JWWA B138)に特化しており、一般工業用との互換性には注意が必要です。水道用途では腐食耐性や長期信頼性が重視されるため、材質選定も含めた総合的な検討が必要となります。
実際の配管設計では、カタログ数値だけでは対応できない現場特有の課題が数多く存在します。長年の設計経験から得られた実用的な注意点を整理します26。
設計段階での重要チェックポイント
⚠️ 配管レイアウト制約事項
📐 寸法選定時の盲点
配管設計で最も見落とされがちなのが、バルブ前後の直管部長さです。バタフライバルブは流路を弁体が遮る構造のため、十分な整流距離がないと流量係数が大幅に低下し、圧力損失の増大や流量計測精度の悪化を招きます。一般的には弁体径の5倍以上の直管部が推奨されますが、現場制約で確保できない場合は、流量補正係数の適用が必要となります。
施工時のトラブル事例として、ボルトの片締めによる問題が頻発しています。特に大口径バルブでは、ボルト本数が多くなるため均等締付けが困難になります。この対策として、ロングボルト・ナットの使用が推奨されており、配管時の作業性向上と締付品質の安定化が図れます。
現場対応のための実用テクニック
🛠️ 施工効率化のポイント
実際の現場では、設計図面通りに施工できないケースが多々あります。既設配管への追加設置では、配管勾配や支持構造の制約により、標準寸法での設置が困難な場合があります。このような状況では、フランジアダプターや偏心レデューサーの活用により、寸法調整を行う必要があります。
また、バタフライバルブは全開時でも弁体が流路内に残存するため、流体中の異物による損傷リスクがあります。設計段階でストレーナーの設置を検討することで、長期的な信頼性確保が可能となります。特に工業用水や雨水利用システムでは、この配慮が設備寿命に大きく影響します。