ボーリング調査費用と相場から業者選定のポイントまで

ボーリング調査費用と相場から業者選定のポイントまで

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ボーリング調査費用と相場

ボーリング調査の費用構成
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標準的な費用相場

一般的な住宅地では15万円~30万円程度、深度や地質条件により変動

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深度別の単価

50m以下の土質ボーリングで1m当たり数千円~数万円、岩盤では更に高額

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追加費用の可能性

地下水位が高い場合や地中障害物がある場合、排水設備や処理費用が発生

ボーリング調査の基本費用相場

ボーリング調査(標準貫入試験)の費用相場は、一般的な戸建て住宅の敷地面積で15万円から30万円程度が目安となります。この価格帯は、他の地盤調査方法と比較すると高額ですが、データの信頼性が非常に高く、多くの実績があることから建築業界では広く採用されています。調査期間は1日から数日程度を要し、地質条件や深度によって変動します。

 

費用が変動する主な要因として、掘削深度、地質の硬さ、調査地点の数、アクセス状況などが挙げられます。特に硬い岩盤や複雑な地層が存在する場合、作業時間が長くなるため費用は増加する傾向にあります。

 

ボーリング調査の深度別単価と内訳

ボーリング調査の単価は深度と地質により細かく設定されています。土質ボーリングの場合、深度50m以下でφ66mmの場合、粘性土・シルト、砂・砂質土、礫混じり土砂、玉石混じり土砂など土質の種類によって1m当たりの市場単価が異なります。岩盤ボーリングでは、軟岩、中硬岩、硬岩、極硬岩と岩の硬さによって単価が大きく変わり、硬い岩盤ほど高額になります。

 

深度が50mを超え80m以下になると、せん孔深度の補正係数が適用され、基本単価に対して割増しとなります。さらに、せん孔方向が鉛直下方、斜め下方、水平、斜め上方によっても補正係数が異なり、斜め上方が最も高い係数(1.40倍程度)となります。

 

30m深度のボーリング調査では、ボーリング作業費用に加えて、標準貫入試験などの各種地盤試験費用、報告書作成費用、機器の搬入搬出や作業員の移動にかかる費用などが内訳として含まれます。

 

ボーリング調査費用に影響する追加要因

基本的な調査費用以外にも、現場の状況によって追加費用が発生するケースがあります。地下水位が高い場合には、調査孔内保護のためベントナイト溶液を使用したり、排水設備を設置したりする必要があるため、追加費用が発生します。

 

地中障害物(埋設管、基礎杭の残材、廃棄物など)が発見された場合、それらの処理費用や迂回調査のための費用が必要となる場合があります。特に都心市街地では地下埋設物が管理台帳と一致しないケースもあり、試掘調査を事前に実施することが事故防止の観点から重要とされています。

 

また、調査地点へのアクセスが困難な場合(狭小地、高低差のある場所など)、機材の運搬や設置に特別な対応が必要となり、その分のコストが上乗せされます。

 

ボーリング調査とSWS試験の費用比較

建築業従事者として知っておくべき点として、ボーリング調査(標準貫入試験)とスウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)の費用差があります。SWS試験の費用相場は5万円程度で、ボーリング調査の約3分の1から5分の1程度です。

 

調査方法 費用相場 調査期間 適用建物
ボーリング調査(標準貫入試験) 15万円~30万円 1日~数日 中大規模建築物、マンション、地下がある建物
スウェーデン式サウンディング試験 5万円程度 数時間 戸建住宅などの小規模建築物
表面波探査法 8万円~12万円 半日程度 戸建住宅

ボーリング調査は費用が高額である一方、深い深度まで調査可能で、硬質地盤にも対応でき、N値の直接測定や土質サンプルの採取が可能という優位性があります。SWS試験では貫入できない硬質地盤や、支持層の深さを正確に把握する必要がある中大規模建築物では、ボーリング調査が必須となります。

 

ボーリング調査費用を抑える実践的な方法

建築プロジェクトにおいてボーリング調査の費用を抑えるためには、いくつかの実践的な方法があります。まず、土地選定の段階で既存の地盤調査データを確認することが重要です。周辺地域のボーリングデータが利用できれば、調査孔の数を最小限に抑えることができます。

 

調査孔の配置計画を慎重に行うことも費用削減につながります。建物の規模や重要度に応じて、必要最小限の調査孔数で適切な地盤情報が得られるよう計画します。ただし、基礎構造が場所ごとに変わる場合や、推定岩盤線の傾きを把握する必要がある場合は、ジャストボーリングだけでは不十分な場合があるため注意が必要です。

 

複数の地盤調査業者から見積もりを取得し、比較検討することも重要です。ただし、単純に安価な業者を選ぶのではなく、調査精度、保有資格、実績、保証制度の有無などを総合的に評価する必要があります。

 

ボーリング調査の必要性と標準貫入試験

ボーリング調査が必要となる建築物と目的

ボーリング調査は、建築物の安全性を確保するために地盤の強度、土層構成、地下水位などを正確に把握する目的で実施されます。JIS A 1219:2013で規定される標準貫入試験は、地盤の硬軟、締まり具合の判定、及び土層構成を把握するために試料の採取を目的とする試験方法です。

 

マンションなど杭を打つための支持層を把握する必要がある建築物、地下がある建物、中大規模建築物、土木構造物などでボーリング調査が採用されます。支持層は一般に砂層でN値30以上、粘性土でN値20以上とされていますが、実務上はN値50以上の層を5m確認することが支持層確認の基準となっています。

 

建築業従事者として押さえておくべき点は、ボーリング調査によって深い深度まで調査が可能であり、N値が50以上の硬い層でも調査ができることです。また、削孔時に土のサンプルを得られるため、土の観察後に物理・力学試験による詳細な土の性状確認が可能となります。

 

ボーリング調査における標準貫入試験の手順

標準貫入試験の具体的な手順を理解することは、建築業従事者として重要です。まず、試験深度まで掘削した後、試験用サンプラー(SPTサンプラー)をボーリングロッド先端に取り付け、孔底に降ろします。

 

予備打ちによってサンプラーを15cm貫入させた後、質量63.5±0.5kgのハンマーを760±10mm(76±1.0cm)の高さから自由落下させて本打ちを行います。ハンマーの落下方法には手動と全自動があります。

 

サンプラーを土中に30cm貫入させるのに要する打撃回数を測定し、この打撃回数がN値として記録されます。N値がゼロ(打撃なしで自重のみで貫入)の場合は、通称「モンケン自沈」と呼ばれます。

 

サンプラーを地上に引き上げ、採取した土を観測記録し、各層の代表的試料を容器に納めて地質標本とします。この土質サンプルは、後の室内試験で詳細な土の性状確認に使用されます。

 

ボーリング調査報告書の見方とN値の評価

ボーリング調査の結果は柱状図として報告書にまとめられます。柱状図の見方を理解することは、建築業従事者にとって必須のスキルです。柱状図には、深度ごとの土質(粘性土、シルト、砂、礫など)、N値のグラフ表記、地下水位、岩盤の種類などが記載されています。

 

N値は地盤の硬さを示す重要な指標で、数値が大きいほど硬い地層を意味します。一般的な目安として、N値が0~4では非常に軟らかい、5~10では軟らかい、11~30では中程度、31~50では硬い、50以上では非常に硬いと評価されます。

 

建築物の基礎設計では、このN値に基づいて支持層の深さ、地耐力、杭の必要性などが判断されます。特に、軟弱地盤層の厚さが複雑に変化している場合や、地層構成や基盤層の深度を線的に把握する必要がある場合、ボーリング調査のデータが不可欠となります。

 

ボーリング調査における独自の品質管理視点

建築業従事者として、ボーリング調査の品質を確保するための独自の視点を持つことが重要です。調査計画段階では、建物配置に対する調査孔の位置関係を慎重に検討する必要があります。特にケーソン基礎や大規模構造物では、中心点だけでなく4隅にも追加ボーリング調査を実施することで、推定岩盤線の傾きをより正確に把握できます。

 

調査実施中は、地下水の流れの変化、有害なガスや液体の放出、地盤の安定性への影響など、環境への影響をモニタリングすることも重要です。ボーリング調査によって地下水の流れが変わる可能性があり、これは地下水の利用だけでなく地盤の安定性にも影響を及ぼす可能性があります。

 

また、掘削液(ベントナイト溶液など)の使用については、地下水や土壌を汚染する可能性があるため、適切な管理と処理が必要です。調査終了後のボーリング孔の適切な埋め戻しも、後の出水などのトラブルを防ぐために重要な工程となります。

 

ボーリング調査業者選定のポイント

ボーリング調査業者の資格と認可確認

ボーリング調査を実施できる企業・業者は限られており、適切な認可と資格が必要です。業者選定の第一のポイントは、資格を有する調査技術者が在籍しているかどうかの確認です。地質調査技師、主任地質調査員、地質調査員などの有資格者の配置状況を確認しましょう。

 

ロータリーボーリングマシン1台当たりの編成人員として、地質調査技師0.5人、主任地質調査員1.0人、地質調査員、普通作業員などの標準的な体制が整っているかも重要な確認ポイントです。

 

自社ですべて調査可能である業者を選ぶことも重要です。調査から報告書作成まで一貫して自社で対応できる業者は、品質管理や責任の所在が明確になり、トラブル時の対応もスムーズです。下請けに丸投げする業者よりも、自社で技術者と機材を保有している業者の方が、調査精度が高い傾向にあります。

 

ボーリング調査の実績と調査精度の評価

業者選定において、過去の実績と調査精度を評価することが重要です。同種の建築物(マンション、商業施設、土木構造物など)での調査実績が豊富な業者は、その建物特有の調査ポイントを熟知しており、適切な調査計画を立案できます。

 

調査精度を高めるための取り組み内容も確認しましょう。例えば、ボーリング調査の作業手順が標準化されているか、品質管理体制が整っているか、最新の調査機器を保有しているかなどが評価ポイントとなります。

 

地域の地質特性に精通している業者を選ぶことも有効です。その地域での調査実績が多い業者は、地域特有の地質リスク(軟弱地盤、活断層、地下水位の変動など)について豊富な知見を持っており、より適切な調査が期待できます。

 

ボーリング調査の保証制度とアフターフォロー

地盤調査業者を選ぶ際には、保証制度の有無を必ず確認しましょう。地盤調査を行ったにもかかわらず、地盤に起因するトラブル(不同沈下、地盤の液状化など)が発生した場合の保証内容を事前に確認することが重要です。

 

保証内容として、調査精度に問題があった場合の再調査費用の負担、地盤改良工事が必要となった場合の費用負担の範囲、建物に損害が発生した場合の補償内容などを具体的に確認します。保証期間や保証金額の上限なども重要な確認ポイントです。

 

アフターフォロー体制も業者選定の重要な要素です。報告書の内容について疑問点が生じた場合の技術的な相談対応、地盤改良工事が必要となった場合の設計支援、工事中に想定外の地質が出現した場合の追加調査対応など、調査後のサポート体制が充実している業者を選ぶことで、プロジェクト全体のリスクを低減できます。

 

ボーリング調査における安全管理体制の確認

ボーリング調査は、操作を誤ると大事故につながりかねない作業です。業者選定では、安全管理体制が整っているかを確認することが重要です。安全マニュアルの整備状況、作業員への安全教育の実施状況、過去の事故発生状況とその対策などを確認しましょう。

 

地下埋設物の破損事故を防ぐための対策が整っているかも重要なポイントです。作業開始前の地下埋設物の確認手順、埋設物が想定される地点での手掘り試掘の実施、試掘作業・掘削作業における異物・漏洩物・臭いへの注意体制などが確立されているかを確認します。

 

ボーリングマシンの軌条架設における安全基準(横方向の傾き±3度以内、最大勾配45度以下など)が守られているか、落石などの外的要因への備えがあるかなど、細部にわたる安全配慮がなされている業者を選ぶことで、現場の安全性が向上します。

 

全国地質調査業協会連合会による「ボーリング作業のための安全マニュアル」
ボーリング調査における安全対策の基本的な考え方と具体的な対策方法が詳細に記載されています。

 

国土交通省「地質調査業務共通仕様書」
ボーリング調査の標準的な仕様と品質管理基準について公的な基準が示されています。