
地耐力とは、地盤がどれだけの荷重に耐えられるかを示す指標です。建築物を安全に支えるためには、この地耐力を正確に把握することが不可欠です。地耐力の単位はkN/㎡で表され、1平方メートルあたりどれだけの荷重に耐えられるかを示しています。
地耐力とN値には密接な関係があり、一般的に「地耐力≒N値×10」という簡易計算式で概算することができます。例えば、N値が30の地盤では、地耐力は約300kN/㎡と推定できます。この関係式は現場での概算に役立ちますが、実際の設計では、より詳細な調査や計算が必要となります。
N値とは地盤の強度を示す無次元数で、標準貫入試験やスウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)によって測定されます。N値が大きいほど地盤が堅固であることを示し、建物の基礎設計において重要な指標となります。
地耐力計算では、以下の3つの要素を考慮することが重要です:
これらの要素を総合的に評価することで、より正確な地耐力を算出することができます。
地耐力計算において、長期許容応力度と短期許容応力度の区別は非常に重要です。これらは建物に作用する荷重の種類と期間によって使い分けられます。
長期許容応力度(qa)は、建物の自重や家具などの固定荷重、日常的に発生する積載荷重など、長期間(通常50年間)継続して作用する荷重に対する地盤の耐力を示します。一般的に、長期許容応力度が30kN/㎡以上であれば、良質な地盤と判断されます。
一方、短期許容応力度は、地震や強風などの一時的な荷重に対する地盤の耐力を示します。通常、短期許容応力度は長期許容応力度の2倍として計算されます。つまり、極限支持力度(qu)を基準にすると、長期許容応力度はqu/3、短期許容応力度は2qu/3となります。
例えば、長期許容応力度が50kN/㎡の地盤の場合、短期許容応力度は100kN/㎡となります。これは建築基準法施行令第93条に基づいており、短期荷重に対しては長期荷重の2倍まで許容できるという考え方です。
実際の設計では、建物の基礎に作用する接地圧(地盤に伝わる荷重)が、地盤の長期許容応力度を超えないことを確認します。これを「接地圧の検定」と呼び、基礎設計において重要なチェックポイントとなります。
地耐力計算の結果に基づいて、適切な基礎形式を選定することは建物の安全性を確保するために非常に重要です。基礎形式の選定基準は、主に地盤の長期許容応力度(qa)によって決まります。
平成12年建設省告示第1347号第1によると、基礎形式の選定基準は以下のように定められています:
この選定基準に基づき、地盤の状況と建物の規模・重量を考慮して最適な基礎形式を選びます。例えば、軟弱地盤(N値が低い地盤)では杭基礎やべた基礎が選ばれることが多く、堅固な地盤(N値が高い地盤)では布基礎や独立基礎が選ばれることがあります。
基礎形式選定の流れは以下のようになります:
特に木造住宅の場合、地耐力が20kN/㎡未満の軟弱地盤では、地盤改良工事を行うか杭基礎を採用することが一般的です。地耐力が30kN/㎡以上あれば、布基礎やべた基礎で対応できることが多いです。
N値によって地耐力の目安が変わり、それに応じて建築可能な建物の種類も異なってきます。ここでは、N値別の地耐力目安と建築物の適合性について解説します。
【N値0~4】
【N値4~10】
【N値10~30】
【N値30~50】
【N値50以上】
建築物の規模や重要度に応じて、必要なN値と地耐力は異なります。例えば、一般的な木造住宅であれば、N値10以上(地耐力100kN/㎡以上)の地盤が望ましいとされています。中層マンションなどの中規模建築物では、N値30以上(地耐力300kN/㎡以上)が求められることが多いです。
また、同じN値でも土質によって地耐力が異なる場合があります。例えば、砂質土と粘性土では、同じN値でも支持力特性が異なるため、土質も考慮した判断が必要です。
地耐力計算の精度は、地盤調査の質に大きく依存します。ここでは、代表的な地盤調査方法とそのデータ解釈のポイントについて解説します。
1. 標準貫入試験(SPT)
標準貫入試験は、63.5kgのハンマーを76cm落下させ、サンプラーを30cm貫入させるのに必要な打撃回数(N値)を測定する方法です。この試験は直接N値を得られるため、地耐力計算の基本となります。
データ解釈のポイント:
2. スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)
SWS試験は、荷重をかけながら回転させて地盤に貫入させる試験で、自沈量(Wsw)と半回転数(Nsw)から換算N値を求めます。住宅建築では最も一般的な調査方法です。
データ解釈のポイント:
3. 平板載荷試験
平板載荷試験は、直径30cmの鉄板を地盤に設置し、荷重をかけながら沈下量を測定する試験です。実際の荷重条件に近い状態で地耐力を直接測定できます。
データ解釈のポイント:
地盤調査データを解釈する際の重要なポイントとして、以下の点に注意が必要です:
また、業者によって調査結果が異なる場合があるため、複数の調査結果を比較検討することも重要です。特に重要な建築物では、複数の調査方法を組み合わせて総合的に判断することが推奨されます。
地耐力計算は単に建物の安全性を確保するだけでなく、コスト効率の良い基礎設計を実現するための重要なツールでもあります。適切な地耐力計算に基づいた基礎設計は、過剰設計を避けつつ必要な安全性を確保することができます。
基礎設計のコストバランスを考える際のポイント:
地耐力が不足している場合、地盤改良を行うか、より強固な基礎形式を選択するかの判断が必要です。この選択は建設コストに大きく影響します。
例えば、N値が5程度の軟弱地盤の場合:
地耐力計算の結果、表層改良で十分な場合は、杭基礎を選択するよりも大幅なコスト削減が可能です。
地耐力計算によって得られた数値を基に、基礎の厚さや配筋を最適化することができます。例えば、地耐力が十分高い場合は、べた基礎の厚さを標準的な180mmから150mmに減らすことも可能で、コンクリート量の削減につながります。
初期コストだけでなく、メンテナンスコストも含めた長期的な視点が重要です。地耐力が不足している状態で基礎設計を行うと、将来的に不同沈下などの問題が発生し、修復コストがかかる可能性があります。
コスト効率の良い基礎設計のための実践的アプローチ:
地耐力計算を活用した効率的な基礎設計は、建設コストの最適化だけでなく、環境負荷の低減にも貢献します。例えば、過剰な地盤改良を避けることで、セメント使用