ボールねじの構造と循環方式予圧

ボールねじの構造と循環方式予圧

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ボールねじの構造

ボールねじの構造の要点
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軸・ナット・鋼球

ねじ軸とナットの溝の間に鋼球を介在させ、すべり接触を転がり接触に置き換えるのが基本構造。

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循環方式が性格を決める

鋼球をナット内で循環させる方式(チューブ、デフレクタ、エンドキャップ等)で静粛性・回転バランス・コンパクト性が変わる。

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予圧・潤滑・異物

予圧はバックラッシ抑制と剛性に効く一方で、潤滑不良や異物混入は寿命を大きく縮めるので保全設計が重要。

ボールねじの構造:ねじ軸とナットと鋼球


ボールねじは、回転運動を直線運動に変える「送りねじ」の一種で、ねじ軸(おねじ)とナット(めねじ)の間に鋼球を入れて、接触を“すべり”から“転がり”へ変える機械要素です。
この「転がり化」によって摩擦係数が大きく下がり、結果として効率が高くなるのが根本的なメリットです。
建築設備の自動化(ダンパ、ゲート、昇降機構、搬送、調整機構など)では、同じ直動でも「油圧」「空圧」「チェーン」「ラック&ピニオン」などと比較して、ボールねじは“位置決めの再現性を設計で詰めやすい”側に寄ります。


参考)ボールねじ:仕組み・構造・リードとは?現役の機械設計者が解説…

一方で、ねじ軸とナットと鋼球が金属同士で高面圧接触するため、潤滑と異物対策を軽視すると、良さが一気に崩れます。


参考)ボールねじの寿命とは②

ここで押さえるべき構造上のキーワードは、(1)ねじ溝(軌道)、(2)鋼球、(3)循環機構、(4)予圧、(5)潤滑とシールです。


参考)ボールねじの循環方式について知りたい

鋼球は「転がっているだけ」と思われがちですが、循環部品に拾い上げられ、再び溝へ戻されることで連続運転が成立します。

ボールねじの構造:循環方式とサーキット

ボールねじは鋼球が転動しながら循環する構造で、鋼球が一定回数ねじ溝外周を転動した後に循環部品へ導かれ、元の位置へ戻る流れで「サーキット」を構成します。
この循環方式の違いが、同じ“ボールねじ”でも、静粛性・高周速性・回転バランス・ナット外径の作りやすさに差を生みます。
代表例として、チューブ方式はU字状のチューブで鋼球を戻す一般的な方式で、複数列(複数サーキット)を組み込みやすく、対応リード範囲が広いと整理できます。

デフレクタ方式はコンパクト性と回転バランスに優れ、鋼球はナット内部のデフレクタに導かれてねじ軸外径をなぞるように乗り越え、元の位置へ戻ります。

エンドキャップ方式はナット両端の部品で鋼球をすくい上げ、ナット本体の貫通穴を通して戻す方式で、大リード用途に採用されると説明されています。

現場目線の注意点として、循環方式が変わると「音の出方」「回転域でのクセ」「ナット外径が干渉しやすいか」などが変わり、設計図上は収まっても保全性が悪化するケースがあります。

また、同一機構を複数台並べる設備では、回転バランスに優れた方式の方が“個体差の振動”が出にくい、といった設計意図が通ることがあります(ただし最終的には負荷・リード・回転条件とのバランスが前提です)。

参考:循環方式(チューブ方式、デフレクタ方式、エンドキャップ方式、エンドデフレクタ方式、サイドデフレクタ方式)の特徴整理に有用
黒田精工:ボールねじの循環方式について知りたい

ボールねじの構造:予圧とバックラッシ

ボールねじは、ナットを2個使う、または大きな直径の玉を使うなどの方法でナットに予圧を与え、すきまを殺して剛性を高められる点が重要です。
この「すきま(遊び)」が位置決めで問題になる文脈ではバックラッシとして語られ、予圧はバックラッシ低減の主要手段として扱われます。
ただし予圧は“強ければ強いほど良い”ではなく、強すぎると温度上昇や消耗の原因になり得る、といった注意点も一般に示されています。


参考)ボールねじにおけるバックラッシと予圧を徹底解説! - ボール…

建築設備でありがちな落とし穴は、試運転時は問題が出ないのに、温度環境(機械室、屋外、天井内)や連続運転で熱が乗った段階で、予圧トルク増・発熱増のループに入り、結果として精度が乱れたように見えるケースです。


参考)https://www.fa.omron.co.jp/product/special/maintenance-solution/application/all/application_a43.html

さらに、ボールねじは高効率ゆえに“逆作動が起きやすい”特徴も知られており、保持(停止時の落下や戻り)をどこで担保するかを別途考える必要が出ます。

設備設計では、電源断・非常停止・保守作業時に「戻らない」ことが要求になるため、ブレーキ付きモータ、保持機構、メカストッパなどを“予圧だけに頼らず”組み合わせる考え方が安全側です。

参考:ボールねじの摩擦が小さく効率が高いこと、予圧で剛性とすきま対策ができること、逆作動の注意点などの基礎整理に有用
日本潤滑学会(JALOS)Q&A:ボールねじにはどのような特徴があるのか

ボールねじの構造:潤滑とシールと寿命

ボールねじは鋼製のねじ軸・ナット・ボールが循環して働くため、金属同士の直接接触を避ける潤滑が「必要不可欠」とされ、給油(給脂)を怠ると焼付きで使用不能になり得ます。
また、潤滑が不足または劣化すると摩擦・摩耗が増え、寿命が短くなるだけでなく、温度上昇でねじ軸が伸びて位置決め精度や繰り返し精度が低下する可能性が示されています。
建築現場では、粉じん(ボード粉、コンクリ粉、断熱材の繊維、研削粉)や鉄粉が入りやすく、硬い異物を噛み込むと溝やボール表面に傷・圧痕が生じ、それを起点に剥離が進行して早期寿命に繋がるリスクが説明されています。

さらに粉体はグリースや作動油に混ざると潤滑性能を著しく低下させ、油膜形成を阻害して焼付きや作動不具合の原因になり得るため、「シール」「蛇腹カバー」「正しい給脂間隔」「清掃性」をセットで考える方が堅いです。

意外と見落とされがちなのが、ボールねじ自体はアキシアル荷重(軸方向荷重)に対して仕事をする要素で、ラジアル荷重やモーメント荷重が入ると一部のボール・溝に負荷集中して寿命を大きく下げる、という設計上の注意です。

建築設備の据付では、芯出し不足やブラケットのたわみ、スライダ側のガイド不足が「モーメント荷重を勝手に作る」典型なので、直動案内(リニアガイド等)との役割分担を図面と施工要領で明確にしておくとトラブルを減らせます。

ボールねじの構造:摩擦と滑り成分(独自視点)

ボールねじは転がり要素ですが、軌道がねじれているため鋼球とねじ溝の間に“玉軸受にはない滑り成分が存在する”という指摘があり、ここが発熱・摩耗・音の出方のクセに繋がる入口になります。
つまり「転がりだから摩耗しない」とは言い切れず、潤滑や異物対策の重要度が高い理由を、構造(ねじれ軌道)から説明できます。
この視点を建築設備に落とすと、同じ荷重でも「リード」「回転数」「デューティ(連続運転か、短時間頻繁起動か)」で熱の入り方が変わるため、単に定格荷重だけでなく、周辺の放熱(覆いの有無、天井内の熱だまり、機械室の換気)まで含めて“温度で精度がズレる”事象を先回りできます。

また、摩擦が増えたときに“モータ電流がじわっと上がる”“音が高周波寄りになる”“同じ位置で引っかかる”などの兆候は、循環部品や溝の状態悪化・潤滑劣化の早期サインになり得るので、保全側に監視項目として渡すと運用が安定します。

独自の実務アイデアとして、設備引渡し後の点検で「据付直後の基準トルク(または電流)」「周囲温度」「潤滑剤の銘柄」「シール形状」をセットで記録しておくと、同型機の比較ができ、原因切り分けが速くなります。

ボールねじは構造上、予圧・潤滑・異物・荷重の入り方が“互いに影響し合う”ため、単発の対策より、記録と比較が効く領域です。




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