

防火サッシの認定番号が「旧番号のまま」だと、竣工検査で全窓やり直しになる場合があります。
防火サッシが「何の法律に基づいているか」を正確に言える現場担当者は、実は多くありません。感覚で「防火地域に使うもの」と理解していても、法令の根拠を把握していないと、仕様選定の段階で重大なミスにつながります。これは大きなリスクです。
防火サッシの法的根拠は建築基準法第2条第9号の2および同法第64条です。建築基準法では開口部に設ける防火設備を大きく「防火設備(旧乙種防火戸)」と「特定防火設備(旧甲種防火戸)」に分類しています。2000年の建築基準法改正によって「甲種・乙種」という旧来の呼称は廃止されましたが、現場では今なお「甲種・乙種」という言葉が使われることがあります。旧称と現称の対応関係を下表に整理します。
| 旧称 | 現称 | 要求遮炎性能 | 主な適用場面 |
|---|---|---|---|
| 甲種防火戸 | 特定防火設備 | 60分遮炎 | 防火区画・防火地域の外壁開口部など |
| 乙種防火戸 | 防火設備 | 20分遮炎 | 準防火地域の外壁開口部・延焼ライン内など |
防火サッシはこのうち「防火設備」または「特定防火設備」として認定・告示を取得した開口部建具の総称です。つまり防火サッシという製品カテゴリ名ではなく、性能認定を受けた開口部建具が法的に防火設備と呼ばれる、という理解が正確です。
防火設備には「告示仕様」と「大臣認定品」の2ルートがあります。告示仕様(建設省告示第1360号など)は素材・寸法・構造を告示で規定したもので、認定番号は不要です。一方、大臣認定品は各メーカーが国土交通大臣の認定を受けた製品で、認定番号(例:EB-○○○○)が製品に刻印されています。現代の現場でほぼ使われるのは大臣認定品です。告示仕様で対応するケースは稀です。
「防火地域に建物を建てるから全窓を防火サッシにする」と思い込んでいる人は多いです。これは間違いではありませんが、正確ではありません。設置基準は地域区分だけでなく、延焼のおそれのある部分(延焼ライン)と開口部面積の両方で判断されます。
延焼のおそれのある部分とは、建築基準法第2条第6号で定められた範囲です。隣地境界線・道路中心線・同一敷地内の別棟の外壁中心線から、1階は3m以内、2階以上は5m以内の外壁・軒裏がこれに該当します。この範囲内にある開口部には防火設備の設置が義務付けられます。範囲のイメージとしては、1階なら自動車1台分(約4.5m)よりやや短い距離、2階以上なら標準的な部屋の長辺(約5m)と同程度の距離感です。
設置が必要な条件を整理すると以下のとおりです。
注意が必要なのは「防火地域でも例外が存在する」点です。建築基準法第61条ただし書きによって、延焼のおそれのない部分(延焼ラインの外側)に設ける開口部は、防火地域内であっても必ずしも特定防火設備とする必要はありません。これは意外なポイントです。
また、「防火上主要な間仕切壁(令第114条)」に設ける開口部についても、防火設備の設置が求められます。学校・病院・旅館など特定の用途の建物では、廊下と居室の仕切りに使う開口部も対象となりますので、用途変更を伴うリノベーション案件では特に注意が必要です。
大臣認定品の防火サッシには、必ず認定番号が付与されています。しかしその認定番号が「現在も有効かどうか」を施工前に確認している現場担当者は少ないです。認定が失効・変更されたまま施工すると、検査済証が取得できないどころか、是正工事が命じられるリスクがあります。これは痛いですね。
認定番号の構成は以下のとおりです。
認定番号の有効性は国土交通省の指定性能評価機関(建材試験センター等)のデータベースで検索できます。メーカーのカタログ番号と認定番号が一致していても、製品の仕様変更・廃番に伴い認定が移転・失効していることがあります。
特に注意が必要なのは、2016年(平成28年)の建築基準法改正です。この改正によって「防火設備の定期検査報告制度」が新設され、従来の告示仕様から大臣認定品への切り替えが事実上加速しました。それ以前のストック品・旧番号のカタログが残っている事務所では、古い認定番号のまま仕様書を作成してしまうリスクがあります。
認定番号の確認手順を整理します。
この4ステップが原則です。手間に感じるかもしれませんが、確認を怠った場合の是正コストは1窓あたり数万円から数十万円に上ることもあります。事前確認に要する時間は数分です。
防火サッシは「製品を取り付けさえすれば基準を満たす」と考えていると、検査で痛い指摘を受けます。認定条件は製品単体ではなく「施工条件込みで成立」するからです。つまり施工が条件です。
① 取付開口寸法・躯体との取り合い
大臣認定の適用範囲には、製品の外形寸法だけでなく「躯体開口部の寸法・材質・固定方法」が含まれています。コンクリート躯体に直接取り付ける場合とALC壁に取り付ける場合では、適用される認定の条件が異なることがあります。現場での寸法変更や下地材の変更は、認定条件の逸脱につながる場合があります。
② ガラスの種類と厚み
防火サッシの認定条件には、使用できるガラスの種類・厚みが明記されています。網入りガラス・耐熱強化ガラス・防火複層ガラスでは、それぞれ適用できる認定番号が異なります。コスト削減を目的に「認定外のガラスに変更」したケースで竣工検査に通らなかった事例は、実際に報告されています。これは避けたいですね。
防火複層ガラスは断熱性能との両立ができる点でニーズが高まっています。ただし認定番号がフレームとガラスのセットで管理されているケースもあるため、メーカーへの確認を怠らないようにしてください。
③ 附属金物・クレセント・シール材の指定
認定条件には鍵(クレセント)・ヒンジ・シール材の仕様が定められている場合があります。現場の要望で「使いやすいから別メーカーのクレセントに交換した」「シール材が切れていたので手持ちのもので補修した」といった対応が、認定条件から外れていることがあります。附属金物は認定条件の一部です。
一般社団法人 建築性能基準推進協会(防火設備認定品の検索・確認に活用できる機関)
設計・施工段階だけでなく、「竣工後の維持管理」まで視野に入れて防火サッシを選ぶ建築業従事者はまだ少数派です。しかし2016年施行の建築基準法改正によって、特定建築物の防火設備は定期検査・報告義務(3年以内ごと)の対象となりました。これは見落とせない変化です。
定期検査報告の対象となる防火設備は「随時閉鎖式」のもの(煙感知器連動で閉鎖するタイプなど)が主ですが、外壁開口部の防火サッシも建物の用途・規模によっては報告対象に含まれます。建物オーナーへの説明責任という観点から、竣工時に設計者・施工者が「この防火設備は定期検査対象か否か」を明示することが、クレーム防止につながります。
定期検査を見据えた場合、施工段階で次の点を意識するとオーナーにとってのメリットが大きくなります。
防火設備の定期検査は「建築設備定期検査」とは別の報告制度です。混同している管理担当者も多く、両方の報告が必要な建物であっても片方だけで済ませているケースがあります。報告制度は2つあると覚えてください。
国土交通省:定期報告制度の概要(防火設備の定期検査義務の根拠法令・対象建築物の解説)
さらに見落とされがちな点として、「防火設備定期検査の検査者資格」があります。2016年改正以降、防火設備の定期検査は「防火設備検査員」の資格を持つ者でなければ実施できません。従来の建築士・建築設備士による検査では対応できない場合があります。施工業者として顧客から「定期検査も引き受けてほしい」と依頼を受ける前に、自社または提携先に防火設備検査員がいるか確認しておくと、受注機会の拡大につながります。これは使えそうです。
以上が防火サッシの基準に関わる主要な実務知識です。法令の根拠・設置条件・認定番号の有効性確認・施工条件・維持管理の流れを一体として押さえることで、現場でのトラブルと是正リスクを大幅に減らすことができます。設計段階から竣工・維持管理まで一気通貫で理解することが、建築業従事者としての現場力を高める最短ルートです。
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